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キャラクタービジネスの心得

『ピングー』にリバイバルヒットの兆し――SNSマーケティングをフル活用するチームの挑戦②

2026.07.11

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キャラクタービジネスを手がけるソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)と近年リバイバルヒットの兆しを見せる『ピングー』の歩みを振り返りつつ、『ピングー』が再び注目される要因となったSNSプロモーションについて、3人のキーパーソンに聞いた。

後編では、昨年行なった『ピングー』の45周年施策を紹介するとともに、7月10日から「YURAKUCHO MUSEUM」で開催する『可愛いだけじゃない!?ピングー展』の見どころに迫る。

  • 田中春奈プロフィール画像

    田中春奈

    Tanaka Haruna

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 大仁田弘志プロフィール画像

    大仁田弘志

    Onita Hiroshi

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 白石佑佳プロフィール画像

    白石佑佳

    Shiraishi Yuka

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

『ピングー』とは?

『ピングー』キービジュアル

『ピングー』は、スイスのアニメーターであるオットマー・グットマンによって生み出された、ペンギンのキャラクター。1980年にストップモーションアニメのテストフィルムとして原型が制作され、その後1987年のベルリンフィルムフェスティバルでパイロット版が上映されて大きな注目を集めた。日本では1992年にテレビ放送を開始。南極に住むピングーと仲間たちが繰り広げるコミカルで温かみのある日常描写が多くの人びとに親しまれている。

前編はこちら:『ピングー』にリバイバルヒットの兆し――SNSマーケティングをフル活用するチームの挑戦①

45周年で広がった新たな接点

──2025年は『ピングー』誕生45周年という節目の年でした。さまざまな施策のなかでも特に反響が大きかったものや印象に残っている取り組みはありますか。

大仁田:SNS施策で特に印象的だったのは、45周年企画として過去の懐かしいアイテムを紹介したコンテンツと、トレンド曲にピングーのアニメーションを合わせたMAD動画ですね。

アイテム紹介はこれまで発売してきた商品を集めて、写真や動画を撮影し、『ピングー』の音声や世界観を添えて投稿を行なったんです。すると“これ、持ってました!”“再販してほしいです!”といった声がたくさん寄せられて。昔から応援してくださっているファン、かつてグッズを集めていた方々からの反響が特に大きかったですね。

MAD動画は、SNS上で流行っているトレンド曲にピングーの可愛くて面白いアニメーションを合わせた動画なんですが、投稿後の拡散のスピードが特に早かったシリーズです。アーティストご本人からもコメントをいただけるときもあり、ピングー公式が本気で遊んでいる、ということが伝わるとてもいい取り組みだったと思います。

 
白石:私は、45周年を記念して開催した新横浜プリンスホテルでのアフタヌーンティーイベントです。

コスチュームを着ているピングーやアフタヌーンティーのメニューを持っている姿といった、キービジュアルの制作を担当しました。

新横浜プリンスホテル「ピングー」コラボアフタヌーンティー キービジュアル

新横浜プリンスホテル「ピングー」コラボアフタヌーンティー キービジュアル

衣装を考える際も、どうすればもっとかわいくなるかを意識しながらさまざまな案を出しました。そのなかから大仁田さんが上手に方向性を整理してくれて、とてもいいビジュアルに仕上がりました。

大仁田:白石さんのアートワークに加えて、ホテルのシェフの皆さんも本当に頑張ってくださいました。

ピングーやピンガをモチーフにしたメニューの再現度がとても高くて。クオリティの高い体験を提供できたからこそ、お客さんがSNSで発信してくださり、それを見た方が新たに来場する。そんな好循環を生み出せたと思います。

白石:このアフタヌーンティーイベントは、昨年の好評を受け、今年も開催が決定しました。さらに今年は『ピングー』の世界観を取り入れたコンセプトルームの展開やスケートリンクとの連携など、規模も大きくなっています。昨年の成功があったからこそ、展開の幅を広げることができていますし、何よりも日ごろからご協力してくださっている皆さんのおかげだと感じています。

──昨年の秋に東京ソラマチで開催された没入型ポップアップストアや、コラボレーション企画も注目を集めました。こちらについても教えてください。

田中:運営は、ポップアップストアの企画や演出に定評のあるライセンシーの方にお願いしたのですが、実現までに1年ほどかかりました。さまざまな案を考えるなかで、“ゲームをテーマにしてはどうか”と提案したことをきっかけに、一気に企画が動き出しました。

