この舞台を体感した者だけが感じる「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス VV」の真価とは?

AIの進化によるシンギュラリティの脅威が叫ばれる現代。その命題を、圧倒的なリアリティと練り込まれたストーリーで描き、絶大な人気を誇るアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズを原作とした初の舞台化作品「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」(以下、「舞台 PSYCHO-PASS VV」)が、現在絶賛上演中だ。

メインキャストに鈴木拡樹、和田琢磨ら舞台、ドラマでめざましい活躍を見せる人気俳優を迎え、『踊る大捜査線』などでおなじみの映画監督・本広克行氏が演出を果たす本作は、2019年4月18日~30日まで東京・日本青年館ホールでの東京公演を終え、5月3日~6日は大阪・森ノ宮ピロティホールで大阪公演を開催。どちらも大盛況で既にチケットは完売しているが、5月6日の大千秋楽公演は、全国62カ所もの映画館でライブビューイングを実施。「PSYCHO-PASS サイコパス」ファンのみならず、演劇ファンからも大注目を集めている。

原作アニメのスピンオフストーリーをオリジナルキャラクターで演じるこの舞台は、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズとしての面白さだけでなく、舞台演劇としての新規性にも満ちあふれた画期的なものだ。従来の舞台とは一線を画す新しい演劇を、ふたりのレビュアーが生観劇。体感した者だけが感じるこの舞台の真価をストーリー、キャスト、演出、アクションといったさまざまな視点から紐解こう。

 

レビュアー紹介

阿部美香:リアリズムあふれる近未来SFモノに定評のあるアニメスタジオ・Production I.Gと、独立愚連隊的ヒーローが活躍する警察モノに定評のある本広克行監督とのコラボにワクワクしたのが、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズとの出会い。そこから約9年、アニメ以外のメディアミックス作品までは追っていなかったものの、今年劇場公開された「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」3部作で熱が再燃。「舞台 PSYCHO-PASS VV」でさらに色相がクリアになった気が……。10月放送開始予定の「PSYCHO-PASS サイコパス 3」も、今から楽しみで仕方ない。

野本由起:ゲームと本と酒を愛するライター。「舞台 PSYCHO-PASS VV」前2回の記事を担当。舞台稽古を見学し、役者陣の瞬発力、対応力に感動。本番ではさらに完成度が上がっていたため、おかんのような気持ちでハンカチを握りしめつつ観劇。

原作「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの魅力を完全表現(レビュアー阿部)

本作をレビューする前に、まず原作「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの世界観について、少し説明が必要だろう。

物語の舞台となるのは、現代から約100年後の近未来。日本は2020年代から世界中を席巻した先進国内での内戦や経済恐慌による脅威から国を守るため、鎖国政策を実施。次いで壊滅状態であった国内経済を再興するために、国民の職業適性検査を行なうことを萌芽として、人間の精神状態を科学的に分析して数値化したデータ=通称「PSYCHO-PASS(サイコパス)」を測定し、そこで得られた深層心理データから国民全員の職業適性や欲求実現手段を提供する“包括的生涯福祉支援システム”=「シビュラシステム」を確立。徹底した国民管理体制が敷かれたという背景が、まずある。

そして、シビュラシステムよる国民管理は、犯罪予防にも適用される。シビュラシステムは犯罪者になる危険性を数値化したデータ=犯罪係数が一定値を超えた人間を「潜在犯」とみなし、犯罪を未然に防ぐという目的から、潜在犯を社会から実質的に隔離・排除するシステムを作り出した。

