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連載Cocotame Series

Sony Music Presents全国作曲コンクール

『全国作曲コンクール』の中の人に聞いた、コンクールの真の狙い

2018.09.07

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作曲・ソングライティングの才能にフォーカスした『Sony Music Presents 全国作曲コンクール』を通して、今の音楽シーンで求められている才能やプロのクリエイターとして活動していくための心得を浮き彫りにしていく特集。

最終回は、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)で本コンクールの運営に携わり、応募された約8,000曲を全て聴いたという、SML企画戦略本部の佐藤海合に優秀作品が選出されるまでの過程、コンクールを開催した真の狙いを聞いた。

予想を上回る8,000件もの応募

ソニー・ミュージックレーベルズ 企画戦略本部 佐藤海合

ソニー・ミュージックレーベルズ
企画戦略本部
佐藤海合

──まずは全国作曲コンクールを実施することになったきっかけを教えてください。

佐藤:アイドルやバンド、シンガー、声優といったマイクの前に立つ側の方を対象とするオーディションは多いのですが、作家の方たちにアプローチする作曲オーディションがほとんどないことに気付いたのが、オーディションを開催することになったきっかけです。

DTM(デスクトップミュージック)も進化しているので、スタジオに籠らなくても、自宅で音楽を作る環境は整えられます。その上で、作曲家になりたいけれどなり方がわからない、作品を作ってみたけど、どこで発表したらいいのかわからない……。そういった方たちのなかにも才能が眠っているのではないかということから、『全国作曲オーディション』という形をとることにしました。また、プロの作曲家にとどまらず、一般の方々にも広く門戸を解放して楽曲を採用したいというSMLのA&Rとの考えとも合致しました。

──結果、8,000件もの応募があったとのことですが、この応募数は見込み通りでしたか?

佐藤:正直、初めて開催するものなので、どれだけ応募が来るかわかりませんでしたが、約8,000件というのは予想よりもはるかに多かったです。ただ、うれしい誤算ではあるものの、その分選考がものすごく大変でした(笑)。

──賞金総額が1,000万円というのも話題になりました。

佐藤:賞金が設定されているオーディションは最近あまりないので、それも応募数が増えたことの一因だと思います。その上で、賞金が目的でご応募いただいたとしても、“曲を書いてみる”ことや“音楽に興味を持つ”きっかけに、この作曲コンクールがなってほしいという思いはありました。

──最大10曲が優秀作品として選出される予定でしたが、最終的に選ばれたのは5曲でした。これはクオリティの問題ということでしょうか。

佐藤:今回はSMLの各レーベルからひとりずつ代表者を選出し、「全国作曲コンクール実行委員会」を組織してレーベルを横断したオーディション運営を行ないましたが、どの楽曲をどのアーティストが採用するかは各レーベルのA&Rに委ねたので、曲の選考についても任せました。

その結果が5組のアーティストに採用された5曲の入選曲であって、単純にクオリティの高い曲ということであれば10曲と言わずそれ以上選ぶことも可能だったと思います。

ただ、実際にその曲をリリースするとなると、作品のクオリティというよりは、楽曲とアーティストの相性が重要なので、今回はその条件が満たされたのが5曲だったということです。

──なるほど。ところで、今回のようにレーベルを横断した企画というのは過去にもあったのでしょうか?

佐藤:作曲家を対象としたオーディションでレーベルを横断する企画というのは、ソニーミュージックでは初めてかもしれません。お伝えした通り、テクノロジーの進化によって音楽制作のハードルが下がり、さまざまな才能がたくさん眠っている可能性があるなか、それを見付けられていないのが現状なので、こういった取り組みがきっかけになって、新しいスターが発掘できればと考えています。

全国作曲コンクール

オーディションのメインビジュアルは、月刊「ビッグガンガン(スクウェア・エニックス刊)」で連載中の漫画「シオリ エクスペリエンス~ジミなわたしとヘンなおじさん~」の作者・長田悠幸氏の描き下ろし。

テクニックや完成度だけではない選考のポイント

──今回のコンクールでは、応募楽曲に傾向や特徴はありましたか?

佐藤:アニソンやボカロを意識したような、キャッチーでポップな楽曲が多く見られました。ただ、ヒップホップやEDMなどもたくさんあって、ひとつのジャンルに集中するということはなかったです。

また、年齢制限を設けていなかったので、年齢層の幅が広かったのも印象的でした。最高齢で90歳近くの方もいれば、最年少は10歳の方もいました。

──約8,000曲も寄せられたわけですが、一聴してプロかアマチュアかがわかったりするものなのでしょうか?

