連載

バスケットボール「3x3」が加速させるアーバンスポーツとエンタテインメントの融合

2019.8.9

Interview

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2020年に向けて、スポーツの楽しみ方が多様化するなか、アーバンスポーツと呼ばれる分野が注目されている。その中心的な存在が、バスケットボール「3x3」(スリー・エックス・スリー)だ。日本人初となるドラフト1位指名NBA選手の誕生や「Bリーグ」などの影響でバスケットボールの人気が加熱するなかで、3人制バスケットボールのプロリーグ『3x3.EXE PREMIER』は、都市型の競技場やファッション性などで、新たなムーブメントを巻き起こしている。会場の設営や試合運営を手掛けるソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の竹内広憲に、「3x3」の魅力やアーバンスポーツの将来、スポーツとエンタテインメントが融合した新しいムーブメントについて話を聞いた。

アーバンスポーツとは?

バスケットボール「3×3」や、スケートボード、ボルダリング、ブレイクダンス、パルクール、BMXパークなど若い世代を中心に浸透している都市型のスポーツ。

都会の喧騒のなかにも出現する「3×3」の競技場。神戸ハーバーランドの特設コート(下)。

静岡市の再開発に伴い、東静岡駅に誕生した東静岡アート&スポーツ/ヒロバ。スケートボード等のスクールやアートや地域の情報発信基地としても注目されている。

東静岡アート&スポーツ/ヒロバの詳細な情報はこちら

『3×3.EXE PREMIER』は、バスケットボールの新たなムーブメントに

――SMSが『3×3.EXE PREMIER』に関わるようになったのはいつからですか?

竹内:リーグがスタートした2年目の2015年から関わるようになりました。ソニーミュージックグループが携わるイベントは多岐にわたり、そのなかにはスポーツ系のものもありますが、競技そのものに関わるのは未知の領域でした。SMSとしてもそこにチャレンジしようということで、当初は現場で競技を見ながら、自分たちだからこそできることは何かを、手探りでスタートさせたような状況でした。

――『3×3.EXE PREMIER』における、SMSの役割を教えてください。

竹内:『3×3.EXE PREMIER』は、国際バスケットボール連盟(FIBA)が推進している「3×3」という競技種目のプロリーグです。今シーズンから、男子はタイ、ニュージランド、韓国のチームも加えて、全72チームが参加。海外も含めて各地でリーグ戦を行なっています。SMSは、コート設営、競技以外の演出と進行、選手管理、お客様のアテンドまでをサポートしています。2016年から世界大会の制作をサポートしていましたし、この11月には、栃木県宇都宮市で行われる「3×3」の国際大会「FIBA 3×3 WORLD TOUR UTSUNOMIYA FINAL」の会場施工・運営・進行も担当しています。

『3×3.EXE PREMIER』会場には、ホームタウンのファンが中心に駆けつける。


――竹内さんご自身は、スポーツや音楽にどのように関わってこられましたか?

竹内:小学校から高校までは本格的にサッカーをやっていました。ただそんなに強いチームではなかったですし、ケガなどもあって大学生になってからは音楽の方に興味が移りました。もともとピアノを習っていたこともあって、バンドでキーボードを弾いていたこともあります。大学生のときに、コンサートの制作スタッフをやったことがきっかけで、ひとつのコンサートをバックステージで支える魅力を知りました。スポーツと音楽は、まったく違うジャンルのように思われるかもしれませんが、実はとても近い関係にあると、あらためて感じています。

――具体的にどのような点ですか?

竹内:どちらも生で行なわれるもので、変化が一瞬で訪れるという点です。そもそもスポーツは、応援も含めて音楽や映像と密接な関係があります。実際に試合の演出や進行をやってみて、その関係性というか親和性に気づかされました。演出する側としては、ミュージシャンの個性をどう出すのかと、アスリートのスキルやフィジカルをどう観客に見せるかは同じものだと感じています。『3×3.EXE PREMIER』は、ショッピングモールのような空間でも行なわれるので、施設的にもアーティストのライブと共通点があります。音楽というエンタテインメントで培った経験がスポーツでもうまく活かすことができました。

都会の喧騒のなかにも出現する競技場。東京・神田オフィスビル「ワテラス」。

 

スポーツが本来持っているエンタテインメント性を最大限に魅せる360度の演出

――『3×3.EXE PREMIER』の魅力を教えてください。

竹内:街中で、プロスポーツ選手のプレーを間近で見られるというのは『3×3.EXE PREMIER』の最大の特徴であり、インパクトと言えます。身長が2m近い選手がいて、スピードがあり、ダンクシュートのような派手なパフォーマンスも多いですね。選手たちのダイナミックな動きや戦っている姿は、ほかのエンタテインメントよりお客さんの視線を集めやすいです。試合時間も10分と短いので、得点の競り合いや試合ごとのメリハリもありますし、迫力のあるプレー、あるいは2ポイント(5人制における3ポイントシュート)のような緊張感のあるプレーも見られます。一部有料シートはありますが、基本的には無料観戦なので、お客様が多く集まるような空間でのイベントとしては注目されやすいですね。

コートサイドで、選手と同じ目線で迫力あるプレー観戦ができるのも「3×3」の魅力。


――5人制バスケットボールの「B.LEAGUE(Bリーグ)」とは違うのでしょうか?

