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連載Cocotame Series

宇多田ヒカルのライブを語る

宇多田ヒカルのライブをナナヲアカリが語る

2018.12.27

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11月6日〜12月9日、宇多田ヒカルが12年ぶりの全国ツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」を開催し、全6都市12公演で14万人を動員した。

Cocotameでは、「宇多田ヒカルのライブを語る」特集を展開。各方面で活躍するアーティストや作家が「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」を語る。

特集第3回は、ソニーミュージックの新星、ナナヲアカリが登場。1995年生まれで、1998年の宇多田ヒカルのデビューは3歳のころだという彼女が、宇多田ヒカルのライブを語る!

  • ナナヲアカリ

    Nanao Akari

    2016年、ニコニコ動画で発表した「ハッピーになりたい」が話題に。2017年には舞台『Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域キャメロット-』のマシュ・キリエライト役に大抜擢され大きな注目を集めた。2018年、ソニー・ミュージックレーベルズより1stフルアルバム『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』を発表。中毒的なファニーボイスとキャラクターが人気となり、今までにアップしたミュージックビデオは動画投稿サイトで累計3,500万再生を突破している。

当然のようにそばにあった音楽
その歌声だけで感動してしまった

――宇多田ヒカルさんの音楽とはどのような出会いを?

ナナヲ:出会いというか、宇多田ヒカルさんは20周年だから、3歳くらいかな。「音楽」「歌」がどういうものかわからないころから知っていました。物心がついて、テレビを観るようになって、小学生のころ「昨日観た?」とかって話すようなテレビの歌番組に出ていて、当然のように知っている方でした。お母さんももちろん聴いていたし、家族で出かける車のなかでも当然のようにかかっていた。だから、宇多田さんの曲に出会った瞬間があったというより、当然のように宇多田さんの音楽がそばにありました。

――「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」は、どちらの公演を観られましたか?

ナナヲ:私は、さいたまスーパーアリーナです。最近、ライブを観るとき、演出や歌詞の力などで感動することはあるんですけど、「歌」だけで感動するってなくなっているんですが、宇多田さんは歌声だけで感動してしまった。歌力ってこういうことなんだなって、すごいライブでした。「光」は『KINGDOM HEARTS』のテーマソングで好きだったのでうれしかったんですが、なんと言っても「First Love」を生で聴けたときには、「うわーー」って出会えた感覚がありました。「First Love」のようなデビュー当初の曲(3rdシングルで、1stアルバムのタイトル曲)が20年たった今でも、変わらずめちゃくちゃいい曲で、色褪せない。それは「First Love」だけじゃないですね、全曲でそう感じました。

――ド頭の「あなた」「道」から「travering」「COLORS」への流れも、まさにそうでしたね。

ナナヲ:「あ、昔の曲が入ってきた!」という感じが全くしなくて、新旧混ぜ合わせても「いつでも宇多田ヒカル!」ってすごいことですよね。

――色褪せないどころか、初々しさやみずみずしさも感じるっていう。

ナナヲ:そうですね。最初のMC後の「Prisoner Of Love」もよかったな。こんなことを言っていいのかわからないんですけど……MCが、「あ、どうしよう」「何話そう」みたいな感じで、あどけなくて、めちゃくちゃかわいらしいんですよ! 「あ、どうしようどうしよう。お水飲みますね!」とか「何を話せばいいかわからないけど、とりあえず、次の曲いきますね!」みたいな感じで曲に入るんですね。でも、歌い出すと、ばーっと世界が変わる。歌い出した瞬間に宇多田ヒカルになっている、その豹変がかっこよかったし、「うわーー、魔法みたいだ!」と思って。あんなに広い会場を一瞬で変えてしまうって簡単にできることではないから、すごいなって本当に思います。