その実行部隊となるのが、厚生省公安局刑事課だ。公安局の刑事達は、国民の犯罪係数を計測し、潜在犯を執行(犯罪係数の大きさによっては、対象者の生命的排除も含まれる)できる特殊拳銃「ドミネーター」を所持。捜査をリードするエリート刑事である「監視官」と、犯罪者心理の理解に長けた高い犯罪係数を持つ潜在犯の「執行官」がチームを組み捜査に当たるが、感情の変化や強いストレスによって色相が濁り、犯罪係数の数値が上下することは誰にでも起こり得る。犯罪と常に向き合っている監視官が、その影響を受けて犯罪係数が悪化して“執行官落ち”することもある……刑事たちはそんな心理的に不安定な状況にさらされながら、日々の捜査に立ち向かっているのだ。

「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズは、公安局刑事課メンバーを主人公に、凶悪な犯罪者(主にはシビュラシステムの崩壊を目論むテロリスト)との戦いを描くハードボイルドなアクションサスペンスだ。だがその奥には、けっしてフィクションではすまされない、「PSYCHO-PASS サイコパス」を観る者が生き続けた先に必ずしや現われるであろう、“こうなるかも知れないノンフィクションの未来社会”で、人は何を正義とし、どう生きていけばいいのかをリアルに考えさせてくれる群像劇でもある。

今回の「舞台 PSYCHO-PASS VV」も、そんな「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの世界観を完璧に引き継いでいる。演出を手がけた映画監督・本広克行氏はそもそも、アニメ第1期「PSYCHO-PASS サイコパス」の総監督として名を連ねていた人物。その本広氏とタッグを組み、完全オリジナル脚本を書き下ろした深見真氏も、アニメ第1期からシリーズ作品のシナリオを手がけている人物だ。しかも本作の内容は、原作のどこかのエピソードを切り取って演じられるのではなく、アニメにも他のメディアミックス作品にも登場しない新キャラクターを配した完全オリジナルストーリー。「PSYCHO-PASS サイコパス」を誰よりも深く理解している制作陣の、本作に賭ける本気度が、スタッフィングからもしっかりと伝わってくる。

鈴木拡樹ら舞台を中心に活躍する超人気俳優陣が顔を揃えているため、本作もいわゆる“原作の再現”に重きを置いたスタンダードな2.5次元舞台に思われがちだが、そうではない。「舞台 PSYCHO-PASS VV」が目指すのは、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズに新しい1ページを加えることだ。

それは、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの主題歌を何曲も手がけてきているバンド“凛として時雨”が,今回もテーマソング「laser beamer」を書き下ろし、劇中にもアニメ版の楽曲がフィーチャーされていること。アニメシリーズのキャラクター――シビュラシステムの本質を知るふたりの人物、刑事課一係の監視官・常守朱(つねもりあかね/CV:花澤香菜)と公安局長・禾生壌宗(かせいじょうしゅう/CV:榊原良子)が、(声のみだが)出演していること(劇中で操られるドミネーターの音声も、アニメオリジナルキャストの日髙のり子が担当)など、“これがスピンオフとしての「PSYCHO-PASS サイコパス」の新作である”という宣言が、声高々に伝わってくるような内容だ。

舞台のオープニングで“凛として時雨”のサウンドが、アニメのオープニングさながらのスタイリッシュな映像表現とともに鳴り響くだけでもワクワクし、アニメキャストの声が要所で、しかも物語に楔を打つように効果的にフィーチャーされるたび、“ああ、私はいま「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界を目の当たりにしているのだ!”という感慨と喜びが、本舞台を観てたしかに湧き上がってきた。

秀逸な脚本と実力派俳優の演技がキャラクターとドラマを浮き彫りに(レビュアー阿部)

「舞台 PSYCHO-PASS VV」のストーリーは、公安局刑事課三係に所属する監視官の九泉晴人(鈴木拡樹)が、公安局長・禾生から連続殺人事件の捜査を命じられるところから始まる。その遺体は、18の部位に細かく切断され、一つひとつにナンバリングが打たれており、さらに繁華街の路地裏の4カ所に派手に飾り付けられるという同じ手口で、犯行が繰り返されていたのだ。バラバラ殺人の真相、数カ所に死体がばらまかれた意味、ナンバリングされた理由……ただの猟奇殺人とは片付けられない奇妙な符合に、三係のメンバーは翻弄される。

