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クリエイタープロファイル

「令和のサザエさん」を目指す新時代の子育てインスタグラマー“つむぱぱ”【後編】

2020.05.02

ほっこりと優しい“つむぱぱ”と“ママ”、娘の“つむぎ”と息子の“なお”が送る、ゆったりほっこりしてふんわりとした日々。その日々をイラストと言葉で描いた“つむぱぱ”の作品が人気を集めている。現在、Instagramのフォロワー数は62万人以上(2020年5月1日現在)。彼が描こうとしているものは「令和のファミリースタイル」だ。

Instagramから単行本、雑誌、そして展覧会へとさまざまなメディアに展開していく“つむぱぱ”の作品。彼は今後どんな活動をしていくのか。“つむぱぱ”の“今”と“これから”を聞く。

※この記事の本編のインタビューは2月19日に行なったものです。

  • つむぱぱ

    Tsumupapa

    インスタグラムアカウント「 @tsumugitopan 」にて、家族の日常をほっこりとしたイラストで表現。自然体で描かれたイラストと、自宅のインテリアセンスの高さが評判となっている。著書にコミックエッセイ『きみはぱぱが好き?』(KADOKAWA)。

“つむぱぱ”の創作活動はInstagramからリアル(現実)へ

出版を機に“つむぱぱ”の活動範囲はさらに広がっていく。

『きみはぱぱがすき?』を出版後、InstagramのDMで届く声は出版の依頼だけではなくなった。イベントや展覧会、商品とのコラボレーションの依頼も数多く届きはじめる。そして、2018年年末に「つむぱぱのすぐ家に帰りたくなる展覧会」が開催された。

「つむぱぱのすぐ家に帰りたくなる展覧会」は2018年12月19日から2019年1月7日にかけて開催された。

「『つむぱぱのすぐ家に帰りたくなる展覧会』のなかで行なわれた『つむぱぱの描く似顔絵会』で初めて、人と対面したんです。それまではInstagramで画面越しのデジタルなコミュニケーションでしかなかったから、“つむぱぱ”の作品を読んでくださる方々が、実際どんな人かわからなかったんですよね。でも、直接お会いしたら、作品を心から楽しんでくださっている方ばかりで、僕も純粋にうれしかった。自分の描いたものが、多くの方の反響を呼んでいることや、その方の感情を動かしているんだということを間近に見ることができたのは貴重な経験になりました」

Instagramから単行本、そしてイベントへ。ネットからリアルへと、彼の活動が広がるにつれ、人とのつながりも増えていった。

「学生のころから、イラストレーターの326(みつる)さんが好きで。326さんはイラストと一緒に詩を書くクリエイターですが、当時、僕も影響を受けて、詩を描いていました。あるとき、“つむぎ”と一緒に『うんこミュージアム YOKOHAMA』に行ったんですが、そこで326さんが似顔絵を描くイベントをされていたんです。僕らも“つむぎ”の似顔絵を描いもらったんですが、そのときに『自分もインスタで絵を描いているんです』と世間話をしたら、326さんが『もしかして……“つむぱぱ”?』と言ってくれて。インスタを見て、僕の本も買ってくださっていた。『イラストを描いている』と言っただけで、全く自己紹介もしていないのに、326さんが気付いてくださったんですよね。もしかしたら、“つむぎ”の顔を見て、気付いたのかもしれない。今では家族ぐるみの付き合いをさせてもらえています」

“つむぱぱ”がイラストをInstagramで発表することで、環境に変化が訪れ、そして少しずつ新しい目標が見えてきたという。

“つむぱぱ”の現在とこれから――令和のファミリースタイル

“つむぱぱ”のイラストが多くの人の共感を集めるようになり、イラストと同時に続けていたDIYの家具作りも注目を集めるようになった。そして“つむぱぱ”は、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)とエージェント業務契約を締結。新しいチャレンジを目指すことになった。

「SCPとご一緒させていただくのは、“つむぱぱ”をスケール(拡大化)させたかったからです。現在インスタで描いている作品は、“つむぎ”の成長に合わせて描いていますが、当然ながら“つむぎ”は大きくなっていきます。そのまま“つむぎの成長にあわせて描き続けていくもの”と、“どこかで時間を停めて、別の時間軸で作品を作っていくもの”という二軸で続けていくことはできないかと考えました。そのためには個人の力では限界があって、多く人の力を借りて、展開を考えていかなければ難しいだろうと思って。そこで手を挙げてくださったのがSCPの皆さんでした」

娘の成長を追いかけるInstagramのイラスト連載、そして特定の年齢の“つむぎ”とのエピソードを広げていくもうひとつのシリーズ。とくに後者の新シリーズについては、いろいろな可能性を感じているようだ。

“つむぱぱ”の自宅リビングに置かれている“つむぎ”のためのパン屋さん「つむぱん」。

「“つむぱぱ”の作品を、イラストを描くだけにとどめることはないと思っています。僕が描いているテーマは“家族”なので、それを積極的に広げていきたいんです。おそらく、一番エピソードが多くなる時期は“つむぎ”が5歳ぐらいで、“なお”が2歳くらいじゃないかと思うんです。その時期を切り取って、なんらかのかたちで定着させていけたら。それがSCPの皆さんとやりたいことです。例えば、それをアニメーションで展開できたら、すごく楽しいでしょうね」

