「Feat.ソニーミュージックオーディション」個性派揃いのファイナリストたちによる座談会<前編>
2018.08.22
2018.08.15
CDの売り上げ枚数という指標が絶対的ではなくなった今、若者層がチェックしているのはトレンドチャート。音楽の聴かれ方もいよいよ多様化し、その広がり方は「いかにシェアされるか」「いかに承認欲求を満たすか」がポイントとなっている。
そんな中、全く新しい発想から「Feat.ソニーミュージックオーディション」が発足。「音楽トレンドを作る」ことを優勝条件に、3〜6月にかけて一次、二次審査が行なわれ、現在、1000組以上の応募者の中から選ばれたファイナリスト6組が、応援資金300万円を使用しながら、さまざまな施策に奮闘中だ。
本特集では、変わりゆく音楽シーンにおいて新たなトレンドを生み出すアーティストにソニーミュージックがFeaturing参加するという「Feat.ソニーミュージックオーディション」に密着。全9回に渡ってお伝えしていく。
特集1回目は、本オーディションのプロデューサーを担うSMLエピックレコードジャパンオフィスRIA 部長の梶望氏に話を聞いた。
梶 望
Kaji Nozomu
ソニー・ミュージックレーベルズ
「Feat.ソニーミュージックオーディション」プロデューサー
――このオーディションの大きな特徴は、「音楽トレンドを作る」ことをテーマに掲げ、SNSなどで起きたバズが評価基準に入るというところだと思うんですが、まず、「Feat.ソニーミュージックオーディション」が生まれた時代背景から伺いたいと思います。
梶:今、バズの指標というのは、こういうオーディションに限らず、音楽を届けるためのユーザーコミュニケーションにおいても大事なところですよね。今は、みんながとりあげて盛り上がる「ネタ」になっているかどうかが大事で、音楽も「ネタ」のひとつになっている実感がある。
マーケットを見ても、可処分時間を音楽以外のものにとられているのは明白で、通勤する電車の中でも、僕が大学生のころは、みんな音楽を聴きながら、月曜日は週刊少年ジャンプを読んでいたんですけど、今は完全にスマホですよね。
SNSやゲーム、ヘッドホンをしていても音楽を聴いているとは限らず、YouTubeやNetflixを観ていたり、多様化していて、昔のように音楽が中心にあって、CDを買ってもらってあたり前という時代とは接触の仕方が違うなと感じています。そこは、昔からの音楽プロモーターとしては、じくじたる思いがあるんですけど、それが現実という。
――プラットフォームも多様化して、音楽の届け方も変わっていますよね。
梶:どうやって届けたらいいのかというのは、常々いろいろと考えているんですよ。若者のリサーチをすると、コレクターの考え方ではなくシェアですよね。「いかにシェアされるか」「いかに承認欲求を満たすか」が大事で、絶対的な指標だったCDの売上枚数やダウンロード数というチャートに対して若者層は関心がなくて、チェックしているのはトレンドチャートなんですよね。
Twitterのトレンドだったり、Yahoo!のリアルタイムランキングとか、ハッシュタグランキングとかね。そんな状況の中、僕らは音楽作品を扱っているから、どう話題になるかは、アーティストによっても違えば、同じアーティストでも作る作品によって微妙に色が違ったりする。
Twitter、Instagram、YouTube、Facebookなど、特性は違うから、何をどう届けるかによってその展開も変わってくる。いろんなアーティストの事例を見ることで、僕も勉強になっているんですけど、届ける先の人たちがちゃんと見えている上で、そこにどうつなげるかが、僕らマーケッターの役割なんですよね。
――梶さんは宇多田ヒカルさんのご担当もされていますが、宇多田さんも新人のアーティストも、共通して、トレンドを作るためにはバズることが必要ですよね。
梶:そうですね。ただ、宇多田ヒカルの場合は、彼女の作品を「正しく伝える」ことを第一としていて、「バズ」ることを目的としなくても、あれだけ知名度があって、彼女の音楽を待っている人たちがいるから、結果として音楽でトレンドランキングにも入ることができるんです。じゃあ、新人はどうやってバズらせるの? っていう話になると……。
――音楽の話ではニュースにもならない。
梶:だから、新人はネタみたいな音楽をやらないと世の中に受け入れられないのか? という話になって、どんどん絶望的な気持ちになってくる。そこで、このオーディションの話になるんですけど、逆に「ネタから生まれてくる音楽マーケット」を作れるんじゃないか? って思ったんですよね。
アーティストを発掘して育成してヒットを生み出すという既存のやり方からは、ヒットの実例も少なくなっているし、思い切り割り切って発想の転換をしたら、何かおもしろいことができるのではないか。もしかしたら希望が見つかるんじゃないかって。会社から、オーディション自体も自由にやっていいと言われているので、壮大なる実験をやっている感じです。