大仁田:過去に販売されていた『ピングー』のゲームソフトに着想を得て、提案したものでしたね。

田中:『ピングー』は“青”のイメージを持たれがちなのですが、あえてほかの色を使用して、ポップさやカルチャー感を表現したいと思っていました。

ポップアップストアも、そうした発想からレトロなドット絵でゲームの世界観を再現してはどうかと提案し、デザインに取り入れてもらいました。社内の若手スタッフからは“韓国カルチャーっぽい”という声もありましたね。

大仁田:ポップアップストアと言いつつも、単なる物販イベントにはしたくなくて。ピングーの顔のパーツを組み合わせて自分なりの表情を作れるコーナー、顔出しパネル、魚を持って写真が撮れるフォトスポットなど、体験型の要素も盛り込みました。

オープン当日の朝まで会場を施工していたので、かなり大変だったのですが、そのおかげで『ピングー』の世界観をしっかり表現できたと思います。

田中:その結果、SNSとの相性も非常に良かったですね。アフタヌーンティーイベントのときと同様に、お客さんが撮った写真を投稿してくださって、その投稿を見た方が足を運んでくさる……こうした広がりが自然と生まれていきました。

また、東京ソラマチという立地も大きかったと思います。ゲームというテーマは、国内だけでなく海外からのお客様にも伝わりやすく好評でした。『ピングー』×ゲームというふたつの要素がうまく重なりました。

こうして振り返ると、45周年はチャレンジを重ねながら、本当にさまざまな取り組みを行なうことができた1年でしたね。

かわいいだけじゃない! 『ピングー』の魅力を感じる体験型エキシビション

──7月10日に、東京国際フォーラムにオープンする「YURAKUCHO MUSEUM」。SCPが手がけるLBE(ロケーションベースエンタテインメント)事業で、「スヌーピーミュージアム」「CREATIVE MUSEUM TOKYO」に続く新たなベニューとして注目される場所ですが、オープニングのエキシビションが『可愛いだけじゃない!?ピングー展』になります。こちらの見どころも教えてください。

『可愛いだけじゃない!?ピングー展』イメージ図

『可愛いだけじゃない!?ピングー展』イメージ図

田中:このエキシビションは、以前から『ピングー』を好きだった方はもちろん、少しだけ知っているという方にも、『ピングー』の魅力を知ってもらえる企画にしたいと思い、“遊園地”をテーマにした体験型の展示を取り入れました。

原作のクレイアニメーションの魅力もしっかり紹介しながら、昔からのファンには懐かしさを、若い世代には体験を通して“ピングーってこんな表情をするんだ”“こんな声を出すんだ”と、作品の世界観に触れてもらえるような展示を目指しています。

大仁田:展示スペースは、大きく4つのエリアに分かれています。

ひとつ目は、ピングーの歴史やキャラクター、スタジオを紹介するエリア。ふたつ目は、ピングーのアニメーションならではの縮む、伸びるといった表現に注目した“動きとかたち”のエリア。3つ目は、キャラクターたちのさまざまな表情を楽しめる“声と表情”のエリア。そして4つ目が、来場者自身が体を動かして楽しめる“遊ぼう”のエリアです。ピングーと同じ動きをしてもらう体験展示もあるので、身体を動かしながら『ピングー』の面白さや楽しさを感じてもらえたらうれしいです。

田中:このエキシビションをきっかけに、『ピングー』のクレイアニメーション時代の映像を見てもらえたら、より楽しんでもらえると思います。

──グッズも、SCPのマーチャンダイジングチームが中心となって企画されているそうですね。

田中:はい。今回のエキシビションでは、販売するグッズの約9割をオリジナル商品としてSCPで制作しました。ここまで大規模にオリジナルグッズを展開するのは、『スヌーピーミュージアム』以来の取り組みです。

今回の展示テーマである表情や動きにフォーカスしたアイテムも多く、ラインアップも非常に充実しています。特にクレイアニメーションのビジュアルを活用した商品が豊富ですね。

──おすすめのグッズはありますか。

白石:私のおすすめは「パタパタクロック」です。時間が進むとパタパタ表示が変わるデジタル時計で、時間表示の部分にはピングーとピンガ、分表示の部分にはほかのキャラクターたちが現われます。

ピングー展グッズ「パタパタクロック」

「パタパタクロック」

この商品には小さな仕掛けがいろいろあって、例えば、数字の“1”が長くの伸びたピングーになっていたり、時間と分で絵が繋がるものがあったり。例えばファンの間で“トラウマ回”として知られる、ピングーの夢に巨大なトドが出てくるお話が深夜に完成したりします。

