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清 竜人が語る、15年間のクリエーションと貫かれてきた思い【前編】

2024.06.24

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19歳でシンガーソングライターとしてデビューしてから、ジャンルでくくられない音楽性を発揮してきた清 竜人。形態としても、ソロ、アイドルグループ、バンドと、多彩な音楽活動を展開。加えて、映像監督、俳優業にも乗り出すなど、多才な姿を見せてきた。今年デビュー15周年を迎えた彼の軌跡を辿りつつ、そこに貫かれてきた思いを聞く。

清 竜人プロフィール写真

清 竜人 Kiyoshi Ryujin

1989年5月27日生まれ。大阪府出身。2009年3月、シングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。以降、シンガーソングライターとしての作品だけでなく、清 竜人25、清 竜人TOWNなどのプロジェクトで楽曲を発表。また、上坂すみれ、堀江由衣といった声優や、でんぱ組.inc、ももいろクローバーZといったアイドルグループらにも楽曲を提供している。音楽活動だけでなく、映像監督や俳優としても活躍する。メジャーデビュー15周年を迎えた今年、清 竜人25の新メンバーによる再結成を発表。また、6月26日には東京都・LIQUIDROOM、30日には大阪府・BIGCATにて、15周年記念のバンド編成によるライブが行なわれる。

記事の後編はこちら:清 竜人が語る、15年間のクリエーションと貫かれてきた思い【後編】

音楽家として生きることを決意し高校を自主退学

清 竜人が今年の3月でメジャーデビュー15周年を迎えた。これまで、ミュージシャンとしての活動だけでなく、楽曲提供や映像監督、俳優と、活躍の場を広げるいっぽうで、2022年11月にはシンガーソングライターである自身の原点に回帰した8枚目のアルバム『FEMALE』を発表。2023年11月には、アニメ『Dr.STONE NEW WORLD』第2クールオープニングテーマ「遥か」をリリースした。

清 竜人 - 遥か

そして今年5月には、2013年にリリースされた6枚目のアルバム『WORK』収録の人気曲「All My Life」のセルフカバーも披露し、話題となった。

清 竜人 - All My Life(Re-Recording)

変化を恐れず、次々と新しい顔を見せるアーティスト、清 竜人にとって、この15年間はどんな日々だったのだろうか。

「年齢的なことも関係しているとは思うんですけど、最初の5年とあとの10年の体感速度は全然違いますね。5周年まではものすごく長く感じたんですけど、5周年から15周年までは本当にあっという間だった。

この10年間のほうがさまざまな取り組みを行なってきたので、濃度としては濃いものだと思うんですけど、逆に速く感じてます。アーティスト活動を、ここまで仕事としてつづけると思っていなかったし、つづけられるとも思っていなかったので、そういった意味では感慨深いところもありますね」

3歳からピアノを始め、15歳のときに伯母が拾ってきたアコースティックギターを譲り受け、バンド活動を開始した清 竜人は、17歳の夏に全国高校生バンド選手権でグランプリを獲得。副賞として与えられた『ROCK IN JAPAN FES』に出場。同年の冬に高校を自主退学し、音楽家として生きていくことを決意して上京。

映画『僕の彼女はサイボーグ』の挿入歌「send」を経て、2009年3月、19歳の春に“au Smart Sports”のCMソングとしてオンエアされたシングル「Morning Sun」ほか9曲入りの1stアルバム『PHILOSOPHY』でメジャーデビューした。

清 竜人 - Morning Sun

「もともと大阪で普通に学生をやっていて、部活動や趣味の延長線上にあった音楽活動が仕事になったっていうようなところがあって。今もそうですけど、社会経験をろくに積んできてないし、実際に勤めに出たこともない。逆に言うと、僕にとっては、高校をドロップアウトして、初めての社会がこの音楽業界だったので、一つひとつ、すべてが新鮮な体験だった。

そのなかで、多感な時期に蓄えてきた自分なりのクリエーションを最初の5年間ですべて出し切ったっていうところもあって。インプットもアウトプットもすべてが新鮮っていう時期だったし、高カロリーだったのかなと思いますね」

今も変わらないアーティストとしてのビジョンは“interesting”な人間でいること

デビュー当時、清 竜人は“奇才”と評されることも多かった。それは、彼がひと言では言い難いアーティストだったからだ。2ndアルバム『WORLD』(2010年)ではポップやロックに、ジャズや民族音楽、映画音楽を独自の感覚で混ぜ合わせ、3rdアルバム『PEOPLE』(2011年)ではより大衆的なポピュラーミュージックに接近。

つづく4thアルバム『MUSIC』(2012年)では一転して、アニソンやアイドルソング、ゲーム音楽やミュージカルを取り込んでシンガーソングライターしてのイメージを一新したかと思いきや、5枚目のアルバム『KIYOSHI RYUJIN』(2012年)ではアコースティック楽器ひとつでの弾き語りを基軸に、自らの内面を深くえぐってみせた。

