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連載Cocotame Series

Love Say you -恋するVoice-

戸谷菊之介:さまざまな作品で鍛えられ、さらなる高みへと羽ばたく最中【後編】

2023.07.22

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ソニーミュージックグループ所属の声優をクローズアップする連載「Love Say you -恋するVoice-」。インタビューにて彼らの言葉、写真で姿、そして録り下ろしのオリジナルメッセージでその声をお届けする。

連載初回は、昨年、TVアニメ『チェンソーマン』の主人公・デンジ役に抜擢され、注目を集めた戸谷菊之介。現在、アニメやゲーム、朗読劇など、幅広いジャンルでその声をいかした活動を展開している若手の注目株だ。また、YouTubeチャンネルでは、声の演技以外の特技を見せ、その多才ぶりを発揮。そんな彼の等身大の姿に迫る。

後編では、『チェンソーマン』のオーディションの裏側と、さまざまな出来事を通して成長中の現在を語る。

戸谷菊之介プロフィール画像

戸谷菊之介 Toya Kikunosuke

1998年11月30日生まれ。身長175㎝。特技:ジャズピアノ、トロンボーン、暗記・暗譜。2017年10月、ソニー・ミュージックアーティスツ主催の声優オーディション“第6回アニストテレス”特別賞受賞。2022年、アニメ『チェンソーマン』で、主人公・デンジ役を務め、注目される。

お芝居というものを理解していなかった

前編からつづく)チャレンジの甲斐あって、“第6回アニストテレス”で特別賞に輝いた戸谷菊之介は、そのままソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)に所属となる。声優の卵としての第一歩を踏み出したが、声優としての技術や実力には、自分自身も不安を抱えていたという。

「憧れていた声優として、念願だった事務所に所属できたのはうれしかったし、やる気満々でしたけど、声優の世界は、養成所に通ってデビューする方のほうが圧倒的に多いんです。僕は事務所オーディション出身だから、ちゃんとした声優のレッスンというものをそれまで受けたことがなかった。

SMAに入ってから、いろんな作品のテープオーディションを受けさせていただけたんですけど、お芝居についてはマネージャーさんに教わり、実践とレッスンを同時にやっていた感じでした。それが本当に大変で。ちゃんと基礎から演技力や表現力を身につけていかないと、この先もダメだなというのは、すごく感じていました」

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そんなころ、事務所スタッフから戸谷菊之介は、あるニュースを聞く。『新世紀エヴァンゲリオン』や『幽☆遊☆白書』など多数の代表作を持つ業界の大先輩、実力ある声優であり歌手の緒方恵美が、2019年6月に次世代声優育成のための無料私塾“Team BareboAt”を開講。その第一期生の募集を始めたというのだ。

「『これだ!』と思いました。あの緒方恵美さんから直接お芝居を教えていただけるなんて、なかなか経験できることじゃない。初心者もプロも指導してもらえると聞いて、これはオーディションを受けるしかないなと思いました。緒方さんとの面接でも『レッスンもまったく受けたことがなくて、どうすれば良いかわからないんです』と正直に言って、実技を見ていただき、運良く合格。レッスンを受けさせてもらえることになりました」

2019年6月から2022年の5月までの約3年間、対面で2年、コロナ禍に入ってからはリモートでのレッスンをつづけたTeam BareboAtで、戸谷菊之介は緒方恵美から声優のいろはをしっかりと学んだ。

「レッスンはとても厳しかったです。でもすごく勉強になりました。僕はそれまで、まったくお芝居というものを理解していなかったんですよ。ただ声真似をして、声優っぽい声を出してただけ。でも本来、お芝居というのは現実を作り出すもの、現実をどう再現するかということだという概念を、初めてそこで知ることができたんです。体力作りから始まって、現実をお芝居で再現するためにはどういう技術が必要か、どうやったらキャラクターの感情を自分のなかから引き出せるか。お芝居の基礎から応用まで、具体的なことも詳しく学ばせていただきました」

戸谷菊之介2

戸谷菊之介3

Team BareboAtで緒方恵美に演技の基礎を叩き込まれていった戸谷菊之介は、2020年、MMORPGモバイルゲーム『我的起源』のモブ役で念願の声優デビューを果たし、翌2021年には青春育成ゲーム『ウインドボーイズ!』で初めて、メインキャストのひとり、清嶋桜晴を演じることになった。

