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連載Cocotame Series

FateがLAで熱狂!

主催者が語るLAで『Fate』のイベントを開催する意味

2019.06.25

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特集第5回と6回では、イベント開催の裏側に迫る。今回第5回は、『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]』(以下、『Heaven’s Feel』)』の第2章『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel]II.lost butterfly』(以下、『第2章』)北米プレミア上映、『Fate/Grand Order(以下、『FGO』)』初のアメリカ単独イベント『FGO U.S.A Tour 2019 in Los Angeles』を担当したAniplex of America(アニプレックス・オブ・アメリカ)で、マーケティング・マネージャーを務める木村嵩にインタビューを行い、準備から本番、そして今後の展望について話を聞いた。

Aniplex of America(以下:AOA)はカリフォルニア州のサンタモニカにオフィスを構えるアニプレックスの米国法人子会社。2005年に設立されて以来、北南米および英語圏で、多岐に渡るアニメーションビジネスを展開している。

『Heaven’s Feel 第2章』北米プレミア上映、大成功の要因

開催は作品の完成と日本公開を睨みつつ決定

──『第2章』の北米プレミア上映を今回のタイミングで開催した理由を教えてください。

木村:第2章は日本では1月に劇場公開されました。当たり前ではありますが、米国で公開するにあたり、翻訳作業や日本の劇場版マスターに英語字幕をつける作業があります。それに鑑みて、北米プレミア上映は2月中かなという話を、日本の『Heaven’s Feel』チームと話をしていましたところ、タイミング良く『FGO U.S.A Tour 2019 in Los Angeles』の日程が2月末に決まりました。2大Fate関連イベントという相乗効果と集客を狙って劇場版プレミアも同じ日に設定しました。アニメが好きなファンにはゲームも知って欲しい、そしてゲームからFateの世界に入ったファンにはアニメも楽しんで欲しい、という願いを込めました。

──『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 I. presage flower(以下、『第1章』)』の北米プレミア上映が2017年11月に行なわれましたが、『第2章』の北米プレミア上映の実施もその後すぐ決まったのでしょうか?

木村:はい。第1章の北米プレミアが大成功のうちに終わりましたので、第2章もいける、という確かな感触がありました。ただ時期的にはぎりぎりまで決まりませんでしたね。前述のようにタイミングがうまく重なり、結果的には第1章より更に大きな手ごたえがありました。

──前回の『第1章』北米プレミア上映は初めての開催でした。実施に踏み切った理由はなんでしたか?

木村:TVアニメ『Fate/Zero』や『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』は北米でもファンの熱い支持を得ており、『Fate』シリーズはAOAの柱となる作品群の1つと言えます。加えて、『Heaven’s Feel』の映画化が日本で発表されてから、北米のファンからも劇場公開をしてくれという要望がひっきりなしに来ていました。ですので、北米プレミア上映は自然な流れで実現したように思います。

──北米でプレミア上映を実施する意義とは?

木村:日本と違って、北米では日本のアニメを観ている人口の絶対数が多くありません。例えば、日本では年末の紅白歌合戦でアニソン歌手が出演するほど人気が高まり、ひと昔前と比べ一般認知度も上がってきているのは皆さんもご存知かと思います。でもアメリカのスーパーボウル(※)中継番組で日本の深夜アニメのCMが流れることはありません。つまり北米ではいくらアニメの人気が高くなっても限られたファン層に留まり、一般に浸透する事はなかったのです。そんな中、『Fate』ファンは、その限られたアニメファンの中でも特に熱狂的な人達です。今まで応援してくれた皆さんにプレミア上映をすることで感謝したかった。それにキャパシティが大きい会場でも、満員になる自信がありました。お陰様で前回も今回もチケットは即完売でした。そしてプレミア上映に満足してくださったコアな『Fate』ファンが、SNSで情報を拡散してくれ、更に『Fate』ファンが増えたと思います。
※ 毎年2月上旬に開催されるNFL(アメリカンフットボールリーグ)の優勝決定戦でアメリカ最大のスポーツイベント。アメリカでは毎年テレビ番組で年間最高視聴率を記録している。

──『第2章』の『Heaven’s Feel』北米プレミア上映で苦労したことは

木村:まずは会場探しですね。『FGO U.S.A Tour 2019 in Los Angeles』の日程と会場が先に決まったので、それに合わせて近い場所を会場にする必要がありました。アニメ映画を上映できる場所はさらに限られていますし、場所探しには苦労しました。その中で「Regal Cinemas L.A. LIVE 14」を押さえることが出来たのは幸運でした。そして次にオペレーションです。AOAの社員が待機列を整理したり、劇場の技術者と直接交渉したりと、殆どの作業を自分達で行ないました。

──『Heaven’s Feel 第2章』の北米プレミア上映を無事終えて感想は?

木村:『第1章』は北米でも『Fate』のコアファンが満足してくださいました。そして『第2章』では、映像クオリティや原作シナリオの再現性の高さから、その期待値をさらに超える内容だったとの声を多くの来場者からいただいており、大変嬉しかったです。

「いつか『Heaven’s Feel』」でレッドカーペットを歩きたい」と語る下屋則子さん

──舞台挨拶で間桐桜役の下屋則子さんが「いつか『Heaven’s Feel』」で(アカデミー賞の)レッドカーペットを歩きたい」と話していましたが?

