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アーティスト・プロファイル

表現者・小袋成彬のルーツを探る! デビューアルバム「分離派の夏」の完成に至るまで<前編>

2018.04.15

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今後さらなる注目を集めるであろう、気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「Artist Profile(アーティストプロファイル)」。第2回は4月25日に宇多田ヒカルプロデュースによるアルバム『分離派の夏』でデビューを果たす、26歳の新人アーティスト、小袋成彬。

新人とは言え、すでに豊富な音楽キャリアをもち、大学時代に始めたR&Bユニット、N.O.R.K.のヴォーカリストとして世に出ると、シルキーな歌声と感度の高いサウンドが熱心な音楽ファンの間で話題となった。その後は自主レーベルTokyo Recordingsを設立し、オーナー兼音楽プロデューサーとして活躍。水曜日のカンパネラへの歌詞提供やadieuなど、数多くのアーティストを手がけてきた。

そして2016年。宇多田ヒカルのアルバム『Fantôme』にゲスト・ヴォーカルとして招かれたことで、小袋成彬の名は広く知られるようになる。ちょうどそのころ、彼自身も音楽の作り手として大きな転換期を迎えていた――。

小袋成彬というアーティストのルーツを探るインタビューを、前後編の2回に渡ってお届けする。

 音楽の道へ進んだきっかけ

──小袋さんは現在26歳ですが、レーベルオーナーや音楽プロデューサーといったキャリアをお持ちです。初めて世に出たのはN.O.R.K.のヴォーカリストとしてですよね。

小袋 そうですね、大学4年のときに仲の良い友だちと2人で始めたのがN.O.R.K.です。友だちは留年して時間があったし、僕は卒業は決まったけど就職はしないっていうヒマな時期だったので、やってみようかと。

小袋成彬

──音楽の道に進むことは決めていたんですか。

小袋 いや、就職活動はしてたんですけどうまくいかなくて、この道を選びました。ただ、音楽を始めた理由は明快で、得意だったから。それまで自分の得意なことをやったことがなかったんですよね。

学生時代は野球部だったんですけど、すごく活躍してチームメイトを喜ばせたっていうこともなかったし。せっかくだから生身ひとつでできることをやろうと思って、今のところ自分が人より抜きん出てるのは、音楽の知識と歌かなと。そう思って音楽を始めました。

──それまで何か習っていたとか?

小袋 いえ、全然。クラシックの素養もないし、高校まではJ-POPを聴いていました。いろんな音楽を聴くようになったのは大学に入ってからで、ネット経由でまだ名の知られていない人の音源を聴いたり、海外メディアをチェックしたり。

で、就活をやめてからは音楽活動するうえで名刺が必要だからN.O.R.K.を始めて、その後は大学で学んだ国際経営の知識をいかしてレーベル運営を始めたり。常に必要にかられて、やらなきゃいけない課題をこなしてきたっていう感じです。

──表現者を目指して、という感じでもなかったんですね。

小袋 ないですね。もともと裏方をやっていたので。

──そんな小袋さんが、“2016年の夏に大きな転機を迎えた”というのは、アルバム『分離派の夏』に寄せた自身のテキスト(新しいタブで開く)でも語られていますね。

小袋 そう、突然、花開いたんです。僕はもともと芸術家ではないし、いまだにそんな人ではないと思っているんですけど。2016年の夏に、いきなり使命感にかられて自分の作品を作り始めました。

──宇多田ヒカルさんの『Fantôme』にゲスト・ヴォーカルとして呼ばれたことが大きな転機に?

小袋 それは最後のきっかけですね。それまでプロデュース・ワークをやっていて、自分でも何かやらなきゃいけないんじゃないかと思い始めた頃で。そのとき歌の仕事はしていなかったけど、宇多田さんにヴォーカルとして呼ばれて、ああ、なんか「歌え」って誰かから言われているんだろうなって思いました。今までの経験を歌にせざるを得ないんじゃないかって、本当に心の底から思ったんですね。宇多田さんがここまで自分を推してくれていることも含めて。

──衝動的に沸き上がってきたんですね。

小袋 そうなんですよ、突然目覚めたという感じでした。それまでは経営学書とかドキュメンタリー番組のような実用的なものが好きだったんですけど、そこですっかり興味を失って、ファンタジーが好きになりました。小説をよく読むようになりましたね。

小袋成彬にとっての“芸術”とは

──どんな小説がお好きなんですか。

小袋 好きな作品は、ヘルマン・ヘッセの「春の嵐」や、三島由紀夫の「午後の曳航」。あと川端康成の作品はほとんど好きで、一番好きな作品は「山の音」です。




──言葉の美しさが際立った小説が多いように感じます。

小袋 あんまり意識はしてないんですけど、そうかもしれないですね。

──小袋さんが綴ったテキストは、「私はいま、ひとつの芸術作品を完成させようとしている。」という一文から始まります。また、アルバムの冒頭に収録された、小袋さんの友人による独白にも“芸術”という言葉が出てきます。小袋さんにとって“芸術”とは、どのようなものでしょうか。

小袋 僕もよくわかってないです。いろんな形があるものだと思うので。ただ、自分にとって作品づくりというのは、“喪の仕事”だと思っています。もちろん、それだけが芸術というわけではないですけど。

──“喪の仕事”というのは?

