ソニーミュージックが取り組む多次元アイドルプロジェクト、『UniteUp!』ができるまで【前編】
2023.03.31
ソニー・ミュージックエンタテインメント 他
1月26日(金)、27日(土)、28日(日)の3日間にわたり、中国・上海市西側に位置する国際展示場「国家会展中心」にて『Fate/Grand Order EXPO Shanghai』(以下、『FES』)が開催された。Fate/Grand Order VRスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)は、初の海外版として2016年9月にビリビリ動画を運営する配信会社ビリビリにより中国にて中国簡体字版(以下、中国版)がリリースされ、現在ダウンロード数は700万を突破、中国のiOSセールスランキングでは最高位1位を獲得している。
本イベントは、中国版での一部完結を祝し、ユーザーが物語の軌跡を追体験できるような造作物の展示に加え、日本の声優、クリエイターやビリビリ動画で著名なアップ主などを招待し、ビリビリ生放送を通じて中国全土の『FGO』ユーザーとの触れ合いを目的に開催された。チケットは事前販売を行い、イベント開始前に定員の18,500枚を完売。会期中は雨、雪が降る悪天候の中、16,735 名が来場した。「戦闘場面演出コーナー」「VRコーナー」など12のコーナーを設置し、昼・夜の部が展開されたメインステージでのイベントなども含めて『FGO』の新たな魅力を中国のお客さまに届けることができたとともに、中国では数少ない公式グッズ購入機会の創出にもなった。
今回は、企画制作を担当したアニプレックス(以下、ANX)ライツ事業第2グループ上海オフィス 小髙洋介氏に、『FES』開催を通して感じた中国マーケットについて、お話を伺った。また、イベントレポートも併せてお届けする。
目次
(©TYPE-MOON / FGO PROJECT)
名称:Fate/Grand Order EXPO Shanghai
会場:国家会展中心(中国・上海)
会期: 2018年1月26日~28日の3日間
1月26日(金) 昼の部 9:00~17:00 (物販開始10:00)
1月27日(土) 昼の部 9:00~17:00 (物販開始10:00)
夜の部 19:00~22:00(日本のゲストによるステージ)
1月28日(日) 昼の部 9:00~17:00 (物販開始10:00)
チケット価格: 昼の部:128元(約2,200円)
夜の部:518元(約8,800円)
展示内容:像作物(展示・物販・カフェ・VRコーナー)/メインステージ など
主催:ビリビリ動画(ゲーム事業部)
公式サイト:https://game.bilibili.com/fgo/fes/
(ANX ライツ事業 第2グループ上海オフィス 小髙洋介氏)
昨年7月に幕張メッセ国際展示場9・10ホールで開催された『FGO』2周年イベント『FGO Fes.』に象徴されるように、オフラインのイベントは既存ユーザーの満足度向上並びに新規ユーザーの掘り起こしに大きく影響を及ぼしており、中国版でも同様の事が出来ないかということで昨年夏ごろから現地運営会社であるビリビリと企画立案を開始しました。
中国では大型イベントの場合、政府に届け出をしている来場者以上のチケット販売が出来ない為、歩留まりを見込んで大目にチケットを販売するという事が出来ないのですが、会期中は雪と雨という悪天候でしたので、その中で90%近い歩留まりは良い結果だったのではと捉えています。
客層は日本よりも平均年齢で5歳くらい若い印象。日本の『FGO Fes.』では女性の数も過半数ぐらいいると聞いていますが、今回の上海での『FES』は8割が男性で、女性の数は未だ少ない印象でした。
コンテンツにもよるので単純な比較は出来ませんが、ユーザーが楽しい、感動するというポイントは日本と中国ではそれほど差がないと感じています。ただ、インターネットで最新の日本の情報が中国でも見られる環境のため、ある種の「ネタバレ」が起きている環境下でサプライズ的な企画を立てるのが難しいといったハンデは多少あると思います。
ビリビリはここ数年で急成長した会社で、会社も社員も若いです。平均年齢は恐らく25歳くらい。フットワークが軽く、発想も柔軟でおもしろいアイデアがたくさん生まれる環境が出来ていますが、その分経験値が少ないといったハンデも有ります。今回一番調整が難航した「夜の部」のステージリハーサルでは、最後まで粘って調整し、ステージが無事終了した瞬間はお互い自然と抱擁を交わしていました。