木村:まずはアメリカでの日本アニメの立ち位置を、さらに上げていかなければいけませんね。ただ、徐々にアメリカでも日本アニメの認知度が上がってきているなと感じています。ストリートファッションのブランドが日本アニメとコラボしていたり、NFLの選手がタッチダウンの際に日本アニメのキャラクターのポーズをしたりしているのがこちらでも話題となっていました。AOAとしても下屋さんの夢が叶えられるように頑張りたいです。

──『第1章』、『第2章』ともに北米プレミア上映は大成功しました。最終章『第3章』での北米プレミア上映は?

木村:ここまできたら、やるしかないですよね。北米の『Fate』ファンのためにもやらなければいけないですし、やりたいです。

──最終章『第3章』の北米プレミア上映を実施するとしたらどういうものにしたいですか?

木村:『第1章』、『第2章』ともにチケットは即売でした。ですので、次はもう少し大きな会場でやりたいですね。シリーズ作品にしてはかなり特殊だと思うのですが、日本では『第2章』の方が『第1章』より興行収入が上なんです。『FGO』をきっかけにして『Heaven’s Feel』に興味を持ってくれた方もたくさんいると思いますし、アメリカでも同じような流れを作っていきたいと思います。

『FGO U.S.A Tour 2019 in Los Angeles』で感じた熱量

悲願の開催! 日本・中国で開催された『FGO』単独リアルイベントをアメリカでも

──これまでアメリカではアニメイベント内で『FGO』イベントを行ってきたが、今回初の単独リアルイベントを開催した背景とは?

木村:英語版『FGO』の第1部が2018年末に完結しました。『FGO』第1部のラストは、ユーザー同士がオンラインで協力し合い、共通の敵を倒して人類を救っていくのですが、“今まで遊んでくれてありがとう”“人類を救ってくれてありがとう”という感謝の気持ちと、“これからもよろしくお願いします”という思いを込めて今回イベントを行なうことを決めました。日本や中国では既に『FGO』単独のリアルイベントが行われていますが、アメリカで同様のイベントを行なうことはAOAの悲願でもありました。非常にチャレンジングなのは理解していましたが、英語版『FGO』をプレイしているアメリカのファンに感謝の気持ちを還元したいと思い、実施を決めました。

──2017年6月に『FGO』英語版は配信開始されました。今回の単独イベントを開催するまでにユーザーの熱量の変化は感じていましたか?

木村:配信開始後に北米全土の様々なアニメコンベンションにAOAとして出展をし、その中で『FGO』コーナーを作ってプロモーションを行なっていました。塩川さん(塩川洋介さん。ディライトワークス社、FGO PROJECTクリエイティブプロデューサー)も「Anime Expo2018」で登壇された際に仰っていましたが、『FGO』のキャラクターのコスプレをするファンが目に見えて増えていったと思います。文化的にアメリカのアニメファンはコスプレをより気軽にしてくれると感じていますけど、それでもコスプレしてくれるほど『FGO』を深く愛してくれる方がこれだけいるのは嬉しいです。

──初の開催ということで、事前の準備で大変だったことはありますか?

木村:色々ありますが、日本とアメリカだと地理的要因が大きく違います。日本だと人口が偏っているので、アニメやゲームのイベントは東京とその周辺都市に集約されています。その他でもプラスで大都市2、3ヵ所くらいです。アメリカは50州あって、国土面積が日本の約25倍、さらに人口も分散しています。開催場所をロサンゼルスに決めたのは、FGOのファンが多いことはもちろんですが、日本アニメ自体のファンも比較的多いからです。それでも全米中にいる『FGO』のファンが、カリフォルニア州のロサンゼルスにちゃんと集まってくれるのか、不安はありました。

──日本の『FGO』チームとも協力してプロジェクトを進めたそうですね。

木村:日本には『FGO』の日本語版を見ているチームと、『FGO』英語版を日本からサポートしているチームがあります。彼らは日本の『FGO』ファンの間で、どういう施策が人気を得ているのかを教えてくれるので、それに対してアメリカでのトレンドやAOAとしてやりたいことを交えてディスカッションをしていきました。そして、ソニーミュージックグループでイベントでの制作・施工を専門に行っているソニー・ミュージックソリューションズ(SMS)にもチームに入ってもらい、プロジェクトを進めていきました。

イベントコンセプトはアメリカのロードトリップ感!

──今回の『FGO U.S.A Tour 2019』はアメリカを意識したコンセプトになっている?

木村:今回のイベントのコンセプトとして、ディスカッションを重ねる中でアメリカのロードトリップ感を出したいとAOAから提案させていただきました。

──キービジュアルを描いたのはイラストレーターのNamieさんですね。

木村:元々『FGO』内の概念礼装を描いてくれているオーストラリア出身のイラストレーターで、昨年アメリカのアニメイベントでたまたまお話する機会があったのですが、とても可愛らしいイラストを描く方だな、と印象に残っていました。今回の『FGO U.S.A Tour 2019』はアメリカのイベントなので同じ英語圏出身というところにも縁を感じて、キービジュアルをNamieさんに依頼しました。

坂田金時のバイクは他にはないアメリカならではの展示物だった!