――そういうスイッチが入る瞬間は、ライブが始まる「あなた」からそうでしたね。

ナナヲ:そう! ライブが始まる前はBGMとかなくて、会場に17,000人いるにも関わらず、すごく静寂なんですよ。オープニングSEもなくて、さいたまスーパーアリーナに響く第一音目というのが、自分の声だなんて、なんて粋なことをされているんだって思いました。

――バンドのメンバーが出てきて、宇多田ヒカルさんが登場した瞬間、会場がうわーっとわき上がるんですが、その第一声で、すぐに静かに聴き入ってしまうっていう。

ナナヲ:スッてくるんですよね。でもそれって、会場の全意識が宇多田さんに集中しているからで。本人がおっしゃっていたように、17,000人いても近く感じるっていうことにつながるのかなとなんとなく思いました。みんなが盛り上がるために来ているのではなくて、「宇多田ヒカルの歌を聴く」、その1点の目的のためだけに来ているんだなって。

――宇多田さんを近くに感じるというと、センターステージのパートもありましたね。

ナナヲ:私、センターステージのとき、実際にすごく近いところで観ていたんですよ。「宇多田ヒカルがこんなに近くにいる!」って思いました(笑)。実在していらっしゃいましたね。「花束を君に」(『Fantôme』)は、初めて聴いたときからいい曲だなと思って大好きなんですけど、センターステージパートの3曲目で、ブワーっと鳥肌が立ちました。360度、客席を見まわしながら、歌ってくれたんですけど、「愛しい人」という言葉を繰り返すなかで、後半になるにつれて、だんだんせつなさを帯びていっている感じがして、近くで歌っているから、より表情とかも生でわかって、すごく遠い目をして歌っている感じがしたんですよね。誰を思って歌っているんだろうというのも気になっちゃうし。このパートから白と黒の衣装に変わっていましたが、すごく綺麗で好きでしたが、センターステージパートは「憂いとせつなさ」のセクションだった気がしますね。

――その後は、メインステージに戻って「Forevermore」のあと、ハイライトでもあった「First Love」と「初恋」っていう。

ナナヲ:ずるいなー(笑)。もう「初恋」は圧倒されてしまいました。あんなに難しい曲を歌い上げていて、うわってなりました。いまだに譜割りがどうなってるのか、わからないんですよね。「あ、これ、リアルに歌えてしまうんだ!」っていうところに意識がいって、宇多田さんのリズムのとり方とかもすごく観ちゃった。結構手でとっていらっしゃるんですよね。そのとり方も普通の人のとり方ではなくて、宇多田さん流の拍がある。独特なんですよね。歌詞の割る部分とかも。でも、日本語を本当に美しくのせている。一つひとつがすごく圧巻でしたね。「絶対できない!」と思いながら。

ナナヲアカリが衝撃を受けた
宇多田ヒカルの言葉

――宇多田さんのライブを観て、受け止めたことってなんですか。

ナナヲ:その空気感を作れる、絶大な感じもすごいなって思ったんですけど、一番印象に残っているのは、最後のほうのMCで「今回のツアーが初めて楽しいと思えているツアーです」とおっしゃっていたことで。こんなに大きなステージに立っているのに「どうして、こんなに多くの人が、私の歌を聴いてくれているんだろう」っておっしゃっていたんですよ。そんな言葉が「宇多田ヒカルの口から出るんだ!」って。そういう言葉って、誰かのために歌っているのではなく、本当に音楽が好きで、音楽でしか生きていけないから、自分のためにやっているからこそ出てくるのかなと思って。たくさんの人に聴いてもらいたいと思って音楽をやっていたら、多分、そんな言葉は出てこないし、「さいたまスーパーアリーナ」のような規模の大きなステージに立つ人の口からは出てくるなんて思わなかった。だって、普通は「聴かせるために歌っている」のだから。

