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トヨタ『ハイラックス』をレビュー! その快適性と走破性を実感【連載第21回】

2018.12.12

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2018年は、ソニーミュージックグループが生まれて50年という節目の年。本連載「50年の歩み ~meets the 50th Anniversary~」は、同じく50周年を迎える企業、商品、サービスを取り上げ、その歴史を紐解くことで、「時代」を浮き彫りにするという特別企画だ。

トヨタのなかでも屈指の歴史を誇るピックアップトラック『ハイラックス』。前回はその歴史と現行モデルの特徴を振り返ったが、今回は実際にハンドルを握って、その快適性と走破性を味わってみたい。目的地はトヨタのお膝元である愛知県豊田市にある「さなげアドベンチャーフィールド」。高速道路や市街地での乗り心地も体感するべく、東京から約350kmの道のりも『ハイラックス』で移動してみた。

その名の通り高い走行性能とラグジュアリーな乗り心地

1968年に誕生し、8代目モデルとなる現行の『ハイラックス』。13年ぶりに日本市場での販売が復活したことでも話題を集めたが、久しぶりに実車を目にした人がまず驚くのは、その車体サイズだ。全長5,335mm、全幅1,855mmの堂々たるボディは、2004年まで国内販売されていた6代目モデルと比べると1回り、いや印象的には1.5回りほど大きく感じられる。

全長5m超えのボディサイズは、実際に見るとイメージした以上に大きく、迫力を感じる。

全長5m超えのボディサイズは、実際に見るとイメージした以上に大きく、迫力を感じる。

そのサイズ感に、やや圧倒されながら高い位置に設けられたドライバーズシートに乗り込んだが、いざ走り出してみると、その運転のしやすさに驚かされる。走り始めたのは都内の市街地で、それも割と狭い道だったのだが、車体の見切りが良いので、サイズ感がつかみやすい。

狭い道で路肩に駐車車両がいたり、大型トラックとすれ違う場面でも、当初は緊張気味だったが、少し走るだけで車幅にも慣れて、リラックスして運転することができるようになった。

そして、出発から少し走っただけで感じたのは、このクルマの運転が非常に“楽しい”ということ。2.4Lのディーゼルターボエンジンは150PSの最高出力と、4Lのガソリンエンジンに匹敵する400Nmの最大トルクを発揮。低回転から豊かなトルクで2t超えの車体を軽々と押し出してくれる。アクセル操作で大柄な車体を想いのままに走らせられるので、最近のクルマでは薄れがちな“操っている感”が強く、街中で動かしているだけでも楽しさを感じられるのだ。

当初、豊田市までの道のりは高速道路を使う予定だったのだが、これはワインディングロードを走っても面白いだろうということで、急遽箱根の山を超えるまでは一般道で行くことに。スタッフ4人で交代しながらドライブしたが、全員でハンドルを取り合うくらいドライブを楽しめた。

あまりの楽しさに、ワインディングも走りたくなり、箱根越えのルートを選択。

あまりの楽しさに、ワインディングも走りたくなり、箱根越えのルートを選択。

箱根の山道に着くと、このクルマの面白さをさらに感じることができた。トルクフルなディーゼルエンジンは結構な上り坂でも、少しアクセルを踏み込むだけでグングン加速しながら駆け上がっていける。そして、カーブでは剛性の高いフレーム式ボディのおかげで、車体がヨレるような挙動は一切なく、ピシッとした走行フィーリング。スポーツカーでもないのに、サスペンションもしっかりとタイヤを路面に押し付けてくれるので、曲がりくねった道を駆け抜けるのが楽しい。箱根の道はさまざまなクルマが走っているが、スポーツカー以外でここまで楽しかった車種もちょっと記憶にないくらいだ。

