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連載Cocotame Series

AR/VR版『DAVID BOWIE is』

いよいよ発売! 大回顧展「DAVID BOWIE is」スマホ向けARアプリの見どころとは

2019.01.08

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2019年1月8日、世界で大成功を収めたデヴィッド・ボウイの大回顧展「DAVID BOWIE is」のデジタルコンテンツとして、スマートフォン向けAR(拡張現実)アプリがいよいよ発売。

特集第7回は、回顧展を日本に招致した立役者でもあり、同アプリの発起人でもあるソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SMEJ) の小沢暁子に、リリース直前インタビューを試みた!

  • 小沢暁子

    Ozawa Akiko

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

ナレーションはアカデミー主演男優賞をとったあの人!

――大回顧展のスマホ向けARアプリ「DAVID BOWIE is」が、いよいよ発売になりました。リリースに至るまで大変な道のりだったと思いますが。

小沢:そうですね。このアプリには、デヴィッド・ボウイ(以下、ボウイ)の衣装や直筆の歌詞、絵コンテ、レコード、映像といったコレクションを、400点以上も詰め込むという、前代未聞の企画となりました。ボウイの財団(デヴィッド・ボウイ・アーカイヴ)による全面的な協力がありつつ、ギリギリまで許諾確認をやっていましたが、処理がどうしても間に合わなかったものがあったり、同時に直前までアプリ自体のシステムの調整や動作確認も必要で。コンテンツは、アプリリリース後もアップデートされていくと思います。

――リリース直前に大きなニュースが飛び込んできましたね!

小沢:そうなんです。1月3日にナレーションについて大きな発表をしましたが、アプリの各セクションを包括する解説のナレーションを俳優のゲイリー・オールドマンにお願いすることができました。「ザ・ネクスト・デイ」のミュージックビデオに出演されていますが、ボウイとはお仕事での関係以前にずっと仲良しだったようで、ビデオへの出演依頼も、ボウイから直接電話があって「ビデオ出てくれないかな。スケジュール空いてる?」なんて、気軽な感じだったようです。今回のアプリのナレーションを誰にお願いするか悩んでいたときに、財団のほうから「ゲイリー・オールドマンは日にちさえ合えばやってくれるかも」と提案があって。ダメ元でお願いしてみたら、本当に実現してしまって。読んでいただいた原稿は20ページにわたる結構な量でしたが、4~5時間かけて全部読んでくださったんです。

「ザ・ネクスト・デイ」ミュージックビデオ撮影時のボウイとゲイリー・オールドマン

「ザ・ネクスト・デイ」ミュージックビデオ撮影時のボウイとゲイリー・オールドマン
Photograph by Floria Sigismondi

――『ヒーザン』のプロモーション(参考記事:デヴィッド・ボウイの大回顧展「DAVID BOWIE is」日本展の立役者、ソニー・ミュージックエンタテインメントの小沢暁子さんにインタビュー)も、このアプリを開発するきっかけ(参考記事:大回顧展「DAVID BOWIE is」デジタルコンテンツ発売! 立役者に聞くデジタルアーカイブ化の背景【特集第1回】)もそうですが、言うだけタダの精神で「言ってみたら、実現した」みたいな奇跡がここでも。

小沢:本当に。やはり、今回のデジタルコンテンツ化のプロジェクトは、アプリを開発することで、きちんと残して、長く継承されてほしいという気持ちで進めているのですが、関わるみなさんにも「ボウイのレガシーの一部に携わっている」という同じ意識があるのだと思うんです。ゲイリー・オールドマンは2018年にチャーチル(『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)でアカデミー賞の主演男優賞を受賞していますが、そのような方が朝11時にスタジオに入って、丸々1日、一生懸命原稿を読んでくださいました。今回読んでいただいたテキストの出だしがすべて同じ「DAVID BOWIE is」だったのですが、その読み方ひとつをとっても、何度も読み直してくださって。アプリのナレーションであろうと、とても誠実に向き合ってくださった。これだけのスーパースターですら、「ボウイのレガシー・功績に貢献したい」という同じ意志があるんですね。とても感動しました。

Photograph by Hideo Oida

Photograph by Hideo Oida

ゲイリー・オールドマンがスマホ向けARアプリのナレーションを担当するというニュースを発表した直後、ボウイのオフィシャルサイト等にファンからの歓迎の言葉が溢れたので安心しました。ものすごい反響で。「最高の人選!」、「ゲイリーが友達として引き受けてるのがたまらない!」、「ボウイだけでも最高なのにゲイリーまで!なんてこった」とか(笑)。ボウイの奥様イマンも彼女のInstagram(新しいタブで開く)で投稿してくださって嬉しかったです。

イギリスのそうそうたるメディアが大集合!

