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体感する朗読劇「READING HIGH」はこう作る――作・演出家 藤沢文翁×音楽監督 村中俊之対談(前編)【特集第3回】

2018.6.11

Interview

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READING HIGH

Live/Event

心に残るストーリーと生演奏の音楽、そして様々な特殊効果を駆使した舞台演出――ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が、演劇人・藤沢文翁と立ち上げた音楽朗読劇の新ブランド「READING HIGH」。その第2弾公演『HYPNAGOGIA〜ヒプナゴギア〜』が、2018年7月7~8日、東京・Billboard Live 東京にて幕を開ける――。

本特集では、体感する朗読劇とも言われる「READING HIGH」の魅力を全6回に渡ってお伝えしていく。特集第3回は、「READING HIGH」の中枢を担う作・演出家の藤沢文翁さんと、藤沢朗読劇の音楽監督として長年タッグを組む作曲家/チェリストの村中俊之さんに、「READING HIGH」を一心同体で形作る劇作×音楽の制作について語ってもらった。

READING HIGH『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』原作・脚本・演出 藤沢文翁さん

READING HIGH『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』原作・脚本・演出 藤沢文翁さん

READING HIGH『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』音楽監督・チェリスト 村中俊之さん

READING HIGH『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』音楽監督・チェリスト 村中俊之さん

演奏者も感情を揺さぶられる藤沢朗読劇の魅力とは?

――「READING HIGH」が立ち上がる前から、おふたりは藤沢朗読劇で何度もコラボレーションされていますね。

藤沢:村中さんとご一緒したのは、2012年。東宝さん主催の「SOUND THEATRE」シリーズの『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト ニコロ・パガニーニ~』という作品で、音楽と演奏を担当してもらったのが最初です。泣かせどころの曲を、村中さんに作曲してもらいました。そこから少し間が空いたんですが、「READING HIGH」の『Homunculus~ホムンクルス~』を筆頭に、去年から怒涛の勢いでご一緒させてもらっています。

村中:そうですね、特に『Homunculus~ホムンクルス~』の前後は、何作も連続で。

藤沢:僕は音楽が専門ではないので、言わんとすることを音楽的用語に落とし込んでほかのミュージシャンの方に伝えてくれ、作曲もオーケストレーションもできて、しかも演奏も素晴らしい方といえば、村中さん。村中さんがいると、なんて楽なんだろうと感じています(笑)。

――村中さんはクラシックからロック、J-POP、映画・ドラマの音楽まで幅広く活躍されています。演劇に曲をつけた経験もあると伺っていますが?

村中:そうですね。生の芝居に音楽をつけ、即興で弾くようなことは何度かやったことがありますが、藤沢朗読劇のよに、しっかりと曲を作り込んで演奏したのは、初めての経験でした。演奏中はかなり集中し、緊張もしているので芝居に入り込むことは滅多にないんですが、2012年の舞台では初めて舞台上で泣きながら演奏したんです。すごい体験をした、こんなことがあるんだな! というのが藤沢朗読劇の印象ですね。

藤沢:『Homunculus~ホムンクルス~』でも泣いてくれていましたよね。

村中:そうなんですよ、じつは。

村中俊之

藤沢:舞台上では、村中さんに弾き振りをしていただくので、インカムをつけた状態でミュージシャンの方たちに指示を出してもらうんです。そうしたら、鼻水でぐじゅぐじゅいってて、他のミュージシャンからうるさいという苦情が(笑)。

村中:いや、僕だけじゃなかったですよ、泣いてたの。

藤沢:すごいことだなと、僕は感心しましたけどね。セリフを追いながら、それに合わせて演奏して、あるところが来たら、違う曲に切り替えてと、奏者としてやることがたくさんあるのに、その上、セリフに感情移入して涙まで流してくれるとは。作り手としては、嬉しい限りです。

村中:いやいや(苦笑)。

藤沢:僕の村中さんの第一印象は、“非常に肝の据わった人”でした。『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト ニコロ・パガニーニ~』で村中さんに、チェロの超絶技巧曲「妖精の踊り」(ポッパー作曲)を演奏していただいたんですが、これはチェリストなら誰もが知る難曲。それを弾き終わった時、照明がまだ当たっているというのに、彼はガッツポーズをしたんですよ(笑)。

