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連載Cocotame Series

宇多田ヒカルのスタッフが語る宇多田ヒカルの20周年

2017.12.08

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2016年にアーティスト活動を本格的に再開し、6thオリジナル・アルバム『Fantôme』が(CDとデジタル配信合わせて)ミリオン・セールスを記録した宇多田ヒカルが、今年の3月1日付でソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML) エピックレコードジャパンに移籍。

7月10日には移籍第1弾となる新曲「大空で抱きしめて」、同月28日に「Forevermore」を立て続けに配信限定でリリース。12月8日には映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』の主題歌/ソニー「ノイキャン・ワイヤレス」CMソングのダブルタイアップ曲「あなた」を、翌9日には自身初の歌詞集「宇多田ヒカルの言葉」をエムオン・エンタテインメントから発売するなど、活発に活動している。

そんな彼女のアーティスト活動を支えているのが、エピックレコードジャパン内に新設されたオフィスRIA(アールアイエー)というレーベルのスタッフたち。

デビュー当時から宇多田ヒカルを担当し、彼女の移籍に伴ってソニーにやってきたSML エピックレコードジャパン ゼネラルマネジャー 沖田英宣さん(写真中央)、オフィスRIA 部長 梶 望さん(写真右)、そして新たに加わったオフィスRIA 隈部晋作さんに、宇多田ヒカルの“これまで”“いま”“これから”について話を聞いた。

宇多田ヒカル SML エピックレコードジャパン ゼネラルマネジャー 沖田英宣さん(写真中央)、オフィスRIA 部長 梶 望さん(写真右)、オフィスRIA 隈部晋作(写真左)

SML エピックレコードジャパン ゼネラルマネジャー 沖田英宣さん(写真中央)、オフィスRIA 部長 梶 望さん(写真右)、オフィスRIA 隈部晋作(写真左)

――まずはオフィスRIAについて簡単に説明をお願いします。

沖田:宇多田ヒカルがソニーミュージックに移籍すると共に、彼女をデビューの頃からサポートしてきた僕と梶もユニバーサルミュージックから籍を移してエピックレコードジャパンに迎え入れていただき、その中で新しく立ち上げたのがオフィスRIAになります。名前の由来は英語の「AIR」を反対からアナグラムしたもので、これまで宇多田ヒカルが体現してきたように、ポピュラリティーを持ちながらもオルタナティヴな存在として、みんなが纏っている時代の空気をガラッと入れ替えたいという意味を込めて、「空気をひっくり返す」ということで「RIA」にしました。

宇多田ヒカル SML エピックレコードジャパン ゼネラルマネジャー 沖田英宣さん

――みなさんはどのようなきっかけで宇多田さんと出会われたのですか?

沖田:僕は東芝EMI在籍時代に、当時直属の上司だったプロデューサーの三宅(彰)さんにお話をいただきまして、彼女のデビュー時から約20年間、レーベルディレクターとして制作面のサポートをしています。ユニバーサル時代には他のアーティストを手掛けることもありましたが、彼女が2010年に活動休止するまでは、ほぼ専任と言っても間違いなかったです。

:僕も宇多田ヒカルのデビュー当時から宣伝・マーケティングを担当しています。その頃の僕は邦楽セクションに異動になったばかりで、まだアーティストを担当した経験もほとんどなかったのですが、彼女が当時15歳ということもあって「若い人にやらせたい」ということで任命されたんです。

宇多田ヒカル オフィスRIA 部長 梶 望さん
隈部:僕は新卒でソニーミュージックグループに入社して4年間、営業職に就いていたのですが、オフィスRIAの立ち上げタイミングで配属となりました。業務全般のアシスタントやサポートをしています。ご本人には先日初めてお会いしました。

宇多田ヒカル オフィスRIA 隈部晋作

――沖田さん、梶さんは宇多田さんの活動をデビュー時から支えてきたわけですが、改めて振り返ってみてどんな20年でしたか?