ほかにも普段は商品化できないようなマイナーなキャラを登場させたり、データ化されていなかった古いポジフィルムからシーンに合う写真を見つけたりしながら、朝は歯磨き、昼間は学校や遊び、夕方には食事など、時間とともにピングーたちの日常が感じられる楽しいデザインになったと思っています。

大仁田:僕のおすすめは、ピングーが食べ物になった「フードマスコット」ですね。海外では食べ物などをモチーフにしたピングーのぬいぐるみが人気を集めていて、チーム内で「こういうアイテムを作りたいね」という話をしていました。今回、遊園地のテーマにもマッチしたピザやホットドッグ、ハンバーガーになったピングーのマスコットを実現できて、とても嬉しく思っています。

ピングー展グッズ「FOODマスコット PINGU™ (アメリカンドッグ/ドリンクボトル/ピザ/ハンバーガー)」

「FOODマスコット PINGU™」
(アメリカンドッグ/ドリンクボトル/ピザ/ハンバーガー)

手を使いながら話す大仁田弘志

白石:ピングーがハンバーガーを持っているとか、ピザを食べているという表現はありましたが、ピングー自身がハンバーガーやピザになってしまうのは、初めてだと思います。とてもかわいく仕上がったのでぜひ手に取ってもらいたいですね。

世代や境界線を越えて愛される『ピングー』の魅力

──改めて、皆さんが考える『ピングー』の魅力について教えてください。

白石:まず、クレイアニメーションの動きですね。かわいらしいだけではなく、クレイアニメーション独特の動きには、五感に訴えかけてくるような心地よさがあり、年齢問わず思わず惹き込まれる力のある映像作品だと思います。

また、お話に共感できる点が多いのも魅力だと思います。ピングーはやんちゃでいたずらもしますが、家族が大好き。仲のいい友達と遊んだり、ときにはぶつかりあったり、そういった子どもの世界の空気感がとてもよく表現されているんですよね。

子どもや若い世代が見ると等身大の主人公として共感できますし、大人からすると“昔は自分もこうだったな”“うちの子も小さいころはこうだったな”と”子ども時代”の記憶がよみがえるような、そんな作品だと思います。

柔らかい表情でピングーの魅力について語る白石佑佳

大仁田:ピングーたちは“ピングー語”で会話をしているので、世界中どの国の人が見ても内容を理解できるところは、ピングーならではだと思います。さらに、いろいろな感情を伝えてくれるピングーの豊かな表情や動きなど、アニメーションの表現力が高いところも魅力ですね。

あとピングーって予想外の動きをすることが多くて、ちょっと変な一面があるんです(笑)。昔のクレイアニメーションは、動きを強調する作風なのでちょっと変わった動きがたくさんあって。そういうツッコミどころが、逆に見る者を惹きつけるのだと思います。

田中:子どものころの私はアニメーションよりも、キャラクターやグッズのかわいさに目がいっていました。

ですが、作品を深く知れば知るほど、大仁田さんや白石さんが言うような魅力を感じるようになって。それに、あれだけのクレイアニメーションを作るのは本当に大変です。あの手作り感や温かみが、とても素晴らしいと思います。

白石:しかも、作品が制作された初期のころは、今のようにデジタルカメラではなく、すべてアナログカメラのフィルム撮影が行なわれていました。当然、撮影した写真を1枚ずつ確認することもできないので、フィルムを現像するまでちゃんと撮れているかわからないんです。そんな状況でありながら、1コマずつ人形を動かして撮影して作品を作っていたなんて、本当に信じられない。気が遠くなるような作業を積み重ねた、素晴らしいクリエイティブだと思います。

──最後に、『ピングー』の今後の展望をお聞かせください。

大仁田:現在、株式会社マッシュスタイルラボが運営されているSNIDEL(スナイデル)や、株式会社マッシュビューティーラボが運営されているコスメキッチンとのコラボアイテム、株式会社オルビスの皆さんと取り組む期間限定コラボイベント、銭湯施設でのスペシャルイベント、サンリオが展開されているキャラクターユニット「はぴだんぶい」とのコラボなど、さまざまな展開をしておりますので、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。また、今後に向けたプロジェクトも多数進行していますので、ピングーのこれからにもぜひご期待ください。

田中:45周年が終わったばかりですが、次なるアニバーサリーの50周年に向けた準備も進めていきます。それこそ50周年記念展も大々的に開催したいですね。

また、完全新作アニメーションの公開も予定されています。新作に向けて、ピングーの素晴らしさを丁寧に発信しながら、ファンの裾野を広げていきたいですね。今後もさまざまな企画や施策を予定していますので、引き続き楽しみにしていてください!

笑顔で話す田中春奈

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

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