村中:弾き切れたことが、心から嬉しかったんですね。

村中俊之

藤沢:それと村中さんは、作曲家としてもとても頼りになる。美しい曲を作る方はたくさんいらっしゃいますが、“芝居にぴったり合う曲”を作れる人は、じつは少ないんです。脚本をきちんと読み込んで、物語にあった曲を作ってきてくれるので、村中さんの音楽はストーリーと合致した時により感動的になりますね。

藤沢朗読劇における音楽の役割と作り方

――ではさらに具体的に伺いたいのですが、『Homunculus~ホムンクルス~』の音楽を村中さんはどのように作り上げていかれたのでしょうか。

村中:最初の打ち合わせで、『Homunculus~ホムンクルス~』の音楽は、教会音楽的でオルガンをメインに使いたいという話が藤沢さんからあったので、相当気合いを入れて書きましたね。他の演劇などでは「高尚すぎる」と言われそうな作曲技法にも積極的にチャレンジしています。例えば、バッハが使っていた対位法。『Homunculus~ホムンクルス~』は主人公が4人いるので、各人のテーマを作って対位法で追いかけっこをしたり。幕間の音楽も、ポップに寄せすぎずに作曲でき、音楽家としての喜び、楽しさを感じることができました。

藤沢:舞台を観ていただければわかりますが、僕の作品では、村中さんが指揮するバンドが、ただのバックバンドではないんです。楽器の編成とミュージシャンの選択、 PA さんの選択はすべて村中さんにお任せですし、ミュージシャンの配置も、舞台の中央という重要なポジションに置きます。バンドが音楽を奏でている時は、音楽をしっかり楽しんでくださいというスタンス。お客さんも音楽家の重要さを理解してくださっているので、バンドが登場すると、オペラのように拍手が起こるんですよ。

村中:僕がお願いするミュージシャンの方たちは、言われたことをただ演奏するのではなく、自らエンタテインメントとして発信していく方たちばかりなので、ミュージシャンもお芝居の一部として認めてもらえているのは嬉しい限りですね。

――それだけ、藤沢朗読劇に音楽は、欠かせない要素なのですね。

藤沢:そうですね。「音楽朗読劇」と、「朗読」の前にまず「音楽」が来ているくらいですからね。そもそも現代の演劇は、16世紀の仮面即興劇「コメディア・デラルテ」が発端です。「コメディア・デラルテ」は、音楽あり、コメディあり、アクロバットあり、芝居ありのものでした。不条理劇などのように、演劇が発展していく中で音楽と芝居が分離していったジャンルもありますが、もともと音楽と芝居は同一なんです。その意味でも、音楽朗読劇は演劇の原点回帰。音楽と芝居は、切り離せないものなんですよ。

――それは非常に理解しやすいお話ですね。

藤沢:日本は音楽の演奏技術に関して、世界のトップレベルにあると思います。特にクラッシックはそうですね。でも現実には CD が売れなかったり、コンサートに空席があったりする。それが、とてももったいないことだと思うんです。なので僕は自分の作品で、お客さんに物語だけではなく、素晴らしい演奏家がこんなにたくさんいることを知って帰ってほしいんです。僕の作品では、千秋楽でいつもライブタイムを設けています。音楽と芝居は切り離せない。ならば、それぞれの見せ場を作って、感動をより大きくしたいんです。

READING HIGH ドットイメージ

――なるほど。それでは具体的におふたりは、どのような作業を通じて音楽制作を行なっているのでしょうか?

藤沢:最初は一緒に食事などをしながら、あらすじの説明からスタートします。そこから私が台本を書き、音楽が入る場所を指定して村中さんに渡して、作曲をしてもらいます。曲が上がってきたら、「このメロディーなら曲を入れる場所はここじゃないね」とか、「もっとこういう気持ちにさせたいから、ちょっと変えましょう」などといった提案をフィードバックして曲を手直ししてもらいます。そして、役者さんを入れたリハーサルでさらに微調整をして、本番を迎えるという流れですね。

