『イナズマロック フェス 2018』西川貴教が語る“イナズマ“の魅力と今年の見どころ<後編>
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西川貴教が、地元・滋賀に恩返しをしたいという想いから立ち上げた“イナズマロック フェス”(以下、“イナズマ”)が、今年で10回目を迎える。
着実にファンを増やし、ブランド力を高めている“イナズマ”がどのように成長してきたのか? そして、フェスの舞台裏にどのようなストーリーが隠れているのか?
本特集では、“イナズマ”の歴史を振り返るとともに、今年の“イナズマロック フェス2018”の見どころをお届けしていく。
特集第1回目は、西川貴教にこれまでの“イナズマ”を振り返ってもらい、初回開催時のエピソードや、2年前にフェスを途中中止した時のスタッフとのエピソードなどを語ってもらった。
――2009年にスタートした“イナズマ”がついに10回目を迎えますね。まずは、西川さんの故郷、滋賀県でイベントを立ち上げることになった経緯を聞かせてください。
西川:“イナズマ”を立ち上げることになったのは、2007年に僕の地元である滋賀県の嘉田由紀子知事(当時)との対談の中でお話ししたことが発端です。本来はそこで地元愛や楽しい思い出を話すところなんでしょうけど、僕は昔から地元に対して感じていたことを正直に話したんです。
例えば、隣に京都があるので観光のイメージが弱いこと。上京すると普段の会話で滋賀県が話題に出ることもないし、他の地域のように東京にアンテナショップができて名産品や地域が注目されるということもなかった。(※東京の滋賀県アンテナショップは2017年にリニューアルオープン)そういった、僕が肌で感じていたことを知事にお伝えすると、「じゃあ、我々のほうで受け皿を作ったらやってもらえますか?」と言ってくださって。僕も「もちろんです、やります」とお答えしたら、翌年に初代“滋賀ふるさと観光大使”に任命していただき、そこから一気に2009年の開催を目指していくことになりました。
あとはもう一つきっかけがあって、実はその頃、母が病気になって地元に帰る機会が増えていたこともあって、「地元に貢献できることをしたい」という想いがそれまでより強くなっていたんですよね。
嘉田由紀子元滋賀県知事(写真左)と西川貴教
――2008年秋に“観光大使”に就任してから第1回の開催まで約1年。何が大変でしたか?
西川:僕自身がそうだったんですが、滋賀に住んでいると、大きなイベントは京都や大阪に“行くもの”という意識が強い気がするんです。地元の街に何かを観に行くことや、イベントを起こすということに対して腰が重いので、各所に伺って「みなさんとこういうことがやりたいんです」とお話ししても「なるほど……う~ん……」と、なかなか腰が上がらない。
今でこそある程度認知していただけるようになりましたが、当初は“海のものとも山のものともわからない”状態でしたしね。僕たちだけでは実現困難だったので、行政の方々が一緒についてくださったことは大きかったです。
また、最初は僕の個人事務所で始めたものですから、初めてのことだらけでどんな準備をすればいいのかも分からない。イベントの専門部署があるような大きな会社ではないので、僕を含めて全員が複数兼務になるわけです。人手は足りなくなっていくし、どんどん経費はかかっていくし、本線であるアーティストとしての活動も滞る……やらなきゃいけないことに追われて、もうパニックでしたね。
――第1回を振り返ってみるとどんな想いがありますか?
西川:1回目は勢いだけで始めた感じだったので、観に来ていただいたみなさんに満足してもらえる内容だったかどうか……今思えば何もできていなかったでしょうね。とにかく「精一杯やった!頑張りました!」という感じでした(苦笑)。
そんななかで付き合ってくれたアーティストのみなさんや関係者のみなさん、足を運んでくれたみなさんには本当に感謝しかないです。でも、あの体験をもう一回やれって言われたら、「いや、ムリムリムリムリ!」ってなりますね(笑)。
――続けていくなかで、できることが増えたり、進化することもあったのではないですか?
西川:毎年ちょっとずつ改善して、まるでDIY感覚(笑)。「あそこに棚があったらいいんじゃない?」「今年はここを塗り替えよう」みたいな感じで積んでいって、今もそれを続けている感じですね。
あとは、地元の方の協力ですね。 “イナズマ”が地元の他のイベントとの連携を取ったりしていくことで、良い効果が生まれることもあると思うんです。
3年前からは、“イナズマ”の派生イベントとして「イナズマフードGP」(“イナズマ”への出店をかけた飲食バトルイベント)が開催されていて、ひとつのイベントとして成り立つようにもなってきました。
そうやって力を貸してくださる方が増えてきたことで、お客さんの取り合いをするのではなく、フェスとともに地元を一緒に盛り上げていきたいという、僕らの想いが地域のみなさんに浸透してきたのかなと思います。
「“イナズマ”の時期に来られるお客様のためのメニューを考えてみました」と言ってくれる飲食店の方もいるんですが、全国各地から集まってくるみなさんを地元の方々が温かく迎えてくださる、その気持ちが嬉しいです。
――2013年からは“イナズマロック フェス 実行委員会”を設立して運営されていますが、スタッフの方々とのやり取りで印象深い出来事は?
