子どもたちにエンタメ業界の仕事を知ってもらう教育支援活動――活動を通して伝えたい思い【前編】
2024.06.27
2024.06.28
ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が取り組む教育支援活動をフィーチャー。後編では、担当者たちの教育支援活動に対する思いと今後の展望を聞いた。
灰野一平
Haino Ippei
ソニー・ミュージックレーベルズ
鳥本綾子
Torimoto Ayako
ソニー・ミュージックエンタテインメント
山本秀哉
Yamamoto Shuya
ソニー・ミュージックエンタテインメント
記事の前編はこちら:子どもたちにエンタメ業界の仕事を知ってもらう教育支援活動――活動を通して伝えたい思い【前編】
──小中高のカリキュラムに“総合的な学習の時間”が導入され、学校側も探究学習やキャリア教育に力を入れています。いっぽう、企業のCSR活動も活発化しており、教育支援活動を通じて社会貢献をする動きが見られます。企業と学校の結びつきが生まれやすい状況になっていることについて、どう思いますか?
鳥本:そうですね。企業の社会貢献活動に取り組む姿勢は、年々重要視されるようになっていると感じます。ソニーミュージックグループとしても、これまではSMEの広報が教育支援活動を継続して行なってきましたが、サステナビリティ推進にかかわる重要な取り組みとして社内外の注目度が高まっているので、次世代に向けて教育支援活動をどう拡大させていくかが、これからの課題になると思います。
──次世代に向けて教育支援活動を広げていくとのことですが、今後の展開についてどう考えていますか。
鳥本:現在、SMEの広報スタッフが主導して行なっている「会社訪問プログラム」と「出張授業」に、ソニーミュージックグループ各社の現場スタッフが加わる仕組みを作っていきたいと考えています。
もちろんすべてということになると負担も大きくなってしまうので、一部のパートだけ参加してもらうとか、質疑応答のパートだけオンラインで参加してもらうという方法も考えています。
──現場スタッフが教育支援活動に加わることで、どのような効果が生まれるのでしょうか。
鳥本:やはり伝える情報の密度が高まることが一番だと思います。「ミュージックビデオはどうやって作ってるんですか?」と聞かれたときに、日々、その現場を経験している人が話すのと、そうでない人が話すのでは、話のリアリティに大きな差があります。
それによって受け取る側の記憶への残り方も変わってくると思うので、やはり現場の担当者に参加してもらうのは重要だと考えています。そしてこの活動を拡大させていく為には、賛同してくれる仲間を増やしていくことが必要なので、そのためにもまずは一緒に参加してもらい、この活動の意味や必要性を理解してもらえたらと思っています。
──教育支援活動の目標は、授業を受けた学生たちのなかから、将来的にエンタテインメント業界を目指す人材が現われることでしょうか。
鳥本:起こり得ないとは言いませんが、仮にそういう人が現われたとしても、自分の職業を選ぶ要因は複数あってそんなに単純ではないと思います。私たちがこの活動に取り組むのは、業界を目指してもらうというより、音楽やアニメ、キャラクターなど、エンタテインメント自体に興味を持ってもらうきっかけになれればと考えています。ひとりでも多くの学生の方たちの記憶に残れば良いな、という思いですね。
それに、エンタテインメント業界の職種は多岐にわたります。例えば、アーティストのプロデュース案を考える授業で、衣装を描くのが楽しかったならスタイリストやデザイナーを目指すきっかけになるかもしれません。なので、音楽業界以外でも、子どもたちが将来を選択するときのヒントになれたらという思いも持っています。
──灰野さんと山本さんが音楽業界を目指したのは、どのようなきっかけがあったからでしょう。そこに、子どものころの原体験は影響していますか?