村中:音楽に合わせて、藤沢さんが書くセリフも変わったりしますしね。

藤沢:そうなんですよ。それはほかの演劇にはないことでしょうね。私の場合、音楽からのインスピレーションは、台本にも大いに影響する。そういう作業を積み重ねることで、セリフと音楽がよりぴったり合っていくんです。台本を書く作業は、作詞のような感覚なのかもしれません。

村中:音楽とセリフのキャッチボールは、毎回、よくありますよね。

藤沢:まるでミルクコーヒーなんですよ。ミルクコーヒーという飲み物では、ミルクと珈琲を分離するのが不可能なように、セリフと音楽はがっちりと組み合わさっています。しかも作業するのは、僕の自宅だったりします。「20分で書き直すから!」と言って僕が台本を書き直している間に、村中さんにはウチの犬の相手をしてもらってます(笑)。

藤沢文翁×村中俊之

――音楽とセリフが交錯する場面もたくさんありますが、作曲家として工夫することも多そうですね。

村中:はい、もちろん。作曲の段階で、セリフと音楽が被りすぎないように、というバランスは慎重に考えます。なので……曲のデモ音源には、曲に合わせて僕がセリフを読んでいる声が入っています(笑)。このセリフの時に、こう音楽が切り替わりますというのも伝えたいですし、音楽は、セリフの一語一句と関係しているので、かなり綿密に計算して作っています。

藤沢:村中さんのセリフ入り音楽、すごく面白いですよ(笑)。でも、じつはその逆もありまして。劇中歌が入る場合は自分で作詞をするんですが、僕は楽譜が読めないので、村中さんの曲に、僕が歌を吹き込んでいます。歌は苦手なんですけどね(苦笑)。あと、ライブで演奏するからこその工夫もありますね。一番やってはいけないのが、「悲しいことがありました、はい音楽が流れます」と、感情表現に合わせすぎること。なので、わざと裏拍をとったり、セリフよりも先に次を「予感させる音楽」を始めたり、村中さんとのコラボレーションは、じつにジャズ的でグルーヴィーです。

村中:そうですね。セリフと音楽のタイミングはジャストじゃない。特に「予感させる音楽」というのは、僕も新しいなと感じています。

藤沢文翁流、演出術とは?

――藤沢作品の音楽には、ライブな音楽朗読劇ならではのこだわりが詰め込まれていますが、役者さんとのコラボレーションには、どういったこだわりをお持ちですか?

藤沢:基本的には、演技指導を「振り付け」にしないことです。一言一句、僕から「こうしてほしい」とは言わない。僕が演出家として役者さんに提示するのは、物語が目指す目的地だけなんです。そこに行くまでの道筋は、各自で考えていただく。それがイコール「役作り」と言われるものになるんですね。ですから、リハーサルも演技指導の場ではなく、山登りのルートは皆さんに考えてきてもらい、「そっちよりは、こっちのルートのほうがいいんじゃないですか?」と調整していくのが本質ですね。

藤沢文翁

――役者さんも演じがいがありますね。

藤沢:そう思っていただけたらいいですね。もうひとつ、リハーサルで気をつけなくてはいけないことあります。これは僕がロンドンの大学で演出術の授業を受けた時、一番最初に言われたことなんですが……役者さんの前で「こうしてください」と演じてみせないことです。

――型を見せてはいけないと?

藤沢:その理由はふたつあって、ひとつは役者さんの想像力を奪うから。もうひとつは、演出家の芝居が下手なのがバレて、なめられてしまうから(笑)。

村中:なるほど(笑)、でもそれは仕方ないですよね。

藤沢:これだけは、絶対にやらないと決めています(笑)。映像作品とか、声優さんの場合ならアニメのアフレコなどでは、1回の演技でパッケージ作品としてクオリティを成立させなければならないので、演出家の意図通りの演技は必要だと思います。でも舞台は一度で終わりということは、まずない。繰り返し演じられる中での変化もあります。役者さんによっては、僕の演出は自由度がとても高いとおっしゃる方もいると思います。でもふんわりとは、行く方向性を導くようにはしていますね。なぜ、そうするかというと、もうひとつ理由があります。

――なんでしょうか?