――そういう意識やファンの存在を実感するスピードよりも早く、大きなステージに到達してしまったのかもしれないですね。

ナナヲ:そうですね。だから、「どうしてみんながこんなに一生懸命聴いてくれているのかわからない」って照れ臭そうにおっしゃっている。それが、今の宇多田ヒカルの口から出ていること自体がすごく衝撃的で。きっと、ずっと満たされないままでいらっしゃるのかなって。満たされてしまったら、そんな疑問も出ないと思うし、歌う理由もなくなっちゃうのかなって。それは、全アーティストそうかもしれないけれど、「満たされない」って重要なのかなとも思いました。私もすごく葛藤があったり、悲しいとき、怒ってるとき、満たされないときに、何かを表現したいと思って、音楽をはじめたんだと思うし。こういう疑問を持ち続けられるって大事だなって思いました。本当にその言葉は衝撃的で、ライブ後、電車に揺られながら、ずっと考えていました。「なんであんなこと言えちゃうんだろう」って。不思議だけど、本当に素敵な方だと思いました。

――今回のツアーが楽しいというのは、活動休止をした人間活動を経て、ファンのほうを向いた感じが出てきているのかもしれませんね。実際、ライブでも、ファンの一人ひとりの顔を心に焼き付けるように見ていたのは印象深かった。

ナナヲ:「向いた」からこそ、初めて「聴く人がいる歌」も悪くないって思って、「今回のツアーが楽しい」って思えたのかもしれないですよね。デビュー当初のツアーも、さいたまスーパーアリーナでやったとおっしゃっていましたけど、きっと率先してやったわけではなくて、いろんな人たちから求められてやったんだと思うんですよね。でも、今回、初めて「楽しい」と思ったんだったら、これからツアーが増えて、また会えるかもしれないと思って!

ナナヲが良くも悪くも
受けとめたこと

――そうですね。ツアーやライブは、リアルに増えるかもしれませんよね。ナナヲさん自身は、この秋、1stアルバム『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』を携えたワンマンツアーを終えられていますが、ライブについては、どう考えていらっしゃるんですか?

ナナヲ:私は、逆に、ライブをしないと自己証明ができていない感覚に陥ってしまうので、すごく不安になっちゃうんです。CDとか配信だけだと、どういう風に受け止められているかも、実像が見えないから。だから、ライブをして、みんなの顔を見ると、「あ、こうやって受け止められているんだ」って安心する。でも、宇多田さんは、なんかそういうことじゃなかったんだと思うんですよね。きっと。だから、全然違う感覚でライブをやってきたんだなって。

――そこから、みんなの顔を見ることが、今、楽しくなっているのではないかと。

ナナヲ:そこを得ちゃったら、この先、一体どうなっちゃうんでしょうね!? ナナヲのライブは、ダメな人間で集まって、みんなでうわーっとする、ダメな人たち頑張ろう委員会みたいな側面があるんですけど、宇多田さんのライブを観て、そういうなかにも「聴かせるためだけの時間」が作れるようになると、ライブの幅も広がるし、ものすごくいいだろうなって思いました。自分のこともちょっと好きになれるかもしれないって。それには、やっぱり歌力とその他いろいろな力や努力が必要だと思いますが……多分、彼女は当然のように音楽をやっていて、宇多田ヒカルになってしまったぐらいの感じなのかもしれないから、良くも悪くもすごく刺激を受けました……。

――そうなのですね。悪い刺激というと?

ナナヲ:すごく自己嫌悪に陥るという意味ですね。ただ、負けず嫌いの精神はあまりないので、ちゃんと「すごいな」って思うんですけど、そこから自己嫌悪に陥っちゃう。だから、素直にすごすぎる人はすごすぎると受け取って、そこから考えるんです。

――そういう感情こそ、ナナヲさんにとっての作品作りの原動力につながっていくんでしょうね。ものすごくいろんな感情を揺さぶられたんですね。

ナナヲ:そう、いろんな方向に思考がグルグルしました。

――ナナヲさんは、音楽活動に並行して、2019年1月11日より、ミュージカル『Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-』でマシュ・キリエライト役として出演されますね。

ナナヲ:絶賛、稽古中です! 『Fate~』は演出家の方が、めちゃくちゃ細かく見てくださるので、2.5次元の舞台でも「こんな演出家さんは本当にいない」と言われるほど、すごく厳しいんです。ちょっと抜けたお芝居してると「そこ、考えてきてないでしょ!」とかすぐ見抜かれるみたいな(笑)。そんな日々を送っております。お芝居でも、また違った考え方が生まれてくるので、すごく楽しいんですけどね!