沖田:宇多田ヒカルは15歳でデビューした段階から20年間、ブレることなくシンガー・ソングライターであり続けています。10代半ばから自身が作った楽曲でトップアーティストであり続けていることは、日本においては非常に珍しいことですし、その活動をサポートし続けることができたのは、自分にとって何より貴重な体験だったと思います。もしかしたら宇多田ヒカルの20年間は、いわゆるJ-POPと呼ばれて以降の日本のポップミュージックの成熟の過程とも考えていて、だからこそ今後の活動ついて改めて意欲が湧きますし、日本のポップスはこれからどんどんおもしろくなっていくと思うんですよ。

:宇多田ヒカルは1stアルバム『First Love』(1999年3月リリース)でアルバムセールスの日本記録、18thシングル「Flavor Of Life」(2007年2月リリース)でダウンロード数で世界記録を作ってるんですが、それぞれ日本のCD生産量と世界のダウンロード売り上げのピークの年に近い時期なんです。なので僕らはマーケットの成熟期の時に、日本一や世界一といった誰も見たことのない景色を見せてもらってるんですよ。これはものすごく貴重な体験で、いまの自分の仕事の礎にもなってると思います。結果に対しての自負もありますし、そのように絶えずチャレンジをしてきた20年間でもあったので、これからもそういう景色を見たいという貪欲な気持ちになってしまうんですよね。

――お二人は宇多田ヒカルさんとの信頼関係をどのように築いていったのでしょうか?

:宇多田ヒカルは自己プロデュース能力が非常に高くて、言い換えれば責任感がものすごく強いんですね。そうすると我々に求められるのは、彼女がやりやすい環境を用意するということなんです。それもただ用意だけではなく、あらかじめリスクを説明して、彼女にやる/やらないの選択を委ねる。そういったトライ&エラーを繰り返して、何かあったときには全力で守ることで、これまでの20年間をきっちりとやってくることができたと思うんです。

沖田:僕らはそれぞれの仕事を粛々とやってきただけで、宇多田ヒカルのパブリックイメージを操作しようなんて思いませんでした。それが僕らにとっての信頼の表し方だと思っています。彼女が作るものが信頼に足る作品だったからこそ僕らは彼女を信頼することができたし、その僕らの姿勢を彼女や彼女の事務所が信頼してくれたのだと思います。だから出発点はやはり宇多田ヒカルというアーティストにあるんですね。彼女が非常におもしろくて興味深い人だという。

――ひとくちに20年といってもいろいろあったかと思いますが、宇多田ヒカルさんの活動時期をいくつかに区切るとしたら、どのように分けられますか?

沖田:12月8日発売の歌詞集「宇多田ヒカルの言葉」を出版するにあたって本人と話したのですが、彼女はこれまでの歌詞を見つめた中で自分の活動を3つの区切りに分けられると言ってるんです。まず第1期はデビューから2ndアルバム『Distance』(2001年3月リリース)までの期間で、自分で詞曲を書いてパフォーマンスすることに対して実直に邁進していた時期。第2期は3rdアルバム『DEEP RIVER』(2002年6月リリース)から5thアルバム『HEART STATION』(2008年3月リリース)までの、自分でアレンジからミュージックビデオのアイデアまでトータルで俯瞰して見ることができるようになった、いわば“プロデューサー・宇多田ヒカル”が確立した時期なんです。その後の活動休止直前から復帰して以降の現在までが第3期という位置づけで、それは自分がどういう作品を作っていくべきなのか、より自覚的になっていった時期なんですよ。

宇多田ヒカル

僕も制作的な見地から言うと、今後のポップミュージックは何を鳴らしていくべきなのか、どんな価値観を纏うべきなのかを、熟考した上で作っていく時期なんだと思っていて。昔は良い言葉と良いメロディーが揃えば良い作品として評価されましたが、いまはそうではなくて、楽曲のなかの情報量を精査して適度な量に整えなくてはならないと思うんです。現代は膨大な情報が溢れている一方で、ユーザーが一度に呑み込める情報量は減少してる印象があって、メロディーにしても言葉にしても、どこまで盛り付けるのかを自覚しないとポップミュージックにならない時代がきてると思いますし、宇多田ヒカルはその点についてものすごくクレバーに立ち回ってる気がしますね。