藤沢:生の公演というのは、「不測の事態」が起こるものなんです。不測の事態と言ってしまうと、とてつもない事故やトラブルを想像しがちですが、そういうことではなく。例えば、A~Dの4人の役者さんがいて、Aさんがその日、あまり調子が良くなかったら、ちょっとずつ芝居にズレが出てきます。そのちょっとしたズレが、次の人、その次の人と伝播していって、最後はDさんに、ものすごい影響を与えてしまうことがあるんです。そこでもし、演出をガチガチに固めてしまっていると、想定外の崩れが起きてしまうことがあります。でも、ある程度、余裕や遊びを与えておけば、BさんやCさんがクッション役となって、軌道修正ができるんです。

――だから演出を固めないんですね。

藤沢:そうですね。こういうストーリーで、こういう目的のために物語が進んで行くから、あなたは今、この場所でこういう人物として存在するんだと、役者さんに頭だけではなく、心でも理解してもらうことが大事。なので「ここでこういう演技を必ずしてください」という指示はしない。あくまで、僕の頭の中にあるイメージをみんなで共有することが重要なんです。その道筋、目的地さえはっきりしていれば、本番でも様々なことに、全員が力を合わせて対応できる。僕の舞台は、そういう作り方をしています。

藤沢文翁×村中俊之対談、後編では「READING HIGH」第1弾『Homunculus~ホムンクルス~』を振り返り、第2弾『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』についてさらに詳しく語っていただきます。

特集1回目「READING HIGH」の誕生のきっかけはこちら
特集2回目「READING HIGH」の魅力はこちら
特集4回目「READING HIGH」藤沢文翁×村中俊之の対談<後編>はこちら
特集5回目「READING HIGH」山寺宏一はなぜ虜になったのか?はこちら
特集6回目「READING HIGH」公演初日をレポートはこちら

新感覚・音楽朗読劇「READING HIGH」の第1弾公演『Homunculus~ホムンクルス~』がイオンシネマ16館で上映決定!

Homunculus~ホムンクルス~

昨年の12月9日、10日、カルッツかわさきで上演された「READING HIGH」の第1弾公演『Homunculus~ホムンクルス~』。心に沁みる物語、美しい音楽、そして実力派声優・俳優たちによるあまりに見事な朗読劇で、伝説とまで称されたこの舞台が、全国のイオンシネマで上映されることが決定した。

未だパッケージ化されていない、幻想的な舞台をお見逃しなく!

『Homunculus~ホムンクルス~』(2017年)

■上映日時:2018年7月14日(土)18:30~20:30(予定)
■会場:イオンシネマ 全国16館
シアタス調布、板橋、むさし村山、港北NT、幕張新都心、浦和美園、高崎、新潟南、名取、江別、名古屋茶屋、金沢フォーラス、四條畷、加古川、岡山、福岡
※6月18日発生した地震の影響により「イオンシネマ茨木」での上映は中止となり、大阪エリアでの代替会場として「イオンシネマ四條畷」での上映が決定しました。
■チケット情報
料金:3,600円(全席指定・消費税込み)
チケット先行販売・一般販売:イープラス http://eplus.jp/homunculus_cinema/
・プレオーダー受付(抽選先行販売)
受付期間:6/13(水)12:00~6/18(月)23:59
・一般発売(先着順)
受付開始:7/1(日)12:00~
キャスト:諏訪部順一、梶裕貴、豊永利行、甲斐田ゆき、梅原裕一郎、関智一、石黒賢

新感覚・音楽朗読劇 READING HIGH premium『HYPNAGOGIA〜ヒプナゴギア〜』

■会場:Billboard Live TOKYO(東京ミッドタウン内)
■公演スケジュール
7月7日(土)
昼:14:30開場/15:30開演
夜:19:00開場/20:00開演
7月8日(日)
昼:13:30開場/14:30開演
夜:18:00開場/19:00開演
■席種・チケット価格(全席指定・税込)
プレミアムシート:22,000円/指定席:15,000円/カジュアルシート:11,000円/七夕シート(2名1組):28,000円
■チケット情報:一般発売 6月9日(土)正午より先着順
■チケット受付サイト:イープラス http://eplus.jp/rh02/
■原作・脚本・演出:藤沢文翁
■音楽監督:村中俊之
■キャスト:山寺宏一、大塚明夫、林原めぐみ
■制作:Zeppライブ
■主催:ソニー・ミュージックエンタテインメント

©READING HIGH

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