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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

ライセンシーとライセンスエージェント、理想の関係を築くために大切なことはとてもシンプルだった

2019.12.05

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2019年10月9日、京都の清水坂と嵐山に、スヌーピーの和のチョコレート専門店『SNOOPY Chocolat(スヌーピーショコラ)』がオープンした。

スヌーピーファンだけでなく、京都という街が好きな人やチョコレートが好きだという人からも注目を集める『SNOOPY Chocolat』を運営するのは、京都・錦、大分・由布院、三重・伊勢、北海道・小樽といった日本を代表する観光地に、和のテイストを取り入れたカフェ『スヌーピー茶屋』などを展開することで知られる寺子屋である。

スヌーピーの本格的なチョコレート専門店に挑戦した寺子屋 副社長の海蔵昭成氏に、出店の経緯からキャラクターライセンスビジネスを行なう上で心がけていること、そして『ピーナッツ』の国内エージェントであるソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)とのビジネスの取り組みについて話を伺った。

また、SCPでPEANUTS推進本部のマネージャーを務める、関恭子にも新コンセプトで誕生した『SNOOPY Chocolat』で注目すべきこと、寺子屋とのパートナーシップについて聞いた。

SNOOPY Chocolatの情報はこちら

やりたいことを提案するのに熱量が伴うのは当然

  • 海蔵昭成氏

    Kaizo Akinari

    株式会社 寺子屋
    取締役副社長

──2014年より展開している『スヌーピー茶屋』、そしてニューオープンとなった『SNOOPY Chocolat』と、寺子屋がスヌーピーをモチーフにしたショップを手がけることになったきっかけから教えてください。

海蔵:我々がスヌーピーに和のテイストを取り入れてモノ作りをするようになったのは、2013年〜2015年にかけて開催された、スヌーピーと日本の伝統工芸とのコラボレーション展「スヌーピー・ジャパネスク」がきっかけでした。寺子屋は「がま口」や「和柄のハンカチ」などを販売していたのですが、お客様からもご好評をいただいて、スヌーピーというキャラクターのポピュラリティを改めて認識させられました。

そこでスヌーピーで何かショップを展開できないかと、和のテイストを取り入れた雑貨店を『ピーナッツ』の国内エージェントであるSCPを通してアメリカの権利元であるPeanuts Worldwideに提案したのですが、その業態はすでに存在していたので実現に至りませんでした。それなら我々が築いてきたノウハウをもっと活かせるものを再考しようということになり、提案したのが『スヌーピー茶屋』でした。

寺子屋はもともと、蕎麦店やカフェなども手掛け、飲食事業も得意としています。さらにグッズ製作のノウハウも蓄積していたので、和のテイストは残しつつ、カフェとグッズ販売を融合させた『スヌーピー茶屋』が生まれたのです。

──寺子屋はスヌーピーの他にも、さまざまなキャラクターのライセンスビジネスを手がけていますが、『ピーナッツ』やスヌーピーについてどのようなイメージを持っていましたか。

海蔵:個人的な印象ですが、『ピーナッツ』のキャラクターには品の良さを感じていました。キャラクター文化が根付いている日本で人気が高いのも納得です。実際、『ピーナッツ』関連のショップは外国の方より、日本人の観光客の方が多い場所のほうが人気が高まる傾向にあります。

実は、こうした事例は我々の飲食事業にも見受けられまして、寺子屋ではごま専門店と抹茶専門店も展開しているのですが、抹茶は外国の方に、ごまは日本の方に人気で、これを逆転させたマーケティングを行なうと、全くうまくいきません。改めて、国民性や親和性というのは面白いですね。

──『スヌーピー茶屋』のときと同様、『SNOOPY Chocolat』も最初の提案については、NGの回答があったと伺っています。それでも諦めないで、粘り強く提案し続けられたことについて、SCPも非常に熱意を感じたと言っていました。

海蔵:熱意をもってご提案するのは我々として当然のことですが、それがしっかり伝わっていて良かったです。寺子屋の社長の海蔵講平が、海外へビジネスの視察に行くたびに感じていたのが、世界中どこへいってもチョコレートが人気だということでした。特にここ数年はインバウンド需要が高まっているので、チョコレートという商品にさらなる可能性が見出せるのではないかと。

そして、我々が今、チョコレートを手掛けるなら、キャラクターとして品のあるスヌーピーとコラボしたいというのが想いでした。その上で寺子屋の強みは何かと言ったら、日本の伝統を伝える和のテイストの打ち出し方なので、それが最終的に受け入れてもらえたポイントだと思います。

──寺子屋が作られるアイテムやショップは、担当の皆さんの『ピーナッツ』やスヌーピーが大好きでしかたないという想いも、しっかり表われていると感じます。

海蔵:そう言っていただけるとうれしいです。実際、社内のスヌーピー担当のデザイナーは、すごく楽しそうに仕事をしていますから。

キャラクターを使った商品作りは、画を乗せるだけで簡単だと思われる方がいるかもしれませんが、実際はそうではなく、ライセンサーからNGとされる商品企画も多いです。やはりそのキャラクターごとに世界観がしっかり構築されているので、そこから逸脱する案は、例え企画がおもしろかったとしても、なかなか通りません。

