イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

360°広がるVR空間でスマホを操作 癒し系のPlayStation®VRソフト『anywhereVR』が誕生!

2017.01.16

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

360°の3D空間がプレイヤーを取り囲み、ゲームの世界に入り込んだかのような体験ができるバーチャルリアリティ(VR)システム、PlayStation®VR(以下、PS VR)。

昨年10月の発売以来、対応ソフトも続々リリースされ、アクション、ホラー、レースなどさまざまなジャンルで刺激的な体験を提供している。

そんななか、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)から異色のVRソフトが誕生した。

『anywhereVR』は、360°広がるビーチや森林などの映像を楽しみながら、スマートフォンを操作できるライフスタイル密着型VRタイトル。

極上のリラックス空間でいつも通りにスマホを操作するという、他にはないコンセプトで人気を集めている。スリルと興奮を味わうVRコンテンツが多いなか、なぜこのような静的なタイトルが生まれたのか。

『anywhereVR』誕生の背景、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)やソニーといったグループ企業との連携などについて、SMEの担当者に話をうかがった。

anywhereVR

刺激的なものだけが非日常ではない

――『anywhereVR』は非ゲーム系VRコンテンツの中でも、ユニークなタイトルです。この企画が誕生した経緯を教えてください。

SME デジタルコンテンツグループ 企画推進チーム 兼 SIE IPプロジェクト推進室 坂本和則さん

SME デジタルコンテンツグループ
企画推進チーム 兼 SIE IPプロジェクト推進室
坂本和則さん

坂本:僕はSMEに籍を置きつつ、PlayStation™MusicのローンチのためSIEに出向していたんです。そこでゲームのプロデューサーや制作スタッフに出会い、SMEでゲームを作るのも面白そうだと思うようになりました。ちょうどPS VRに注目が集まっていた時期だったので、VRコンテンツを作りたいと考えたのが発端です。

――PS4®やPlayStation®Vitaではなく、いきなりPS VRのコンテンツにチャレンジしたのはなぜでしょう。

坂本:せっかくなら斬新なことに挑戦し、その分野の先駆けになりたかったので。PS VRなら、このタイミングで新しいこと、変わったことにチャレンジできると思いました。企画を考え始めた頃は、刺激的な体験をアピールするVRコンテンツが多かったんですよね。でも、刺激の強いコンテンツは長時間プレイできませんし、いつか飽きてしまいます。毎日VRヘッドセットをかぶってもらうにはどんなコンテンツがいいのか、考えていきました。

――VRをもっと身近に楽しんでほしかったんですね。

坂本:そうなんです。VRでは非日常的な体験ができますが、刺激的なものだけが非日常ではありません。普段はバリバリ働いている人がリゾート地に行けば、それも非日常。普段から楽しんでいただくには、癒し系コンテンツのほうがいいのではないかと思いました。それに、ユーザーの余暇時間は限られていますから、なかなかゲームに時間を割いてもらえません。どうすれば日常的な時間を減らさずにVRに時間を取ってもらえるか考え、『anywhereVR』のアイデアを練っていきました。

――原口さん、阿部さんは、どのような経緯で『anywhereVR』に関わることになったのでしょうか。

SME デジタルコンテンツグループ 企画推進チーム 兼 SIE ネットワークビジネス部 ネットワーク事業企画課  原口さん

SME デジタルコンテンツグループ
企画推進チーム 兼 SIE ネットワークビジネス部 ネットワーク事業企画課 
原口さん

原口:僕も坂本さんと同じく、SMEとSIEの両方に所属しています。共にグループ会社をまたがる活動をしているので、坂本さんとは視点が近くて共感することが多いんですが、『anywhereVR』の企画を話しはじめたときもすぐに共感して、SMEでの体制作りからはじめました。

SME デジタルコンテンツグループ 企画推進チーム 阿部さん

SME
デジタルコンテンツグループ 企画推進チーム
阿部さん

阿部:僕はもともとゲーム業界にいましたが、半年前にSMEに入社しました。以来、映像制作会社やゲームディベロッパーと共に『anywhereVR』の制作に携わっています。

――SIEではなく、SMEからリリースした理由は?

