ファンの心を動かすグッズはどうやって生まれる? LBEビジネスを支えるグッズ開発の裏側①
2026.10.14


『スヌーピーミュージアム』や『CREATIVE MUSEUM TOKYO』、『YURAKUCHO MUSEUM』、『Sanrio characters Exhibition Hotel Floria Tokyo』(以下、『ホテルフローリア トーキョー』)など、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)が手がけるLBEビジネスでグッズ開発、販売を担ってきたマーチャンダイジング(以下、MD)チームが、どのような考えでグッズ開発を行なっているのかを紐解くインタビュー。
後編では、9月19日から『ホテルフローリア トーキョー』で販売を開始した新グッズを紹介しながら、スタッフが考える“いいグッズ”の条件や、LBEビジネスにおけるMD事業の展望を聞いた。
目次

高橋 亮
Takahashi Ryo
ソニー・クリエイティブプロダクツ

今井清貴
Imai Kiyotaka
ソニー・クリエイティブプロダクツ

中平青知杏
Nakahira Cettia
ソニー・クリエイティブプロダクツ

池内侑香
Ikeuchi Yuka
ソニー・クリエイティブプロダクツ

中庭香乃
Nakaniwa Kano
ソニー・クリエイティブプロダクツ

沖田頼人
Okita Raito
ソニー・クリエイティブプロダクツ
前編はこちら:ファンの心を動かすグッズはどうやって生まれる? LBEビジネスを支えるグッズ開発の裏側➀
──2026年7月15日から2027年5月31日まで、東急歌舞伎町タワーで『ホテルフローリア トーキョー』が開催中です。9月19日からは、東京会場限定のオリジナルグッズの販売がスタートしますが、こちらの詳細を教えてください。
中庭:『Hotel Floria』は、昨年韓国で開催された没入型体験イベントです。東京での開催にあたり、当初は韓国でも展開されたグッズを販売していましたが、9月19日より日本オリジナル商品も登場します。
──どのようなコンセプトで商品を企画したのでしょうか。韓国で企画されたアイテムとの違いについても教えてください。
高橋:そもそも『Hotel Floria』は、韓国のデジタルデザイン&アートカンパニーd'strict(ディストリクト)とSanrio Koreaが共同で開催したエキシビションです。日本においても、d'strictが得意とするメディアアート、体験型展示をそのまま再現し、販売するアイテムについても韓国のスタイル、デザインを踏襲しています。
ただ、韓国で展開されたアイテムは、アパレルや食品、雑貨といったアイテムの展開数が少なく、使われているキャラクターも限定的だったんです。
そこで、日本展開にあたっては、国内のファンのニーズに合わせてラインナップを拡充し、約100点のアイテムを順次販売していく予定です。
中庭:。日本のファンには、キャラクターグッズを身につけて楽しみたいという方も多いので、トートバッグやアパレルなど日常的に身につけるものをたくさん用意しました。

