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Creator Profile(クリエイタープロファイル)

「令和のサザエさん」を目指す新時代の子育てインスタグラマー“つむぱぱ”【前編】

2020.05.01

子育ては予測がつかないできごとの連続だ。大変なこともあれば、楽しいこともたくさん起きる。そんな子育ての日常をほっこりしたイラストと言葉で表現し、今ではフォロワー数が62万人(2020年5月1日現在)を超えるインスタグラマー“つむぱぱ”が注目を集めている。

Instagramというメディアで紡がれる、“つむぱぱ”と“ママ”、娘の“つむぎ”と息子の“なお”が送る、ちょっと幸せな日常。自作の家具とリフォームした家で、マイペースな生活を営む、静かで喜びに満ちた日々。それは「令和のファミリースタイル」。そんなイラストを描く“つむぱぱ”とはどんな人物なのか。彼の“これまで”と“つむぱぱ”が生まれたきっかけを語ってもらった。

  • つむぱぱ

    Tsumupapa

    インスタグラムアカウント「 @tsumugitopan 」にて、家族の日常をほっこりとしたイラストで表現。自然体で描かれたイラストと、自宅のインテリアセンスの高さが評判となっている。著書にコミックエッセイ『きみはぱぱが好き?』(KADOKAWA刊)。

一冊の絵本から始まった“つむぱぱ”

ここに一冊の本がある。

結婚して、子どもが生まれて一年目。愛する娘の誕生日に、自分の想いを伝えようと、自主制作した本だ。自分でイラストを描き、言葉をつづり、デザインをして本にする。それが彼の人生の転機となった。

「“つむぎ”の一歳の誕生日にプレゼントしようと思って、絵本を作ったんです。“つむぎが好きなこと”を絵に描きました」

タイトルは「つむぎ」。自分の想いが“かたち”になった。その“かたち”は彼が想像もしていなかった感動をもたらしてくれた。

「奥さんが泣いてくれたんです。この本を“つむぎ”にプレゼントしたら、それを見ていた奥さんがすごく喜んでくれて。この本を作って良かったなと思いました」

自分の絵と言葉でストーリーをつづり、デザインする、想いを込めた一冊。それが人の感動を生み、みんなの喜びにつながる。そして、子どもとの道しるべになる。この体験は“つむぱぱ”の原点となった。

子どもはあっという間に大きくなってしまう。娘“つむぎ”との日常を記録していこう。日常生活に忙殺されてすぐに忘れてしまいそうな、ほんのちょっとした出来事も。数日ぶりに出会ったときに気付いた、わずかな成長の兆しも。泣いた後に、すぐに乾いてしまう涙の跡も。彼は“つむぱぱ”として、“つむぎ”の成長を絵と文で記録していこうと思った。それが“つむぱぱ”誕生の瞬間だった。

「つむぎ」に描かれた“つむぱぱ”と“ママ”。このときからすでに“つむぱぱ”のスタイルはほぼ完成している。

“つむぱぱ”が紡ぐ、子どもと過ごすかけがえのない日常

彼が“つむぱぱ”として初めてInstagramに投稿したのは2017年8月。最初は娘の成長記録を未来に残すために、思い付きで描き始めたものだった。

「純粋に、“つむぎ”との日常が楽しかったから描き始めたんです。それをちょっとSNSで公開してみようと思って。これを機にインスタを始めました」

“つむぱぱ”のイラストと文章はとても魅力的だ。優しい気持ちと温かな想いが伝わってくる。そして、“つむぱぱ”の日常をつづるというスタイルは、Instagramというメディアに合っていた。

「SNSは人の素の部分を見せる面白さを追求していると思うんですね。投稿した人の人間くささを、みんなで面白がる文化だと思うんです。SNSのなかでもインスタは“こう見られたい”という願望を、発信する側も、受ける側もポジティブに捉えているように感じました。そういうメディアなら、自分も気持ち良く描くことができるんじゃないかと思って、インスタを選んだんです。どうしてもSNSで使う言葉って主張するための“強い言葉”になりがちだと思うんですけど、インスタで見てくれる方たちの多くは、ビジュアルが主役という意識をしていて、あまり“強い言葉”を使わない。そういう相性の良さも感じました」

“つむぱぱ”のInstagram。だいたい3日に一度くらいの頻度で更新されている。更新されるたび、コンスタントに10万以上の「いいね」が付く。

Instagramでイラストエッセイを発表し始めて、彼の執筆のモチベーションも高くなった。それと同時に、娘との時間が特別になったと彼は語る。

「“つむぱぱ”の連載を始めて、子どもをより見るようになったと思います。子どもの面白いところを見付けようとしていたら、自然と子どもに対する関心も強くなっていったんですね。見ていて飽きることがないし、よく一緒に遊ぶようにもなりました。一緒に遊べば、“つむぎ”も喜んでくれて、お互いに良い関係になっているのだと思います」

