『パンパンくんの日常』は、今後、日本でどんな展開に? 担当者たちに聞いてみた
2024.07.24


さまざまなキャラクターのライセンスビジネスを手がけてきたソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)が、新たにマスターライセンスを取得したちょっと過激なキャラクター『パンパンくんの日常』をフィーチャー。
韓国で生まれた『パンパンくんの日常』は、2022年7月にYouTube上でアニメーションが公開されると、またたく間に韓国のZ世代を中心に人気が沸騰。現在では、約230万のチャンネル登録者数を数え、一躍人気IPの仲間入りを果たした。そんなネットネイティブなIPをSCPの担当者たちは、どのように日本で広めていくのか? 4人の担当スタッフに話を聞いた。
目次

伊藤弘康
Ito Hiroyasu
ソニー・クリエイティブプロダクツ

大仁田弘志
Onita Hiroshi
ソニー・クリエイティブプロダクツ

友納貴瑛
Tomono Kiyon
ソニー・クリエイティブプロダクツ

三原匠洋
Mihara Takumi
ソニー・クリエイティブプロダクツ
心が弱いけれどオクジを愛する“パンパンくん”と、暴力的だけどパンパンくんを守っている“オクジ”の奇想天外カップルの日常を描く作品。韓国の作家イ・ジュヨンが2015年にWebtoonで連載を開始。2022年7月からアニメーションとしてYouTubeで配信すると大ブレイクを果たし、現在YouTubeチャンネル登録者数は230万人、毎月10万人単位でその数が増加している。
記事の後編はこちら:『パンパンくんの日常』は、今後、日本でどんな展開に? 担当者たちに聞いてみた
――まずは皆さんの略歴と『パンパンくんの日常』での役割を教えてください。
伊藤:私は、ソニー・ミュージックエンタテインメントのエデュケーション事業で関わっていた「大福くん」というキャラクターがきっかけでSCPに異動してきました。
SCPでは、これまでライセンスの営業や、各キャラクターのマーケティング業務に携わってきましたが、今年の2月にIPインキュベーション本部という部門が新設され、そこで『パンパンくんの日常』を担当しています。
IPインキュベーション本部というのは、SCPがこれまで培ってきたキャラクター、ライセンスビジネスの知見をいかし、新たなヒットIPを生み出すことを目的に設立された部門なのですが、ここで取り組む第1弾のIPが『パンパンくんの日常』ということになります。
『パンパンくんの日常』は、韓国生まれのIPであり、SNSをベースに活動しています。日本でどれくらいの爆発力があるのかは、今後、展開する施策で測っていくところですが、日本で展開するキャラクターのネクストブレイクな存在を目指して取り組んでおり、そのうえで、私は『パンパンくんの日常』プロジェクトの全般を統括する役割となります。
大仁田:私も伊藤さんと同じでソニーミュージックグループ内の別会社からの異動で、『パンパンくんの日常』に携わることになりました。
前職は、エンタテインメント業界のソリューションビジネスを手がけるソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)のクリエイティブ部門で、デザインや映像、ライブ演出、展示会の企画や制作などを行なってきましたが、自分たちで新しいIPを生み出し、育てる仕事も経験してみたいと考え、今年の2月にIP開発部にジョインしました。
SCPで最初に手がけることになったのが『パンパンくんの日常』で、主な役割は『パンパンくんの日常』のクリエイティブディレクションになります。
友納:私は翻訳やIT系の仕事を経て、4年前に中途でSCPに入社しました。これまではほかのIPのマーケティングと渉外が主でしたが、韓国のエンタテインメントに詳しかったことから現チームに引っ張っていただき、今はIP開発部で新規IPの創出に挑戦しています。『パンパンくんの日常』では、マーケティングとブランディングを伊藤さんとともに担当しています。
三原:私も中途採用でSCPに入社して、前職は映像編集の会社で働いていました。『パンパンくんの日常』のチームでは、権利元とライセンシーの皆さんをつなげるライセンス業務の窓口を担当しつつ、グッズのデザインの監修なども行なっています。
――皆さんと『パンパンくんの日常』との出会いについて教えてください。
友納:私はK-POPや韓国のコンテンツが好きでよく見ているのですが、昨年春くらいからSNSのアルゴリズムで『パンパンくんの日常』がたびたび出てくるようになったのが出会いでした。
最初に見たときは、正直、ちょっと独特なビジュアルだなと思っていたのですが(笑)、表示される頻度が増えて、何度も見ているうちに、だんだん愛おしく見えてきて。
@b2ang 빵빵이 Bling-bang-bang-born #creepynuts
♬ 오리지널 사운드 - 빵빵이의 일상
『パンパンくんの日常』の魅力のひとつは“違和感から始まる、かわいらしさ”だと思っていて、見れば見るほど愛着が芽生えていく、独特なキャラクターだなと感じています。
大仁田:私はIP開発部に異動してきて、初めて『パンパンくんの日常』のことを知りました。担当になった以上、コンテンツを理解しなくてはと思い、YouTubeを見てみたらとても面白くて。これはすごく可能性があるキャラクターだなと感じました。見せ方もいろいろ考えられるし、グッズもさまざまな形で展開できる。知れば知るほど面白いコンテンツだと思っています。
三原:自分も『パンパンくんの日常』のことは知らなかったのですが、伊藤さんから「韓国に面白いIPがある」という話を聞いて、そのときに初めて動画を見ました。最初の印象は、ものすごく尖ったキャラクターだなということと、SCPがこれまで関わってきたキャラクターはエバーグリーンなものが多かったので、それとはまったく違う雰囲気が逆に新鮮で。『パンパンくんの日常』に携われることにワクワクしました。
――伊藤さんが『パンパンくんの日常』に関する契約を主導したということですが、どういう経緯だったのでしょうか。
