西川貴教が『イナズマロック フェス 2018』を振り返る<インタビュー後編>
2018.10.22
西川貴教が地元・滋賀に恩返しがしたいという想いから立ち上げた“イナズマロック フェス”(以下、“イナズマ”)。10回目の節目を迎えた今年は規模を拡大し、9月22日、23日、24日の3日間にわたって開催された。
天候にも恵まれ、感動のフィナーレで幕を閉じた“イナズマ”。イベントから1週間が経った10月1日、西川貴教に“イナズマロック フェス 2018“を振り返ってもらった。特集第14回では、振り返りインタビューの前編をお届けする。
――2018年、10回目の“イナズマ”が終わって1週間経ちましたが、どのような心境ですか?
西川:終わってからの日々がビックリするぐらい早く過ぎたように感じます。25日の夜に東京に戻ってきて、自宅で部屋着に着替えてソファに座り、飼い犬を抱っこしながら「あれ?3日間夢やったのかな?」って。
滋賀に出掛ける前日の夜に部屋で過ごしていた時と同じ位置で同じ格好で、向いている角度まで一緒で(笑)。記憶が飛び飛びで、“イナズマってあったんかな?”という不思議な感覚になりました。
――初の3日間開催ということもあり、達成感は大きかったのではないでしょうか。
西川:達成感はありましたね。単に10回目を祝うのではなく、10回目だからこそこれまでの疑問点や改善点をじっくり洗い出して形にしていこうということで、10回目にして色々挑戦したことが達成感に繋がったと思います。
守りに入ろうと思えばできたでしょうけど、そうせずに攻めの姿勢で向かえたのも良かったですね。昨年、一昨年よりもテコ入れした部分は多かったんですよ。それが実現できて、イベントとしてもすごく良かったです。
――今年挑戦したなかで特に良かったところを教えてください。
西川:ひとつはエリア改定です。ここ数年でフリーエリア、特に“風神ステージ“の存在感が増してきたんです。それはTHE ORAL CIGARETTES を代表とする、過去に“風神”に出演してくれた若いアーティストたちがどんどんステップアップして、アリーナツアーをしたり、“雷神”に登場して盛り上げてくれる存在になったりしていることが大きいですね。
もう、「メインステージ」と「サブステージ」という在り方ではないと思ったので、“雷神”と“風神”のステージの距離をもっと離そうと。そうすることでお客さんに、“雷神”から聞こえてくる音を気にせずに“風神”を楽しんでもらえますしね。出演アーティストがストレスなくパフォーマンスできるようになったり、ステージの設営をより充実させることができたり、という利点もありました。
――ご当地キャラクターや若手のお笑い芸人さんが出演する“龍神ステージ“の場所も変更になりました。
西川:これまでは会場全体の入り口近くにあった“龍神”の場所を真ん中辺りに変更しました。家族連れで来てくださる方のことを考えた時に、子どもたちに楽しんでもらいつつ、大人の方たちが他のエリアにも足を伸ばしてもらえるように、もっと行き来しやすいようにできないかなと。フリーエリアのど真ん中にはフードコートもあるので、これまでよりフリーエリア全体を楽しんでもらえるようになったと思います。
――毎年の積み重ねがあっての改善だったわけですね。では、西川さんの視点から3日間を振り返っていただきます。
西川:今回3日間、手前味噌ですけど、本当に“イナズマ”らしいラインナップでしたね。ひょっこりはんやダイアン、アキナ、バニラビーンズといった滋賀県出身の方に出てもらえたのもポイントでした。初日の開会宣言は、3日間開催にすると決めた段階で自分でしようと思っていました。
――開会宣言に続いては“西川貴教”名義の初ステージとなりました。
西川:“西川貴教”として人前でやるのは初めてでしたし、シングル1枚でフェスに出るっていうのはやっぱり今までと違った緊張でしたね。色々課題は見えてきましたし、みなさんに“西川貴教を観に来た”と言ってもらえるように頑張ろう、心の底から“売れたい”と思いましたね。次にまたチャンスをいただけるようであれば、違ったものをお届けできるようになりたいです。
――では、初日の雷神ステージ出演アーティストについて、印象に残ったことを教えてください。
西川:ROTTENGRAFFTY、和楽器バンドと、二組ともイベントや番組で共演する機会があって、“イナズマでも一緒にやってみたいなぁ”と伝えたら二組とも出たいと言ってくれたんですよね。今回はできなかったけど、また機会があれば次はセッションできるといいなと。和楽器バンドは去年中止になった2日目に出演予定だったのですが、一年越しに来て楽しんでくれていて嬉しかったです。欅坂46も初登場ながら盛り上げてくれましたね。
――その後は、6年ぶりに“イナズマ”に帰って来たゴールデンボンバー、おなじみのUVERworld、満を持して初出演のLUNA SEAと、それぞれ熱いステージでした。