坂本:非ゲームコンテンツを作るなら、アニメや映像の分野でコンテンツ制作の知見が豊富なSMEで作ろうと思いました。

原口:坂本さんから企画を聞いた時、一般的なVRコンテンツとはイメージが違うと思ったんです。そして、それこそが『anywhereVR』の魅力だとも思いました。SMEで制作するからには、他と同じようなコンテンツを作っても仕方がありません。SIEが作るゲームらしいゲームとは違う、SMEならではのコンセプトを形にしたいと思いました。

坂本:企画を立ち上げる際、同じソニーミュージックグループのアニメ製作会社、アニプレックスにプレゼンに行ったんです。その時に、とても受けが良く、自分の中で「これはイケる」と確信を持てました。“VR空間でスマホを操作する”なんて、自分でもバカなことをやっているのはわかっていましたし、笑われるのも覚悟していました。でも、アニプレックスの人々に受け入れられ、「やっぱりこれいいな」と思えたんです。実写のVR映像の代わりに360°広がるアニメを流すのもいいでしょうし、可能性はまだまだある。“最初にやったもん勝ち”という空気を感じました。

――制作は、どのように進めていったのでしょうか。

阿部:作ってみなければわからないところもあるので、まずは2016年6月からプロトタイプを作り始めました。そこから外注のゲーム制作会社、映像制作会社をどこに頼もうか、検討を進めました。

坂本:6月から制作を始めて、半年後の12月には配信していました。こんなに短い期間で仕上げることができたのは、奇跡の積み重ねだと思います。

阿部:とにかく足は使いました。いろいろなところに話に行き、先方の話も聞いて。そこでいい方々に巡り合えたのが、大きかったですね。映像制作会社は5、6社にあたりましたが、そのなかで出会ったのがランドスキップ社という会社です。『anywhereVR』でも前向きに取り組んでくださり、旭山動物園、神社など「ここは難しいかな」と思う撮影場所にも果敢にアタックして交渉してくれました。なによりも『anywhereVR』のコンセプトに賛同してくださったのがうれしかったですね。

原口:発表後は、メディアの方々から「自分が求めていたVRはこれなんです!」と言っていただくこともありました。やはり、我々が伝えたいことをわかってくださる方がいると嬉しいですよね。

4台のαを使い、360°の映像を撮影

4台のαを使い、360°の映像を撮影

――『anywhereVR』では、沖縄の海や北海道の平原などさまざまなロケーションのVR映像を楽しむことができます。これらの撮影方法についてお聞かせください。

原口:ソニー ブランドデザインプラットフォーム UX事業開発部門 UX企画部の協力を得て貸出していただいたα7SIIを、VR映像の撮影に使いました。4台のαを三脚のような特殊機材に設置し、360°全方向を一度に撮影したんです。4台のαで撮った4つの映像をひとつにする「スティッチング」という工程があるのですが、そこでもランドスキップ社が優れた腕を発揮してくれました。

――そこに技術の差が出るのでしょうか。

阿部:そうなんです。ランドスキップ社のように技術力のある会社は、4つの映像の継ぎ目がわからないようスティッチングしてくれます。4台のαで90°ずつ映像を撮影していますが、実際の『anywhereVR』の映像を見てもその切れ目はほとんどわからないですよ。

原口:「ここに切れ目が来そうだから、切れ目が目立たない構図にしよう」と、撮影を始める前から考えてくれるんです。

阿部:映像を観る方ができるだけリラックスできるよう、映像に人が映り込まないようにも気を遣いました。

坂本:撮影を始めたら、カメラマンはフレーム外へ移動しなければなりません。録画ボタンを押したら、カメラマンはその場から去って物陰に隠れる(笑)。海や川などの撮影では水面の波紋が収まるまで待ち、その後の映像を採用しました。

