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連載Cocotame Series

ソーシャルメディアでの挑戦

ソーシャルドラマに見いだすクリエイティブ&マネジメントの可能性【前編】

2021.04.14

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ソーシャルメディアで活躍する人や注目のプロジェクトをフィーチャーする連載「ソーシャルメディアでの挑戦」。

ここ数年、とりわけコロナ禍の巣ごもり需要で増加した、SNSで見ることができるオリジナル作品、ソーシャルドラマ。その“ソシャドラ”を配信するYouTubeチャンネル、『みせたいすがた』が開設された。この新チャンネルの連続ドラマを制作するにあたって掲げられた、ソニーミュージックグループならではのテーマとは。旗振り役の須藤一希と、彼の声掛けでこのプロジェクトに参加した佐々木美幸、五十嵐夏輝の3人のプロデューサーに話を聞く。

前編では、『みせたいすがた』立ち上げの経緯や、プロデューサーそれぞれがプロジェクトに込める思いを語る。

  • 須藤一希

    Suto Kazuki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    『みせたいすがた』総合プロデューサー

  • 佐々木美幸

    Sasaki Miyuki

    ソニー・ミュージックアーティスツ
    『水曜日22時だけの彼』プロデューサー

  • 五十嵐夏輝

    Igarashi Natsuki

    ソニー・ミュージックレーベルズ
    『惑星サザーランドへようこそ』プロデューサー

“すきま時間”を埋める作品作り

――ソーシャルドラマに特化したYouTubeチャンネル『みせたいすがた』のプロジェクトはどのような経緯で発足したんでしょうか。

『水曜日22時だけの彼』第1話「これってカタモク?」

須藤:自分はインフルエンサーやYouTuberの人たちと接することが多いんですけど、2、3年前からSNSドラマやソーシャルドラマといったワードをちょくちょく耳にするようになって。最初のうちは、インフルエンサーとしてSNSで数字を持っている人たちが演技をすることで、そこについている10代を中心としたファンに新たな一面を見せるためにやってるという印象だったんです。

でも、徐々にソシャドラの見え方が変わってきて、単純にインフルエンサーが演じるためのものではなく、コンテンツが増えていくなかで、どうすれば短い時間のなかでより影響力があるものができるかっていう方向に展開されていったと思うんです。そこで、日常生活の合間に気軽に見られる、“すきま時間”を埋める作品作りを考えるようになっていきました。そうすることで、いろんな人に作品を届けることができるんじゃないかって考え始めたのが、そもそものきっかけですね。

――そこから、佐々木さんと五十嵐さんのおふたりに声をかけたんですね。

須藤:自分が知っているなかで、ドラマや映画が好きな仲間たちを集めたって感じですね。佐々木は役者のマネジメントをしているので、たくさんの現場を経験していろんな知見が溜まっているだろうし、五十嵐はテレビドラマ制作の経験があるっていうのを聞いていたので、知識を借りたいなという思いで声をかけました。

五十嵐:僕は、最初に須藤から話を聞いたときに、ソシャドラがどういうものなのかを想像できなかったんです。だけど、テレビドラマや劇場用映画とはまた違うメディアで、物語やお芝居、シナリオを通じて届けるものでありながら、CMや、一般のユーザーが上げているSNSの動画などで普段から目にしているようなものと実は変わらないと説明されて、これは面白そうだなと。

これまで自分は映画制作やドラマ作りに近いところにいたので、その経験や考え方を新しいメディアに応用できる可能性も感じて、やってみようかなってことで動き始めました。

佐々木:私はソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)でマネジメント業務に就いていますが、やはりソシャドラを知らなかったので、一から勉強でしたね。今は新型コロナウイルスの影響もあって、個人で作った映画やドラマを配信する人が増えましたけど、最初にこの3人と、同じくチームで動いている宣伝やA&Rを経験しているスタッフで集まって話をした2019年は、まだそんなに多くなくて。再生回数を上げる、つまり“回す”ためにはどうすれば良いかとか、どんな宣伝をするべきかとか。これからの時代、知っておかないといけないことだなと思いつつ入り込めていない世界だったので、すごく勉強になりましたね。

YouTubeならいろんな層に満遍なくアプローチできる

――最初からYouTubeでのチャンネル開設を考えていたんですか?