西川:ゴールデンボンバーはもう堂々たるもんでしたね。「ゴールデンボンバー」というひとつのジャンルとして成立していて、貫禄すら感じました。やっぱり、ツアー本数やイベント出演の数はだてじゃない。腹の座り方の格が違いますね。
オーバーグラウンドとアンダーグラウンドがあるとして、彼らほど自在にどこでもパフォーマンスができるバンドはいないんじゃないですか? 稀代のバンドですよ。終わってからそういう感想を伝えたかったんですけど、彼らは次の仕事のためにすぐ会場を出ないといけなかったので会えなかったんです。さすが、撤収も早い!(笑) また会ってちゃんと話したいですね。
UVERworldは“イナズマ”には欠かせない存在というか、もう彼らのイベントでもあると思うぐらい頼もしいステージを見せてくれました。
――そして、初日のトリ、LUNA SEA。
西川:1日目の大きなポイントはLUNA SEAですね。自分たち主催のフェスをやっているだけに、この規模感、この場所でやることの大変さを分かってくれている一組だと思うんです。そんな彼らが10回目のお祝いに出演を快諾してくれたのは嬉しかったですね。あと、何気にLUNA SEAとセッションするのは初めてだったので、なんだか気恥ずかしかったです(笑)。
――お互いのファンの方は、同じ時代を歩んできた二組が“イナズマ”のステージに立っている姿を見て、感慨深かったのではないかと思います。
西川:そうですね。僕も、センターに6人が並んでいる光景を写真で見て、「これ、なかなかやな!」と思いましたね(笑)。
――2日目も勢いのある若いバンドやグループが登場しました。
西川:Thinking Dogsは、前身のバンドで“イナズマゲート2014”出演を経てメジャーデビューを果たした経緯があって、BiSHは以前僕の番組にゲストで来てくれたので、2組とも当時を思い出しながら観ていました。
超特急は3年ぶりの出演でしたけど、前に出てくれた時とは顔つきが違っていましたね。彼らも成長の度合いがすごい。前は様子をうかがう感じがあったのかもしれないけど、今回は振り切った感じが良かったですね。でも“良い子”具合は変わらずで、そこは安心しました(笑)。
――西川さんとしては、6年ぶりの“イナズマ”登場となったabingdon boys school。ファンの「待ってました!」という想いが伝わる盛り上がりでしたが、手応えはいかがでしたか?
西川:いやいや、“イナズマ村”の出来事ですから。世間の方々はそんなに待ってないんじゃないでしょうか?「この盛り上がりはここだけ!甘やかしたらあかん!」と厳しく考えていますよ(苦笑)。
他のメンバーはみんな真っ赤にゆであがるくらい喜んでいましたけどね。温かく迎えてくれたみなさんのことはありがたいなと大切に思いつつ、「勘違いしたらあかん!」と気を引き締め直しました(笑)。
――去年2日目に出演予定だった、“キャリーオーバー”組(NICO Touches the Walls)、去年1日目に続いて2年連続の3組(04 Limited SazabysとFear, and Loathing in Las Vegas、THE ORAL CIGARETTES)も見応えがありました。
西川:そうですね。NICOにもまた来てもらえて良かった。去年の分までしっかり魅せてくれましたね。ラスベガスとは西川貴教名義でコラボもさせてもらってますし。そして、この日はなんといってもフォーリミとオーラルが特に印象深いです。
前回のインタビューでも話しましたが、“風神”を経て“雷神”のオープニングアクトを務めてもらった時、「3曲では足りない」と悔しがっていたフォーリミの姿が忘れられなくて(笑)。それがもう、「要」というべき存在になってくれましたからね。いや~、ほんとに良かったな……。
――2組はたまたま同じ日になったんでしょうか?
西川:正直、狙いました!どちらがトリでもおかしくないと思っていますし、出演順は順位とは考えていないです。オーラルのメンバーとは当日の夜にゆっくり話す機会があったんですけど、いろんなフェスを経験していくなかで壁にぶつかったりしながら、どこかで吹っ切れての今なんだなと思いました。
そんな彼らの成長していく様子を“イナズマ”で見ることができて、トリを任せられるようなバンドになったんだなぁ……という喜びを感じました。最後のコラボで僕がステージに出て行った時の彼らの涙……あんなの見せられたら、たまらないですよね。この2日間だけでも、良いフェスだなって思いましたね。
特集第17回目は、西川貴教による『イナズマロック フェス 2018』振り返りインタビュー後編をお届けする。
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