――ボウイがつなぐ人の縁って、本当にすばらしいですね。

小沢:それは、宣伝でも同じことが起きていて。リリースに向けて宣伝周りを進めていったんですが、アメリカとイギリスは、それぞれボウイご本人のPRをやっている宣伝チームにお願いできることになりました。イギリスは、アラン・エドワーズ(参考記事:Alan Edwards interview: Publicist who worked with David Bowie on the often maligned world of pop PR(新しいタブで開く))というもはや伝説の方で。それこそ、大回顧展「DAVID BOWIE is」を日本に招聘したいと思ったときに、いろいろ人づてにたどって、アラン・エドワーズさんから、大回顧展のキューレーターであるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(以下、V&A)のご担当を紹介していただいたんです。そのときはメールのやりとりだけで、実際にお会いする機会はなくて。アランさんは長年、ボウイのパブリシストを務めていらっしゃいますが、それこそイギリスの業界で彼を知らない人はいない。ボウイ以外の彼のクライアントはザ・ローリング・ストーンズやザ・フ-、ピンク・フロイドなど、これまたすごくて。今回、潤沢な宣伝予算があるわけでもないこのアプリの宣伝を、まさかアランさんに引き受けていただけるとは夢にも思わなかったです(笑)。

――具体的には、どのような宣伝を?

小沢:11月の終わりにリリースされたライブ映像作品『グラストンベリー 2000』(ワーナーミュージック・ジャパン)の宣伝も当然アランさんのチームがやっているんですけど、リリースタイミングで「ロンドンでソーホーの映画館を貸し切ってプレミア・イベントをやるから、そこで君のアプリのデモンストレーションもやろう!」とご提案くださって(笑)。ボウイサイドにもワーナーサイドにも事前に根回しして許可をとってくださったから、私はデバイスを持ってロンドンに飛んで行くだけですんだんです。アプリのデモ用に別室を用意してくれて、実演と宣伝をさせてもらったのですが、「GQ」「NME」「MOJO」「The Times」…とそうそうたるメディアの方々に体験してもらい、好評をいただきました。アメリカの宣伝チームも、ボウイ本人のPRはもちろん、ほかにもレディオヘッドやU2などいろいろやっているチームなのですが、「ボウイのためなら」って。手探りで進めてきたアプリ開発ですが、まさに奇跡の連続で、ここまできても、いまだにびっくりすることばかりなんです。

展示数を優に超えた400アイテムは、まさに愛の結晶!

――これから、アプリが利用者のもとに広がっていきますが、見どころはどこでしょう。

小沢:いくらでもあげられるんですが……まず、実際の大回顧展と大きく違うところは、列に並ばなくとも、チケットをとらずとも、アプリを立ち上げただけで気軽に観られ、しかもガラス越しに作品を鑑賞するのではなく、「近づいて観られる」んですね。これは、展覧会のアプリとして初めてみたいですね。

――山本寛斎さんの衣装も、ボウイの歌詞のメモも拡大して観られるという。

小沢:衣装の汚れまでわかってしまうほどで(笑)。自分のペースで、作品やテキストをゆっくり鑑賞できるのは大きなポイントですよね。また、展示されているコンテンツがヒット曲と紐づいていているので、ベスト盤のようなイメージでも楽しめるんです。大回顧展自体が音楽と密接だったんですが、そこは、このアプリ化にあたっても大きなメリットになっています。あとはARアプリを楽しむ際にはヘッドホンが必須です。それによってARの魅力も、作品も魅力も、さらに生き生きしてきます!

――大回顧展では300点ほどの展示でしたが、このアプリでは400点以上が収録されているということで、未公開部分含め、完全版として観られるのはうれしいですよね。

小沢:そうなんです。日本の大回顧展では展示されず、NYのブルックリン美術館のみで展示された『★(ブラックスター)』のセクションも追加収録していますが、そこは、本当に、何度観ても感動してしまいます。ボウイ自身、自分の残り時間を意識していたと思うのですが、その段階でもなおミュージックビデオのコンセプトを自分で考えて自ら絵コンテを描いていた。亡くなる2カ月前の絵コンテなのですがいつもの通り緻密に手描きをして、きれいに色がつけられていて、「I’m not a black star. no star, pop star,white star, gang star」と、歌詞のメモ書きがある。

ミュージックビデオには、包帯を頭にグルグル巻いたボウイが出てきますが、目の部分に「ボタンアイ」が付いていて、それも絵コンテに残っています。絵コンテを描いて、ビデオを撮って、そのあとボウイは亡くなった。キャリアの最初から、一貫してブレることなく、最期の最後まで自分で作りたいものが見えていて、最期の最後まで手を抜かなかった。そういうボウイの姿が見えてきます。

――ARならではの魅力ある見せ方にも、チャレンジしていますね。

小沢:ARアプリは「スマホの画面のなか」という制約があるなかで拡張現実としてどう組み立てていくのか、展示を新たにデザインしていくところからチャレンジが必要です。現段階でARでできる最もおもしろい表現がいくつも入っていると思います。展示物の見せ方ひとつをとっても、単純に3Dスキャンしたものを並べているのではなく、舞台のような照明デザインで、スポットライトをあててみたり。どうしたらAR表現のなかで展示コンテンツがより映えるかが考え込まれています。実際の大回顧展では、ディヴィー・ジョーンズがデヴィッド・ボウイになるまでに、さまざまな模索をして、その後アーティストとしてできあがっていくにつれて、展示セクションの部屋の照明がも明るくなったり、ベルリンセクションではまたダークな雰囲気に戻ったりというようにデザインされていましたが、V&Aがキュレーションした展覧会のそういったコンセプトはアプリ化においても引き継がれていますので、演出も含め楽しんでもらえるとうれしいです。