そして九泉は、同じ三係所属の監視官・嘉納火炉(和田琢磨)や他の執行官たちと捜査を進め、被害者の身元を調べていくうちに「中国語の部屋」と名付けられた、ある装置と事件の関わりにたどり着く。そんな折、街中にまたも“バラバラ死体”がばら撒かれるという新事件が発生。その市民の色相悪化(=サイコパス値の上昇)を狙った「サイコハザード」と言えるテロ事件は、“ヒューマニスト”と名乗る武力闘争組織によるものだった。ヒューマニストは犯行声明を上げ、シビュラシステムの重大な欠陥を批判。さらに大きな事件を予告する。

捜査を進めるうちに、浮かび上がってきたのは、公安局内部に裏切り者がいるのでは? という疑惑だった……。「中国語の部屋」とは何か、ヒューマニストの真の狙いは何か、そして裏切り者は誰なのか。謎が謎を呼び、疑惑が疑惑を深める捜査の行方は、誰も予想しなかった急展開を迎えるのだった――。

この舞台を観て、まず最初に感じたのは、登場キャラクターたちの個性が、上演時間約2時間という短い時間のなかで、一人ひとりの内面にスポットをきちんと当てながら、とてもビビッドに描かれていることだ。

主演の鈴木拡樹は、シビュラシステムを絶対的なものとして行動し、潜在犯でもある三係の執行官たちを完全に信用してはいない。彼らは反発し合いながら捜査を進めるが、監視官となった自らの過程で経験したトラウマとの狭間で苦しんでいる九泉晴人を、クールに、ときに熱く熱演。和田琢磨は、執行官から監視官へと出世したという特異な経歴を持つ嘉納火炉を、九泉と執行官たちが軋轢を起こすなかでも冷静沈着に行動し、執行官達の気持ちを誰よりも理解する心優しき人物として描き出す。

エリート街道を歩んできた九泉と、シビュラシステムによって一度は社会から弾かれたことがある、九泉とは真逆の道のりを経てきた嘉納。鈴木と和田の絡みが醸し出す、今は同じ監視官でありながらも違う人生を歩んできたふたりの微妙な空気感の表現は、ふたりのキャラクター性の違いを際立たせ、物語に深みを与える。

そんなふたりを中心にした刑事課三係のシリアスなストーリーを、舞台の冒頭からコミカルなキャラクター性で彩る執行官役メンバーたちの芝居も絶妙だ。オタクと呼ばれるのを嫌がるクールな漫画オタク・蘭具雪也(多和田任益)が、見た目にこだわる格好つけたがりの井口匡一郎(中村靖日)をうざがれば、内勤を嫌い外回りでカラダを動かしたい相田康生(小澤雄太)や肉体派の大城奏人(池田純矢)が、大ぶりの芝居で場を沸かす。

仲良さそうにワチャワチャとはしゃぎ回る彼らは、まるでコメディアニメのキャラクターのように、単純で分かりやすい人物として登場する。だが監視官のふたりとの触れ合いや、捜査が真実に近づくにつれ、彼らの別の顔、執行官である葛藤、真の内面が詳らかにされていく。そして観客は、潜在犯という名の弱者である彼らの物語が、重厚な人間ドラマであることに、ハッとさせられるのだ。

先に述べた「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界で人物造型のキモとなる「監視官」と「執行官」という、いつ立場が逆転するか分からない関係性の危うさ、そこで生きることの難しさ。スピーディーな展開と、人物像を浮き上がらせるテンポの良い会話劇の巧みな表現は、『踊る大捜査線』を筆頭に数々のドラマや映画、舞台演劇で腕を振るってきた本広克行氏の演出手腕によるものだろう。

演劇と映画の“魅せる”手法を見事に融合した本広克行の演出(レビュアー阿部)