竹内:国内の5人制のトップリーグのシーズン開幕が秋なので、「Bリーグ」や「Wリーグ」の選手が、シーズンの合間に『3×3.EXE PREMIER』のチームに参加して活躍しています。月曜から金曜まではサラリーマン、週末はプロというような選手もいます。プロ選手といっても、野球やサッカーとは違ったライフスタイルだと言えるでしょう。また、チームのオーナーになるのもそれほど大きな予算を必要としないので、地域活性化の一貫として参加しているチームもありますし、「Bリーグ」のチームのなかにも、『3×3.EXE PREMIER』のチームを編成して参加しているところもあります。

ホーム開催の「立川DICE」のGM劉生氏(左)と設営について相談をする竹内。


――『3×3.EXE PREMIER』は、試合中にはDJが入るなど、エンタテインメントのライブ感を重要視していますね。

竹内:今はいろいろな競技大会でエンタテインメント要素が求められるようになってきています。メジャーリーグやNBAなど、海外のスポーツの会場では必ず流れる定番の音楽もあります。そのなかで重要な存在がスポーツDJです。DJといっても、自分好みの曲でお客さんを盛り上げるわけでなく、選手の好きな曲、チームカラーに合う曲などをリサーチして、試合の流れに合わせて音で試合を盛り上げる役割を担っています。DJの技術を見せたりするものではなく、クラブなどとはまったく違った音楽の知識も必要になりますから、スポーツDJは新しいDJのスタイルと言っていいのかもしれません。

試合前だけでなく試合中も、DJのパフォーマンスが会場を盛り上げる。

ゴールを中心に360度どこから見ても楽しめるのも「3×3」ならでは。

緊迫した試合が続くなかで、チアリーダーの存在も欠かせない。


――『3×3.EXE PREMIER』はユニークな場所で開催されることでも有名ですね。

竹内:今シーズンの開幕戦は、神田のオフィスビルの中で行なわれました。ショッピングモールや平安神宮でも開催されましたし、この夏は焼津漁港での試合も予定されています。ファイナル会場は、六本木ヒルズアリーナです。
会場は、人通りの多い街中の広場などが多いです。ライブとの大きな違いは、バックステージがないこと。試合コートが360度ステージのようになるわけです。360度を会場とすることで、より多くのお客様に観戦していただけます。「3×3」はコートが5人制の約半分(15×11m)と狭いので、より多くの人に生の迫力を体験してもらえるように全方位から見られるようになっています。

ショッピングモール特設会場では、多くの来館者が足を止めてプレーに見入る。

8月に開催が予定されている焼津漁港。昨年の試合の模様。


――コンサートとスポーツ競技、演出をする上で技術的な違いはありますか?

竹内:ハード的には同じものを使っていますが、違いはありますね。音響システムは、より重低音を効かせるようにしていて、一方、試合ではMCのクリアな声を届けることや、レフリーのじゃまにならないような音響を考えています。音響の向きや周波数はもっともっと注意して考えなければいけない点ですね。あとホイッスルの音をPAに乗せる場合には、きれいに聞こえるようにしています。コンサートに必要な音作りと同様に、我々も試合で求められる音作りに対して、こだわりをもって取り組んでいます。

照明も、競技に必要な均等な明るさやハーフタイムショーや試合のない時間帯に必要な華やかな照明があり、素の照明と演出の照明と二軸で考えなくてはいけません。

あと、音楽はアーティストが主体ですが、スポーツは競技が主体になります。時間に関して言うと、ライブの場合は演奏時間の増減は曲数で調整できますが、スポーツの場合は試合時間が10分間と決まっていても、タイムアウトやファウルで時間通りには進行するとは限りません。予定していた時間よりも長くなる場合もありますが、試合時間を短縮するわけにもいかない。アーティストとアスリート、どちらにもリスペクトを持って仕事に取り組むわけですが、競技として試合を成立させるための舞台作りに対する考え方は、ライブとはまったく違うと言えます。