「Tシャツ サンリオキャラクターズ」 PINK / WHITE(S・M・L・XLサイズ)各4,180円(税込)©2026 SANRIO CO., LTD. (APPROVAL NO. P180519-3)
加えて、本イベントのグッズという特別感を出すために、会場での記念撮影に使ったり、イベントの世界観を持ち帰ってもらえたりするような、『ホテルフローリア トーキョー』ならではの品揃えも意識しました。
──SCPがライセンスビジネスを展開しているキャラクターとの違いを、どのように感じていますか?
中庭:サンリオキャラクターは10~20代の女性層のファンが多いと感じており、なかでも『ホテルフローリア トーキョー』はピンクを基調としたファンシーなイメージが特徴のひとつです。『ピーナッツ』や『ピングー』とは、また違った種類のかわいさだと思います。
しかも、日本の“かわいい”を韓国でアレンジしたのが『Hotel Floria』。デザインからも韓国らしさを感じられ、私たちとしてもこれまでにない挑戦となりました。
──160点のアイテムを順次発売するということですが、季節ごとのアイテムも販売されるのでしょうか。
中庭:そうですね。直近で言うと、ハロウィンに向けたアイテムを企画しています。また、韓国とは異なる東京会場ならではのアートを使用し、『ホテルフローリア トーキョー』での体験を日常に持ち帰れるような商品展開も考えています。
──10月28日から大阪で『細田守の原点/展』、11月21日から福岡で『可愛いだけじゃない!?ピングー展』(以下、『ピングー展』)が開催予定です。それぞれの巡回先では、新しいグッズも登場するのでしょうか。
高橋:はい。どちらも巡回会場で新グッズを発売する予定です。東京会場でのお客様の反応を踏まえて制作した、新たな商品も登場しますので、ご期待ください。
──推し活やコレクション需要など、グッズを取り巻く環境も変化しています。今後、LBEビジネスにおいてグッズはどのような進化を遂げていくと思いますか?
池内:カスタムアイテムのように、自分らしさを表現できるグッズの種類が、さらに増えていくのではないかと思います。
例えば、『ピングー展』では、キーボード型パーツとチェーンを組み合わせてカスタムできるキーホルダーを発売し、『ピングー展』では、それに加えて好きなシールとクリアマルチケースを組み合わせるフレークシールバイキングも展開しました。
会場で好きなパーツやデザインを組み合わせて、自分だけのアイテムを作る。そうした体験や自己表現まで含めた商品が、今後もさまざまな形で展開されていくと思います。
──『スヌーピーミュージアム』では、オリジナルのぬいぐるみやマスコットを作るワークショップを開催しています。こちらもカスタムアイテムと通じるものがありますね。
今井:そうですね。展示と体験をシームレスに楽しめることが、LBEビジネスならではの魅力だと思います。
ただ、展示は展示、グッズはグッズと、それぞれ別の企業が企画、制作をしている場合は、それが難しいこともあります。その点、SCPは展示、グッズの両方に関わっているため、思い描いたアイデアをそのままかたちにできますし、展示と商品、体験を結びつけやすい。
キャラクターのマーケティングやブランディングにも一役買えるメリットがあり、しかも、そこで得たデータや知見をライセンシー企業の皆様と共有するという還元方法もあります。
──ミュージアムや展覧会では、トレーディングアイテムのランダム販売を行なうケースも多々あります。こうした販売方法は、今後も続いていくのでしょうか。
中平:トレーディングアイテムは、“何かちょっとお土産に欲しいな”というときに手に取ってもらいやすいアイテムです。比較的手ごろな価格帯の商品も多いので、これからも人気は続くと思います。
今井:“このなかだったらこの絵柄が欲しい”という感情はあると思いますが、最終的に“どれが当たってもうれしい”というデザインであれば、より気軽に楽しんでもらえますよね。
池内:実際に『ピングー展』で、ブラインド商品として販売した靴下はとても好評でした。“何が出るかわからない”というお楽しみ要素も含めて、今後もいろいろな商品を展開していきたいですね。
──抽象的な質問ですが、皆さんが考える“いいグッズ”とは、どのようなものでしょうか。
高橋:近年、好きなキャラクターに対するお客様の思いは、より深く、多様になっています。
それにともない、販売する商品に求められるクオリティも高まっています。“身につけられるものがいい”“その場で開封して楽しみたい”“自分なりにカスタマイズしたい”など、幅広いニーズに応えられることが、“いいグッズ”の条件ではないかと思います。
