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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

monogatary.comという“物語のタネ”の芽吹き【前編】

2020.06.04

ここから未来が生まれ、そして育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

第1回(前編)は、2017年10月30日よりサービスを開始したストーリーエンタテインメントプラットフォーム『monogatary.com』をフィーチャー。小説を音楽にするユニット「YOASOBI」を世に送り出し、音楽業界からも注目を集めているこのサービスが、どんなポリシーで生まれたのかを聞く。

  • 屋代陽平

    Yashiro Yohei

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

あらゆるエンタテインメントのタネになるものを目指して

ひとつのタネを豊かな土壌に撒き、丹念に手をかけて育て、大いなる実りのときを待つ――。未来のエンタテインメントビジネスのタネがここに埋まっている。

ユーザーが日替わりの「お題」に合わせた小説を投稿し、物語を生みだすプラットフォーム『monogatary.com』。屋代陽平はこのサービスの企画を起ち上げ、運営でも中核を担う。

昨今、小説投稿サイトに投稿された作品が実写化、アニメ化されるケースが増えているが、『monogatary.com』も小説を音楽にするユニット「YOASOBI」を世に送り出し、新しいムーブメントを生み出した。“物語”を起点にしながら、さまざまなエンタテインメントのタネを育てている『monogatary.com』はどこを目指しているのだろうか。

――改めて『monogatary.com』というサービスの成り立ちをお聞かせください。

きっかけは2014年ですね。僕が当時所属していたソニー・ミュージックマーケティング(以下、SMM)という会社で、新規プロジェクトの募集があったのですが、そのときに上司といっしょに企画したのが『monogatary.com』の前身となる「小説投稿サイト」だったんです。

このときは、企画そのものは評価してもらえたのですが、SMMというソニーミュージックグループのなかで、音楽マーケティングを主体としたビジネスを手掛ける会社と「小説投稿サイト」というビジネスモデルが合わず、ペンディングになりました。

その後、2015年に今度はソニーミュージックグループを横断する新規事業プログラムが立ち上がりまして、いっしょに「小説投稿サイト」を企画した上司から、改めてそこに応募してみないかと声をかけてもらったんです。その新規事業プログラムは現在「EnterLab.(エンタラボ)」というプログラムになっていて、そこで採用してもらい現在の事業化に至った、というのが成り立ちです。

――『monogatary.com』はソニーミュージックグループの新規事業プログラムから芽吹いたものだったんですね。『monogatary.com』の根幹となる「小説投稿サイト」というサービスには、どんな可能性を感じていたのでしょうか。

例えば『恋空』を生んだ「魔法のiらんど」や『君の膵臓をたべたい』を生んだ「小説家になろう」のような人気サービスが既にあるので、「小説投稿サイト」自体に新規性は特にないと思います。

でも、音楽をはじめ、映画やアニメ、ゲームと言ったさまざまなアウトプットをもつソニーミュージックグループの視点で考えると、いろいろな作品の原作になり得る“物語のタネ”を作っていくことができたら、点と点のエンタテインメントビジネスをつなげるハブになれるのではないかと考えました。

──『monogatary.com』のサイトを構築するときのコンセプトはどんなものでしたか。

「ユーザー同士が楽しく触れあい、毎日来たくなる遊び場みたいなサイト」。これが今も変わらない『monogatary.com』のコンセプトです。一にも二にも、ユーザーに物語を通して楽しんでもらうことを重視しているので、目先の利益を得るためのバナー広告とか、サイト内に課金機能を持たせないことも、当初から基本としていましたね。

――『monogatary.com』の最大の特徴は?

サイトの機能としてほかと差別化している部分を挙げると「毎日お題が出る」ということですね。そのお題が趣向を凝らしたものであり、サイトの個性になっていると思います。

──その日替わりの「お題」というのはどのように決めているんですか。

自分を含めた運営チームのメンバーが、毎週ひとり5~6個ずつ「お題」のアイデアを出し合い、そこから各お題の意図や、どんな物語が生まれるだろうといったことを話し合います。「このお題なら長い物語ができそう」とか、「短編が多くなるかも」という予想を立てて、それを受けた編成の担当者がジャンルのバランスや書きやすさも考慮して「お題」のカレンダーを決めています。

「お題」はどうしても人によって得意不得意がありますし、その人の執筆レベルによって当然クオリティも変わってきます。遊び場として純粋にお題が楽しいことを大事にしつつ、投稿作品のクオリティが上がるようなものも出していきたい。その辺の機微は、僕らの運営チームで判断しています。

毎日更新されている「お題」。運営チームが、毎週ひとり5~6個ずつ持ち寄って決定されている。

──運営を始めて2年半が経過していますが、日々お題を更新していると相当なノウハウも溜まってきているのでは?