――発想の転換は、評価基準にも出ていますよね。
梶:きっかけが「ネタ」から始まっても、音楽が主語のトレンドになっていることを条件に、セルフプロデュース能力がちゃんとあるかというところを見ていますね。技術的に上手いとか下手ではなくて、アーティストの存在自体がどう人々の心に訴えて、音楽を中心にどう認められていくのかというところ。
――主語はあくまでも音楽であると。
梶:コンセプトはそこですね。ただ、「音楽のトレンドを作る」ことが目的だけど、とっかかりの部分で縛りはないから、これまでにはあり得ない組み合わせのファイナリストたちが残っているというのは特徴的ですよね。
今の若い子は、CDデビューしたいと思ってオーディションを受けるわけではないですからね。インディーズやそれぞれ現状のスケール感で活動しても、自分でやったほうが儲かる人たちだっている。そもそもオーディションを目的としている人たちっているのかなっていうところから始まりました。
――ああ、もう応募の目的も違うんですね。
梶:ファイナリストたちもそこは明白で。葉山柚子さんは、毎日ライブ動画配信を行なって、国内外にファンがいる“ライバー”ですからね。そこで収入も得ているんですけど、ライバーの世界大会なんて、優勝賞品がヘリコプターだったりして、想像を超える世界なんですよ。葉山さんはライバーの世界ではヒットが作れているから、もっとメジャーなところへ行きたいという欲求かな。
YouTubeのチャンネル登録者が10万人以上いる、あさぎーにょも、デビューすることが目的ではなくて、自分が活動するにあたって300万円の支援があるところに魅力を感じて応募していて、「もっとおもしろいことをやってやろう」ということしか考えていないですからね。
――KID CROWは?
梶:キャラかな(笑)。ラップだけで言うなら、うまい人は他にもいっぱいいるんだけど、広告代理店に勤めていて、アメリカから日本に帰化しているから英語がペラペラだし。「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」(世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル)でも企業ブーススタッフとして働いてたりするんですよね。謎で変なヤツ。
夜中出社集団は、わりと正統派なんだけど、(自称)“音楽版Banksy”と掲げて、ゆとり社長が古着を取り扱うベンチャーを立ち上げていたりして、今っぽい感じのグループなんですよね。
――ドアノブロックは、ボーカルのセックスフラペチーノさんの過激さにも注目が集まっていますよね。
梶:彼らはバンドスタイルで、やっている姿勢は古きよきスタイルなんですよね。でも「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 17/18」の優勝ア—ティストとして、フェスに出演して、賞金をステージからばらまこうとして怒られて、頭にきてステージで脱いで怒られたっていう(笑)。こういうベタな感じがいるっていうのもすごくいいなって。
SUKISHAは、生活は苦しいのに、働く様子もなく、家でゲームとか猫と遊んでいたりするんですけど、やっている音楽はカッコよくて、全部自分一人で作っていて、本気で音楽をやりたいという情熱だけは誰にも負けないっていう。本当にバラバラなんですよ(笑)。
――動画配信サイト「GYAO!」、音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」にて、ファイナリストによる音楽リアリティ番組でも、それぞれの個性が炸裂していますよね。
梶:そうですね。だから、審査に関しても、普通は演奏力とか曲がいいとかで審査していくじゃないですか。でも、このオーディションは、「この人なんでこの写真?」みたいな、バズが起こるキャッチーさが大事で。審査する人、審査される人というところからも、既成概念を覆えしたいですね。
今、売れているアーティストって、セルフプロデュース能力すごいじゃないですか。自分のやりたいこと、なりたいこと、こう見られたいとかすごくはっきりわかっている人が抜きん出ている。今は、アーティストをプロデュースする時代でもないし、昔のようなヒエラルキーとは変わってきていて、どんどんレーベルとアーティストとの位置関係も変わってきているので、お互いがお互いをリスペクトしあったチームを作っていかないとうまくいかないって、日々感じているんですよね。信頼関係が一番大事。そういう関係性を築けて、それぞれの役割を持って、対等に、ベストを尽くせるプロジェクトは、まあ、失敗しない。
そういう関係性をオーディションという形でも作れないかなというところで、「Feat.」=フィーチャリングにしているんです。こんな時代だからこそ、ソニーミュージックがアーティストにお手伝いできることってなんだろう? っていう意味を込めて。
――実際に審査は複雑で難しいのでは。具体的にはどのように?