しっかりした車体とパワフルなエンジンで、峠道を走るのも爽快。

しっかりした車体とパワフルなエンジンで、峠道を走るのも爽快。

箱根を越えてからは高速道路に。『ハイラックス』の初代モデルが登場した翌年に全面開通し、開発時も意識したという東名高速と、それから約半世紀後に開通した新東名へと進む。ここでは車名の由来ともなったラグジュアリーな乗り心地を実感できた。大きな車体と余裕のあるエンジンのおかげで、走行フィーリングは非常になめらか。剛性の高いボディとフロントのサスペンションがF1マシンなどにも使用される、各タイヤを上下一対のアームで支持するダブルウィッシュボーン式となっていることで、路面の継ぎ目を越えた際の衝撃などもドライバーにはほとんど伝わってこない。ただ、リアのサスペンションはリーフスプリング式(いわゆる板バネで衝撃を吸収する形式)なので、後席に座っているとやや路面からの突き上げが感じられた。

加速性も余裕のあるエンジンのおかげで高速道路での追い越しが非常にスムーズ。大柄な車体は直進安定性にも優れているので、リラックスして運転することが可能だ。ドライバーを交代しながら走ったとはいえ、350kmの距離を走ってもこんなに疲れないものかと思うほど、快適な乗り心地だった。もうひとつ、意外だったのが燃費の良さだ。これだけ大きくて重い車体でありながら、全行程を走りきっての燃費は13km/L。途中まで一般道を使用し、アクセルも遠慮なく踏んだ割にはかなり良好な数値で、エンジン効率の高さが感じられる結果だった。

『ハイラックス』のオフロード走破性を体感

オフロードの走行性能を存分に体感できる「さなげアドベンチャーフィールド」に到着すると、見慣れないカラーの『ハイラックス』が目に留まった。鮮やかなレッドのボディカラーに、ブラックのオーバーフェンダーなどを装備したこのマシンは、『ハイラックス』誕生50周年を記念した特別仕様車「Z“Black Rally Edition”」。フロントグリルやアルミホイールなどもブラックになっており、引き締まった顔になるとともにスポーティな印象を強めている。メーターパネルのデザインもスポーティなものに改められていて、メーカー純正のカスタムモデルのような仕上がりだ。

手前が50周年記念の特別仕様車。奥のブルーの車体が、今回お借りして東京から名古屋を往復したクルマだ。

手前が50周年記念の特別仕様車。奥のの車体が、今回お借りして東京から名古屋を往復したクルマ。

そして、何とこの特別仕様車で「さなげアドベンチャーフィールド」のオフロードコースを走ることができるのだ。まずは助手席に座り、コースの走り方をレクチャーしてもらったのだが、ハンドルを握るのは『ハイラックス』のチーフエンジニアであり、前回のインタビューに応えてくれた小鑓さんだ。

発売されたばかりの特別仕様車だが、こんな激しいセクションもガンガン走る。

発売されたばかりの特別仕様車だが、こんな激しいセクションもガンガン走る。

小鑓さんの運転でコースを一回りしてもらったが、「さなげアドベンチャーフィールド」のフィールドはかなり本格的。歩いて登るのもキツそうな登り坂から、上に立つと崖のように見える急な下り坂、それに激しい凹凸のある路面など、リリースされたばかりの新型車で走るのがためらわれるようなセクションが多数ある。路面こそドライだが、ところどころ水たまりが残っているようなところもあり、「ハマったらどうしよう」と不安になってしまうほどだ。

大きな水たまりを越えるこんなセクションも難なく走破。

大きな水たまりを越えるこんなセクションも難なく走破。

しかし、そんな難セクションにも小鑓さんはこともなげにハンドルを向ける。通常は2輪駆動で走り、滑りやすい路面で4輪駆動に切り替える「パートタイム4WD」は4駆になっているものの、ローギアードの「L4」ではなく、高めのギアの「H4」。それでも『ハイラックス』はスルスルと何事もなかったかのように登って行ってしまう。その模様の一端を動画でお伝えしよう。