TO(テーブルオフィシャル)で演出面も含めて、会場全体がコントロールされている。


――近年、スポーツにおける映像利用の進化はすごいものがあります。

竹内:「Bリーグ」が良い例でしょう。3年前の開幕戦ではコート全体にプロジェクションマッピングを映して試合が行なわれました。今は各チームのオープニングやハーフタイムの演出でも、プロジェクションマッピングやパイロ(花火)などが使われています。また、スタジアムやアリーナに設置されているビジョンは、得点ボードとして活用するだけなく、最近は試合のリプレーや判定にも使われています。スポーツの試合に映像利用はなくてはならないものになっていますし、その映像をオープニングやハーフタイム、あるいはエンディングの演出と連動できるのも素晴らしいところです。『3×3.EXE PREMIER』はまだ基本は無料観戦で試合を楽しんでもらうことを最優先しているので、映像を活かした空間作りはこれからです。競技によっては、まだチケットを買って試合を観るというエンタテインメント文化が成熟していません。2020年以降、そうした流れも大きく変わって、いろいろなスポーツを盛り上げるために試合での映像活用が進むでしょうし、これからエンタテインメントに適した多目的なアリーナやスタジアムが増えてくるのではないかと思います。

『3×3.EXE PREMIER』はネットを通じたライブ中継も行なわれている。

 

エンタテインメントと融合したアーバンスポーツの新しい形を追求していく

――今後、日本は大きなスポーツ大会が続いていく過程で、スポーツとエンタテインメントがより密接になっていくと言われています。そのなかで、『3×3.EXE PREMIER』はどのような役割を担うのでしょうか?

竹内:『3×3.EXE PREMIER』を含めたアーバンスポーツは、コンパクトなスペースで人工的に試合会場を作って競技を行ないます。多くの競技はストリートスポーツから進化したもので、いわゆるエクストリームスポーツと呼ばれるスケートボードやBMXも同じです。ブレイクダンスなども今後はそうした範疇に入ってくるでしょう。そのなかで『3×3.EXE PREMIER』は、一般の方が最も入りやすいスポーツだと考えています。バスケットボールという競技は、性別を問わずに換算すると、国内でもっとも競技人口が多いスポーツです。ですから、人が集まりやすい場所で開催すれば、自然に足が止まって、試合に見入ってしまう。試合展開がおもしろければ大いに盛り上がるスポーツです。女子も男子も同じ場所で開催されていますから、アーバンスポーツのなかでも認知が広がりやすいと考えています。

――今後さまざまなアーバンスポーツがエンタテインメントとして広がっていく可能性がありますね。

竹内:スケートボードやインラインスケートができるスケートパークが各地にできつつありますし、アウトドアショップの店内にボルダリングの壁を作っているところもあります。もともと土地の狭い日本でコンパクトにスポーツを楽しめるアーバンスポーツ施設は、今後どんどん増えていくでしょうね。そして、私がこれからに期待しているのはブレイクダンスです。かつて「ダンス甲子園」というテレビ番組の企画がありましたが、そこで活躍していた世代が指導者に回ったり、ダンサーとして活躍したりして、その指導者になった世代の次の世代の人たちが中心となって、これからはスポーツ競技となっていく方向です。アーバンスポーツは、『3×3.EXE PREMIER』の例を出すまでもなく、音楽や映像と一体化したエンタテインメント性が求められます。ダンスはその一端を担っていますから、これからのアーバンスポーツの主流になっていく可能性はありますね。

アーバンスポーツは、街のなかでフリースタイルの良さを残して競技化していくものなので、そこが若い方の憧れや興味につながっていくわけです。プレイヤー自身も勝ち負け以上に、人前で自分のかっこいいプレーを魅せるというエンタテインメント要素が詰まっています。プレイヤーにいかに最高のパフォーマンスを発揮してもらうか、また観客もプレーにのめり込んで、ゲームの一瞬一瞬を楽しむ、そんな空間作り、演出をこれからも追求して、新しいスポーツの形を作っていきたいですね。

『3×3.EXE PREMIER』は女子カテゴリーもある。ハードなプレーは観客を釘付けに。

見て楽しい。参加しても楽しい。そんな空間作りがアーバンスポーツの魅力。

『3x3.EXE PREMIER』開催スケジュール

8月17日(土)、18日(日) 八戸駅西口(青森県八戸市)/平安神宮前(京都府京都市)/鹿児島中央駅前(鹿児島県鹿児島市)
8月24日(土)、25日(日) 東京電機大学(東京都足立区)/焼津漁港(静岡県焼津市)/EXPOCITY(大阪府吹田市)

■プレーオフ
9月7日(土)、8日(日) 六本木ヒルズアリーナ(東京都港区)

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