中国と日本では仕事の進め方、スケジュール感、「ルール」という枠組みに対する認識のずれなど様々な違いがあり、今回は中国の運営側がやりたい事と、日本サイドとして『FGO』の世界観を守るという部分で、実施出来る事と出来ない事の調整を図る事に非常に苦心しました。その中で、去年日本で『FGO Fes.』を成功させたチームからのサポート、アドバイスは大きかったです。ANXは昨年の夏に上海オフィスをスタートさせ、ビリビリの運営チームの人間と毎週長時間膝を突き合わせて議論出来た環境も大きな要素でしたが、これが出張ベースであったら恐らく乗り越えられなかったと思います。
『FGO』というゲーム、そして『Fate』というシリーズの人気の高さを改めて見せつけられました。国を超えてもこれだけ多くの方に喜びと感動を届けられるコンテンツは稀有で、このコンテンツに関わらせて貰っている事の有り難さを改めて感じました。と同時に、海外でこの規模のイベントを実施する事の難しさも痛感しました。中国ではさまざまな制約がある中で、その部分も織り込んだ上での企画立案が必要だと感じました。そういった意味でも今回のイベント開催は、次に活かせる経験になりました。
会場奥に位置するメインステージには横幅25メートルの大型スクリーンを設置し、昼・夜の部のステージイベントをビリビリ動画で中国全土に生配信。ビリビリ動画は、日本のニコニコ動画と同様に、コメントを映像に乗せて流す弾幕が特徴で、今回のイベント会期中常時100万~150万の同時視聴数を記録し、弾幕も多く流れ、イベントの注目度の高さを伺う事が出来た。
「昼の部」のイベントは主にビリビリ動画に動画をアップしている「アップ主」と言われる、日本の「ユーチューバー」的な方々が登場しさまざまなイベントを展開。一部のアップ主はタレント化しており、数十万、多い人では数百万のフォロワーがいるという方もいるとのこと。代表的なイベントは「高難易度ステージクリア実況」。ゲーム実況は中国でも非常に人気のコンテンツになっており、今回は★3以下のサーヴァント(能力が比較的低目のキャラクター)を使用して、クリア難易度が高いステージに実行を交えて挑戦する模様をステージ上で披露。使用するサーヴァント、装備する概念礼装を選択するたびに「おー」というリアクションが起こり、ステージクリアの際は会場全体とスクリーンの弾幕が同時に「歓声」を上げる程の盛り上げを見せた。
陳会長からは、今回フェスへの来場者並びに生配信を試聴しているファンに対して、2016年9月の中国版ローンチから1部完結まで、無事運営を行えた事に対するユーザーへの感謝が述べられた。その上で、現在中国版で直面している規制などの問題に対しては真摯に取り組んでいくことが語られた。
先ず冒頭で、1部完結を迎えた中国版ユーザーに対して「人理修復おめでとう」(『FGO』1部のテーマが人理修復の為)という言葉が贈られ、自身も1人のマスターとして日本版で1部完結を迎えた時に受けた感動を紹介。そして、『FGO』の一プロデューサーとして、日本以外の国でこれだけ『FGO』が受け入れられている状況を喜ばしく思うと共に、運営会社のビリビリに対して『Fate』というシリーズへの理解と『FGO』の中国における運営に対して感謝の言葉が述べられた。最後に、その日から日本並びに中国で放送・配信開始となる『Fateシリーズ』の新作TVアニメ『Fate/ETXTRA Last Encore』の第1話先行上映会をこのイベントに行う事にも振れ、「今後も『FGO』を始め『Fateシリーズ』の展開に期待して下さい」という言葉で締め括った。
『FGO』のゲーム開発の中心人物である塩川氏には、事前にSNSでファンから質問を募集し、ステージ上で答えていただくQ&Aを実施。ゲーム開発時のエピソードを聞かれた際には「原作のノーツさんや様々なクリエイターの方と、どうすればユーザーに喜んでもらえるものが出来るか、毎週のように会議を重ねた上でこのゲームが出来ている」と回答。そして1部が完結した際の感想として「1年間やってきた事が実を結んだ充実感と共に、この後に続く1.5部、2部で更にユーザーの期待を超えて行かなければならないプレッシャーもあった」とコメント。さらに、中国版でこの後展開される1.5部の見所についても紹介し、最後に日本のイベントでも恒例となった「聖晶石の配布」をした際には、観客からも大きな歓声が起こった。
川澄綾子さん
大久保留美さん
鶴岡聡さん
今回は、キャストの川澄綾子さん(アルトリア・ペンドラゴン役ほか)、大久保瑠美さん(アストルフォ役ほか)、鶴岡聡さん(アーラシュ役ほか)をゲストに迎え、宝具(必殺技)展開時の台詞のクイズコーナーやQ&Aコーナーなどさまざまなステージイベントを実施。中国版でも音声は日本語のままの為、中国版ユーザーも普段はスマホで聴いている台詞を生で聴ける貴重な機会という事で、キャストの方の迫真の演技もあり、一つの台詞が読み上げられるたびに大きな歓声が起こった。そして、イベント最後には『Fateシリーズ』の生みの親でもある奈須きのこさんから中国のファンに向けた手紙が川澄綾子さんによって読まれ、会場のボルテージは最高潮のままイベントは終演。この「夜の部」の生配信では、同時視聴者数が350万人に達し、これはこれまで数多くの生配信を行ってきたビリビリ動画にとっても史上最高値となり、その人気ぶりを証明する結果となった。