“つむぱぱ”の視点は、少しずつ未来に向きつつある。まずは、自分の目線から見えるものを手掛かりに。大きなテーマへ取り組んでいこうとしている。

“つむぎ”のためのガチャガチャ「つむがちゃ」。細部にまでこだわって作り込まれている。

「例えば“つむぎ”や“なお”の未来を考えていくときに、父親としてまず気になるのは教育ですよね。でも、今の時代は、何を学ばせたらいいのか、何を体験したら未来につながるのか、すごくわかりにくくなっていると思います。ひと昔前なら大きな企業に就職すれば安泰、公務員だったら安定している、というような未来像がありましたけど、今は5年後、10年後の未来が明確に予想できません。そのなかで、僕らの家族がひとつのモデルを示すことができたらと思っています。もちろん、そのためには自分たちだけではわからないことも多いから、メディアやコミュニティを作って、そこで議論を深めていくことができたら……とも考えています」

“つむぱぱ”が得意とするDIYの家具作りもそこに重ねていくことで、大きく発展させていく構想もあるそうだ。

リノベーションしたリビングの床はすべてフローリング。その上にラグやマットを敷き、子どもたちが過ごしやすい空間を作っている。

「“つむぱぱ”というコンテンツを成長させていって、ゆくゆくはファミリーで行くキャンプフェスをやコミュニティサイトができたらいいかもしれません。砂浜にテントを立てて、いろいろなモノを作ったり、ミュージシャンの方が来て歌う。子どもが自由に遊べて、大人ものんびりできるような、楽しいフェスをやってみたいんですね。そして、それをコミュニティサイトで共有できたら、人の輪をもっと広げて行けるんじゃないかと」

“つむぱぱ”を軸に、夢は広がる。平成から令和にかけて少子高齢化が社会問題化しているなかで、教育や子育てに改めて注目が集まっている。この時代において”つむぱぱ”はどんな存在を目指すのだろうか。

「究極の理想は『令和のサザエさん』です。日本人が考えているありふれた家族像が、実は昭和で止まっているような気がするんです。『サザエさん』も『クレヨンしんちゃん』も、どちらも昭和の作品ですから。でも、平成を経て令和の今、幸せな家族像の価値観はもう少し多様化しているんじゃないかと思います。家族像は時代に合わせてアップデートされるべきだと思いますし、その令和版はまだ存在していない。そこを“つむぱぱ”で表現できたらと思います」

令和の『サザエさん』が描く、21世紀の家族像。それは彼の原点となった自作の絵本でも描かれていた風景だ。彼の家族に対する想いと、彼が目指しているものは、最初に描いた絵本のころから変わっていない。その変わらない彼と家族への愛情の深さこそが、これからの原動力になっていくのだろう。

『令和のサザエさん』の舞台は、この家から始まるのかもしれない――。
 

そして今を生きる人々へ――“つむぱぱ”からのメッセージ

新型コロナウイルスの影響により、世界中の人々が窮屈な生活をおくっている。
この息苦しい日々のなかで、“つむぱぱ”は今日もInstagramへ投稿を続けていた。
 
「こういうときに、変わらずに投稿を続けることが大切なんじゃないかと僕は思っていて。確かに今は、これまでとは異なる日常生活をおくることを余儀なくされています。でも、これもまた日常であることに変わりはなくて、我々は未来につながる時間を奪われたわけではありません。であるならば、不安を感じている人に、辛さを感じている人に、ほっとできるものや、ほっこりできるものを今まで僕が少しでも提供できていたなら、それを変わらず続けていきたいと思っています。世間のざわざわした空気に流されることなく、いままでと変わらない目線で日常を投稿し続けていきたいんです」
 
殺伐とした空気に飲み込まれないこと。変わらないこと。どんなときも優しい気配をまとっていること。それはシリアスな日々に直面した彼のフォロワーにとって、ささやかな勇気につながっていくのではないだろうか。
 
「いまの状況にストレスを感じるのはわかります。でも、この状況を『子どもたちといっしょにいる時間が増えた』んだと、僕はポジティブにとらえるようにしました。うちでは先日、“つむぎ”や“なお”と花の種を播いて、楽しい時間を過ごすことができましたし、今度は宅配物の空き箱になった段ボールを使って、いっしょに工作をしようと考えています。もしできるのなら、段ボールを使った工作コンテストを企画して、皆さんとインスタで楽しむなんていうのも良いかもしれません。家族や周りの皆さんといっしょに未来を作っていきたいと考えています」
 
ちょっとした工夫や少し視点を変えるだけで、自分で日常を楽しいものにする。つむぱぱのDIY精神は、この状況においても変わらず発揮されていた。
 
つむぱぱたちが家にいる時間に植えた種が芽吹き、花が咲き、実をつけるころ。いまの空気は少し変わっているのかもしれない。“つむぱぱ”が描く、静かで変わらない日常が、未来で大きな実を結ぶだろう。

文・取材:志田英邦
撮影:冨田望

©TSUMUPAPA Inc

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