ただ、『ピーナッツ』のお仕事では、案が通らなかったとしてもエージェントであるSCPの皆さんから「ここは世界観に合いませんが、こうしたらどうですか?」と逆にご提案をいただけるのです。このようなやりとりは他のビジネスではなかなかありません。一つひとつのコミュニケーションが、次につながる糧となって、『SNOOPY Chocolat』のオープンにも結実したのではないかと感じます。

『SNOOPY Chocolat』を京都観光の中心地に展開した狙い

──寺子屋の本社は京都にありますが、店舗は全国展開されています。『SNOOPY Chocolat』をオープンするにあたり、なぜ京都を選んだのでしょうか。

海蔵:インバウンドの需要が多く見込まれる日本の文化の発信地だからです。寺子屋が運営する店舗は全国に156店ありますが、京都は42店舗と、特に集中しています。京都ブランドをもっと発信していきたい! という我々の想いが強いというのも理由です。



嵐山店



清水坂店

──なぜ『SNOOPY Chocolat』は清水坂と嵐山の2店舗同時オープンになったのでしょうか。

海蔵:やはり西の嵐山と東の清水が京都観光では顔だからですね。京都に観光で来られるお客様は、必ずと言っていいほど嵐山と清水を訪れると思うので、両方に足を運ばれるお客様にご満足いただけるよう、それぞれの店舗でテイストを変えたり、店舗ごとの限定アイテムをご用意してお迎えしています。

──『SNOOPY Chocolat』の東京への出店や海外展開なども考えていらっしゃいますか。

海蔵:寺子屋は雑貨や飲食など、さまざまな京都ブランドのショップを展開していますが、「海外の出店予定は?」と聞かれることがあります。そのご質問に対する我々の答えはNO。例えば、東京にハワイのお土産雑貨店があったとして、皆さんは継続的に足を運ばれますか? 答えはおそらくNOだと思います。お土産というのは、現地を訪れ、その土地の空気を吸い、雰囲気を体感して買うものだと我々は考えているので、“その土地で好評だから海外でも展開しよう”という安易な発想はできません。

ただし、キャラクターを使った商品展開は別です。『SNOOPY Chocolat』のように、人気キャラクターとのコラボレーションで生まれたものであれば、海外への展開も夢ではないと考えています。とは言え、まずは、この京都の2店舗の成功がなくては、その先の展開も考えられませんので、しっかり運営し、お客様への認知拡大を図っていきます。

信頼関係のなかでお互いがキャラクターの世界観を追求する

  • 関 恭子

    Seki Kyoko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

関:寺子屋のご担当者から、スヌーピーをテーマにしたチョコレートのお店のご提案をいただきましたが、最初は他にもチョコレートのライセンス商品があるので、お断りしたんです。しかし、寺子屋の皆さんはチョコレートとスヌーピーのコラボレーションを実現したいという熱意を持っていらして、ご提案を重ねてくださり、今回の『SNOOPY Chocolat』のオープンに至りました。

決め手となったのは、このプロジェクトのためにチョコレート専門のコーディネーターとショコラティエを商品開発スタッフに迎え入れられて、原料のカカオからこだわり、他のチェコレート商品とは差別化を図るご提案をいただいたことです。寺子屋の皆さんの熱意と本気度がひしひしと伝わってきました。

──このプロジェクトが動き出した際、『SNOOPY Chocolat』にどんなことを期待したのでしょうか。

関:寺子屋は、京都の企業であることにアイデンティティを持っていらっしゃると思います。『スヌーピー茶屋』も単なるスヌーピーのカフェではなく、「茶屋」の様式を用いて和のテイストを表現されていました。『SNOOPY Chocolat』では、味も見た目も本格的でありつつ、“日本ならでは”にフォーカスすることで、今までにない独自のチョコレート店を展開されるのではないかと感じていました。

──『ピーナッツ』ファン、スヌーピーファンも、『SNOOPY Chocolat』に注目していますが、お店ではどのような世界観を楽しめるのでしょうか?

関:『ピーナッツ』のコミックのなかで、「幸せってなんだろう」とチャーリー・ブラウンがたずねると、ライナスが「背中をポンって押してくれる友達とチョコレートだよ」というエピソードがありますが、『SNOOPY Chocolat』は、このコミックがコンセプトになっています。

そこから、LOVE(恋)、FRENDSHIP(友情)、FAMILY(家族)、HAPPINESS(小さな幸せ)という4つのテーマを柱にして、内装や商品が展開されています。さまざまエピソードやかわいらしいスヌーピーの絵柄が、チョコレートと融合して、新しい世界観が構築されているので、ぜひお楽しみください。






──溶けやすいということも含め、取り扱いが繊細なチョコレートは、衛生管理など、気をつけなければいけないこともたくさんあったかと思います。食品の安全面については、どのような点に気を付けているのでしょうか。