:たしかに世の中の情報量が多くなりすぎてしまったなかで、コンテンツというものはどんどん原点回帰していくのかなとは思います。情報を盛るのではなく、引き算の美学というか。宇多田ヒカルが「邦楽は詩と声が大事」というようなことを言っているのは当然だと思っていて、日本語というのは俳句や短歌のように、とてもシンプルな言葉のなかに情景を表していく美しさや奥行きのある言葉じゃないですか。だからプロモーションにおいても、作品についてソーシャルで語ってもらったり、歌詞の一言一言にかけた労力をみなさんに共有してもらうことを意識していて、そのために「大空で抱きしめて」「Forevermore」の歌詞サイトのような新しいことにも挑戦したんですよ。要は宇多田ヒカルではなく作品を主語に語ってもらうことをプロモーションのベースに考えているんです。

――そういった時期や状況を踏まえた上で、宇多田さんの音楽性はいまどのように変化していると思われますか。

沖田:個人的にJ-POPは均一の材質で出来ている世界のイメージがあるのですが、例えばそこに違う材質のマテリアルが入ってなおかつ見栄えが良ければ、それは新しい価値だと思うんですよ。それはJ-POPが変容していけるヒントにもなると思うので、どれだけ今までの常識にとらわれずに新しいチャレンジをしていけるのかが、宇多田ヒカルがおのずと向かう方向性だと思います。足し算ではなく掛け算であり、過去のリスペクトを込めた上での応用ですね。

宇多田ヒカル

――ソニーミュージックに移られてから現在までに発表された宇多田ヒカルさんの新曲はすべて配信限定でリリースされていますが、他のリリース形態を選ばなかった理由は?

:まずシングルCDを出さない理由は、もう特典なしでは戦えないマーケットになってしまったからです。もちろんそういったマーケットを否定するわけではないのですが、宇多田ヒカルに関しては前回のアルバム『Fantôme』(2016年9月リリース)も特典なしの通常盤1形態でリリースしていて、それが僕らにとってはデビュー時からの当たり前のスタンスなんです。そんな中でいまのCDシングルのマーケットは僕らがやってきたポリシーと乖離していますし、我々にとってマッチしてないと判断したので、そこに商品を置かないというだけの話なんです。

宇多田ヒカルの作品については、デジタルにせよフィジカルにせよできるだけ手に取ってもらいたいという気持ちが強いので、いまのところ新譜に関してはダウンロードで手に取りたい人のもとにデリバリーする形を取っています。また、サブスクリプションについては、マーケティング自体がまだ成熟してない状況なので、単純に様子をうかがっていました。12月8日から、デビューシングルから2016年リリースの6thアルバム『Fantôme』までの楽曲を、Apple Musicをはじめとするサブスクリプション配信プラットフォームで配信をスタートしています。

―― 一方でハイレゾ配信は積極的に展開していますが、こちらについてはどのようにお考えでしょうか。

沖田:宇多田ヒカルというアーティストは、あくまで録音物、彼女の作品を真ん中においてファンの方々とコミュニケーションを取るのが特性のひとつだと思うんです。なので当然音にこだわって丁寧に作っている自負もありますし、僕らがスタジオで聴いているクオリティーの音質で宇多田ヒカルの音楽を聴いてみたいと思うファンも多いんじゃないかと思ってハイレゾを始めました。これについてはマーケティング的な部分ではなく、純粋に宇多田ヒカルというアーティストの特性から派生したものだと思っていただきたいです。