須藤:最初に話したのは2019年ごろでしたけど、それからコロナ禍になり、世の中の人たちはよりYouTubeと向き合う時間が長くなって、そのぶん、消費もされていくようになった。そもそも考えていた“すきま時間”にどう刺していくかがより重要になっていくなと思っていました。ただ、最初はYouTubeだけとは考えてなかったです。

――ソシャドラと呼ばれるものは、当初Instagramでの縦画面のドラマが多かったですよね。

須藤:そうですね。我々にも案としてはありましたけど、やっぱり、Instagramだけだと広がりが弱いかなっていうのはありました。ほかにも、TikTokやTwitterなど、最初はいろんなSNSで展開していこうと考えていたんですけど、結局、ベースとするのはYouTubeが一番良いなと思いました。

YouTubeは多くの人が見ているじゃないですか。TikTokだと現状ティーンが中心になるし、Twitterは情報を仕入れるだけの人が多い印象で。自分が担当しているソーシャルクリエイターレーベル「Be」のYouTuberと向き合ってるなかでアナリティクスも見るんですけど、最近はYouTubeの視聴者層は30代以降、4、50代の人も増えてきていて。いろんな年齢層に満遍なくアプローチできると思ったので、YouTubeにしようと思いました。

――SMA所属の俳優にはそういったソシャドラへの出演オファーはそれまでもあったんでしょうか。

佐々木:正直、役者はまだまだSNSの出演にあまり前向きではない傾向です。だけど、これからのマネジメントのあり方としてそこは避けて通れないと個人的には思っていて。SMAはミュージシャンが多く所属している会社ですが、役者やタレントも揃っているので、自分たちで制作していける力と次世代を育てる場所を事務所が持っている。そういうことがマネジメント会社としての価値を高めていくんじゃないかなと。仕事に対して受け身でいるだけでなく、自分たちでこういったチャンネルを持って出ていける場所を作っていけば、今育成してる人たちはもちろん、第一線で活躍している役者たちが遊べる場にもなり、いつかソシャドラに出演するのが当たり前になる時代が来るかもしれない。

例えば、配信のオリジナルドラマも最初はソシャドラに近いイメージでしたけど、今や、みんなが出たいと思うプラットホームになっている。YouTubeでのソシャドラにもそういう未来があるかもしれないので、今回のような取り組みは、必然的にやらないといけないことだと思いました。

五十嵐:まだ動き出したばかりの取り組みで、自分自身、どうなるかわからない部分も大いにあります。ヒットを生み出すビジネスで、最初から勝算が約束されているものなどないと思うので、このプロジェクトも、どうなるかわからないけどやってみたいっていう気持ちが大きいです。

映画を見て引き起こされる感情、ドラマ視聴にある程度の時間を割く人が抱く満足度の高さ、TikTokのように短尺でハイスピードで消費される動画を見る人が得ている喜び、そういったものをうまくクロスさせることができれば、それは新しい試みになるんじゃないかなと思っていて。そういうことを意識しながら、須藤と一緒に企画を練ったり、佐々木の意見を聞いたりしながら調整してるっていう状況ですね。

テーマのひとつは、“音楽アーティストから俳優へ”

『水曜日22時だけの彼』主演のKaito

――2、3年前から徐々に増えてきたソシャドラのチャンネルをソニーミュージックグループで立ち上げる意義をどう感じてますか。

須藤:『みせたいすがた』は、テーマのひとつとして、“音楽アーティストから俳優へ”というのを掲げているんですね。アーティストでも、俳優活動に表現の場を広げていく場合があるじゃないですか。演技にチャレンジして、新しい表現方法を獲得して、より広がりを見せていく。ソニーミュージックグループは音楽アーティストに強い会社という側面があるので、そこを武器にできたらなと思っていたので、第1弾はソニー・ミュージックエンタテインメントの新人開発セクションであるSDグループで育成中のバンド、インナージャーニーのドラマーでもあるKaitoを主役に据えてやろうということになりました。

