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連載Cocotame Series

乃木坂46 アジアへの挑戦

乃木坂46 アジア進出を支えるスタッフが語る”台湾単独ライブ”までの道のり

2019.04.25

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2017年11月のシンガポールを皮切りに、香港、上海、台湾とアジアでのライブや活動を熱心に展開してきた乃木坂46。各国ごとに異なる環境やファンベースに対して、スタッフたちはどう対応し、乃木坂46の魅力をどう伝えてきたのか。

特集第4回では、乃木坂46のアジア進出を支えるソニー・ミュージックエンタテインメントの菅雅子、清水健司にインタビュー。台湾単独ライブまでの道のり、そして台湾公演を終えて見えてきたアジアでの展望についても聞いた。

 

    • 菅 雅子

      Suga Masako

      ソニー・ミュージックエンタテインメント

    • 清水健司

      Shimizu Kenji

      ソニー・ミュージックエンタテインメント

乃木坂46アジア進出の始まり

──まず、乃木坂46がアジアに進出することになった経緯を教えてください。

菅:乃木坂46合同会社の代表である今野(義雄)と日本でのタイアップに関する話をした流れで、「C3AFA Singapore 2017」に出演するのであれば、アジアでライブとかやらないのですか? と聞いたのがきっかけなんです。そろそろアジアに向けて、何かしらの活動をしていくべきタイミングだと思っていたので。

清水:私はその頃、乃木坂46にはまったく関わっていなくて、当時の仕事はアニソンアーティストの海外展開を通訳も含めてサポートすることと、Zepp(コンサートホール)が海外に出店することを始めていたので、そのサポートをしていました。

それが2017年の10月ぐらいにシンガポールに駐在しているソニーミュージックのスタッフから、アニメイベントの「C3AFA Singapore 2017」に乃木坂46が出演することになったから、今野さんに会って話をしてきてほしいといきなり言われまして。無茶ぶりとも言いますが(笑)。そこからあっという間に乃木坂46が海外に進出する話になっていったんですよね。

菅:何かすごく壮大なプロジェクトが組まれ厳選されたスタッフが集まって、というようなものではなく、今野さんの鶴の一声だけで決まっただけで(笑)。

清水:それからアジアに強そうだというスタッフがかき集められました。自然発生的なチームでスタートしたんです。

──その時点で乃木坂46がアジアで受け入れられるという目算はあったのですか?

清水:当時アジアではアニメと比べてアイドルは苦戦を強いられていました。そうした状況を目の当たりにしていたので、乃木坂46が日本でもトップクラスのアイドルだと認識していましたが、アイドル文化がまだ根付いていない海外では乃木坂46といえども厳しい状況になるのではと思っていました。

アニメはテレビやPC、スマートフォンから簡単にアクセスできますが、アイドルは自分から動かないと情報も取りにいけない。認知という面でどうしてもアイドルは分が悪い印象があったんですよね。

──そういった状況でシンガポールでの出演を迎えようとしていたわけですが、乃木坂46の認知を高めるために何か施策などは行なわれたんでしょうか?

清水:シンガポールの出演が決まったのはイベントの2カ月前ぐらいだったので、現地でのプロモーションはスケジュール的に難しく、さらにその時、ソニーミュージックのYouTubeにある乃木坂46のミュージックビデオ(以下、MV)が日本国内からしか観ることのできない状況にあったんです。まずは、MVを全世界で観ることができるように動きました。

──迎えたイベント当日はどうだったのですか?

清水:その時はイベントの一環で行なわれたライブで、複数のアーティストが出演するなかの一組として出演しました。ですので、乃木坂46としてのパワーもあったと思いますが、現地ですでに浸透しているアニソンのファンの力も借りてチケット完売という結果になったと思います。

菅:まずは初の海外ライブでどのような反響が返ってくるのかを確かめたかったという思いがありましたね。日本ではシングルの売上が100万枚を超えているグループですが、YouTubeも観ることができなかったシンガポールで乃木坂46のことを知るのは並大抵のことではないことも分かってもいました。

その上での反応を実際に見てみないと、アジア進出だと景気よく言ってみても始まるものも始まらない。清水が言ったようにアニソンのファンも含めた盛り上がりだということは分かりました。このタイミングで、次は香港の「C3AFA」のイベントに出演することが決まっていたので、帰国してまず清水たちに香港では乃木坂46のブースを出そうと話したんです。

清水:そうでしたね、香港は2月の開催で少しは時間があるので準備をしようと。香港は中国大陸の玄関口になっているので、大陸からのお客さんも来るだろうと考えて、YouTubeを観ることが不可能な中国向けにTencent(中国の大手IT・ネットサービス企業)が運営しているサブスクリプションサービスで、乃木坂46の楽曲とMVのストリーミング配信をスタートさせました。

