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連載Cocotame Series

Love Say you -恋するVoice-

戸谷菊之介:さまざまな作品で鍛えられ、さらなる高みへと羽ばたく最中【前編】

2023.07.21

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ソニーミュージックグループ所属の声優をクローズアップする連載「Love Say you -恋するVoice-」。インタビューにて彼らの言葉、写真で姿、そして録り下ろしのオリジナルメッセージでその声をお届けする。

連載初回は、昨年、TVアニメ『チェンソーマン』の主人公・デンジ役に抜擢され、注目を集めた戸谷菊之介。現在、アニメやゲーム、朗読劇など、幅広いジャンルでその声をいかした活動を展開している若手の注目株だ。また、YouTubeチャンネルでは、声の演技以外の特技を見せ、その多才ぶりを発揮。そんな彼の等身大の姿に迫る。

前編では、実は芸人志望だった学生時代から、所属するソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)のオーディションに受かるまでを語る。

戸谷菊之介プロフィール画像

戸谷菊之介 Toya Kikunosuke

1998年11月30日生まれ。身長175㎝。特技:ジャズピアノ、トロンボーン、暗記・暗譜。2017年10月、ソニー・ミュージックアーティスツ主催の声優オーディション“第6回アニストテレス”特別賞受賞。2022年、アニメ『チェンソーマン』で、主人公・デンジ役を務め、注目される。

人前で目立つことをやるのは好きだった

戸谷菊之介1

少年期と青年期の狭間を感じさせる、張りのある涼やかな声。明るい笑顔に気さくな人柄が滲み出る、爽やかなルックス。SMA所属の声優・戸谷菊之介は、初主演となった2022年の大ヒットTVアニメ『チェンソーマン』の主人公・デンジ役で脚光を浴びた。

今年に入ってからも、ソニーミュージックグループが手掛ける多次元アイドルプロジェクト『UniteUp!』でアイドルを目指す少年・清瀬明良役として、歌やダンスを披露。どちらもこの秋に放送がスタートする、TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』のドニー役、『柚木さんちの四兄弟。』の柚木尊役など、注目作品のメインキャストにも名を連ね、次世代を担う若手声優として期待を集めている。

そんな彼は、1998年11月30日生まれの現在25歳。親の仕事の都合で2歳から7歳まではタイで生活していたこともあったそうだ。

「カッコ良く言えば帰国子女?……なんですけど、言葉とかは全然で。帰国したのは小学校2年生のときなんですけど、今思うと、せっかく海外で暮らす機会があったんだから、タイの文化とか言葉をもっと覚えておけば良かったと後悔してます(笑)」

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『チェンソーマン』での好演を経て、人気声優の仲間入りを果たしている戸谷菊之介のデビューのきっかけは、2017年に行なわれたSMA主催の声優オーディション“第6回アニストテレス”だ。応募総数7,203組からファイナリスト12名に選出され、特別賞を受賞。その結果を見るだけでも、彼のスター性がこのころから輝いていたことがわかる。

「僕が末っ子だったからかもしれないですけど、人前で目立つことをやるのは好きでした。習いごととしてはピアノを、ちょうどタイにいたころ、3歳くらいから始めて。音楽が好きというのもあって、コンクールに出るほどの腕ではなかったですけど、ピアノは20歳くらいまでつづけてました」

彼が長くピアノをつづけた理由のひとつは、目立てることにあったと言う。

「単純に楽しかったというのもあるんですけど……中学でピアノが弾けると合唱コンクールの伴奏を頼まれるんです。ヒーローになれるんですよね(笑)。『戸谷くん、すごい!』とみんなが褒めてくれるんですよ。それがうれしくて。ピアノ教室も、先生が好きで通ってた部分が大きかったので、そんなに練習にもストイックじゃなかったし、自分に才能がないことにも気付いてました(苦笑)。

なので高校生になってからは、YouTubeやニコニコ動画の“演奏してみた”系の曲を耳コピして、クラシックよりもゲーム音楽とかアニソンとかを弾くようになっていったんです。自分の好きな曲が弾けるようになる面白さがあったから、ピアノをつづけられたんでしょうね。高校時代は、僕がキーボード担当でメンバーが全員男子の、プリンセス プリンセスのコピーバンドをやってたこともありました」