――海や森以外に、どのようなロケーションがあるのでしょうか。

坂本:富士山近くの神社もありますよね。わざわざ現地に行かなくてもお参りできるので、便利なんです(笑)。あとは、暖炉の映像。欧米では、暖炉で薪が燃える映像だけを流すチャンネルが人気らしいんです。暖炉の火を眺めながら、スマホで本を読むと雰囲気が出るのではないでしょうか。

原口:撮影したのは8月だから大変でしたけどね(笑)。

阿部:VR映像と共にBGMも流れますが、音量を落とせば環境音だけを楽しむこともできます。例えば暖炉の映像なら、BGMなしで薪が燃える音だけを流せるんです。川のせせらぎ、波の音、風の吹く音などを映像と共に楽しめば、さらにリラックスできます。

原口:VR空間から現実に引き戻されることのないよう、映像、サウンド共に気を遣っています。通信環境に左右されず最も美しい映像を楽しめるよう、ストリーミングではなく映像をダウンロードして再生するようにしました。映像の切り替えも、瞬時に行うことができます。

阿部:映像はそれなりの長さがあるので、必然的にデータ容量も大きくなります。そこで、SIE R&D部門開発2部に相談して動画変換技術を提供してもらいました。この技術を利用することで、画質を落とすことなく、普通なら数十GBになるところを、数GBにまで落とし込むことができました。

坂本:ただのベンダーではなく、グループ内企業として協力を得ることができました。

原口:撮影にはソニーのαを使い、映像の変換にはSIEの技術を活用。技術面でグループの力を借りることができたため、我々は癒しの空間を演出することに集中することができました。

SMEならではのアイデアに、ソニーとSIEの技術を融合

――他には、グループ内でどのような連携を図りましたか?

阿部:スマホの画面をキャストする機能については、SIEのソフトウェアビジネス部の技術協力を受けました。また配信開始時にもSIEにはさまざまな面でバックアップをしていただきました。

原口:僕はもともとはソフトウェアのプログラムを作っていた技術者なので、グループ内に存在している優れたソフトウェア技術を活用してアプリやサービスを作りたいという思いが強かったんです。SMEには、新しいことにチャレンジできる懐の深さがあります。変なアイデアを喜んでもらえるし、面白がってもらえるんです。

だからこそ、今回の『anywhereVR』を実現できたのだと思います。SMEのユニークなアイデアにSIEやソニーの技術を融合することで、ソニーグループならではの新しいものが生まれる。それを目指してました。今回のプロジェクトは、まさにその一例ですね。

――SMEとしても、PlayStation®用のタイトルをリリースするのは13年半ぶりでしたよね。

原口:あらためてパブリッシャー登録をし直すところからのスタートでした。しかも、そこからソフトのリリースまでわずか半年。頑張りましたよね。

坂本:SIEJAプレジデントの盛田 厚さんが協力してくださったのも、大きかったですね。盛田さんに『anywhereVR』についてお話したところ、「SMEからこのようなソフトが生まれたのは非常に面白い。SIEとSMEが協力してPS VRを盛り上げると言うのはすごくありがたいこと。すぐにでもPS VRのノンゲームタイトルの目玉にしたい」とおっしゃって、東京ゲームショウ直前に開かれたSIEプレスカンファレンスで大々的に発表してくださいました。

阿部:盛田さんは「VRはテレビの登場以来のイノベーション。その中ではノンゲームコンテンツも重要。ソニーはSMEもSIEもいるので、その強みを最大限に活かして新しいエンタテイメントを創っていきたい」とおっしゃっていましたよね。

原口:『anywhereVR』の紹介VTRが流れた後に盛田さんが登場して映像をバックにスピーチをされました。そのシーンがメディアに使われたおかげでバズにつながりました。

――タイトル発表後、そしてリリース後の反響はいかがでしょう。

阿部:タイトル発表後は、海外からの反響が大きかったですね。海外での配信に向けて、すでに手続きを進めています。

原口:僕はSMEのゲームアプリ開発にも関わったことがありますが、やはりPS4®タイトルは反響の大きさがまったく違いますね。配信直後からTwitterや個人ブログで話題になっていました。9割以上はポジティブな反応ですし、SIEの方々も応援ムードです。

阿部:この機能をPS4®にデフォルトで組み込んでほしいという意見も多かったです。

――おすすめの楽しみ方は?