もうひとつ、「舞台 PSYCHO-PASS VV」の見どころであり、際立った点として挙げたいのは、キューブ状に組み上げられた3階建て構造の巨大セット(場面によってセットが稼働して新たなスペースが出現し、様々な劇空間として使用される)と、キューブ壁面を透過スクリーンとして投影するプロジェクションマッピングによる巧みな演出効果だ。舞台では、もはや定番となった感もあるプロジェクションマッピング演出だが、「舞台 PSYCHO-PASS VV」は投影される映像そのものの作り込みがすごい。アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」を彷彿とさせるサイバーなオープニング映像の大迫力はもちろん、場面転換のたびに、芝居の舞台となる場所の空気感を、緻密な照明効果と重みのある映像で表現していた。

さらに驚いた仕掛けは、セット内に複数設置されたカメラによる、リアルタイムの映像投影だ。例えば、ヒューマニストが犯行声明を出す場面などで、役者はセットの片隅でカメラに向かって芝居をするのだが、そのカメラが捉えている役者のアップの画が、まるでテレビの映像のようにそのままセットの壁面に映される。しかも、それをリアルタイムで演じている役者の姿が、透過スクリーンの向こうにちゃんと見えているから面白い。あらかじめ収録された映像投影からは感じ取れない、リアルタイムで事件が進行していく緊迫感と臨場感をキャラクターとともに体感でき、観客をグッと舞台に引き込む見事な演出だった。

舞台初日に先立って行なわれた鈴木拡樹、和田琢磨、本広克行氏による記者会見席上で、本広氏は「舞台 PSYCHO-PASS VV」を「演劇ではあるが、映画を観ているような感じ、映画と思っていたら飛び出てくるような感覚になると思う」と言い、「今まで培ってきた演出のすべてを応用し、まったく新しいものを作ろうと思った」と語っていた。その言葉の意図は、記者会見の段階では漠然としていたが、舞台本編を観て、まさにそうとしか言えない作品になっていることを実感した。

映像作品で“魅せる”エンタテインメント演出にこだわってきた本広氏ならではのアイデアも秀逸だが、通常の演劇以上に動きや芝居の段取りに気を使ったであろう役者陣、そして舞台制作スタッフが、演出家の高い要求に見事に応えていたことにも、大きな拍手を送りたい。このアグレッシブな演出に関しては、写真や言葉で感動を説明しきることは、おそらく不可能。

残念ながら公演チケットは完売しており、千秋楽に予定されているライブビューイングも各館ほぼ完売状態ではあるが、10月にはBlu-rayとDVDの発売も予定されているので、生で体感できなかった人は、ぜひこちらを楽しみに待ってもらいたい。

「舞台 PSYCHO-PASS VV」での九泉と公安局刑事課三係とヒューマニストの対決は、サスペンスミステリーとしての面白さ、アクション演劇としての豪快さ、そしてヒューマンドラマとしての奥深さを凝縮し、アニメ原作付き舞台に新たな可能性を指し示している。幸いなことに、この秋10月からアニメシリーズ第3期となる「PSYCHO-PASS サイコパス 3」の放送もスタートする。「舞台 PSYCHO-PASS VV」がいかに「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの世界観を秀逸に表現し、原作の魅力を注ぎ込んだ素晴らしいスピンオフ作品となっているかを、アニメシリーズを観ることでも感じ取ってもらいたい。そして、「舞台 PSYCHO-PASS VV」に続く舞台シリーズの実現も願わずにはいられない。

同時多発的に起きるアクションに、脳の処理が追い付かない!(レビュアー野本)

スーツ姿の男前×アクション=最高!!!!