「お芝居に関しては少しは頑張れたかなと思うんですけど、ゲームのキャラクターは、掛け合う相手もいなくて、ひとりきりの収録。ひとりでお芝居するのはすごく難しかったです。収録のときは、自分でもそこそこできたんじゃないかなと思ったんですが、ゲームがリリースされたあとに自分の声を聞いてみたら、“そこはそうじゃない!”と感じてしまうセリフもたくさんあって。ほかのキャラクターを演じられた先輩方はすごくお上手なんですよ、当たり前なんですけど(苦笑)。自分は全然できてないなと、改めて、プロの声優さんってすごいなと思ったのを覚えてます」

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『これはもしかして……!!』と期待が高まった

その後、2022年からはアニメ作品への出演も増えていく。そして、彼の転機ともなる大役をついに射止める。『週刊少年ジャンプ』連載開始時(現在は『少年ジャンプ+』で連載中)から話題を呼び、アニメ化を果たした『チェンソーマン』の主人公、デンジ役だ。

「最初はテープオーディションだったんですが、自分はまだまだだというのはわかっていましたから、その時点では、受かったら良いなくらいの軽い気持ちだったんです。でも『スタジオオーディションまで行けました!』という報告がきて、僕も事務所のスタッフさんもすごくワクワクしました。スタジオオーディションでは、それまでのアニメのオーディションと違って、ナチュラルでリアルなお芝居を求められたんですけど、ちょうどそのころ、僕自身がリアル志向のお芝居にハマっていた時期だったので、すごく手応えがありました」

大役のオーディションに合格できたのは「めぐり合わせと、運とタイミングが良かった」からだと振り返る戸谷菊之介。『チェンソーマン』で求められたリアル志向の芝居は、ふたつのアニメ作品から受けた影響が大きかったという。

「『SSSS.GRIDMAN』と『BEASTARS』です。『SSSS.GRIDMAN』は、『こんなにリアルなアニメがあるんだ!』と驚きましたし、『BEASTARS』はレゴシを演じられていた小林親弘さんが素晴らしかった。『チェンソーマン』のデンジに求められたのは、まさに小林親弘さんのようなお芝居だったんですよ。オーディションでも『アニメを意識せず、普段のしゃべり方くらいの感じで大丈夫です』と言われて、『それは今、僕がハマってるヤツだ!』とやってみたらOKが出て、『これはもしかして……!!』と期待が高まりました」

やりきった気持ちで結果を待っていた戸谷菊之介のもとに、3次審査を受けられるという朗報が届いた。

「もう数名に候補が絞られていると聞いて、ドキドキしながらスタジオに行き、監督とお話をさせてもらったら、『デンジの雰囲気は戸谷さんそのままで良いので』とおっしゃっていただけたんです。もう、緒方さんから教わった感情表現を全部出し切ろうと思って挑んだら、自分で言うのもアレですけど、めっちゃ良いお芝居が出てきまして! でも、『チェンソーマン』といったらものすごく大きな作品。受かる確率も相当低いけど、自分なりの力は出せたから、落ちたとしても満足だなと思っていたら……合格の通知をいただけて。本当にビックリというか……これはとんでもないことになったぞ! って思いました」

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オーディションを受ける前から、『チェンソーマン』の大ファンだった戸谷菊之介。「自分が好きな作品の主役を演じられるなんて、こんなにうれしいことはない。めちゃめちゃ運が良かったし、声優をやっていたら、こんなすごいことにめぐり会えるんだ」と、声優としての醍醐味を知ることになった。そこから彼の生活も変わったという。

「お仕事に関していうと、いろんな人に僕のお芝居を見ていただけるようになったというのが、すごくうれしかったです。緒方さんに教わった自分の信じる芝居を認めていただいた喜びもありますし、まだまだダメだなと思う部分を、今、成長させつつ、どんどん突き進んでる気持ちです」

キャストの多いこの作品で、演技についてだけでなく、先輩声優からプライベートにも役立つアドバイスを受けられたのも、彼にとっては貴重な財産となった。

「『チェンソーマン』は、激しく戦っているシーンが多いんですね。僕、実は野球部にいた経験もあるので、デカい声を出すのは得意だし、喉も体ももともと強いんです。でもさすがに収録の最初のころは、喉が相当ヤバくなるのでどうしたものかと思っていて。そんなとき、第1話のアフレコでマキマ役の楠木ともりさんが、喉ケアのための吸入器のことを教えてくれたんですよ。さっそく買って試してみたら、これは良いぞ! となりまして、先輩にほんと助けていただきました」

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注目作の主人公を演じたことで、イベントや配信番組への出演、雑誌のインタビューなど、それまでやったことのなかった仕事も多数経験した。