灰野:私はもともとバンドをやっていたんですが、当時のソニーミュージックの新人発掘・開発を担当するSDチームの人に声をかけられたことがあって。そのとき、「ソニーミュージックで働くスタッフの人たち、カッコ良いな」と思ったんです。そこで、バンドでプロを目指すのを選択肢から外したときに、レコード会社に入ってみようかなと思いました。
ただ、言われてみれば幼稚園時代の影響はあるかもしれないですね。自分が幼少期に通っていたのがキリスト教系の幼稚園で、よく合唱をしていたんです。父親もグリークラブのメンバーで、よく「俺の声に合わせて、ハモってみろ」なんて言われていたのですが、子どもながらに「ハーモニーってきれいだな」と思っていたんですね。
実際、A&Rになってからも、RYTHEMやLittle Glee Monsterといったハーモニー系アーティストを担当することが多くて。これはこじつけかもしれませんが、子どものころの体験が影響しているのかもしれないですね。
山本:自分も、幼稚園時代の影響があるかもしれません。通っていたのが音楽に力を入れている幼稚園だったので、ハーモニカ、木琴などに触れたり、マーチングをやったりしていました。そのころはあまり楽しいとも思わず、本格的に音楽に興味を持ち始めたのは中学からですが、小さいころから音楽に囲まれた環境だったのは間違いないです。
──企業の社会貢献活動は、本社機能を持つ会社の広報、もしくはそれに近しいセクションが中心になることが多く、それ以外の部門は関わる機会が少ないのではないかと思います。こうした活動の意義について、現場の皆さんはどう捉えていますか?
山本:教育支援活動を通じて、子どもたちに我々の活動を知ってもらうことがまず重要ですし、もしかしたら親御さんにも興味を持っていただけるかもしれません。音楽は身近にあふれているものなので、その歴史や制作工程を親子で知ってもらえればそれだけでも意味がありますよね。
アーティストがどのような活動をしているのかを知れば、音楽の聴き方が変わるかもしれないし、そこから音楽についてもっと深く知りたいと思ってもらえたらうれしいので、すごく重要な活動だと思います。
灰野:私がこの会社に入ったとき、実は想像していた仕事とはまったく違っていたんですね。特にA&Rという仕事は東京に集中していて、人数も限られたとても狭い世界なんです。特に自分は大阪在住だったので情報を得る手段もなくて。
でも、せっかく自分が携わった仕事ですから、多くの人に知ってもらいたいし、そのうえで、次世代の方々がエンタテインメントの職業を目指してくれるようなことがあれば、例えビジネス的な実利がなかったとしてもうれしいことです。こうした活動は、今後もつづけていくべきだと思います。
加えて、音楽業界でもSDGsやサステナブルな取り組みへの意識は高まっていて、教育支援活動や地域貢献・共生活動というのもその一環に含まれます。エンタテインメントを生業とする企業に所属する者のひとりとして、積極的に協力していきたいと考えています。
──教育支援活動や「番町STEAM教育プロジェクト」を通して、エンタテインメント業界を知ってもらうだけでなく、そこで働く人たちのリアルな姿を学生の皆さんに見せることが、彼らの視野を広げるきっかけになるのではないかと、話を聞いていて思いました。
鳥本:エンタテインメントは世の中にあふれていますが、そこで働く人たちとは、普段なかなか接する機会がなく、実際どういった仕事をしているのかわからない方も多いと思います。そんななか教育支援活動を通じて、私たちの仕事に加えて、実はいろんな職業の方々が集まって、ひとつの作品を作っているということも知ってもらいたくて。ちょっと視点を変えることで、世の中にはさまざまな仕事があり、多くの人たちが支え合っていることに気づいてもらえたらと思います。
また、今の子どもたちはいろいろな授業が受けられる環境ではありますが、そのいっぽうで未来に焦りを感じている子も多いと思うんですね。小さいころに将来の夢を聞かれても、なかなか答えられない子もいます。ですから、子どもたちには「そんなに焦らなくて良いよ」ということも一緒に伝えられたらと思いますね。
私も初めから今の仕事に興味を持っていたわけではありません。さまざまな選択肢があり、一つひとつ選んでいった先で広報という仕事に出会いました。なので、焦らずに目の前のことに取り組み、じっくり将来の道を探してもらえたらと思います。
記事の前編はこちら:子どもたちにエンタメ業界の仕事を知ってもらう教育支援活動――活動を通して伝えたい思い【前編】
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
2024.06.27
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