以上終了。……で終わらせたいところだが、さすがにそんなわけにもいかない。私からは、改めて「舞台 PSYCHO-PASS VV」のアクションシーンについてレポートしていこう。

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズを象徴するアイテムと言えば、携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーターだろう。監視官と執行官だけが所持できる、特殊拳銃だ。当然、今回の舞台でもドミネーターが使用されるが、アクションシーンはそれだけではない。むしろ拳と蹴りによる肉弾戦、警棒や鉄パイプを使った殺陣が、大きな見どころとなっている。しかも、キャストが入り乱れ、ステージ上で同時多発的にバトルを繰り広げるシーンが多数。ときには約15名ものキャストが同時に暴れ回るシーンもあり、それぞれがしっかり見せ場を作っていた。

ステージの左右で同時に戦いが始まったかと思えば、気づけば高く組み上げられたセットの2階でもバトルが発生。動くセットの上で戦いを繰り広げたり、高低差を生かしたダイナミックなアクションが待ち受けていたりと、かつてないシーンが矢継ぎ早に展開される。あるキャストに目を奪われていたら、視界の端では別のキャストがアクロバティックなアクションを決めていた……なんてことも頻発。「いやちょっと待って、今の何だかっこ良い!!」と興奮がピークに達するものの、脳の処理が追い付かず、オーバーフロー状態に。まばたきもできないとはこのこと。眼球乾きっぱなしの2時間だった。

アクションスタイルから浮かび上がるキャラの個性(レビュアー野本)

本舞台ではアクションのスタイルによって、キャラクター性を表現している点も見逃せない。例えば九泉なら、あくまでもシャープな動きでありながら、敵を荒っぽく蹴り上げたり、乱暴に腰投げをしたりと、どこか粗野な雰囲気が漂う。

一方、嘉納は、ピンチに陥ろうとも戦いぶりにどことなく余裕がある。そして執行官のなかでも犯罪係数の高い相田は、不良っぽさにあふれたアクション。テロ組織「ヒューマニスト」のメンバーと1対1で対峙するシーンでは、警棒で敵を誘い込むようなアクションを見せ、彼の好戦的な性格をうかがわせていた。

ナルシストでファッションにこだわりのある井口は、バトルの最中でも服を気にしている様子。新品のカフスを傷つけられそうになって逆上するのも、コメディリリーフの井口らしい。

クールなオタク系執行官の蘭具は、インドア派でありながら超一級のアクションを見せてくれる。三係で最も背が高く、長い脚による蹴りは華麗のひと言。「知らなかったんですか? 僕けっこう強いんですよ」というセリフに説得力を与えている。

そのなかでも、ひときわ個性を放っていたのが池田純矢扮する大城奏人だ。体を動かすことが大好きな執行官・大城は、現場の捜査に出たくていつもウズウズしている。その姿は、さながら散歩を待ちわびる犬のようだ。

そんな彼だからこそ、ひとたび現場に解き放たれると一瞬で生き生きとした表情に変わる。ガードポジションではフットワーク軽く飛び跳ね、戦いたくて仕方ない様子を演出。ひとたびバトルが始まると、開脚ジャンプで敵を飛び越えたり、セットのバーに捕まって敵の首元に飛びついたり、アクロバティックなアクションを披露する。思わぬ方向から飛んでくる蹴りに「股関節、どれだけ柔らかいんだ!?」と驚かされ、ピンと高く伸びた蹴り足に「体幹、強っ!」と驚嘆させられる。池田の身体能力の高さ(バク転しながらセリフを話す場面には驚き!)や明るくやんちゃな雰囲気と、大城のキャラクター性がぴったりと合致し、これぞまさにハマり役。芝居においても後半に見せ場を作り、大きな印象を残していた。

肉弾戦と殺陣が多いとは言うものの、もちろんドミネーターを構えるシーンも見どころとなっている。今回の舞台で使用されたドミネーターは、IoT製品の企画・開発で知られる「Cerevo」がアニメの設定を忠実に再現した原寸大モデル。モードによって、発光・変形するこだわりの逸品だ。