阿部:スマホで電子書籍を読めますし、コミックとも相性がいいんです。YouTubeも楽しめます。スマホの画面をVR空間にそのまま映し出しているので、スマホでできることは基本的に何でもできます

原口:通知機能もあります。メールなどの着信などがあると、VR空間にお知らせが表示されるんです。VR空間でのんびりくつろぎ、通知が来たからスマホの画面を映そうか、とキャストしてもいいんです。

阿部:隠しネタでは、時報もあります。丑三つ時になると、英語でメッセージがつぶやかれるんですよ。

――VRヘッドセットをかぶると手元が見えないので、メールを打つのは難しそうですね。

坂本:Android OSの基本機能に、指先が触れたところにポインタを表示させる機能があります。それを使えばどこを押しているかわかります。日頃使い慣れているスマホを使ってフリック入力すれば、LINEの簡単なメッセージくらいは打てるようになると思います。

阿部:釣りやパズルなどのミニゲームも収録されています。VR映像を観ながら、のんびり楽しんでいただければ。

原口:PS VRをお持ちでなくても、PS4®があれば環境映像として楽しむことができます。僕も自宅でくつろいでいるときには、PlayStation Musicの音楽をバックグラウンド再生しながら、『anywhereVR』の映像をBRAVIAに映しっぱなしにしています。複数の美しい映像が順番に映しだされるので、リラックス空間の演出としてもお試しいただきたいです。

阿部:ファンションモデルでYouTuberとしても有名な “美希ぽん”に『anywhereVR』を体験してもらった動画(新しいタブで開く)もありますので、ぜひご覧ください。

アニメやアーティストの映像など、SMEのIPを活用したVRコンテンツを作りたい

――今後の展開についてお聞かせください。

阿部:『anywhereVR』は基本無料で、追加の映像・音楽を購入していただくようになっています。映像・音楽コンテンツは、今後も追加配信していく予定です。

原口:6月から半年間で制作したので、リリース当初は夏の映像がメインでした。2016年末には、紅葉などの秋の映像を追加配信しましたが、これからさらに雪や桜の景色を撮影して追加していきます。時間が経てば経つほど、映像のバリエーションが増えていきます。

坂本:映像についても、幅広い展開を考えています。実写映像だけでなく、アニメの世界に入り込むのも楽しそうですよね。アニプレックスと連携することも考えていきたいです。他には、アイドルやミュージシャンの映像も面白いんじゃないでしょうか。アイドルが図書館で本を読んでいるVR映像が流れ、自分も一緒にスマホで読書できたら楽しそうですよね。目線を上げると、ときどきアイドルと目が合ってドキッとする、とか。

――発展性がありますね。

阿部:森の映像を観ながら、森林の香りのアロマを焚くと疑似的な4D体験も味わえます(笑)。

坂本:VRヘッドセットをつけたまま寝られる枕を作るのも、面白そうですよね(笑)。

――『anywhereVR』に続き、SMEからVRソフトをリリースする予定はありますか?

坂本:僕らがVRコンテンツをリリースしたことで、各所からいろいろな企画の相談を受けています。まだ具体的なことを話せる段階ではありませんが、今後もSMEのノウハウやIPを活用した非ゲームVRコンテンツを作っていきたいですね。

原口:SMEには、音楽、アーティスト、アニメの分野で多くのヒットを生み出してきた土壌があり、斬新な企画や風変わりなアイデアを認めてくれる懐の深さがあると感じています。一方で、ソニーグループ内には優秀なエンジニアがたくさんいて、優れた技術がたくさんあると思います。SMEの発想とソニーグループの技術が連携すれば化学反応が起き、新しくて面白いものが生まれるはず。今後はさらに連携を深め、ユニークなアイデアを形にしていきたいですね。

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!