ゲームのメインステージである各特異点のシナリオパートを振り返れるコーナー。各特異点のブースでは、ステージ毎にボタンが設置されており、そのボタンを押すとストーリー映像が流れて振り返りが出来る仕掛けに。特に反響が大きかったのが最後の章である「終局特異点」の玉座の部分。高さ6メートルの玉座は会場入り口に面している事も有りインパクトが非常に大きく、ゲームのシナリオを知っているファンが花束やスイーツを供えに来る様子も見られた。
今回はギルガメッシュ、ネロ・クラウディウス、エミヤという3サーヴァント(ゲーム内で登場するキャラクター)の宝具展開時(必殺技の発動時)を大型のセットで再現。背面は高さ6メートルのLEDモニターで奥行き、動きを出し、手前には実際のセットを組み、音響と共に臨場感を演出。当日は各コーナーで写真を取るファンで賑わいを見せた。
今回のイベントの目玉の一つでもあるのがこの物販ブース。日本と違い公式グッズを買える機会が少ない中国において、今回のイベントでは『FGO』のみならず『Fateシリーズ』のグッズも取り揃え販売を実施。3日間ともに開場から閉場まで常に長蛇の列が出来、特に日本から持ち込んだ限定商品と上海向けに制作したご当地商品がたくさん売れていた。
サーヴァントが持つ武器を中国の工房の職人の手によってリアルサイズで再現。今回はアルトリア、マシュ、ジャンヌ・ダルクの3サーヴァントの武器、武具を制作しメイキング映像と共に展示。コーナーの前では一緒に写真を撮るファンの姿が多く見られた。
ゲーム内に登場するセイントグラフ(サーヴァントが宿るカード)や概念礼装(補助カード)を一挙に展示。また、これまで公開してきた宣伝用アニメプロモーションビデオの原画を展示。ゲームを彩るクリエイティブの数々を一度に見られるコーナーということで、多くのファンがギャラリー感覚で立ち止まって観ていた。
日本では昨年Playstation(TM)Storeでの配信が開始されたPlaystation®VR(以下、PS VR)向けコンテンツ『Fate/Grand Order VR』のマシュ・キリエライト編とアルトリア・ペンドラゴン編を体験できるブース。ゲームユーザーはマスターとなり、それぞれのキャラクターを触れ合う事が出来た。また今回は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海に協力を仰ぎ、20機のPS VRを設置。中国ではコンテンツに対する規制が強く、本コンテンツも今のところ正規配信の予定がないため、ファンにとっては体験出来る貴重な機会となった。
『AnimeJapan 2017』の『FGO』ブースで展開されたホログラム映像のコーナーをSMCの協力の下、完全再現。映像のクオリティはそのままに、テキスト部分は中国語に翻訳。映像の内容もゲーム内の軌跡を辿れる物になっており、多くの方が足を止めて見入っていました。
ゲーム内でステージ間を移動するときに行うのが「レイシフト」。それを全長15メートルのLEDのトンネルで再現。ゲーム内の展示があるエリアから眩い光のトンネルを抜けるとゲーム内では「現実世界」という設定の基地へと移動出来る仕掛けは、単純ながらインパクトのあるものになっていました。
会場内唯一の飲食コーナーも『FGO』の世界観を楽しめる形に演出。『FES CAFÉ』と銘打ち、8種類のコラボドリンクと2種類のコラボフードを販売。購入者には会場限定デザインのコースターをプレゼント。会場内の熱気もあり、ドリンクを購入するファンで長蛇の列が出来ていました。
ゲーム内に登場する「ダ・ヴィンチ工房」をリアルサイズで再現。元々、昨年開催された日本での『Fate/Grand Order Fes. 2017 ~2nd Anniversary~』(以下、『FGO Fes.』)で展開された展示の設計図を日本から取り寄せて、現地で各パーツを制作。再現度を上げる部分で苦労しましたが、日本から「照明」、「木製アイテムの色味」の部分でアドバイスを受け、最終的にはクオリティの高い出来に仕上がりました。
昨年開催の『AnimeJapan 2017』で使用された、SMCが発売するインタラクティブ・デジタルサイネージ「MINETE」のARの聖剣「エクスカリバー」を持ち込み、写真撮影サービスを実施。「エクスカリバー」と共に写真が撮れるとあって、多くのファンが列を作っていました。
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