取材中、ブリティッシュショートヘアのはじめ(はーちゃん)が興味深げにこちらを覗く。

好奇心旺盛な少年が“つむぱぱ”になるまで

Instagramで日々、イラストによる連載を展開し、絵本や家具をDIYする“つむぱぱ”。多彩な活動をする彼の原点はどこにあったのだろうか。

「娘の誕生日までは、子どものイラストを描いたことがなかったし、仕事で絵を描くことがあったとしても、簡単なラフ画を描いて、あとはお任せするくらいだったんです。もちろん、絵本を作ったこともありませんでした。でも、小さいころから絵を描くことが好きだったんです。幼いころは、いろいろなキャラクターを描いて、そのキャラクターのすごろくゲームみたいなものを自分で開発して、みんなで一緒に遊んでいましたね」

彼は幼いころから「ものづくり」が大好きな少年だった。実家は、祖父の代から続く建築業。自宅にはいろいろな工具が置いてあり、家族が仕事をする姿を見て、彼の創作意欲は芽生えていったという。得意なものは絵と工作。「ものづくり」を身近に感じながら、彼は好奇心豊かな少年へと成長していった。そんな彼にターニングポイントが訪れたのは、高校2年生のころ。

「ある日突然、美大に行きたいと思ったんですよね。それまでの僕は中高とずっとバスケをやってきて、高校2年生のときはバスケ部でキャプテンもやっていました。でも、このままバスケをやっていて将来どうするんだっけ、と悶々とした思いが浮かんできて。当時は、今のようにバスケのプロリーグもなかったし、卒業まであと1年しかないのに、特別やりたいことがないことに気付きました。そこで改めて振り返って、自分が得意なものは絵を描くこと。じゃあ、絵を描く道に進もうと思ったんです」

“つむぱぱ”がリノベーションしたご自宅のなかで伸びのびと過ごす、はーちゃん。

絵を描くことは楽しかった。好きなことを続けるのは苦ではなかった。それで身を立てられるのならばそれがベストだと思っていた。そして彼は決断する。

「いきなりバスケ部を辞めました。美術の先生に美大に進学したいと相談したら、“今のままだったら一浪か二浪は覚悟しなさい”と言われて。それはイヤだと話をしたら、“じゃあ、バスケ部をやめて、絵を描く時間を増やしなさい”と。僕はそれを鵜呑みにして、翌日、本当にバスケ部を辞めました。バスケ部のみんなには泣きながら謝って、でも、自分の信じた道を進みたいことを説明したら、みんな理解してくれました。そこから、僕は毎日デッサンを描き続けたんです」

その努力の結果、見事、美大に進学。その後の就職も絵の技術をいかす仕事に就くことができた。

「娘の誕生日に絵本を描いたときに、初めて“つむぱぱ”の顔や“つむぎ”の顔をデザインしたんです。まだ多少、絵のタッチが違うんですけどね。でも、“ママ”の顔のデザインはこの時点でほぼ完成していますね(笑)。このときの経験が、子どものイラストを描き続けるきっかけになりました」

“つむぱぱ”がInstagramで漫画を描くようになり、DM(ダイレクトメッセージ)で企業からもメッセージが届くようになった。そのメッセージのなかには、“つむぱぱ”の作品の出版の申し出がいくつもあったという。

「20社ぐらいから出版のオファーをいただきました。そこで何人かの編集の方とお会いして、お話を聞いたんですが、なかでもKADOKAWAの編集さんの熱量が一番高くて、僕と考え方も近かったので、お世話になることにしました」

2018年8月、初の著書となる単行本『きみはぱぱがすき?』が刊行された。そこには“つむぱぱ”が漫画を描き始めたきっかけ、ママとの結婚のなれそめ、そして第二子の誕生までが柔らかく、優しい筆致で描かれている。A5変形の判型は、見た目にもかわいらしい。

単行本『きみはぱぱがすき?』(KADOKAWA刊)には、2017年8月から2018年4月までにInstagramで発表した作品が掲載されている。

「この単行本でこだわったのは、“モノとして残すこと”です。本のサイズ感(判型)も正方形で厚みがあって小さめで。読むだけでなく、飾っておいても楽しめるようなものになればいいなと思っていました」

初めての単行本制作では、わからないことも多かったという。例えばInstagramでは10コマの画像が均等に表示されていくが、単行本ならばコマの変化もつけて見たかった。Instagramは画像を送らないと次の画像が見えないから、ストーリーが紡がれていき、オチ(最後)のコマの意外性が発揮される。でも、本では見開きで複数のコマを見せることができ、実体がある紙のメディアならではの特性を追求し切れなかったという課題も残った。

“つむぱぱ”自作のソファベッドに座りながら、取材は行なわれた。このソファベッドは著書『きみはぱぱが好き?』にも登場。

「当時の僕は会社員と二足のわらじだったので、仕事が終わって帰ってきてから絵を描く作業をしていたんです。いまになって思えば、単行本はまだまだやれることがあっただろうなと思います。インスタではできない、本というメディアだからこそできることをもっとやってみたかったな、と。例えば、インスタはシステム上10コマしか並べられないけど、紙なら長いストーリーも入れられる。もし次に単行本を出す機会に恵まれたら、インスタではできない“紙の本の価値”を追求してみたいと思います」

文・取材:志田英邦
撮影:冨田望

©TSUMUPAPA Inc

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