――そういうことも、音楽にもフィードバックできるといいですね。では、最後に、宇多田ヒカルさんにお会いしたときに言いたいこととか、聞かせていただけますか?

ナナヲ:なんて言うんだろう! 宇多田さんの本当の初恋の話を聞きたいかな。MCで垣間見られましたけど、素の部分、人間の部分をもっと見たい! ま、でも、実際お会いしたときに、そんな質問を、私からできるのだろうかという議題は残りますが(笑)。

特集最終回は、1月9日に8th アルバム『BOY』を発売するOKAMOTO’Sのオカモトショウさんにバトンタッチ!

ポートレート写真=映美
ライブ写真=岸田哲平(12月5日さいたまスーパーアリーナ)

ナナヲアカリ最新情報

『Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-』
2019年1月11日(金)〜1月14日(月・祝)大阪・サンケイホールブリーゼ
2019年1月19日(土)〜1月27日(日)東京・日本青年館ホール



ナナヲアカリ(右)は、マシュ・キリエライト役で出演

©TYPE-MOON / FGO STAGE PROJECT

キャスト/丘山晴己、山﨑晶吾
大海将一郎・坂本澪香(Wキャスト)、ナナヲアカリ ほか
脚本・演出・作詞/福山桜子

2017年7月と10月の2回にわたり上演され、大きな話題となった舞台「Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域キャメロット-」の新作がいよいよ上映。今回描かれるのは、「第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア」。神が人間と共存していた最後の時代、紀元前2655年の古代メソポタミア。ギルガメッシュ王が統治するウルクは、三女神同盟と魔獣の侵攻によって滅亡の危機にあった。神秘が残る最後の時代で、マシュとマスターは人類史を守ることができるのか?

アニプレックスカスタマーセンター TEL:03-5211-7555(平日10:00~18:00 / 土・日・祝日除く)

1stフルアルバム『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』

1stフルアルバム『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』

1stフルアルバム『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』好評発売中。インディーズ時代の歴代ベスト曲をはじめ、ナナヲアカリ、Neru、DECO*27書き下ろしの新曲ほか、Cocotameの特集「宇多田ヒカルのライブを語る」の次回に登場するOKAMOTO’Sのオカモトショウと、オカモトコウキが共作した書き下ろし曲「なんとかなるくない?」も収録する、超豪華アルバム!

『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』の購入はこちら(新しいタブで開く)

宇多田ヒカル最新情報

12月9日、幕張メッセで行なわれた「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」のライブの模様は、1月27日21:00より「BSスカパー!」にて放送。「MUSIC ON! TV」では、3月10日20:00よりツアードキュメンタリーも加えた完全版が放送される。また、宇多田ヒカルのPlayStation®4 VR向けコンテンツ「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 - "光" & "誓い" - VR」として、「光」と「誓い」のライブライブパフォーマンスが配信決定。有料会員サービスPlayStation®Plusの加入者には「光」のVR映像の先行配信が12月25日にスタート。「誓い」は2019年1月18日に「光」とともに一般向けに無料配信が行なわれる。


1月18日にスクリレックスとのコラボ曲「Face My Fears」がシングル発売。同曲はゲームソフト「KINGDOM HEARTS III」のオープニングテーマとして使用される。このジャケットは、ディレクター・野村哲也が描きおろしたもの。同シングルに収録される「誓い」「Don't Think Twice」は配信中。3月6日にはシングル「Face My Fears」のアナログ盤の発売も決定。

関連リンク

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