──日本の『FGO』イベントで今までになかった展示物もあったという。

木村:今回は今まで日本や他国で実施された『FGO』イベントではなかった世界初の展示や体験を行いたいという想いが強くありましたし、アメリカならではの展示物を作りたいと考えていました。坂田金時(ライダー)のバイクは実現した展示の1つです。監修の過程で日本のチームにもかなり協力してもらいました。

──イベント開催において大変だったことは

木村:日本のやり方をそのまま持っていって通用しない部分がありますので、運営面はかなり大変でした。具体的には、物販コーナーでの整列や商品の受け渡しなどです。1日目はかなり人の滞留が出来てしまいましたが、SMSが調整してくれたおかげで、2日目には完璧に改善されていました。残り4つのツアーイベントでもSMSとは引続き一緒にタッグを組んでいるので、LAのイベントはかなり貴重なノウハウになりました。非常に頼りになるパートナーだと感じています。

人気があったのはVR体験やゲーム試遊コーナーなど参加型アトラクション

──今回は単独イベントということでしたが、今までのアニメイベント出展した際のお客さんとの違いはありましたか?

木村:そうですね。今回は『FGO』のいちばん濃いファンの方が参加してくれると予想していたので、展示物にしてもステージの内容にしても、作品を深く知っている人向けという前提で作り上げていきました。この後のツアーはアニメイベントに出展させていただく形なので、作品をあまり詳しくない人でも楽しめるような要素も取り入れていきたいと思います。

──イベントを通じて手応えを感じたところは

木村:文化的な部分もあるのでしょうが、参加型アトラクションは人気がありました。ボードゲームの『Fate/Grand Order Duel -collection figure-』(Duel)コーナーが大盛況で、日本からイベントの視察に来ていた『FGO』チームにも印象的だったようです。

その他にも、SMSが開発したMITENE(ミテネ)と言う、デジタルサイネージ機能にARを組み込んだ技術を駆使して、合成した光るエクスカリバーを持てるフォトスポットも大人気でした。VR(「Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト」)体験コーナーも人気でしたね。基本的には日本もアメリカも『FGO』ファンは、好きな部分に関して共有の価値観を持っているのですが、アメリカだと届け方をよりインタラクティブにした方がいいと感じたので、今後のツアーイベントの参考にしていきたいと思っています。

──ツアーとして4つのアニメイベントで出展しますが、その内容は?

木村:今回の単独イベントでも展示物はかなり楽しんでもらえたと手応えがありましたので、そこはあまり大きく変えません。ただ、ステージイベントの内容はイベント毎の参加者の地域性に合わせて変えたり、コール&レスポンスの数を調整したりしていこうかなと思っています。あと、やはりアニメイベントの場合は、コアな『FGO』ファン以外の、一般のアニメファンも数多く参加します。一般のアニメファンにも『FGO』に興味を持ってもらうきっかけを作っていきたいです。アメリカの場合、人だかりが出来ていると「これなんだ?」、「気になる?」と興味を持ってくれます。DuelやVRのようなインタラクティブな『FGO』周辺プロジェクトを体験してもらい、それをきっかけに『FGO』ゲーム本体も遊んでもらえるような仕掛けを作っていきたいと思っています。

──最後に今後の抱負を

木村:ツアーとして回っていき、最後終着点になるのが11月15-17日に東海岸のニューヨークで開催される「Anime NYC 2019」です。ほぼ1年かけてアメリカ全土を回る大きなイベントですので、1人でも多くの人に満足してもらえるように高いクオリティでやっていきたいと思います。今回は日本の『FGO』チーム、SMSの協力があり無事に成功することが出来ました。ソニーミュージックグループは各セクションでスペシャルなチームを揃えています。時差や言語そして文化の違いがあるアメリカでも、グループ内の知識やノウハウを共有して協力すれば、十分戦っていけるんだと証明出来ました。今回のツアーの残りはもちろんのこと、今後色んな国で一緒に打って出ていけたらなと思います。

『劇場版 Fate HF2章』プレミア上映会と『FGO U.S.A Tour 2019 in Los Angeles』を動画でレポート!

『FGO U.S.A Tour 2019』の旅路はまだまだ続く

『FGO U.S.A Tour 2019』として、アメリカで行なわれるアニメイベント内で開催される予定。
北米でも勢いを増す『Fate』の今後の展開からますます目が離せない。

今後のスケジュール

7月4日-7月7日:Anime Expo(カリフォルニア州ロサンゼルス)
10月31日-11月3日:Anime Weekend Atlanta(ジョージア州アトランタ)
11月15日-11月17日:Anime NYC(ニューヨーク州ニューヨーク)

「Fate/Grand Order U.S.A. Tour 2019」オフィシャルサイト(新しいタブで開く)

©TYPE-MOON / FGO PROJECT ©TYPE-MOON / FGO7 ANIME PROJECT

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