「今日も写真撮影をしていただきましたけど、最初のうちは笑顔の作り方もわからなくて、どうやってもヘンな顔になっちゃって(笑)。最近ようやく、少しマシな表情が作れるようになったかな? 動画番組やイベントでも、主演って『最後にファンの皆さんに挨拶をお願いします』って言われることが多いじゃないですか。“うわっ、僕なんかが!?”って思いながら、最初のころは“よろしくお願いします!”くらいしか言えなくて、こんなのでほんとに大丈夫なのかな……と戸惑うことも多かったです。でも、たくさんの取材を受けさせていただいて、少しはコメント力も鍛えられたと思います」

普通だとつまんないけど、ちゃんとした人間でもありたい

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アイドル志望の男の子を演じている多次元アイドルプロジェクト『UniteUp!』で経験した歌とダンスも、彼にとっては初のチャレンジだった。歌にも踊りにも苦手意識はあったが、根が努力家の戸谷菊之介。コツコツ地道に練習をつづけることで、その苦手を克服していった。

「アニメは今年に入ってから放送されたんですけど、オーディションがあったのは2020年の頭ぐらいでした。そこからずっとレッスンがつづいて、2022年にキャスト発表があり……と、長く携わらせていただいている作品になりましたね。歌もダンスも得意ではないし、特に歌は本当に自信がなかったんです。楽器と違って音程は取れないし、歌う声をちゃんと出すことにも慣れていないから、『UniteUp!』の楽曲レコーディングが始まる前には ボイストレーニングに通って、ようやくなんとか聴けるレベルに成長できたかな? って感じです。実はダンスも個人的にレッスンに通ってました。家の近所の町のダンススタジオで、子どもたちに交じって基礎から教えてもらいました」

さまざまな作品で身も心も演技も鍛えられた戸谷菊之介は、さらなる高みへと羽ばたいている最中だ。声優としての成長もそうだが、20代半ばという年齢を考えると、人間としての成長もここからが本番。現在の自分を、彼はどのように自己分析しているのかも気になるところだ。

「前に『チェンソーマン』の動画番組で、デンジのように自由奔放な性格に見えると言われたことがあるんですけど、自分としては、結構気を使うところもあるんですよ。ただ……ふざけたい人間ではある(笑)。突発的に走り出したくなったり、普通だとつまんないなって思っちゃうタイプなんですよね。だけど、ちゃんとした人間、正しい人間でもありたくて……自分ではすごいダブルスタンダードだなって思いますね」

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芝居に関しても、人とは違うことについ挑戦したくなってしまうのだそうだ。ここでもお笑い好きの血が騒ぐのか、とくにコミカルな役柄では“ふざけたい”気持ちが発動してしまうという。

「秋から放送が始まる『七つの大罪 黙示録の四騎士』のアフレコが始まっているんですが、僕が演じるドニーという役は、結構ふざけても良い感じなんですよね。だから、まず台本をチェックしているときに“ここ、何か差し込めそうだな、イケそうだな”というところを全部チェックするんです。そして現場のテストで試してみると、監督さんたちから『今のはいらないかな』と、怒られて帰ってくるという(苦笑)。新人なんで当然なんですけど、先輩方のなかには、ものすごく面白いアドリブを絶妙のタイミングで的確に入れて、作品をより輝かせる方がたくさんいらっしゃるじゃないですか。将来は、そういう声優になりたいなとすごく思います」

では具体的に、これから挑戦してみたい役柄や作品はどういったものなのだろう。

「うーん……具体的にこんな役を、というのはあまり考えられないんですけど、やっぱりリアルなお芝居ができる現実に近い作品には、これからもぜひ出たいですね。アニメだけではなく、去年からは日本テレビの『ゼロイチ』という情報バラエティ番組のナレーションもやらせていただけていますし、幅広くお仕事をいただけていることが、新人の僕にとってはとてもありがたいです」

近年の声優業界は、演技者としての能力だけでなく、歌やバラエティなど、さまざまなエンタテインメントへの対応力やクリエイティビティを、以前よりも求めるようになってきた。学生時代からマルチに興味を持ちつづけてきた戸谷菊之介には、芝居以外にも、挑戦してみたいことがあるそうだ。

「自分で何かを作り出すこともやりたいんです。例えば……作詞作曲とか。ジャズのインストゥルメンタル曲は作曲したことがあるし、個人のライブイベントで、ピアノの弾き語りやトロンボーンの演奏はやっているので、次はオリジナルのポップスを書いて、弾き語りができたらなと。音楽活動も自分のやりたいことのひとつなので、声優としての力をこれからもしっかり磨きながら、いろいろなことに挑戦していきたいです!」

戸谷菊之介 Love Say you -恋するVoice-

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

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