大ぶりのドミネーターは、さまになるように構えるのが難しそうだが、キャストはそんな苦労を感じさせない。九泉と嘉納が揃ってドミネーターを構えるシーンは、拝みたくなるような神々しさ。執行官によっては、ドミネーターを手にしたまま肉弾戦を繰り広げる場面も見られた。軽々と敵を制圧し、スッとドミネーターを相手に向けるしぐさは原作ファンならずとも痺れるはず。近未来SFではあるが、「これぞ刑事もの!」という醍醐味も味わわせてくれた。

また、今回の舞台では、九泉がドミネーターを背中側のホルダーに格納する場面も描かれた。アニメ本編にはない設定のようだが、これはこれで理にかなったスタイル。こうしたアレンジも、スピンオフならではの面白さと言えるだろう。

アクションを彩るアンサンブルも熱演(レビュアー野本)

ここまで公安局刑事課三係について触れてきたが、テロ集団「ヒューマニスト」のアクションも見ごたえ十分。味方に対しても粗暴な振る舞いを見せる高橋光臣演じるリーダーの三島慎吾、無感情な動きが恐怖を誘う町井祥真演じる後藤田希世と、三係の面々とは違うアクションを見せてくれる。

また、12名にのぼるアンサンブルのアクションも素晴らしい。ステージ上のあちこちでバトルが始まると散漫になりそうなところだが、メリハリの効いた動きでバトルを引き締めてくれる。キャストの動きを読んで攻撃を仕掛ける間合い、反撃を受けたときのリアクションも申し分ない。ダイナミックに技を受けるシーンではバトルの迫力が一気に増し、彼らなくして今回の舞台は成立し得ないと痛感させられた。

……と、ここまでレポートしてきたが、やはり強調したいのは男前のスーツ×アクションの素晴らしさ。細身のスーツに身を包んだキャストはそれだけでも尊いが、ジャケットの裾をはためかせて戦う姿はさらに魅力が倍増。過剰な装飾がないタイトなシルエットだからこそ、アクションのごまかしがきかず、キャストのパフォーマンス力も問われる。

舞台稽古も見せてもらったが、本番までの数週間のうちにアクションの切れ味、密度がさらに高まっていて感激することしきり。キャストとアンサンブル、そして殺陣・アクション監督の奥住英明氏(T.P.O. office)の凄みを感じた2時間だった。

特に鈴木拡樹扮する九泉は、腕を振りかぶって放つパンチ、荒々しさが際立つ蹴り技、攻撃を受けて跳ね飛ばされるリアクションすべてが惚れ惚れするようなしなやかさ。アクションそのものは粗野な印象だが、頭からつま先まで神経が行き届いている。他のキャストも舞台経験豊富な方々がそろっているだけあって、立ち姿からして美しい。舞台を一度見ただけでは細かいシーンを拾い切れなかったため、一人ひとりのアクションをつぶさに追うためにも、ぜひBlu-ray&DVDでも見返したい!

「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」

【公演日程】

<大阪>
2019年5月3日(金・祝)~5月6日(月・祝)
森ノ宮ピロティホール

※5月6日(月・祝)、全国の映画館62カ所にて大千秋楽公演のライブビューイングが決定

【キャスト】
鈴木拡樹・和田琢磨 中村靖日 多和田任益 小澤雄太 町井祥真・池田純矢 高橋光臣 山崎銀之丞

【ボイスキャスト】
常守朱(CV花澤香菜) 禾生壌宗(CV榊原良子) ドミネーター(CV日髙のり子) 

【スタッフ】
原作:サイコパス製作委員会
演出:本広克行
脚本:深見真
音楽:菅野祐悟
ストーリー監修:Production I.G
制作:ソニー・ミュージックエンタテインメント、ポリゴンマジック
主催:舞台「サイコパス」製作委員会

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【主題歌】
凛として時雨「laser beamer」好評配信中(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)



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「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」公式サイトはこちら

©サイコパス製作委員会 ©舞台「サイコパス」製作委員会

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