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エンタメビジネスのタネ

“螺旋丸が撃てる”アトラクションはどうやって生まれた? IP×楽曲×テクノロジーの可能性②

2026.07.31

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東京・お台場の東京ジョイポリスにオープンした新アトラクション『NARUTOミュージックダンサー』。本アトラクションは、いきものがかりの「ブルーバード」(2008年7月)に合わせ、プレイヤーがナルトと一緒に踊る体験型アトラクションだ。

本アトラクションの開発に携わったプロジェクトメンバーたちに、IP、楽曲、技術をかけ合わせた新しいビジネスの可能性について聞いた。後編では、アトラクションの制作秘話や今後のビジネスの展望ついて語る。

  • 宇佐美のプロフィール写真

    宇佐美 俊輔

    Usami Shunsuke

    ソニーマーケティング
    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 小倉のプロフィール写真

    小倉 翔

    Ogura Sho

    ソニー

  • 菊田のプロフィール写真

    菊田省吾

    Kikuta Shogo

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 田巻のプロフィール写真

    田巻海咲

    Tamaki Misaki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『NARUTOミュージックダンサー』とは?

NARUTOミュージックダンサーの画面写真

7月24日に東京・お台場の屋内型遊園地「東京ジョイポリス」に新アトラクションとして登場。ソニーが開発したマーカーレスモーションキャプチャー技術を活用したリズムゲームだ。最大5人(最小1人)でプレイ可能で、プレイヤーは『NARUTO-ナルト- 疾風伝』のオープニングテーマ、いきものがかりの「ブルーバード」に合わせ、画面に表示されるポーズガイドを見ながら身体を動かし、高得点を狙っていく。ダンスの監修はTikTokやYouTubeで活躍するダンサー、クリエイターのTAICHI、クリエイティブディレクションおよびコンテンツの企画、開発は、株式会社カヤック所属のXRクリエイター・天野清之が担当している。

■『NARUTOミュージックダンサー』の概要
・導入場所  :「東京ジョイポリス」内 1st Floor
・ゲームエリア:ルートA(ナルト)、ルートB(サスケ)※各ルート最大5人(最小1人)
・体験時間  :約5分
・プレイ料金 :1,000円(1名)※各種パスポート利用可

記事の前編はこちら:“螺旋丸が撃てる”アトラクションはどうやって生まれた? IP×楽曲×テクノロジーの可能性①

コンテンツ制作で大事にしたこと

――IP、楽曲、テクノロジーがかけ合わさった『NARUTOミュージックダンサー』プロジェクトですが、制作を進めるうえで大切にしていたことは何でしょうか。

宇佐美:シンプルに“ユーザーに楽しんでもらうにはどうすればいいか“を一番に考えていました。そのうえで、今回のコンテンツ制作には、面白法人カヤックの皆さんにも入っていただいているのですが、コンテンツとしての見せ方とかUX(ユーザーエクスペリエンス)を高めるといった視点で、私たちでは思いつかないようなアイデアを取り入れながら作ってくださっています。

手振りを交えて話す宇佐美

小倉:モノではなく、コトで切り取ったときに、技術がどれだけ優れていても、それだけではコンテンツは成立しないということを意識しました。だから、このプロジェクトにおいては技術をアピールするのではなく、作品や楽曲のファン、ユーザーの方々に、いかに良質な体験を提供できるか、そのために我々の技術をどのように活用すればいいかにフォーカスしました。

今回は、ソニーグループを横断したプロジェクトになっていますが、普段、グループ会社同士で交流や情報交換は積極的に行なわれているものの、こうやってプロダクトにまで落とし込める機会というのは、実は、そんなに多くはありません。

そして現在のソニー株式会社は、“テクノロジーの力で未来のエンタテインメントをクリエイターと共創する”というミッションを掲げていて、今回は、まさにその実践の場だとも感じました。“技術は使われてこそ生きる”というのを改めて認識できましたね。

真剣な表情で話す小倉

菊田:コンテンツの目線で言うと、やはりアーティストのブランディングであるとか、楽曲のイメージを毀損するようなことがあってはいけないので、その点は気をつけました。特に「ブルーバード」はアーティストの代表曲のひとつですし、端的に言うと“ダサく見えてはいけない”ということですかね。

そのうえで、カヤックの皆さんのクリエイティブ、そして田巻さんたちソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のマーケティングチームのサポートもあって、アニメファンにも、楽曲ファンにも、しっかり楽しんでもらえるコンテンツになったのではないかと思っています。アトラクションで皆さんに踊っていただくダンスも、ゲーム性を重視しながら、見栄えのするものに仕上がったと感じています。

テクノロジーをファンが喜ぶ体験に落とし込む

――アトラクションの軸となるダンスの話が出ましたが、振り付けや、ダンスゲームとしての難易度設計では、どのような点にこだわりましたか。

田巻:振り付けをお願いする方を検討した際、私たちのチームのなかで真っ先に候補に挙がったのが、ダンサーのTAICHIさんでした。

TAICHIのアーティスト写真

TAICHI

TAICHIさんは、プロダンスリーグ「D.LEAGUE」のチーム「FULLCAST RAISERZ」に所属するKRUMP(全身で感情を表現しながら踊るストリートダンス)ダンサーでありつつ、TikTokのフォロワー数だけでも170万人を超える注目度の高いKOL(Key Opinion Leader)です。

そんなTAICHIさんが『NARUTO-ナルト-』を大好きだというご縁があり、私たちからお声がけさせていただきました。

@taichi_kindaruma(新しいタブを開く)

――TAICHIさんの振り付けはどうでしたか?

