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連載Cocotame Series

エンタメ業界を目指す君へ

清水翔太などを手掛けるShingo.Sの「最新トレンドトラックに必要なこと」

2019.03.05

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音楽業界を目指すクリエイターや学生達におくる連載企画「音楽業界を目指す君へ――伝えたいことがある!!」。

連載第4回目は、ソニーミュージックが運営する会員制音楽制作コミュニティサロン「SONIC ACADEMY SALON」が開催したセミナー「プロデューサー”Shingo.S”。最新トレンドトラックに必要なこととは。」の模様をお届けする。

R&B/ヒップホップ/レゲエのシーンを中心に活動し、清水翔太、加藤ミリヤ、青山テルマ、向井太一ら多くのアーティストの楽曲制作・プロデュースを手掛けるShingo.S氏が、自身の経験談や音楽制作に対する姿勢を踏まえつつ、シンガーソングライターやトラックメイカー志望の人たちに向けて、トレンドを意識した音作りに大切なことを伝えた。

Shingo.Sのルーツ

近年はルンヒャン、菅原信介、ZINとともにコラボレーションユニット「TOKYO CRITTERS(新しいタブで開く)」を結成してアーティスト活動を行なうほか、LA在住のDJ YUTAKAとのプロデュースチーム「813」を再始動するなど、多岐に渡る活動を展開しているShingo.S氏。

今回のセミナーではまず、自身がトラックメイカーになった経緯について語られた。子どもの頃にヤマハ音楽教室でピアノを教わっていた彼は、当時のヒット曲を楽しんで演奏しているうちに、コード進行に共通パターンがあることに気づき、そこから楽理的な部分に興味を持ち始めたと言う。

そして高校に進学したShingo.S氏は、音楽制作のためにPC(マッキントッシュ)とDAW(Vision)を購入。コードの分析から楽器ごとの分析へと興味の対象を広げ、トラックメイカーとしての下地を育んでいく。

その後、大学時代に仲間たちとともにSOUL LOVERSを結成し、2000年に同ユニットのメンバーとしてメジャーデビューするも、やがて音楽性の相違によってグループは解散。そこから個人でイベントなどを開催しながら、デモ制作に励むようになる。そのなかで、当時大阪でインディー活動を行なっていたMINMIと出会い、彼女の楽曲制作を皮切りにトラックメイカーとしての道が本格的に拓けていったとのことだ。

Shingo.Sが語るサンプリングの魅力

そんなShingo.S氏の代表的なワークスとして紹介されたのが、加藤ミリヤとの楽曲。加藤ミリヤの担当A&Rとは学生時代からの知り合いという縁もあったShingo.S氏は、彼女のデビュータイミングから制作に関与。1stシングルの表題曲「夜空」(2004年)ではBUDDHA BRANDの「人間発電所」をネタにして、当時の洋楽では一般的だったサンプリングによる楽曲制作を、J-POP的なキャッチーさを織り交ぜながら形にしてみせた。

Shingo.S氏はサンプリングを使った楽曲制作について、「原曲を超えることは難しい」という認識を持ちながら、パクリなどと揶揄されることや、ディスられることに対する耐性、メンタルの強さが必要であると説明。そのうえで、有名曲の気持ち良い部分をうまくループさせることでユニークさを生み出し、その制約のなかで新しいメロディを生み出すことに制作者としての醍醐味がある、と語った。

続けてShingo.S氏は「トレンドに対する意識」をテーマに持論を展開。彼が主に制作を手がけるR&Bというジャンルにおいては、「トレンド=サウンド」と言ってよいほど、ビートやシンセといった一音一音の音色に時代感が反映されるため、最新のサウンドを常にチェックし続けることが肝要だと語る。

日本と海外の違い

Shingo.S氏はここで、普段個人的にチェックしている海外のインディーR&Bのサイトメディア(新しいタブで開く)を紹介。近年のR&Bでトレンドになっている、トラップ系のビートと浮遊感のあるウワモノを合わせたサウンドも同サイトでいち早くキャッチすることができ、その数カ月後にはUSのR&Bスターであるクリス・ブラウンも同趣向のトラックを採り入れた楽曲を発表したそうだ。

また、Shingo.S氏はLAにあるDJ YUTAKA氏のスタジオでの制作作業についても触れ、日本でクリエイターを目指す人たちは海外の人たちに比べて、他人と関わらずに自己完結しがちだと話す。自分の作った曲を人に聴かせること、互いに感想を述べ合うことは、自分のサウンドを客観的に知るために大切なことであり、さらに機材などの情報交換も行なえるので、人と会うことも重要だと語った。