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文化祭で漫才コンビを組んで野球のネタを披露

ピアノはあくまで趣味の一環。だから音楽で大学を目指したり、ミュージシャンになりたい! という野望もなかったと言う。実は彼が幼いころからなりたかった職業は、ほかにあった。それが、お笑い芸人だ。

「芸人さんになりたいと思ったのは、中学生くらいからです。最初はテレビの影響ですね。お笑いの番組を見ていて、周りの人を笑わせるだけじゃなく、出ている芸人さん自身も、仕事なのにすごく楽しそうなんですよ。僕も周りの人を笑わせることが好きだったし、こんな素敵な仕事はないなと憧れたんです」

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好きな芸人を挙げてもらうと、真っ先に名前が出てくるのはバカリズム。そのバカリズム、劇団ひとり、東京03、早見あかりらが出演し、テレビ東京で放映されていたコント色の強いシチュエーションコメディ『ウレロ☆未確認少女』は、彼にとって思い出の番組だと言う。そして高校に入ると、お笑い熱、芸人になりたい熱はますますヒートアップしていった。

「『芸人になりたい!』と憧れているだけではダメなので、実際に自分も何か始めようと、お笑いの部活を作ろうとしたんです。それを先生に申し出たら、外部のコンクールに出たり、文化祭に出たりと、何か実績がないとダメだと言われて。じゃあ、文化祭で漫才をやってやろう! と、僕がボケ、友達がツッコミの漫才コンビを組んで、野球のネタを披露しました。お手本にしていたのは、初期のダウンタウンさんとか、サンドウィッチマンさんのコント漫才です」

奇遇にも、彼が所属するSMAには、ハリウッドザコシショウや錦鯉、バイきんぐ、コウメ太夫ら人気芸人を多数輩出しているお笑い部門がある。そう水を向けると、「そうなんですよ!! いつか一緒にコントとかやらせてもらえないですかね!?」と顔をほころばせる。

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話を高校時代に戻すと、残念ながら“お笑い部”の立ち上げは実現しなかったが、もともとピアノの素養があった戸谷菊之介は、高校でトロンボーンを始めた。

「いわゆるビッグバンドジャズも演奏できる部活だったので、最初はジャズピアノをカッコ良く弾きたくて入部したんです。でもピアノ希望者が多すぎて、部内でオーディションをしたら……見事に落ちまして(苦笑)。じゃあ、部活も辞めちゃおうかなと思ってたときに部活のコーチが『君はトロンボーンの口をしている、やってみないか?』と誘ってくれたんです。トロンボーンとかトランペットって、マウスピースを使う楽器だから、初心者が音を出すのは大変なんですけど、僕は最初から結構、筋が良くて。僕と同時に入部した1年生は全員楽器初心者だったから、励まし合いながら3年間頑張りました」

そこで鍛えたトロンボーンの腕前は、彼の公式YouTubeチャンネル『TOYA JAZZ KIKU JAZZ(新しいタブで開く)』で披露されている。実力派インストゥルメンタル・ジャズバンド、Calmeraとコラボレーションし、ジャズのスタンダードナンバーやアニソンのジャズアレンジの演奏動画を投稿し、注目を集めている。声優として戸谷菊之介を知ったファンからは、「意外!」の声が上がり、戸谷菊之介と同じように吹奏楽部でトロンボーンを演奏していたという視聴者もいる。

「トロンボーンは高校を卒業してもつづけていましたけど、まさかプロの方と一緒に演奏できることになるとは、自分でもビックリで(笑)。この楽器をやっていたおかげで、『ウインドボーイズ!』という吹奏楽を題材にしたゲーム作品でトロンボーン担当キャラクターを演じる機会もいただけて、やってて良かったと思いました」

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ところで、音楽、お笑いと“ビフォー声優”時代の趣味については語ってもらったが、声優という職業には欠かせない“芝居”には親しんでいたのだろうか?