さらにストリーミングのアプリを立ち上げると乃木坂46のストリーミング開始が告知されるようにしたり、ライブに関してもTencent側が生中継をすることになっていたので、その告知もしてもらえるようにしたんです。香港のタイミングでは、大陸でも認知向上できるような施策を打つことができました。

──香港ではブースも賑わっていましたし、ライブでもうちわやサイリウムを持って声援を送る乃木坂46のファンも多く見受けられました。香港では乃木坂46の人気は浸透しているように思えましたが。

菅:日本のファッションに興味を持って日本のファッション誌を読んでいたり、日本に旅行したことがある方が香港には多くて、日本のことを情報収集しようとするなかで乃木坂46を知って、香港に来るんだったら一度観てみよう、という人たちも多かったのだと思います。ファッション誌をはじめ、アニメ誌や将棋雑誌にもメンバーたちが登場していて、活動の幅が広いだけにキャッチされる機会も多いはずなので。

初の海外単独ライブとなった上海公演

──香港でのライブを終えてから見えた課題というのはあったのでしょうか?

清水:実は香港よりも先に上海での単独公演が決まっていたので、終えての課題というよりも、次の上海公演をどう迎えるかということで頭がいっぱいでした。会場となったメルセデス・ベンツアリーナは1万人を動員できるアリーナで、果たしてお客さんが入るのだろうか、埋めるためにはどうすればいいのだろうかという心配ばかりしていたんです。

菅:大陸で何をやったら認知度が高まって、集客できるか。公演日から逆算して、何ができるかをまず考えました。海外事業の一環としてソニーミュージックが出資しているイベントで乃木坂46を露出できる場所はどれぐらいあるか調べたり、清水の伝手で大陸の企業にアポイントを取って宣伝部にプレゼンに行ったり。

清水:加えて、現地のSNSのフォロワーをいかに増やしていくかにも力を入れました。中国のSNS微博(weibo)のフォロワーをライブの日までに46万人にしようとスタッフの間で目標を掲げてアカウントを開設して、徐々に増やしていったんです。最終的に、ライブの前に46万人を達成できました。現在は76万人(2019年4月15日時点)にフォローされています。

──フォロワーを増やすために行なった施策などはありましたか?

清水:微博のなかでメンバーが生放送をしたり、昨年7月に行なったデビュー記念ライブ「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」ではプレゼント企画を行なったり、いくつか施策を行ないました。

さらには上海のインフルエンサーをライブに招いて、現地向けのインタビュー番組を作ってもらったりもしましたね。とにかく話題が途切れないように露出を続けました。今もbilibili動画と提携して、月一ぐらいのペースで松村沙友理が出演して生配信をしています。

──そうした努力を積み重ねていったこともあって、上海公演は大成功に終わりましたね。

菅:本当にすばらしいライブでした。上海という未踏の土地で、短い準備期間のなかでやれることをやり、清水とともにいつもチケットの売上を心配していたなかで、ファンで埋め尽くされたアリーナの光景を目にした瞬間は震えました。日本各地も含めて、乃木坂46のライブはほぼ観てきましたが、上海での光景はちょっと特別なものになりましたね。

清水:こんなに現地で受け入れてくれているんだと感動しました。当たり前ですが、単独公演ですから乃木坂46だけを観に来てくれたわけです。そこがシンガポールや香港と異なる点で、うれしさもひとしおでしたね。

“台北アリーナ”へのこだわり

──その上海の成功と同じくらい台湾での単独公演は盛り上がりを見せましたが、台湾ではどのようなアプローチをされたのでしょうか?

菅:公演が行なわれた台北アリーナもメルセデス・ベンツアリーナと同規模の大きさでしたので、やはり券売についての心配はついてまわりました。蓋を開けたら、台湾もたくさんのファンの方々が詰めかけてくれましたので、ほっとしました。

清水:台湾の場合、セブン-イレブン台湾のCMに出演していたこと、前年にモバイルゲーム「乃木恋」の繁体字版が台湾でローンチしたこともあって、上海とはファンベースが違っていましたが、それでも無事に終わるかどうかはどきどきしていましたね。

──台北アリーナもトップ・クラスのアーティストが公演を行なうことで知られていますが、やはりその場所にこだわりたかったのでしょうか。

清水:そこは今野さんも含めて、スタッフも譲れませんでした。しかし、現地のプロモーターから3,000人クラスの会場ならば即完売するだろうから、そこから始めてみてはどうかと提案されたんです。台北アリーナはかなりチャレンジになるよとも言われました。