関:その点は、寺子屋の皆さんが十分なノウハウと知見をお持ちなので、信頼してお任せしました。その上で、商品開発の方々のアイデアが豊富なので、和のフレーバーというだけで、たくさんの組み合わせを考えてくださり、シソとストロベリーのような、最初に聞いたときは「えっ!?」と驚いてしまうような組み合わせのフレーバーも生まれました。ただ、これも食べてみるとびっくりするほどおいしいので、ぜひお試しください。

──今回の取り組みをはじめ、SCPはさまざまライセンシーの皆さまとビジネスを展開していますが、ライセンサーとライセンシーはどのような関係性が最も理想だと考えますか。

関:ライセンスビジネスで最も重要なことは、ライセンシーの皆さまのお力が最大限発揮されることだと考えています。各社それぞれに独自の知見、ノウハウ、アイデアをお持ちで、それを結集していただくことで、初めて面白いモノ・コトが生まれるのではないかと思います。

もちろん時には、私どもから「こういった商品を作ってください」「こんなアイテムはいかがでしょう」とご相談することもありますが、ロングセラーのアイテムや大ヒットアイテムが生まれるときというのは、ライセンシーの方々が熱量を持ってご提案してくださったケースが多かったように感じます。

ライセンサーとライセンシーの間をつなぐ立場である我々がお伝えするブランドコンセプトやテーマと、キャラクターのことを深く理解しようとしてくださるライセンシーの皆さまの熱意が、相乗効果として現われるようなプロジェクトをご一緒できるのが、このビジネスにおいては理想の関係ではないでしょうか。そういった関係から生まれたプロダクトというのは、自然とその熱がお客様に伝わると思います。

──キャラクターを通して、お互いを高めあう関係ということですね。

関:「この絵をつければ売れますよね?」というスピードを重視したドライなアプローチもありますし、実際にそうした商品が大ヒットになることもありますので、一概には言えません。でも、担当の方が「ピーナッツ」という作品やキャラクターたちのことをすごく好きで、愛や思い入れを持っていただいているとやっぱり話が通じやすいですね。

ライセンサーにも我々エージェントとしても「もっとかわいくしてほしい」とか、「チャーリー・ブラウンはこういう子じゃないんだ」という作品に対する思いがあり、そこにライセンシーの皆さんの商品への誇りと作品への思いが加わることで最大化されるのではないかと思います。
 

人生のそばに、いつもスヌーピ-がいた──清水坂店 店長・松原さん

SNOOPY Chocolat 清水坂店
店長 松原幹堂さん

「私のおすすめは、わさび味のチョコレート。口に入れると、わさびの辛味が後からやってきます。普段、あまり甘いものを召し上がらない方でも、食べやすいチョコレートになっていると思いますので、ぜひお試しください。個人的に、スヌーピーとは縁があって、妻と出会って結婚をするという話になったときに、ちょうど伊勢の『スヌーピー茶屋』にふたりとも配属になりました。僕が飲食担当で、妻がグッズ担当。オープンから携わったので、夫婦でイチから作り上げていったんです。そして今度は、新コンセプトでオープンされる『SNOOPY Chocolat』清水坂店の店長に。これも何かの縁かと思うようになりました。スヌーピーって、嬉しいときは喜びを共有してくれるような存在で、悲しいときや落ち込んでいるときは慰めてくれるような表情に見えます。私は寺子屋でスヌーピーに出会いましたが、今では、その時々の心情に寄り添ってくれる大切な存在になりました」。

 

家族みんなが大好きなスヌーピー──『SNOOPY Chocolat』嵐山店 店長・吉本さん

SNOOPY Chocolat 嵐山店
店長 吉本有佑さん

「会社に勤めて9年ですが、スヌーピー関連のお仕事を担当するのは初めてです。母がスヌーピーファンなので、子どもの頃からベビータンスの上にかけてある布がスヌーピーだったり、自分の部屋のゴミ箱がスヌーピーだったりと、スヌーピーは身近な存在でした。私も特にこの10年くらいでスヌーピーが大好きになり、その背景には母の影響があるのかなと思います。『SNOOPY Chocolat』のチョコレートのなかで、私のおすすめは、ボンボンショコラのゆず味。嵐山限定のフレーバーで、すごくさっぱりしています。京都というと、抹茶をイメージする方も多いと思いますが、嵐山の竹林の奥に、水尾というゆずで有名な地域があるんです。嵐山店にお越しいただく際は、ぜひゆず味も試していただけたらと思います」。

文・取材:新谷麻佐子
撮影:冨田 望

SNOOPY Chocolat

SNOOPY Chocolat 清水坂店
京都府京都市東山区清水2-252
営業時間:9:30~18:30
電話番号:075-708-3728

SNOOPY Chocolat 嵐山店
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町22-3
営業時間:10:00~18:00
電話番号:075-366-8778

公式サイトはこちら(新しいタブで開く)

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