佐藤:曲のクオリティもそうですが、レコーディング環境でそれはなんとなくわかります。おそらく、ギターを始めたばかりであろう10代の女の子がiPhoneのボイスメモで頑張って弾き語りをしているものもあれば、抜群のDTM環境でプロ顔負けのミックスとマスタリングがなされているものもありました。ただ、今回の選考では録音環境の良し悪しは選考基準にしていません。

また、8,000曲の応募曲は、私も含めた実行委員会の担当者が全曲チェックしましたが、応募の際に希望ではあることを前提としつつ、楽曲をどのアーティストに歌ってもらいたいかというアンケートに答えていただいたので、名前の挙がったアーティストごとに楽曲を分類して各レーベルのA&Rが聴きやすい状態にして渡しています。この作業を行なうときも楽曲の完成度は問わず、メロディを中心に光るものがあるかないかをチェックしていました。

──聴いて、心に響くか響かないかが選考の基準ということでしょうか。

佐藤:そうですね。言葉にしにくいし、点数化もできないのですが、ストレートに聴いて素敵なメロディラインだと思える楽曲を選びました。当然、ひとりの判断では偏ってしまうので、実行委員会が組織として選考を行なっています。

ソニー・ミュージックレーベルズ 企画戦略本部 佐藤海合

──歌詞はなく、インストゥルメンタルでの応募もあったのでしょうか?

佐藤:インストの応募も多かったですが、採用された楽曲は今回ありませんでした。一方で、歌詞がそのまま採用されたケースも少なかったですね。楽曲のみ使わせていただいたり、元の歌詞からアーティストの世界観に合わせて少し修正をお願いしたり。

ただ、当然ですが歌詞もしっかり見させていただいています。作詞家コンクールではないので、それだけで採用とはならないものの、やはり曲と詞が一緒の方が、その方の作家性がわかりやすいので判断基準になっていたのは事実です。

──なるほど。では、佐藤さんたちから各A&Rにリストが渡った以降は、皆さんどのように選考されたのでしょうか。

佐藤:楽曲のクオリティ重視で選考していたA&Rもいますし、担当しているアーティストの既存のイメージとは敢えて異なる曲を探していたA&Rもいました。一番の選考基準は、良いメロディラインであることに加えてアーティスト本人と担当A&Rの考えが一致した曲が、録音のクオリティや演奏のテクニックとは関係なく採用された気がします。

──プロの作家さんではない方たちとコラボレーションしていくのはA&Rやアーティストにとってもすごく新鮮なことではないですか?

佐藤:そうだと思います。足立佳奈で採用が決まった古本 隆さんはまだ10代後半の男性、Aimerでの高橋 奎さんも20代の男性で、若い才能と出会えました。

また、Pizuya’s Cellさんは、東方アレンジなどで活躍されている方で、LiSAで採用が決まったgoodtimesさんは、すでに全国でライブも行なっているような大阪の2人組男性ユニットです。

私は運営実行委員のメンバーなので、入選曲が決まったあとは各A&Rに引き継いでいますが、作曲やミックスに関して、採用された作曲家の方々と継続して連絡は取り合っているとのことです。そうしたやりとりのなかから、また新たな曲が生まれたり、今後も引き続き依頼があったりするかもしれない。そういう縁に繋がったら良いですね。

──今回採用されておしまい、というのではもったいないですよね。

佐藤:そうですね。また、そうした事例が増えれば、コンクールの第二回開催にもつながっていくと思いますので期待したいです。

──シリーズ化を目指すということですね?

佐藤: 8,000もの楽曲をチェックするのは、非常に大変ではありますが(笑)続けたいですね。コンクールの目的は、素晴らしい楽曲が生まれることと、新たな才能に出会うことです。

それは、作家としての才能に限らず、パフォーマンスをするアーティストという意味でもです。お伝えした通り、アーティストの採用曲にはならなくても、光るものがある楽曲を応募してくださった方はほかにもいて、そのなかにはバンドやシンガーとして活動されている方もいます。そういった方については、ライブがあればじつは実際に行って、パフォーマンスを観させていただいたり、動画サイトなどで他の曲も聴かせていただいたりしています。

──なるほど。才能の発掘は続いているんですね。

はい。『全国作曲コンクール』がご縁で、まだ陽の目は見ていないけど、輝く才能と出会えたらと考えています。ぜひ、今後にも注目してください。

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