田巻:ユーモアもあり作品への愛もある、素晴らしい内容でした。ただ、その振り付けを老若男女が遊ぶアミューズメントパークのアトラクションに落とし込むという意味では、試行錯誤があって。

理由は、TAICHIさんに仕上げていただいた振り付けの難易度です。TAICHIさんとしては、大好きな『NARUTO-ナルト-』に関わる振り付けということで、細部にまでこだわり、完璧に作り込んでいただいたのですが、開発サイドと試作を共有したときに“ダンスの素人には難し過ぎないか”という意見が出ました。

アトラクションとして、なかなかクリアできない難易度まで上げてしまうのは、「東京ジョイポリス」に来場するお客さんの層に適しているのか、というのも議題になって、結果的に難易度の観点から一部見直しを行ないました。

どうしても繰り返しが多くなってしまったり、単純な動作がメインになってしまう点についてはTAICHIさんとも協議をさせていただいたのですが、ターゲット層を広くすることで、ダンスの楽しさも伝えたいというこちらの意図を汲んでいただき、監修としてご協力いただきました。

5人のプレイヤーがゲームをプレイしている

とは言え、TAICHIさんに考えていただいた『NARUTO-ナルト-』らしさが伝わる振りだとか、ファンの方に喜んでいただけるようなポイントは随所にあって、“螺旋丸”と“千鳥”の決めポーズもしっかり入っています。ほど良い難易度でありつつ、上級者の方には、決めるところを決めていただくと、しっかり映える映像が撮れますので、ぜひ挑戦していただきたいです。

過去の楽曲を今の文脈で再び届ける

――今回、アトラクションで使用しているいきものがかりの「ブルーバード」は、2008年に発表された楽曲です。先ほど(前編)菊田さんのほうから、現在の音楽ビジネスにおける旧譜の重要性についても少し触れてもらいましたが、こうした過去のカタログをリバイバルさせようとする動きは、やはり今、活発になっているのでしょうか。

菊田:そうですね。まず、サブスクリプションサービスやYouTube、TikTokが普及した今、音楽との出会い方が完全に変わったので、20代以下の世代においては、その曲が新しいか古いかは、関係なくなっています。これは世の中的にも当たり前の話だと思います。

だから僕らも、それを前提にビジネスを行なっていて、旧譜に関してもマーケティングを行ないながら、今回のような機会をいただければ、積極的に取り組みますし、こちらからもビジネスチャンスを伺っています。

いっぽうで新譜については、当然ながら、その曲に対する世の中のイメージがまだありません。だから、これはどんな曲なのか、アーティストがどんなことを想いながら作り、歌っているのかを、しっかりとプレゼンテーションする必要があります。

つまり、新譜は今まで以上にプロモーションやクリエイティブを通して、その魅力を伝えていかなければ、旧譜を含めた多くのカタログのなかに埋もれてしまう時代になったと考えています。

――サブスクリプションサービスのなかでは、新譜と旧譜が同じレイヤーにあるがゆえに、ビジネスとしての難しさもあるわけですね。

菊田:エンゲージメントの高いファンの方々は、そのアーティストの新譜が出たら聴いてくださると思うんですね。しかし、知っている曲があるぐらいの方々にまで届けるのは、そんなに簡単なことではありません。

だからこそ、タイアップや今回のようなコラボレーションの機会は重要で。相性のいいタイアップやコラボレーションができると、楽曲はジャンルの垣根を越えて広がっていきますし、記憶にも残りやすい。今回の「ブルーバード」がいい例で、いきものがかりのファンとして好きという方もいれば、アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』のファンだから心に残っているという方もいる。

『NARUTOミュージックダンサー』が、そういう方たちとの接点になり、そこからいきものがかりの最新の楽曲にも興味を持っていただける流れが作れるとベストだと考えています。

そしてA&Rとしては、出会うべくして出会ったと思えるようなコラボレーションをずっと探していて。音楽との出会い方は変化しましたが、音楽が聴かれなくなったわけではありません。だからこそ音楽と映像だったり、アトラクションだったり、メディアが異なるエンタテインメント同士が、有機的に寄り添えって、新しい道筋を作っていかなければいけないのだと感じています。

真剣な表情で話す菊田

“行きたくなる理由”をどう作るか?