「お芝居をしっかり意識したのは、結構遅かったですね。最初は高校2年生のときでした。実は高校に入ったとき、演劇部にも興味があって、仮入部だけしたことがあったんです。その縁で、高校演劇大会の助っ人を頼まれて、そこでちょっとお芝居の面白さを知りました。決定的だったのは、高校3年生のときの文化祭。クラス演劇をやることになったんですけど、コント好きの血が騒いじゃいまして。『脚本を書きたい!』と立候補したんですよね。高3の文化祭なんて、みんな受験勉強で忙しいじゃないですか。演劇を率先してやりたい生徒もいなかったので、結果的に主役と脚本と舞台演出をやらせてもらえたんです。そしたら、『これは楽しいぞ!』と」

戸谷菊之介初の主演・脚本・演出の舞台。いったいどんな内容だったかというと……。

「アメリカのドラマ『ハイスクール・ミュージカル』みたいな感じでした。もともとコントをやりたかったくらいなので、もちろんコメディ要素は多め。トラブルが起こるけど、最後はハッピーエンドという王道のストーリーなんですけど、各シーンごとに面白要素をたくさん詰め込みました。たぶん、探せば脚本とかビデオとか、何かしら残ってるんじゃないかな?」

オーディションでアドリブを入れたらすごくウケた

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吹奏楽、お笑い、演劇など、高校時代は機会があればとにかく、人前で何かをやっていたという戸谷菊之介。それゆえ、「人前で緊張することは、今もほとんどない」のだそうだ。

そんなにぎやかな高校時代を過ごした戸谷菊之介は、卒業後、いよいよ自分の夢に向かって本格的に動き出す。その夢というのが、やはり“芸人”だった。

「最初はやっぱり芸人さんになりたくて、ネットの情報を探したりしながら、大小いろんな事務所のオーディションを受けたんですが、すんなり受かることもなく。それで、芸人だけじゃなく、いわゆるタレントのオーディションも受けるようになりまして。

そんなときですね、あるオーディションで短い劇をやって、アドリブをバンバン入れたらすごくウケたんです。高校時代にちょっとかじった程度で、本格的な演劇経験はなかったんですけど、お芝居って面白いな! と思うようになり、そこから俳優や声優のオーディションにも挑戦するようになりました」

当時は「とにかくお芝居にまつわることがやりたかったし、とにかくどこかの事務所に入りたかった」と言う戸谷菊之介。人前に出て自分自身で何かを表現したい気持ちが、抑えきれなかった。

「もちろん自分でもわかっていました。子どものころからやっていたピアノも、学生時代にやっていた音楽も、お笑いも、お芝居も、全部中途半端なことは。でもチャレンジはしたかった。そんななかで受けたのが、今の仕事のきっかけになった“アニストテレス”のオーディションでした」

SMA主催の“アニストテレス”の応募条件は、“アニメ好きであること”。アニメ声優、声優アーティスト、アニソンシンガー、俳優、タレントなど、幅広いジャンルの新たな人材発掘を目的としていた。

「何より、あのソニーミュージックがやっているオーディションだというのが、素人目にもすごいな、と。アニメは好きでよく見ていたし、アニソンも好き。これは挑戦するしかないなと思って、応募したんです」

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戸谷菊之介が熱心にアニメを見るきっかけになった作品は、深夜アニメブームを牽引した『涼宮ハルヒの憂鬱』だったそうだ。

「『ハルヒ』きっかけで深夜アニメを見るようになったんです。そこから、本格的にハマったのは『リゼロ』(『Re:ゼロから始める異世界生活』)で。『うわっ、こんな面白いアニメがあるんだ!』と、毎週オンエアを追うようになり、出演声優さんのほかの番組やラジオをチェックしたり、派生コンテンツにも手を出すようになったんです。そこからは、ほかのアニメ作品も追うようになりました。“アニストテレス”を受けようと思ったのも、当時、『リゼロ』でレム役を演じられていた水瀬いのりさんがグランプリを獲ったオーディションだったから、という理由もあったんです」

芝居をする役者という意味で、声優も魅力的に感じていた戸谷菊之介だったが、当時はまだ声優については、いちアニメファンとしての漠然としたイメージしか持ててはいなかった。だが……。

「一次の書類審査を通過して、二次審査の面接もクリアしたくらいで、『もしかしたらイケるんじゃないか?』と、本気に火がついたんです。審査の課題のなかに、何かひとつアニメのセリフを披露するという実技もあったので、自分がお芝居の参考にしたい声優さんを真似てみたり、かなり真剣にアニメを研究して挑みました。

審査では、そのころ夢中で見ていた『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎をやらせてもらったんです。あとから気付いたんですけど、空条承太郎を演じられていたのは小野大輔さん。小野さんは『涼宮ハルヒの憂鬱』でも古泉一樹役をやられていたので、すごくおこがましいんですけど、勝手にご縁を感じていたり……。まだ一度もお会いしたことがないので、いつかご一緒できたらうれしいですね」

戸谷菊之介9

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

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