梶:ちゃんと音楽を主語に評価するんですが、ソニー・ミュージックコミュニケーションズとともに開発した独自のアルゴリズムにより、SNS上の一般の音楽ファンが参加した、音楽トレンドランキングで選考します。そのアルゴリズムを作るのはすごく大変ですね。6組、それぞれが持っている力量が違う中で、フラットに評価しなければならないのですが、考え方としては、その人の持っているソーシャルの力量から成長曲線を予測するんです。その予測成長曲線に対して、その時のバズり方が上ブレてるか下ブレてるかで加点するっていう考え方で数式を作るんです。
ただ難しいのが、あさぎーにょのように初めからソーシャルの力量がある人だと、上下の幅がそんなに激しくないんですよね。逆に全然フォロワーのいない人だと、1人、2人フォロワーが増えただけで、100-200%達成とかになってしまうので、それが同じ加点になってしまうと不公平が生じる。そういうところは気をつけてバランスをとっています。
――なるほど、おもしろいですね。
梶:あと実は、これだけで終わらせるつもりはなくて、このアルゴリズムは、外部のデータ分析と連携させながら作っているんですが、今後、我々のアーティストプロモーションにも活かせないかなって思っていて。例えば新人がデビューする時に、成長曲線から分析して、こういうことをやったらこれくらいの結果が出るというような、ひとつのAIじゃないですけど、学習させて、「音楽でバズると、こういうふうな広がり方をする」という知見を貯めていこうと。通常、トレンドについては単なるホットワードというだけで、解析していないと思うのですが、「音楽軸としてトレンド分析や解析ができるよ」っていうのは、レーベルにとっても資産になりますよね。そこはまだ試行錯誤中なので、ご期待ください!
――最後に、オーディションの今後についてお聞かせください。
梶:9月にひとり脱落者が出て、10月9日にZepp DiverCity(TOKYO)で最終審査があります。生中継も予定しています。ファイナリストはそこに向かって、それぞれ、戦略があるみたいなので、今後どうなるのかはわかりませんが、我々だけでやっているオーディションではないので、まずは、ぜひ、番組を観ていただいて、SNSなどで参加していただければ。そして、Zepp DiverCityにもお越し下さい!
次回は、ファイナリストたちによる座談会を公開するので、お楽しみに!
現在、ファイナリストに密着した音楽リアリティ番組「Feat.ソニーミュージックオーディション」を放送中。番組MCには平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、と池田美優(みちょぱ)を迎え、絶妙な掛け合いを披露しています。
■番組名:Feat.ソニーミュージックオーディション
■放送チャンネル:動画配信サイト「GYAO!」、音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」
■放送:「GYAO!」……毎週金曜日午前0時(木曜日24時)~配信
「MUSIC ON! TV(エムオン!)」……毎週木曜日夕方5時30分~放送
※「MUSIC ON! TV(エムオン!)」は一週遅れての放送開始となります。
※放送予定内容は予告なく変更となる可能性があります。
■番組視聴/オーディション特設ページ
■会場:Zepp DiverCity (TOKYO)
■開催日時:2018年10月9日(火)
■料金:無料招待制
■MC:平井”ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、池田美優(みちょぱ)
※イベントの詳細は随時オーディション特設ページでお知らせします。
Feat.ソニーミュージックオーディション公式サイト
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