――体験後に動画や写真を購入し、SNSにアップできる仕組みも『NARUTOミュージックダンサー』の特徴だと思います。来場につなげるプロモーションとしては、どのような広がり方を想定していますか。

田巻:まず、『NARUTO-ナルト-』のファンの方々は、この情報を自然にキャッチしてくださると思っています。これは海外も含めてのことですね。そして、そこで大事なことは、情報をキャッチした方々に、面白そう! 体験してみたい! 踊ってみたい! と興味を持っていただくこと。それがなければ、来場にはつながりません。

なので、SMEのマーケティングチームでは、KOL(Key Opinion Leader:特定の分野や業界で深い知識や権威を持ち、消費者の購買行動に影響を与えるインフルエンサーのこと)の方々にお声がけして、『NARUTOミュージックダンサー』を実際に体験していただき、動画や写真を投稿していただくなどの施策を企画しています。

――『NARUTOミュージックダンサー』の機能を、プロモーションにも活用していくわけですね。どういったKOLの方とコラボレーションを行なうのでしょうか。

田巻:大前提としては『NARUTO-ナルト-』に対してしっかり愛情を持っている方、もしくは『NARUTOミュージックダンサー』とコラボレーションして違和感がなく、ファンの皆さんにも納得していただける方にお声がけしたいと考えています。

さらに今回は、『NARUTO-ナルト-』という海外でも人気の高い作品であること、また「東京ジョイポリス」には、日ごろから多くの外国人観光客の方々が訪れているということで、インバウンド需要を見越して日本在住の海外のKOLの方にもプロモーションをお願いする予定です。

SNSによって、誰もが発信できる時代だからこそ、作品への愛情が薄いとか脈絡のない内容の投稿は、ファンの方々にすぐに見抜かれてしまいます。逆に、作品に対する愛情やコラボする文脈がしっかりあれば大きな共感が得られるので、そこを起点に、情報をより多くの人に届けていきたいと考えています。

笑顔で話す田巻

――興味を持ってもらうフックとしては、どのような点が挙げられますか。

田巻:やはり、“螺旋丸を撃てる”というNARUTO要素が含まれていることはひとつのポイントだと思います。『NARUTO-ナルト-』を知っている方なら、それだけで体験のイメージが伝わりますし、“螺旋丸を撃ちに行きたい”と思ってくださる方もいるはず。ナルトと一緒に踊るだけでなく、最後に必殺技を出せるところまで含めて、SNSでもしっかりプロモーションを展開していきたいです。

――その体験が広がることで、楽曲やアーティスト側にも波及していきそうですね。

菊田:今回の体験をきっかけに、10~20代の方がいきものがかりの楽曲を知ってくれたら、そこから新曲を届けられるチャンスも生まれますから、リバイバルしている旧譜と新譜は、セットでプロモーションすることも大きな力になると思っています。

と同時に、これでいきなり多くの方が、熱烈なファンになってくれるかというと、そんなに甘くはないこともわかっています。でも、狙って届けたプロモーションとは別に、いつ、どこで、どのようなスパイクが起こるかわからないのが昨今の音楽市場。だからこそ、仕かけておくことは絶対に必要で、実際にこうした接点から、新しいファンの獲得やファン層の拡大につながった例があります。

この企画も含め、そうした流れを作ることで、アーティストと音楽をもっともっと盛り上げていきたいですね。

体験型アトラクションの発展を目指す

――技術開発チームとしては、『NARUTOミュージックダンサー』で改めて世に出たマーカーレスモーションキャプチャー技術を、今後、どのように展開していきますか。

小倉:先ほど未来の可能性を少し話しましたが、今回のプロジェクトをキックオフとして、もっと、この技術の商用化を進めていけたらと考えています。

お伝えした通り、キャプチャーしたモーションはリアルな映像にも3DCGによるバーチャルな映像にも活用できますし、ひとりだけでなく複数人のグループを一気にキャプチャーすることもできます。音楽ライブやイベントでの活用など、エンタテインメントの場に根差した技術として、いろいろな企画をご提案していきたいですね。

――最後の質問になりますが、ビジネスオーナーの役割を担ったソニーマーケティング株式会社の宇佐美さんは、『NARUTOミュージックダンサー』のような体験型アトラクションの今後の展望をどのように考えていますか。

宇佐美:今回は「東京ジョイポリス」内にオープンさせていただくわけですが、こういった施策もロケーションベースエンタテインメント(以下、LBE:テーマパークやミュージアム、商業施設など、特定の場所でしか味わえない体験型エンタテインメントのこと)のひとつだと我々は考えています。

LBEビジネスは、ソニーミュージックグループでもソニー・クリエイティブプロダクツが複数のミュージアムを運営していることを中心に、積極的に展開していますが、我々もソニーグループの技術、IPの活用の場として注目しています。

その意味でも、『NARUTOミュージックダンサー』がどういったかたちでファンの方々に受け入れられるか? インバウンド需要の高まりによる海外のファンの方々の動向も含めて注視しつつ、ヒットにつなげていけるようにしていきたいです。そして、このプロジェクトでひとつのスキームを作ることができましたので、応用、発展させながら、LBEビジネスのさらなる可能性を探っていきたいと考えています。

左から小倉、宇佐美、田巻、菊田が順に並んで腕組みをしている

記事の前編はこちら:“螺旋丸が撃てる”アトラクションはどうやって生まれた? IP×楽曲×テクノロジーの可能性①

文・取材:小林直樹
撮影:干川 修

©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ

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