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連載Cocotame Series

Kids Lab.

ムーミンの物語が伝える普遍性や多様性――そこから見えてくる『ムーミンバレーパーク』の未来【前編】

2020.03.11

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誕生から75年、北欧を代表するキャラクターとして、子どもから大人まで世代を跨いで愛され続けているムーミン。そのムーミンの物語の世界観を原作になぞらえながら、細部にまでこだわって再現し、従来のキャラクターテーマパークとはひと味違うアトラクションの数々でファンを魅了してきた『ムーミンバレーパーク』が、まもなく1周年を迎える。

Cocotameでは、『ムーミンバレーパーク』の1周年を記念して、改めてムーミンというコンテンツの魅力を3人のキーパーソンとともに探っていく。なぜ、ムーミンは今でも子どもたちに浸透するのか。なぜ、大人たちはムーミンを次の世代に継いでいくのか。そこには原作者であるトーベ・ヤンソンが作品に込めた、多様性や普遍性という、いつの時代にも通じるテーマが見えてきた。

本取材は2020年1月23日に行なわれたものです。

  • 川﨑亜利沙氏

    Kawasaki Arisa

    ムーミン物語
    マーケティング統括部
    クリエイティブ・ディレクター

  • 小栗 了氏

    Oguri Ryo

    脚本・演出家

  • 増田雅子

    Masuda Masako

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『ムーミンバレーパーク』との出会い

ムーミンの魅力を考察してもらう3人の識者は、『ムーミンバレーパーク』の設立に深く携わり、ムーミン研究家という肩書も持つ川﨑亜利沙氏。

そして、パーク内の「エンマの劇場」で披露されるショウや「サウンドウォーク ~ムーミン谷の冬~」(以下、サウンドウォーク※)といった新アトラクションの脚本・演出を手がける小栗 了氏。

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のための臨時休園により、当初の予定を前倒して終了。

最後に、同じくアトラクションやパーク内で流れる楽曲の提供をはじめ、エンタテインメントパートナーとして『ムーミンバレーパーク』の運営に協力するソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の増田雅子だ。

──皆さんが『ムーミンバレーパーク』に関わることになったきっかけと担当分野を教えてください。

川﨑:私は学生時代から北欧の文化に興味があって、大学を卒業してからは、フィンランドで日本文化を紹介する教師をしながら現地の暮らしも体験しました。そのときに、ムーミンの世界にも触れて、原作で描かれている普遍的なテーマや作者のトーベ・ヤンソンという人物の魅力を知って、深くのめり込んだんです。

フィンランドから帰国後も北欧諸国に関する仕事をしていたのですが、あるとき、偶然のご縁でアジアでムーミンのテーマパークの運営権利を持つ「ムーミン物語(株式会社ムーミン物語)」の方とお知り合いになって。そこで、フィンランド以外では世界初となるムーミンのテーマパーク設立のお話を伺い、関わることになったのがきっかけです。

増田:私たちSMEは、2016年から同じ飯能市で開催されている「飯能グリーンカーニバル」の企画・運営を行なうことになったのが、『ムーミンバレーパーク』に携わるきっかけでした。「飯能グリーンカーニバル」は北欧をテーマにしたイベントなので、自然とムーミンにもつながったんです。

『ムーミンバレーパーク』では、「エンマの劇場」で行なわれているライブショウの演出や、シアター型施設「海のオーケストラ号」と「リトルミイのプレイスポット」、そして体験型展示施設「コケムス」内で流れる音楽の楽曲提供や、音響演出などでご協力しています。期間限定で開催されたサウンドアトラクション「サウンドウォーク」も、ソニーとソニー・ミュージックソリューションズ(ソニーミュージックグループ)の共同提供コンテンツでした。

小栗:僕は、SMEからご紹介いただいて「エンマの劇場」と「サウンドウォーク」の脚本・演出を手がけています。実はそれまでキャラクターショウは手掛けたことがなかったのですが、新しいことに挑戦できる素晴らしいチャンスをいただいたなと思って、取り組ませてもらいました。

増田:川崎さんはじめ、このプロジェクトに関わる方たちの熱量をひしひしと感じていたので、お願いするならムーミンの物語の世界観やフィロソフィーをちゃんとわかってくださる方でないとダメ。それなら小栗さんしかいないと思いましたね。

小栗:実は僕、ムーミンベイビーなんです。というのは、父(舞台監督・小栗哲家さん)と母の出会いがムーミンのキャラクターショウだったんです。母はムーミン役で踊っていて、父は裏方としてショウに携わっていました。ムーミンがいなければ僕は生まれていなかったし、小さいころからアニメも見ていて、家のなかにも当たり前のようにムーミンの人形が飾られていました。だからムーミンには特別な親近感があるんです。

ムーミンの世界観をそのまま再現――でも、ムーミンってそもそも何?