動画を見てもわかるように、スピードを付けて勢いで上るのではなく、歩くような速度でゆっくり上っていく。これは、路面に駆動力を伝えるトラクション性能が相当高くないとできない芸当で、『ハイラックス』の走破性の高さが感じられるシーンだ。また、4輪駆動車はひとつのタイヤが空転すると、駆動力がそのタイヤに集中してしまい、立ち往生してしまう車種もあるのだが、『ハイラックス』には空転したタイヤに意図的にブレーキをかけ、空転を止めて駆動力を他のタイヤに伝えられる「アクティブ トラクション コントロール」が装備されている。そのため、凹凸が激しく、タイヤが浮いてしまうような場面でも難なく上っていくことができるのだ。

タイヤが浮いてしまったり空転しても、ほかのタイヤに駆動力を伝えて登ることができる。

タイヤが浮いてしまったり空転しても、ほかのタイヤに駆動力を伝えて上ることができる。

まるで普通の道を走っているように走破できる

一通りコースを走り終えたところで、我々もハンドルを握らせてもらう。助手席に座っている時点で、これだけの難コースでも走破できることは確認していたが、それでも「自分でも行けるのか?」と不安になる。だが、走り始めると徐々にだが、そんな不安も薄れていった。

まずは、タイヤのグリップ感がサスペンションを通して伝わってくることで、急勾配の坂を目の当たりにしても、滑らないという不安感を解消してくれる。さらに、タイヤが一瞬空転するような場面があっても、すぐにグリップが回復することが実感できると、「これなら大丈夫」という気分になってきた。

走破性の高さを実感できると、徐々に不安は解消されて楽しくなってくる。

走破性の高さを実感できると、徐々に不安は解消されて楽しくなってくる。

このコースで最もきつい上り坂では、まず2輪駆動で行けるところまで進み、続いて4輪駆動の「H4」に、そして角度がキツくなったところで「L4」に切り替えて、走破性の違いを体感させてもらった。2輪駆動では、やはり早々に後輪が滑り始めてしまうが、「H4」に切り替えると普通に上って行くことができる。そして「L4」に切り替えると、さらに駆動力が増し、グッと地面を蹴って上っていく力が感じられた。

徒歩で上るのがキツそうな坂でも「L4」モードを使えば、オフロードの初心者でも上り切ることができた。

徒歩で上るのがキツそうな坂も「L4」モードを使えば、オフロードの初心者でも難なく上り切れた。

今回のコースでは使うことがなかったが、さらにグリップが悪いような路面では後輪を左右直結状態にして、どちらのタイヤが滑ろうが駆動力をかけ続ける「リアデフロック」も使える。このように、段階的に駆動力をアップさせていけるモードを備えることで、万一スタック(ぬかるみや雪などにハマって動けなくなること)や脱輪してしまっても、さらに上のモードに切り替えることで脱出することができるのだ。前回のインタビューで小鑓さんが話してくれた「無事に帰ってくるための機能」を実際に体感することができた。

そして、最後に崖のように見えた坂を下らせてもらう。ここで活躍したのが「ダウンヒルアシストコントロール(DAC)」という機能。これは、クルマが駆動力やブレーキを自動で制御して、ドライバーはハンドルだけ操作していれば一定の速度で下って行けるというものだ。急な下り坂では、後輪のグリップが低下するので、下手にブレーキをかけると後輪がスリップして車体が横を向いてしまうこともある。だが、この機能は4輪のグリップを最適に制御してくれるので、全く不安を感じることなく、下りてくることができた。

コースを1周して戻って来たときには「無事に帰ってきた!」という不思議な充実感が体を包んでいた。人の生命を最重要視し、無事に帰るための走破性を50年に渡り何重にも磨き上げてきた『ハイラックス』。その走破性能は、ぜひ一度体感してほしいクルマだ。

最後に車体の下回りを洗うプールを通過して終了。このプールも普通のクルマでは通過するのが難しそう。

最後に車体の下回りを洗うプールを通過。このプールも普通のクルマでは通過するのが難しそう。

取材/文:増谷茂樹

レビュアープロフィール
クルマ、バイク、自転車などタイヤの付いている乗りモノ関連の記事を中心に、取材・執筆をしているライター。どの乗りモノでも土の上を走るのが好きで、ピックアップは2台乗り継いだ経験がある。

編集:山下達也
撮影:増田慶

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