また、その商品をきっかけに、キャラクターやIPをその後も長く好きでいてもらえるような商品づくりも大事にしていかなければいけないですね。
今井:私は“コミュニケーションのきっかけになるもの”だと思います
例えば、持っている人を見たら思わず声をかけてしまうようなユニークな商品や、かわいい商品が目に入ると、“それ面白いね”“かわいいね”というように会話のきっかけになりますよね。アニメのイラストをあしらったグッズなら、“あ、そのアニメ、好きなんだ”と会話が始まることもあります。
自分の“好き”を表現できて、そこから人とのコミュニケーションにつながっていく。そういうものがいいグッズではないかと思います。
池内:私は、“その人の日常を豊かにしてくれるもの”だと考えています。
グッズを見て笑顔になったり、疲れを癒してくれたり。そういったプラスの効果が生まれるものがいいグッズではないでしょうか。
中庭:キャラクターグッズに関して言えば、そのキャラクターをさらに好きになれるものだと思います。
例えば『スヌーピーミュージアム』には、原作コミック『ピーナッツ』をより多くの皆さんに届けたいという思いがあります。そのため、グッズを企画するときにも、“このストーリーが面白いから、商品に使おう”“このコマのイラストを使って、スヌーピーの新しい魅力を知ってもらおう”という発想で考えています。
見た目のかわいさも大事ですが、その作品自体の魅力を表現し、キャラクターをさらに好きになってもらう。キャラクターの背景や作品の世界観に興味を持ってもらえるような商品がいいグッズだと思います。
沖田:キャラクターグッズは、生活必需品ではありません。だからこそ、その商品を購入したことで少しでも豊かな気持ちを味わってほしい。そんなうれしさや幸せを提供できるのが“いいグッズ”だと思います。
展覧会では、感想をSNSに投稿する方が多く、展示はもちろん、グッズの感想をダイレクトに知ることができるので、とても励みになっています。商品のコンセプトやデザインについて、意図した通りの反応を見ることができると、とてもうれしいですし、次も頑張ろうという気持ちになりますね。
中平:世の中は、たくさんのモノであふれています。そんななか、お客様に長く愛されるのが“いいグッズ”だと思います。
私はピンガのぬいぐるみがお気に入りで、中庭さんが作ってくれたヘッドドレスをつけたり、机に置いたぬいぐるみを眺めながら“今日も仕事を頑張ろう”とやる気をもらったりしています。私たちが作った商品も、誰かのお気に入りとして長く大切にしてもらえたらうれしいですね。
──今後挑戦したいことや、新たに取り組んでみたいことはありますか?
高橋:現在SCPでは、ライセンス事業とLBE事業を両輪として成長させています。そして、我々のチームはLBE事業を支える立場として、今後もSCPが企画、運営するミュージアム、展覧会でグッズを通して新たな価値を提供していきたいと考えています。
かつて『スヌーピーミュージアム』でオリジナルグッズを企画したとき、これまでの“かわいい”イメージからスタイリッシュな雰囲気に一新したことで、『ピーナッツ』のブランド力も向上しました。
リバイバルヒットの兆しが見られる『ピングー』も、『ピングー展』で展示、グッズともに好評を博し、さらに注目を集めています。この成功をほかのIPにも横展開し、さらなるヒットにつなげたいですね。
そのうえで、MD事業部が果たすべき役割も、ますます広がっていくと思います。これまでとは違うブランディングをしかける際、いきなりライセンシー各社にお願いするのではなく、まずは自社で商品を製造し、効果を検証したうえで、“こういう商品が市場で受け入れられていますよ”と還元する。
そうやってファンに喜ばれる商品を市場に投入することで、IPのファンを増やし、私たちはまた別のIPを育てていく。こうした好循環を生み出せると、SCPらしいIPの開発、育成につながるのではないかと思います。
──MD事業部も、今後さらに規模を拡大していくのでしょうか。
高橋:そうしたいですね。LBE事業のプレゼンスが高まるにつれ、MD事業のボリュームも増えてきました。それに、LBE事業本部の事業ドメインは、ミュージアムや展覧会の企画、運営にとどまらず、将来的には、新たな体験型エンタテインメントにも挑戦したいと考えています。新しい体験とそれに紐づく新しい商品を生み出していくためにも、MD事業部をさらに強化していきたいと考えています。
前編はこちら:ファンの心を動かすグッズはどうやって生まれる? LBEビジネスを支えるグッズ開発の裏側➀
©2026 Peanuts Worldwide LLC
©2026 JOKER.
文・取材:野本由起
撮影:干川 修

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