また、海外と日本ではリスニング環境の差も大きく、向こうのスタジオでは単純に大きな音量で音楽を聴くので、ヘッドホンでの作業では伝わらない音の差異が伝わってくるのだという。特にR&Bやヒップホップ系のサウンドではLOW(低音)の処理が重要なため、例えば車のなかなどで爆音で聴いてサウンドチェックすることも有用とのことだ。

そしてセミナーは、事前にサロンの生徒から募集した音源の紹介へ。今回は気鋭の若手実力派シンガー、當山みれいが歌う最新のテイストを採り入れた楽曲というテーマで、サロンの生徒はShingo.S氏が制作したトラックにオリジナルのメロディをつけた音源を提出。優れた作品は実際に當山みれいの楽曲として採用される可能性もあるとのことで、数々の力作が集まっていた。

Shingo.S氏は、いずれも作品としての完成度は高いとしたうえで、全体的にトレンド感が希薄と講評。10代の頃からメジャーシーンで活躍し、まだ20歳の當山みれいに歌わせるメロディであれば、聴いたことのあるようなスタイルよりも意外性や新しさを感じさせるものが必要だと語った。

その後、Shingo.S氏はサロン生からの質疑応答に応じ、クリエイターを目指す人たちに対して的確にアドバイス。日本の音楽シーンの最前線で活躍するプロデューサーによる貴重なセミナーは、こうして幕を閉じた。

音楽業界を目指す人へのメッセージ~Shingo.Sインタビュー~

――セミナーを終えていかがでしたか?

Shingo.S:普段、音楽仲間との間でも、自分のことをここまで掘り下げて語ることはないので、自分にとっても本当に貴重な機会で楽しかったです。海外に行くと素晴らしいトラックメイカーがたくさんいるので、そういう場では、自分もまだ常に勉強している側の人間ですし、僕が何かを教えるというよりも、お互いに情報交換したり、知らないことをシェアする場所になれば、という気持ちでした。

――自分自身にとって得られるものはありましたか?

Shingo.S:自分はいつも自分のやり方で制作しているだけなので、そのことについて質問をいただいたり、自分の作ったトラックに対して思いもしなかったアプローチでメロディをつけてくれたことが斬新すぎて、新たな発見があり楽しかったですね。自分の考えていることは当たり前ではなくて、自分は自分でひとりのクリエイターであることが再認識できたというか、自分も彼らのうちのひとりだったという。

――今回のように、クリエイター志望の人と実際に音楽シーンの前線で活躍しているクリエイターが直接交流できる催しの意義について、どのように感じますか?

Shingo.S:自分も若手の頃は、「あの憧れのプロデューサーはどうやってトラックを作ってるんだろう?」とか「ソフトは何を使ってるんだろう?」と思っていろいろと調べていた時期があったので、今回こうやって直接情報交換できる場は本当に良い機会だし、またお話があればぜひ参加したいですね。

作家は裏方なので触れあえる機会はなかなかないですし、今はインターネットでいろんな情報を得られますが、昔は専門誌などを買って自分で掘らない限りは欲しい情報が得られなかったですからね。気になる情報が載ってる雑誌は絶対に保存! みたいな感じで(笑)。

――最後に、クリエイター志望の方たちにメッセージをいただけますか。

Shingo.S:とにかく続けることと、曲をたくさん作って、いろんな人に聴いてもらって、いろんなところに配るなり人と会って、自分から行動することが大事だと思います。クリエイターというのは引きこもりがちだと思うんですけど、動くときは動いて、作るときは集中してまた家に引きこもるっていう(笑)、その連続だと思うんですよね。

とにかく一日1曲ずつでもストイックに作っていると、スキルは少しずつでも上がっていくし、最初からいきなりクオリティの高いトラックを作れる人は絶対にいないから、プロになる最大の近道は曲を作る時間だと思うんですよ。音楽を作る時間が多ければ多いほどプロに近づけるから、とにかく時間をかけ制作に向きあうこと。そうやって続けた先には、きっと感動があると思うし、自分が大好きな人と仕事ができるチャンスはゼロではないので。

――地道な努力こそが結果に結びつく、と。

Shingo.S:そしてそれを楽しんでやる、ということですね。逆に言うと自分はそれしかやってないですから(笑)。

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