ある程度は……はい(笑)。でも、これに関して言うと、僕らの予想通りにいかないところが面白いんです。僕らも、あえて「変わったお題」も出しているし、ユーザーの皆さんも遊び心を持っている方が多いので、「予想外のものを書こう」としてくれます。そのキャッチボールがうまくできると、想像以上のものが出来上がってきて、その瞬間がすごく気持ち良い。そうやって「お題」が発展していくことは、運営していく側の快感にもなっていますね。

――運営メンバーはどんな顔ぶれなのでしょうか。

『monogatary.com』は当初から投稿された小説やイラストを、別のメディアのコンテンツに展開していくことがキモだと考えていました。そのため作品の良し悪しを見極めることができて、クオリティを高めるサポートができる人材が必要だったので、現在では出版社や編集プロダクションで文芸や漫画の編集をしていたスタッフや、自ら執筆業をしているスタッフにもチームに参加してもらっています。そのメンバーたちは社外とのコネクションも持っているので、その力も借りながら、投稿された作品をどのようにおもしろいコンテンツに展開していくかを日々考えています。

ユーザーの多さよりも、密なコミュニケーションを重視

――『monogatary.com』のチームが、ユーザーとコミュニケーションを図る上で意識していることはどんなことでしょうか。

コンセプトの部分でもお話した通り、『monogatary.com』はユーザーの皆さんにとって居心地の良い「遊び場」であることを追求しています。そのため運営側とユーザーさんとの距離感をできるだけ近く、フラットなものにしようと意識しています。これは目先のPVやUUなどの増減よりも、はるかに大事なことだと考えていて、オンライン上でのコミュニケーションや、イベントにブースを出展したときも大事にしていることですね。

特にイベントでは、ユーザーさんがハンドルネームを名乗って遊びに来てくださるので、そういうときこそ立場は違えど、ともに「創作の道を楽しんでいる仲間である」という感覚でお話をさせてもらっています。

『monogatary.com』では、ユーザーが気に入った小説に挿絵を投稿するシステムも組み込まれている。

――ユーザーの方たちと直接触れ合う機会もあるんですね。

ユーザーさんあっての『monogatary.com』なので、そういう接点作りも行なっています。本当はいつかオフ会をやりたいなと思っているんですよ。みんなで名札を付けて、「ああ、この作品を書いたのはこの人なんだ!」って。お酒でも交えながら語り合ってみたいですね。

でも、小説は本業をお持ちの方が書いているケースも多くて、なかなか現実的に集まるのは難しいのかなと。きっとシャイな方もいらっしゃるでしょうし。でも、オフ会ができるくらいの距離感で運営は続けていきたいと思っています。

――「チャンモノ」という公式YouTubeチャンネルでは屋代さんもご出演されていましたが、これもそういった狙いがあってのことですか。

狙いというほどのものではないですが(笑)。あれは、自分が顔を出すことで、『monogatary.com』をどういう人間が運営しているのかを、ユーザーの皆さんに知ってもらえたらという意図でやりました。実際、イベントに来てくれたユーザーさんに「(「チャンモノ」を)観てますよ」と言ってくださる方もいて、一定の効果はあったかなと。

YouTubeで公開されている『monogatary.com』の公式チャンネル「チャンモノ」。

――ユーザーの多さよりも、ユーザーとの関係の深さを重視しているんですね。

1年ぐらい運営を続けて、試行錯誤していたときに、数をやみくもに増やすのではなく、ユーザーの方に居心地の良さを感じてもらって定着してもらったほうが、『monogatary.com』の未来が拓けると気づいたんです。ユーザーさん一人ひとりの顔をできるだけ意識して、書いてくださった作品をいっしょに楽しんでいく。「日々のお題」を面白くすることで、サイトに定着してもらう。サイトのなかでコンテストを開いて、話題を増やしていく。そういったことを本当に地道に続けています。

もちろんユーザーさんの入れ替わりはありますが、一定の関係性を築けたユーザーさんといっしょに、熱量の高い運営を続けているという手応えは感じています。

――日々の「お題」に対して、たくさんのユーザーが小説を執筆して投稿するわけで、屋代さんもかなりの文章量をお読みになるのでは?

チームで分担していますが、単純に量が多いので、必然的に読むスピードがメチャクチャ速くなりましたね(笑)。また、我々のチームでは毎週必ず「今週はこれが面白かった」という作品を、ひとりずつピックアップして、プレゼンする場を設けています。そこでオススメされた作品も目を通すことになるので、作業として永遠に続く感じです。ただ、そうすることで、それこそ100本ノックのように、僕らも勉強をさせてもらっているという実感があります。

――そのなかから、スターを発掘することを目指していると。

我々の見る目も鍛えられているので、すばらしい作り手をどんどん発掘することができたら良いなと思っています。

さまざまなユーザーが、この『monogatary.com』に集う。そして、投稿作品が「エンタメのタネ」となり、ユーザーは小説家やクリエイターに育っていく。『monogatary.com』は今、新しいクリエイターが生まれる、豊かな土壌となりつつある。

記事の後編では、この『monogatary.com』で集まった「物語のタネ」がどのようなかたちで展開していくか。小説を音楽にするユニット「YOASOBI」の活動と併せて聞いていく。

文・取材:志田英邦

関連サイト

monogatary.com
https://monogatary.com/

 
monogatary.com Official Youtube Channel
https://www.youtube.com/channel/UC99xjA5AYyYn_MSb_0THTaw
 
YOASOBIオフィシャルサイト
https://www.yoasobi-music.jp/

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