:宇多田ヒカルのプロジェクトが昔から変わってないスタンスとして、自分たちは作り手として最高だと思う音楽を届け続けているので、我々にとっては最高音質で届けることに努力を惜しまないのは当たり前のことなんですよね。
――では最後に、宇多田さんの20周年イヤーに向けての意気込み、今後の目標やチャレンジについて聞かせてください。
沖田:やはり20周年というのは特別なアニバーサリーイヤーなので、いままで応援していただいたファンの方々や関わってきたスタッフも含め、みんなが興奮できるようなことができればと思っています。アルバムのリリースやツアーのほかにもいろいろなことを考えていますし、気持ちとしてはもう感謝祭ですね(笑)。

:宇多田ヒカル本人は元来あまり周年をこだわらない人なんですが、活動再開してから初めての周年ということもあってモチベーションも高い状態なので、僕たちはそれをしっかりと世の中に伝えていけるような環境を作っていきたいです。まずはアルバムとツアーを成功させて、次の宇多田ヒカルを感じさせるような結果も残したいですね。

隈部:オフィスRIAとしては新人も予定してますので、そちらにもぜひご期待ください!

宇多田ヒカル最新情報

■楽曲「あなた」、ミュージックビデオ「あなた」配信
配信日:12月8日(金)
タイアップ:映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」主題歌 / ソニー「ノイキャン・ワイヤレス」CMソング

■定額制ストリーミング音楽配信サービスにて楽曲の配信スタート
配信開始日:12月8日(金)
1998年のデビューシングルから2016年リリースの6thアルバム『Fantôme』までの楽曲をApple Musicをはじめとするサブスクリプション配信プラットフォームで配信をスタート。

■歌詞集「宇多田ヒカルの言葉」発売
発売日:2017年12月9日(土)
価格:1,400円(税別)
仕様:360ページ/四六判/並製
発売:エムオン・エンタテインメント
ISBN978-4-7897-3681-7
全国の一般書店/ネット書店にて販売
発売を記念して全国38店舗で宇多田ヒカルによるレコメンド本を集めた「宇多田書店」コーナーも展開開始。
<エムオン! 宇多田ヒカル 特設サイト(新しいタブで開く)>
<「宇多田ヒカルの言葉」特設サイト(新しいタブで開く)>

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■特別番組『M-ON!20th Anniversary 24時間 宇多田ヒカル』放送
放送日:2017年12月9日(土)
宇多田ヒカルのデビュー記念日である12月9日(土)に、「あなた」ミュージックビデオドキュメンタリー特番をはじめ、計12時間にわたり、5本の歴代ライブ映像や、歴代のミュージックビデオを一気に観られるミュージックビデオ特集をオンエア、一日中宇多田ヒカルを堪能できる大型編成を実施。
<「24時間 宇多田ヒカル」特設サイト>

■“宇多田ヒカル Special 3DAYS in Sony Store”を開催
開催期間:2017年12月8日(金)~12月10日(日)
ソニー「ノイキャン・ワイヤレス」CMソング「あなた」の配信を記念し、12月8日(金)~12月10日(日)に全国のソニーストアにて”宇多田ヒカル SPECIAL 3DAYS in Sony Store”を開催。
期間中、新曲「あなた」や、過去楽曲数曲をハイレゾ音質で試聴できるほか、ビデオクリップ特集や、過去のライブ作品などを終日視聴できる。また、「あなた」「Forevermore」のミュージックビデオおよびメイキングダイジェストを特別に上映。
12月9日(土)は音楽チャンネルMUSIC ON! TV(エムオン!)で放送される「24時間 宇多田ヒカル」(上記)を店内で放送。
また、期間中「宇多田ヒカル 制作関係者 ×ソニーオーディオ関係者 スペシャルトークセッション」も開催。
<“宇多田ヒカル Special 3DAYS in Sony Store”特設サイト(新しいタブで開く)>

■ニューアルバムリリース予定
ソニーミュージック移籍初となるニューアルバム発売を目指して現在制作中

■コンサートツアー予定
詳細は宇多田ヒカルオフィシャルサイト(新しいタブで開く)にて随時発表

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