――アーティストが俳優へと活動の幅を広げるためのチャンネルということですね。

須藤:そうですね。そこはひとつの大きなテーマとして持っておきたいと思っています。もちろん、既に俳優活動をしているアーティストにも出演してほしいですが、演技未経験でチャレンジしてみたいという人の第一歩として、『みせたいすがた』で挑戦してみませんか? というアプローチはしていきたいなと思ってます。

第1弾のKaitoも、今、まさに俳優業を展開していっているところで、そのお手伝いと言いますか。このチャンネルでステップアップのサポートができたらという気持ちが強いです。最初はソニーミュージックグループ内のアーティストを中心に展開していきたいんですけども、ゆくゆくは他社のアーティストや俳優から出たいと思ってもらえるチャンネルになることが理想かなと思いますね。

佐々木:第1弾の『水曜日22時だけの彼』は、ドラマを作る手順が通常と逆だったんです。出演者を決めてから、脚本家とアーティストを会わせて、その人の良さを見せるための物語を作る、という。そのやり方ができるのが私たちがやるメリットですし、それに加えて、育成俳優の公式サイトにYouTubeのURLを貼るだけで、その人の演技や、どういうふうに映像に映るのかがエンタメ業界の他社の人にも伝わりやすくなる。一般のユーザーはもちろんですけど、営業ツールとしても、すごく良いコンテンツだなと思います。

――演技や映像のサンプル資料にもなるということですね。

佐々木:なります。すごくありがたいです。今、対面での営業が難しくなっているので、メールにYouTubeのURLを貼り付けて送れば、映像資料として気軽に見られる。しかも、一般の方からのコメントがあり、リアルな声を他社に届けられるなと。

主演のアーティストだけじゃなく、今回で言えば、ヒロイン役の石川瑠華にとっても、彼女の良さが映える内容になっているなと思ったので、これから来る仕事の幅が広がったら良いなと思っています。

石川瑠華

五十嵐:僕の場合は、この企画を考えるにあたって、キャスティングより先に映画監督と一緒に作るっていうところを出発点にしました。僕自身が昔、自主制作映画を作っていた背景もあって、例えば魅力的な自主映画って、大きな資本や有名な俳優が出ていないにもかかわらず、作品として既視感がないものが多いんです。そこには必ず驚きみたいなものがあって、限られた制作体制のなかで“発明”をしているなっていうところにすごく魅力を感じていて。

そんななかで、須藤が目指しているソシャドラの話を聞いたときに、そういった“発明”とリンクさせることができるんじゃないかなと思ったんです。それでまず、僕からは山本英監督に、一緒に企画を考えませんかと声をかけました。キャスティングに関しては、アーティストの演じることへの挑戦というテーマを踏まえた上でどういう人が良いかというのを、須藤と相談しながら進めました。

須藤:それで言うと、アーティストから俳優へという人たちだけではなく、新進気鋭の俳優とも一緒にやりたいですし、もっと言うと、これから人気になるだろう脚本家や映像監督と組むというのもテーマになってますね。

佐々木:そうですね。俳優だけでなく、新しいクリエイターを発掘する場にもなれば良いなと思います。

後編につづく

文・取材:永堀アツオ
撮影:荻原大志

 

YouTubeチャンネル『みせたいすがた』

第1弾ドラマ『水曜日22時だけの彼』(配信中)
 

 
出演/Kaito、石川瑠華
監督/松本壮史 脚本/夏生さえり 主題歌/崎山蒼志「そのままどこか」
 
 
第2弾ドラマ『惑星サザーランドへようこそ』(5月28日より配信スタート)
 

 
出演/塩塚モエカ(羊文学)、甲田まひる、小川紗良、河合優実
監督・原案/山本英 脚本・原案/イ・ナウォン
 
視聴はこちら(新しいタブで開く)

関連サイト

Instagram「みせたいすがた」
https://www.instagram.com/misetai.sugata/(新しいタブで開く)
 
TikTok「みせたいすがた」
https://www.tiktok.com/@misetai.sugata/(新しいタブで開く)

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