──「ムーミン」の作品世界を伝えるために大切にされたことを教えてください。

川﨑:本国フィンランドの人たちは、ムーミンを単なるキャラクターではなくアートだと認識しています。それだけ、トーベ・ヤンソンが作り上げた世界観がきちんと確立され、フィンランドの人たちに根付いているんです。

私たちも同じ認識を持って、原作の魅力をそのまま再現できれば、大人にも子どもにもしっかり作者の意図を伝えることができると考えました。ムーミンは、悪と戦うヒーローではないし、壮大な目的をもって旅をしているわけでもありません。押しつけがましくなく、読む人にそっと寄り添うような主人公だと思うんです。

ムーミンの物語には、印象的なセリフが多く登場しますが、読む人の年齢や精神状態によって、心に残るものが違ってくるんですよね。『ムーミンバレーパーク』に設置してあるベンチや展示施設「コケムス」内に書かれた引用文を読んだりして、訪れるたびに新しい発見を楽しんでもらいたいと考えています。

──大変初歩的な質問ですが、そもそも「ムーミン」とは何なのでしょうか? 最初にアニメを見たとき、自分はカバだと思っていましたが、それが誤った認識だというのは、だいぶ大人になってから気付きました。

川﨑:正式には「ムーミントロール」と言います。トロールだけなら北欧伝承の架空の生き物ですが、「ムーミントロール」は作者のトーベ・ヤンソンの創作によるものですね。日本では確かにカバだと思っている方もいるみたいですし(笑)、妖精だと言う人もいますが、トーベ・ヤンソン自身はかつて同じ質問に「ただそこにあるもの」と答えています。

──よくわかりました(笑)。もう一点気になったのが、改めて「ムーミン」の物語に触れると、見た目のかわいさとは裏腹に、ムーミンたちが大きな困難に遭遇したり、ある種ダークな側面も描かれていることです。

川﨑:そうですね。ムーミンたちは彗星の接近や洪水など、自然災害に見舞われることもあります。また、後期の作品になってくると、キャラクターそれぞれの状況の変化とともに、孤独や喪失など、より個人的で精神的な世界も描かれるようになっていきます。

小栗:僕も、岸田今日子さんが声優をやられていたTVアニメのムーミンのときから、けっこうダークなイメージは持っていました。子ども心になんだか怖いぞ、と。でも、ストーリーは子どもでも理解しやすいように作られていて、敬遠するようなことはなかったし、そのまま素直に受け入れていましたね。こうした作品性も、ムーミンの本質的な魅力なんだと感じています。

年代も立場も異なるゲストが楽しめるものを

──3月には「エンマの劇場」で新しい演目がスタートすると伺いました。どのようにムーミンの世界観を伝える工夫をされたのでしょうか。

小栗:「エンマの劇場」を手がけるにあたっての僕らの共通認識は、いわゆるキャラクターが飛び出してきて、ストーリーをなぞったら、ハイ終わり、というハリウッド式の演出ではないよね、ということでした。

その上で川崎さんたちからのオーダーは、原作に忠実であること、そして主要キャラクターは全員出してほしいということだったんです。屋外のショウなので尺としては30分が限度。その限られた時間のなかで、僕はきちんとストーリーを伝える「演劇」をやろうと考えました。

増田:子どもだけに向けたキャラクターショウではないし、もちろん大人だけに向けたものでもない。先ほどの川﨑さんの言葉のように、初めて見る人にもわかりやすいけれど、いろいろな年代のゲストが、それぞれの立場で心に突き刺さる言葉が散りばめられていると思います。

小栗:ボイスキャストも豪華だし、テーマソングの「雲にのれたら」もすごくおしゃれな曲ですよね。

増田:ボイスキャストの皆さんも、もともとムーミンが好きだったと言ってくださる方が多く、ムーミンの世界観をとてもよく理解して演じてくださいました。

──新たな演目について、可能な範囲で内容を教えてください。

川﨑:1作目の「春のはじまり」という演目は、それぞれのキャラクターの性格がよくわかりつつ、笑いあり、涙ありの楽しい内容でした。2作目のタイトルは「勇気を知った少女」です。原作ファンの間でも人気の高いニンニという女の子のお話なのですが、ニンニは、さんざん皮肉を言われ続けたのが原因で、とうとう姿が見えなくなってしまったかわいそうな女の子なんです。

小栗:大人から子どもまで、人生の教訓にできるストーリーだと思います。小学校の教材として、各地で上演してもいいんじゃないかと思えるほど、いじめや差別、勇気を持つことの大切さとか、いつの時代にも通用する普遍的なテーマが描かれています。

増田:わたしも含めて、皆さんが大好きなお話をショウで実現することができて、とてもうれしいです。新しい楽曲にも期待してください。

川﨑:「あなたはあなたのままでいいんだよ」と、生きていることをただ肯定するメッセージは、短いショウのなかでもトーベ・ヤンソンの原作のエッセンスをとてもうまく吸い上げていただいていると思います。これはもう、小栗さんのお力があってのものですね。ぜひ、楽しみにしていただければと思います。

後編につづく

文・取材:木村帆乃
撮影:篠田麦也

「ムーミンバレーパーク」

所在地:埼玉県飯能市宮沢327-6 メッツァ
アクセス:西武池袋線・飯能駅北口よりバス「メッツァ」下車
JR八高線・東飯能駅よりバス「メッツァ」下車
狭山日高インターチェンジから県道262号線経由5.4km(約12分)
青梅インターチェンジから県道218号線経由約11km (約30分)
飯能駅北口から宮沢湖入り口まで約3km(約10分)

開館時間:10:00~20:00(チケット販売19:00まで)

【入園料】
入園チケット(17:00まで販売)
おとな(中学生以上)1,500円
こども(4歳以上小学生以下)1,000円

1デーパス(16:00まで販売)
おとな(中学生以上)2,800円
こども(4歳以上小学生以下)1,800円
※3歳以下は無料

ナイト入園チケット(17:00~19:00まで販売)
おとな(中学生以上)1,000円
こども(4歳以上小学生以下)500円

3月9日(月)より営業時間が変更になります。
3月14日(土)よりチケット料金が変更になります。

最新情報はホームページでご確認ください。

「ムーミンバレーパーク」公式サイトはこちら(新しいタブで開く)

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