100年ブランドを目指す「ボンカレー」のこれから
2018.05.29
連載企画「50年の歩み ~meets the 50th Anniversary~」は、ソニー・ミュージックエンタテインメントと同じく50年目を迎える企業、商品、サービスを取り上げ、その歴史を紐解くことで、「時代」を浮き彫りにするという特別企画だ。
大塚食品「ボンカレー」を取り上げてきた連載シリーズ2、その第2回となる今回は、国民食となった「ボンカレー」が、2000年代以降、どのように成長・拡大していったかを担当者が語る。
── かつてはレトルト食品というと、鍋で暖めるものだったと思うのですが、「ボンカレー」はいつの頃からか電子レンジでも暖められるようになりましたね。
中島 「ボンカレー」を50年続けてきた中で、当然、調理家電も発達してきていますから、お客さまのニーズに合わせてこれらに対応していこうという取り組みはずっと続けてきました。2003年に「箱ごと電子レンジ調理」に対応したのは、電子レンジの普及率が95%に達したことと、共働きの家庭が増えて、より一層、調理の時短が求められたからです。この「箱ごと電子レンジ調理」は、今では定番の『ボンカレーゴールド』を含めた、全国展開している全ての「ボンカレー」で対応しています。
── なるほど、今ではレンジ調理の方がメインなんですね。
中島 そして、もうひとつ時代に合わせた大きな変化としてお伝えしておきたいのが、2016年に『ボンカレーゴールド』を国産野菜に切り替えたこと。『ボンカレーゴールド』は毎年ものすごい量を生産する主力商品だったので、原材料の確保などがとても大変だったのですが、それをお求めになるお客さまが多いことがわかったので、何とかこれを実現しました。安全性はもちろん、じゃがいものほくっとした食感など、味の面でも非常に好評です。
── この50年で色々と進化してきているということなのですね。そう言えば、先日試食した『ボンカレーゴールド』は、子供の頃に食べたものと比べて、ずいぶんスパイス感が増しているように思いました。やっぱり基本的な味付けもこの50年で変化させているのでしょうか?
中島 実は先ほどお話しした、電子レンジ対応が味付けにも大きな影響を及ぼしているんです。電子レンジ対応の新しいレトルトパウチには、蒸気を抜くための穴が空いているのですが、これによってスパイスの香りが立ちやすくなっているんです。偶然の産物ではあったのですが、確実にこちらの方が美味しくなっていますので、まだ電子レンジ対応後の「ボンカレー」を食べたことがないという方には、ぜひお試しいただきたいですね。
──「ボンカレー」は多彩な製品ラインナップも魅力的ですが、これらはどのように検討されているのでしょうか?
中島 1968年に発売した初代『ボンカレー』は、「お母さんの手作りカレー」というコンセプトで作られたのですが、その10年後、1978年に発売した『ボンカレーゴールド』は、高度経済成長期を迎えて大きく変わりつつあった日本人の味覚に合わせて、よりスパイシーで、よりフルーティな味付けにしました。『ボンカレーゴールド』はその後も1989年に、内容量を200gに増やした『ボンカレーゴールド200』(現在は販売終了)を発売するなど、時代に合わせて味付けや分量などを変えています。
その後は、2009年に発売した電子レンジ調理対応製品『ボンカレーネオ』や、2015年に発売した『Theボンカレー』など、高価格帯のプレミアムな商品も投入。製品開発にはさまざまなやり方があると思いますが、「ボンカレー」については、市場動向よりも、どういった商品をお客さまに提供していきたいかという気持ちが先に立つことが多いですね。
── なるほど、「ボンカレー」は、いわゆるマーケットインではなくプロダクトアウト型の商品開発を行なっているんですね。
中島 もちろん、ターゲットを明確に開発したものもあります。たとえば今年発売した『ボンカレーグラン』がそう。これは、たまねぎ、にんじん、じゃがいもにこだわってきた「ボンカレー」としては珍しく、木の実やコーンなど、さまざまな食材を使用した、やや高価格帯な商品なのですが、これは以前よりもさらに共働き家庭が増えている中、わずかな調理時間で「プチぜいたく」感を味わっていただきたいという思いで生み出しました。
── 同じシリーズ内での味のバリエーション、つまり「辛さ」はどのように分けているのでしょうか?
中島 初代『ボンカレー』は「甘口」と「辛口」の2種類しかなかったのですが、『ボンカレーゴールド』は現在、5つの味付けを用意しています。『ボンカレーゴールド』の味の基本は、じっくり炒めたたまねぎの旨味なので、それは活かしつつ、スパイスやフルーツなどでバリエーションを付けているんです。この際、街のカレー屋さんなどでは、最も甘い(辛くない)味付けをベースに、辛味を加えていくことで味付けを調整していくことが多いですが、『ボンカレー ゴールド』では、甘口ならフルーツの香りが引き立つように、中辛ならビーフの味わいが際立つように、辛口はカルダモンのスパイスをきかせたスッキリとした辛みを味わえるようにと、それぞれレシピを変えて商品化しています。
── 「ボンカレー」の50年史の中で、ちょっとやり過ぎてしまったなぁという商品はありますか?
中島 2013年の夏季限定で発売した『ボンカレーゴールド 超熱辛』は少しやり過ぎてしまったかもしれません(笑)。今のラインナップで最も辛い『ボンカレーゴールド 大辛』は大塚食品の辛さの基準で8を付けているのですが、「超熱辛」はなんと40。そこまで辛くなると「お母さんの手作りカレー」とは言えなくなってしまいます。ただ、一部の激辛マニアの方々からは熱烈な支持を集めていたようで、今でも再発売を求める声が届きます。また、初期には『ボンシチュー』(1971年)や『ボンピラフ』(1981年)など、カレー以外の商品にもチャレンジしていました。レトルト食品をどのように認知・普及させていくかということで、いろいろ試行錯誤していたようですね。
そのほかにも、ユニークなものでは冷やしカレーなんてものもありました。冷やしても固まらない油を使うなどして暑い夏でも美味しく食べていただけるようにしたのですが……こちらも少し時代を先取りし過ぎたかもしれません(笑)。実際、その後、2015年に夏季限定で発売した、冷やしても美味しく食べられる『ボンカレーゴールド 太陽のキーマカレー』は素麺と絡めて食べるなどといった新しい食べ方を提案したところ大変な好評を博し、昨年夏にはさらに味わいを高めた新バージョンも発売されています。
── 思っていた以上に色々な商品を発売されていたんですね。そういったチャレンジは、やはり「ボンカレー」のブランディングにも関係することなのでしょうか?
中島 そうですね。「ボンカレー」を、この先100年愛されていくものにするためには、お客さまのニーズをできる限り汲み取って進化させていかねばならないと、今も、日々商品開発に取り組んでいます。
国民食とまで言われるようになった『ボンカレー』は、次の50年を見据えたブランディングに取り組んでいた。次回は、ボンカレーが100年ブランドとなるために必要なものを聞く。
取材/文:山下達也(ジアスワークス)
撮影:松浦文生
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