小袋 過去の経験を思い出して、読み解いて、再解釈していくっていうことだと思います。

──それは自分のために?

小袋 もちろん、自分だけのために。それをやらなきゃいけないっていう強烈な使命感がありました。そういう瞬間って、誰にでもある気がするんですけどね。ブログを書くとかも、それに近いんじゃないかな。何か残さなきゃいけないと思って書きとめたりするじゃないですか。それが僕の場合、たまたま音楽だった。

──どうして音楽だったと思いますか。

小袋 そうですね、僕は言葉を書くことの方がわりと得意なんですけど……。音楽っていうのは、僕のなかでは身体性を帯びたものなんです。旋律とリズムがあって、それがBPMという秩序の中に放り込まれている。だから理由なしに表現しやすいんですね。

僕、恥ずかしいことや嫌なことを思い出したとき、それを打ち消すためにその場で思いついたメロディを口ずさむクセがあるんですよ。それはみんなやっていることだと思ってたんですけど。

──いやあ、私はそういう経験ないですね(笑)。

小袋 みなさん、そうらしいですね

──やってみたいけど。小袋さんの音楽は端正なサウンド、端正な歌でありながら、必ず曲中でブワッと感情が溢れ出す瞬間があると思うんです。それは小袋さんのいう身体性に近いのかも。

小袋 それはあると思いますね。自分の波やクセが、ダイナミクスやグルーヴとして出ているところはあると思います。

──だからすごく個人的なことを、個人的な感覚で表わした音楽だと思いました。だけど同時に「これは私の歌だ」と強烈に思う瞬間もあるんです。つくられた方を目の前にして言うのは、ちょっと申し訳ないほどに。

小袋 なんでですか。それって最高じゃないですか。

──この『分離派の夏』は小袋さんが人生をかけて作ったものだと思うから、それを一部拝借して自分のものにしてしまう後ろめたさがあるというか。でも、自分の歌だと思ってしまうのだから仕方ない

小袋 それが一番良いことじゃないですか。ありがとうございます。

──そうやって見知らぬ誰かに浸透していくものをつくっているという怖さはないですか。

小袋 ないですね。人に聴かせる前提でつくっていないので、自分の世界でつくり終えたら完成なんです。それがどう聴かれるとか、どう評価されるっていうのは、作品づくりになにも関係ないと信じているので。ただ、作品の評価とかはやっぱり耳に届いてしまうから、それで自分のつくり方が変わってしまうのはすごく嫌なんです。怖いです。

小袋成彬

──でもこの時代、完全に耳を閉ざすのは無理ですよね。

小袋 だから今は意識的にシャットアウトしています。SNSもほとんど見ていないし、Instagramで猫の映像を観るくらいです。今の時代、いろんな人の反応が見え過ぎちゃうけど、それで一喜一憂してしまったら僕の作品が変わってしまうだろうし、そうあるべきではないと思っているので。

 プロデューサー宇多田ヒカルとの関わり

──宇多田さんはプロデューサーとして、どのぐらい関わっているのですか。

小袋 歌詞やアレンジで悩んだときは、逐一相談していました。日本にいないので直接お会いしたのは2回くらいですけど、メールでやりとりしていました。完成に至るまで、音づくりとか心構えとか、コアな部分をスパルタで教えてもらったので、その影響はでかかったですね。

──かなり具体的なアドバイスをもらうのですか。

小袋 そうですね、僕が具体的なアドバイスを求めていたので。日本語詞の曲において何が重要かとか。彼女が20年で培ってきたメソッドがあって、そのすべてが僕に当てはまるわけじゃないんだけど、なるほどなあと思ったり。言葉選びにおいてあまりに個人化し過ぎじゃないか、と言われたこともあったし、僕も譲れない部分では戦ったりもしました。1年でかなり成長したと思います。

後編では、彼のキャリアに影響を与えた作品について、そして5月1日に行なわれるワンマンライブへの思い語ってもらった。

小袋成彬オフィシャルサイト(新しいタブで開く)

5月1日(火)に行われる初のワンマンライブ(渋谷WWW)が、LINE LIVE、スペシャアプリでの生中継が決定!

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小袋成彬、2018年夏フェス情報!
◆4月28日(土)ARABAKI ROCK FEST.18(新しいタブで開く)
◆5月  3日(木)VIVA LA ROCK 2018(新しいタブで開く)
◆5月26日(土)GREENROOM FESTIVAL '18(新しいタブで開く)
◆7月28日(土)FUJI ROCK FESTIVAL '18 (新しいタブで開く)
◆7月22日(日)NUMBER SHOT 2018(新しいタブで開く)

『分離派の夏』

2018年4月25日リリース

01. 042616 @London
02. Game
03. E. Primavesi
04. Daydreaming in Guam
05. Selfish
06. 101117 @El Camino de Santiago
07. Summer Reminds Me
08. GOODBOY
09. Lonely One feat. 宇多田ヒカル
10. 再会
11. 茗荷谷にて
12. 夏の夢
13. 門出
14. 愛の漸進

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