西川:実行委員会のスタッフは、立ち上げの頃から関わってくれている方々ばかりですが、一番大きい出来事は、やはり2年前(2016年の本番2日目)の雷雨による途中中止ですね。
当日、雨と雷が酷くなってきたなかで「一旦中断します」とインフォメーションして。そこから15分ほど協議した後、僕がステージに行ってイベントの中止を発表することになったんです。それまでの約15分、裏では主要スタッフがカッパ姿で集まって、外で立ったままミーティング。最終のジャッジを僕に任せてもらったので、「天候の回復を待ちたい気持ちはあるけど、来てもらったみなさんに安全に帰ってもらうことが最優先なので、僕が出ていって挨拶します」と言いました。
誰も止めたくなかった、でも意地を張って判断を遅らせることの方が良くないと思った。そしてその僕の判断を誰も反対しなかった。一から共に手探りで作ってきた仲間だからこそ、同じ想いを共有でき、判断にブレがなくて早かったんでしょうね。我々の覚悟が決まった感じがしました。
2016年9月18日、フェス中止のアナウンスをする西川貴教
本当に短い時間でしたけど、あの時の景色は未だに思い出します。だから、昨年の2日目を台風のために中止にするという決断が早かったのは、前年を経験しているから。中止なんて起きてほしくないし、悔しいことだらけだったんですけど、そこで僕たちが来てくれるみなさんにできることは、みなさんを危険から遠ざけるということしかないんですよね。
――イベント中断、中止の情報はネットニュースでも取り上げられていましたね。
西川:イベントが中断になったり、できなかったという悔しさの方が大きいのは前提として、それが情報として広く拡散されることによって、結果的に多くの方に“イナズマ”というイベントを認識していただけるきっかけになったことも実感しています。
そして昨年は、2016年に中断になったことでパフォーマンスができなかったみなさんをもう一度あの場所にお呼びして、1年越しにイベント再開、というドラマも生まれました。
心強いアーティスト達が力を貸してくれたおかげで成り立ったわけですが、そこでまた“イナズマ”の意義を理解してもらえたのかなと。言葉ではなく姿で伝わったのではないかと思います。
最近は近畿以外の場所でも「あのイベントをやっているんだよね。頑張ってね」と言っていただけることもあって、払った犠牲はちょっと大きかったですけど、こういった反応として返ってくるのは嬉しいです。
ただ、今まで知らなかった人にも知られることで、揶揄されることはありますけどね。「なんでそんな台風の時期にやってんだよ!」とか……(苦笑)。
でも、毎年僕の誕生日(9月19日)近辺に開催しているのには理由があるんです。大人になった自分にとって誕生日というのは祝ってもらうものではなく、産んでくれた親に感謝する日。最初に話したように、“イナズマ”は僕の母親がきっかけでもあるので、そこはこだわりたかったんですよね。
――実際にご家族にも観てもらって、これまでで一番思い出に残っていることは?
西川:母親の病気が進行して……会場まで来られたのは3年前(2015年)の7回目が最後だったと思います。会話をするのもままならなくて、本当は「お疲れさま。よかったね」って言いたいんでしょうけど、それができない代わりに、いい歳をした子どもの頭を母親が撫でてくれて……あぁ、またこの一年頑張れるなって思いました。それだけのためにやっていた感じでしたしね。
来られなくなってからもニュースやテレビは見てくれていて、「今年も”イナズマ”終わったで。来年は来なあかんで」って言いに行っていて。それがモチベーションになってリハビリを頑張ってくれていたんですけどね……。10年目までは見てほしかったかな……でも、どこかで見てくれていると信じてます。
インタビュー後編では、“イナズマ”の魅力や楽しみ方、そして今年の見どころをお届けする。
取材/文:草野美穂子
■会場:滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場
■日時:9月22日(土)/9月23日(日)/9月24日(月・休)
■開場/開演/終演:12:00/14:00/20:00
※各日とも予定
※雨天決行(荒天の場合は中止)
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