――細部までこだわりが宿っている上に、デジタルコンテンツ化という、新しい試みにチャレンジしているという。

小沢:ボウイ自身もARやVRに対しても興味もっていたはずです。今回、実際に作っていきながら感じたのは、ボウイの残したコンテンツはどれも、つくづく、「AR映えする」ということなんです。技術がいくら進歩しても、それに負けないだけのコンテンツとしての強さがある。だから、本当にいろんな方々が協力してくださり、関わる各方面のみなさんがやりがいを感じてくださって、「まさか、ここまで到達できるか」というところまで来ている気がします。

――ボウイが亡くなった今でも、ボウイを介して強靭なチームができるという。

小沢:夢のような話ですよね。アカデミー主演男優賞(2018年)を獲ったゲイリー・オールドマンがナレーションに決まったときには、さすがに笑ってしまいましたが(笑)。

――それだけ惹きつけるボウイの魅力と、プロジェクトということですね……。

小沢:今、ARを作っている方であれば、このアプリの内容を見たらその異常さはわかると思います。「これ、どうやったの?」「400アイテム、全部スキャンして入れてるの!?」「全部許諾をとったの?」というような反応が聞こえてくると思うんです。

――まず、アイテム数だけでも圧倒されますね。

小沢:全部ちゃんと観ようとすると、「覚悟してくださいね!」と(笑)。実際、大回顧展で公開していなかったものも含め、ちょっとクレイジーだと思われるほど詰め込んでいることも事実なんですね。そこは、ボウイの財団とも、何度も何度も話をしましたが、ボウイの作品を「残したい」「観てもらいたい」「次の世代に伝えたい」というポイントがいちばん大きいので、「入れられるだけ、観せられるだけ、すべて観せましょう!」と進めてきたんです。好きなときに気軽に手にとってもらって、あるときは発想のヒントに、あるときは苦しい現実の逃避行にもなって、いろんな意味で刺激をくれるアプリにしたいって。課外授業で大回顧展に来ていた、ボウイを知らない子どもたちもみんな喜んでいましたが、ボウイが残したものって、どんな人にも楽しんでもらえると思うんです。だから、ボウイの作品のなかでも、これほど安いものってないというほどの低価格の設定で、惜しげもなく、これだけのものを詰め込んだんです。一生もののアプリだと思います。

――単純に、アプリっていう言葉だけでは表せない、言葉の意味を超えたものになっている気がしますね。

小沢:そうなんです。とんでもないものができちゃった感じがしています。アプリの常識に対しても一石を投じているというか、挑戦している。これでもかっていうほど濃密で、アプリの概念を変えるようなものになったらうれしいなと思います。今我々にできる最大限のことは、ここに詰め込んだつもりです。あとはやっぱり、ボウイの近くでリアルに生きた方たちが、愛情いっぱいに協力してくださったことに感動しましたね。写真家の鋤田正義さんにしてもオノ・ヨーコさんにしても、ボウイに近い方であればあるほど無償で展示品を貸し出してくださったり。すごいアーティストの方々や関係各所の方々が、ボウイの功績を後世に残すという意義を感じてくださって、惜しげもなく協力してくださった。そういう敬意と愛情の結晶のアプリになったと思います。あとはもう、「みなさんの心に届きますように」とそれだけを願っています!

David Bowie 1973 Photograph by Masayoshi Sukita

『David Bowie is』アプリのダウンロードはこちら(新しいタブで開く)(iOS)
『David Bowie is』アプリのダウンロードはこちら(新しいタブで開く)(Android)

スマホ向けARアプリ「David Bowie is」のティザー映像公開!

スマホ向けARアプリ「David Bowie is」アプリ公式サイト(新しいタブで開く)にて、ティザー映像が公開。

(以下、テキスト訳)

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カルチャー史上最も影響力のあるアーティスト、デヴィッド・ボウイの生涯と作品を展示し、世界で記録的成功を収めた大回顧展「DAVID BOWIE is」がデジタル化され、永遠不滅の作品として甦る。

ボウイ72回目の誕生日であった日に、「David Bowie is」のスマホ向けAR(拡張現実)アプリ(iOS・Android対応)が発売されることが決定した。

高解像度で記録された400点以上の作品(ボウイの衣装、スケッチ、メモ、手書きの歌詞、ミュージックビデオ、絵画)などが、はっとするような臨場感あふれるAR(拡張現実)の環境で体験可能になったのだ。巡回展では展示されなかった数十点以上の作品もアプリのために追加されている。

「David Bowie is」スマホ向けARアプリでは、ショーケースのガラスや他の観客を気にすることなく、より身近な環境で展覧会の一部始終を鑑賞することができる。自分の自由なペースに合わせて鑑賞し、お気に入りの作品に直接飛ぶこともできるのだ。アプリ内のお気に入り作品をコレクションして保存することも可能だ。そう、このアイコニックな展覧会は永久にあなたのものとなるのだ。
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