伊藤:「韓国で面白いキャラクターが注目されてるよ」と、友人から紹介してもらったことがきっかけです。実際にYouTubeで動画を見たら、パンパンくんとオクジという独特なデザインのキャラクターを中心に、過激でちょっとシュールな内容が描かれていて、すごく面白いなと感じました。
それで昨年の秋ぐらいに権利の獲得を検討し始めていたところ、12月に韓国でクリスマスのポップアップイベントが行なわれることを知って、実際に見に行ったんです。会場には人があふれていて、ものすごいことになっていました。
ちなみに夏にもイベントが開催されていたのですが、グッズの売り上げがそのときから約5倍になるほど、ものすごいスピードで成長していて。この勢いは日本にも届くのではないかと思い、すぐに正式な契約を申し入れました。
――日本市場における『パンパンくんの日常』の可能性をどのように考えていましたか。
友納:『パンパンくんの日常』は動画のストーリー展開もスピーディだし、世の中で流行っているミームをすぐに動画に入れていく感覚も早い。デジタルネイティブ世代のイ・ジュヨンさんが手がけられているので、さすがだなと思いますし、個人的にはスピーディに物事が進むことが多い韓国のカルチャーが反映されているとも感じます。
また、その速度感というのは、日本のZ世代にも通じるところがあると思っていて。日本ではまだ、ここまでスピード感のあるIPは数が少ないように思うので、きっと新鮮に感じてもられえるのではないかと考えていました。
――原作者のイ・ジュヨンさんとは、日本での展開についてどんなコミュニケーションがありましたか。
大仁田:『パンパンくんの日常』は韓国で生まれたIPで、当然ながらそこから生まれるコンテンツは韓国向けに作られたものです。だからこそイ・ジュヨンさんは、日本での展開については我々に積極的に意見を求めてくださるのでありがたいです。
我々もどうすれば『パンパンくんの日常』をより良い形で日本に広められるか、SCPが培ったキャラクタービジネスの知見も加えながら、いろいろと提案させてもらっています。
まだ、お会いしてから長い月日が経っているわけではありませんが、すごく良い関係性が構築できているように感じていますし、順調に日本展開の準備を進められています。
三原:イ・ジュヨンさんは、こちらからあれこれお願いしなくても、「こんなのはどう?」と率先してイラストのアイデアを提案してくださるんです。イ・ジュヨンさんにとっては日本で作品を展開するのは初の試みですが、そこで保守的になるのではなく、むしろ攻めるような感じがあって。ほかのIPとはまた違ったかたちで、これから盛り上げていけるのではないかと感じています。
伊藤:イ・ジュヨンさんと一緒に『パンパンくんの日常』の日本展開を作れているなという実感があります。彼は韓国の若者をターゲットにコンテンツを作ってきたので、当然ながらこれまでは日本のマーケットのことは考えていなかったわけですね。
ですが、日本での展開を行なうにあたり、彼自身も「日本ではこういうものが受ける」「日本ではこういう内容は良くない」ということを含めて、我々の意見に耳を傾けながら、一緒に考えてくれています。
売り出し方、プロモーションも含めて、本人と直接コミュニケーションができるのはとてもありがたいことだと思いますし、SCPがこれまで扱ってきたIPのなかには、エバーグリーンであるがゆえに、原作者とはもうお会いすることができない場合もあります。その視点でも、『パンパンくんの日常』は刺激的だと思いますね。
――2024年5月に開催された、世界最大級のK-POP Fan & Artist Festival『KCON JAPAN 2024』で、『パンパンくんの日常』もブースを出展しました。どんな手応えがありましたか。
伊藤:K-POPアーティストの出演に加え、コスメなどのファッション、グルメなど、さまざまな韓国カルチャーを一覧できるイベントには、当然韓国カルチャーが好きな人たちが集まるので、そこでプロモーションを行なうのがタイミングとしてもベストだろうと考えていました。また、来場者の中心がZ世代というのも『KCON JAPAN 2024』に出展することにした要因です。
友納:私はプライベートで昨年の「KCON JAPAN」を観に行っていたんです。なので、来場者や会場の雰囲気はある程度把握していましたし、そこでどういったマーケティングができるのかもイメージできました。
そのうえで、日本で『パンパンくんの日常』を広げる順番を考えたときに、最初は韓国カルチャーに興味がある層に訴求するのが一番だろうと考えていたので、そのタッチポイントはこのタイミングしかないなと思い、伊藤さんに提案しました。
大仁田:「KCON JAPAN」の事務局であるCJエンタテインメントの担当者の方が『パンパンくんの日常』を知っていたこともあり、イベント内のブースや展示スペースの確保にも相談に乗ってもらえて。
本番では、ZOZOマリンスタジアムと幕張メッセのふたつのライブ会場で映像が流れたので、来場者のほとんどが目にしたと思いますし、「KCON JAPAN」用の描き下ろしビジュアルを使ったブースでオリジナル映像を放映するなど、かなり気合が入ったものになりました。
会場のあちこちに『パンパンくんの日常』のインパクトがあるビジュアルを展開できたので、初めて『パンパンくんの日常』を目にした方には、記憶に残るファーストインプレッションになったのではないかと思いますし、既にご存じの方は新しいビジュアルを見ることで『パンパンくんの日常』の日本展開を期待できたのではないかと思います。
『パンパンくんの日常』のターゲット層と、来場者層がマッチしていたので、予想以上にポジティブな反応がたくさんあり、やはり『KCON JAPAN 2024』への出展は正解だったなと実感しています。
後編では、今後の日本での展開について具体策を聞く。
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
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