──台北アリーナは1万人クラスですから、7,000人の差がありますね。

清水:どの現地プロモーターに聞いてみても3,000人クラスだという答えでした。

菅:がんばっても4,000人、5,000人入ったらすごいよと言われて。

清水:その話をしていたのが18年の頭の頃で、実際のところ、ぼくらも同じぐらいの感触を持っていたんです。でも、セブン-イレブン台湾の夏の飲料キャンペーンのCMが始まったのが昨年の7月で、8月にもセブン-イレブン台湾の別のCMが放送、9月には齋藤飛鳥主演の映画『あの頃、君を追いかけた』が公開、10月は大園桃子・齋藤飛鳥・与田祐希が起用されたピーチ・ジョンのラッピングバスが台北市内を走る、11月にはまたセブン-イレブン台湾のCMが放送される、というように毎月違ったかたちで乃木坂46が台湾で露出され続けているという状況を作れた。そうして台北アリーナを埋め尽くした1万人につながっていったんです。

菅:比較対象にはならないですが、2月に京セラドームで行なわれた西野七瀬の卒業コンサートは5万人の観客に対して、チケットの応募は46万人あったんです。それだけに3,000、4,000人が限界と言われるのは若干悔しくて、できることはすべてやるとばかりにがんばりましたね。

──台北アリーナの光景を見て、現地のプロモーターはびっくりしたんじゃないでしょうか。

菅:絶対驚いていたと思います。チケット発売初日で6,000枚という数字を聞いたときに、おおお! となって。みんなで良かったねと言い合いました。

清水:チケットが発売されたのは上海公演の翌日で、上海での評判がSNSなどで広がったタイミングだったので、その影響も大きかったと思います。もちろん狙って、その発売日にしました。買おうか迷っていた人で背中を押された人がかなりいたでしょうね。

──シンガポールから台湾まで、これまでに4カ所訪れてきましたがファンの違いというのは見えてきましたか?

菅:日本と海外のファンの違いは男女の構成比ですね。日本はファッション誌などの露出もあって女性ファンがとても多いですが、海外はまだまだその段階ではなく、今は男性が目立っています。日本は男女比6:4ぐらいの感覚ですが、海外は9:1ぐらいで、今後の海外プロモーションでは、重点的に女性ファンを伸ばしていきたいですね。

また、上海のファンに驚かされたのはメルセデス・ベンツアリーナ近くの商業施設のビジョンの放送枠を買って、ライブが開場したタイミングで乃木坂46に向けての映像を流したこと。西野への卒業おめでとうというメッセージも入っていました。もちろん、ファンの方がお金を出し合って、映像も制作して放映したんです。台湾でも地下鉄駅のなかにあるデジタルサイネージの広告枠をファンが購入して、齋藤飛鳥推しの映像をファンの方が上映していました。

清水:台湾の会場でファンの方が掲げていたフリップも自前です。まだアジアにファンクラブがありませんので、ファンのなかの誰かがこういうことをやろうと呼びかけて行なっている。本当にみなさん熱心で頭が下がるのと同時に、うれしさでいっぱいになりましたね。

今後のアジア展開においての課題、そして目標

──様々なことを乗り越え、各公演で最良の環境を作り上げてきましたが、今後のアジア展開での課題や目標をお聞かせください。

清水:各国のファンの方により親しみを感じてもらえるような企画や施策をこれからも考えていきたいと思います。そのひとつとしてアニメとのコラボも考えていて、先日も松村沙友理がアニメ雑誌のタイアップで『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』のエンディングで放送されたキャラクターによるダンスを完全コピーした映像を中華圏でも伝わるように字幕も付けて公開したんですが、すごくバズりました。今までは乃木坂46というグループ全体を推していましたが、今後はメンバーごとのキャラクターも多面的に打ち出していくことで、グループ全体の人気を底上げしていきたいですね。

乃木坂46公式微博(新しいタブで開く)

菅:乃木坂46はストーリー性のあるグループ。そのストーリーを生み出すのが一人ひとりのメンバーの個性なんです。その均一じゃない個性を知ってもらうことで、好きという気持ちを高めていってほしいと思っています。言葉の通じない国で個性を伝えていくのは難しいことではありますが、次に越えていかないといけないハードルでもあると考えています。その個性を伸ばすサポートもしていきたいですね。

一人ひとりの個性が集約されたグループの魅力は浸透しつつある。次のステップはファンがより共感、親しみを抱くきっかけとなる、メンバーそれぞれの個性を伝えていくこと。つまり、日本のファンが歩んできた道をアジアのファンにも通ってほしいという願いでもある。乃木坂46だけでなく、日本のエンタテインメントが海外に進出する上での道しるべになるような展開が今後もアジアで行なわれていきそうだ。

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