「15歳から音楽を始めて、『WORLD』までは10代のときの貯金というか、少しずつ作って蓄えてきた楽曲たちをメジャーで形にしてリリースしたっていうところがありましたね」

『WORLD』に収録されていたのが、その真っ直ぐな歌詞が心を揺さぶると話題になった「痛いよ」だ。

清 竜人 - 痛いよ

「3枚目の『PEOPLE』以降は……そもそも、『こういう音楽がしたいから、この業界に入りたい』というような、良くも悪くも強い音楽観がなかったんです。もうちょっと俯瞰で、『こういうアーティストになりたい』とか、『こういう立ち居振る舞いをしたい』というビジョンはそのころから今も変わらずにあるけど、音楽観に縛られたことは一度もない。それが、そののちのグループ活動にもつながるんですけど。なので、3枚目からは、全然違うことをしようと思っていましたね」

その、当時から今もブレることのない“ビジョン”とはどんなものなのだろうか。「抽象的であまり言語化できるようなものではないんですけど」という前置きをつけて明かしてくれた。

「物心がついたときから思い始めて、思春期以降は特に強く思っているんですけど、常に“interesting”な人間でいたいなと思っていて。人の興味をかき立てるような人間でありたいし、その興味にちゃんと応えたい。1の期待に対して2以上で応えられるような人間でありたいなというのはずっと思いつづけてます。

その気持ちがクリエーションにつながっていると思うし、今もまだモチベーション高くこの仕事に向き合えることができるひとつの要因かなというふうには思ってますね」

アルバムごとに作風を変化させ、ジャンルの枠を軽々と飛び越えてきた彼は、2010年以降、楽曲提供のオファーも受けるようになった。

「今はプロデューサー的な立ち位置で外部の仕事に携わることも増えたんですけど、元々は本当に自分のアーティスト活動にしか興味がなかったんですよ。

でも、よくある話ですけど、初期の作品は、それまでの人生の蓄えがあってのアウトプットなんで、より鮮度の高いものが作れるけど、それ以降は、出し切ったあとにどれだけインプットするかっていうのが問われるじゃないですか。

そういう意味では、ただ自分自身の音楽に向き合うだけじゃなくて、違うアーティストや違うチームと関わることによって、必ずインプットはある。そういった意味で……特に堀江由衣さんに関わった以降は、インプットの気持ちで外部の仕事をするようになりましたね」

堀江由衣「インモラリスト」Music Video

初の楽曲提供を行なった堀江由衣のシングル「インモラリスト」がリリースされたのが2011年2月。制作は前年の2010年、自身の2ndアルバム『WORLD』を作り終えたあとだったという。

「何か自分に刺激的なことがしたい、刺激的なアーティストになりたいと思うなかで、新しい自分の引き出しがないかなって考えたときに、10代のころにまったく通らなかったアニメ、ゲームカルチャーに出会った。

当時は、シンガーソングライターとしてデビューした僕がいたシーンと、いわゆるアニメやゲームシーンの間にはだいぶ高い壁があったんですよ。今は、いろんなコラボレーションがありますけど、当時は僕みたいなシンガーソングライターがアニメ業界に楽曲を書き下ろすみたいなコラボレーションはほとんどなかった。

そういうところに一石を投じるのは面白みがあるなというところもあったし、逆に僕の作品でもアニメやゲームカルチャーとコラボレーションして、新しいクリエーションをするという意図を持って作ったのが4枚目の『MUSIC』というアルバムですね」

2012年5月にリリースされた 4thアルバム『MUSIC』は声優の堀江由衣や佐藤聡美らがキャストとして参加したミュージカル形式のコンセプトアルバムだが、つづいて同年12月にリリースされた5thアルバム『KIYOSHI RYUJIN』は、自身の内面にうごめく欲望や自意識をあまりにもストレートな言葉で綴ったために、CDショップでは一般発売されない問題作になった。

「純粋な気持ちで、そのときにやりたいことをやったっていうところもあるんですけど、今となっては、愉快犯的なところもあったかなと思います(笑)。振り返ってみると、あの当時は、プライベートを含めて、すべてを自分の作品、自分の表現に費やしていたのはもう間違いないです。

表現の自由というものに対して、ちゃんとメジャーシーンのなかでチャレンジできてるアーティストっていうのは、僕が知る限りは、周りを見渡してあまりいなかった。だから、そこに100%でチャレンジするっていうことにやりがいを感じていたところはありますね」

清 竜人25の結成は新しいムーブメントの提起だった

常に新しい刺激を求めてチャレンジをつづける清 竜人は、2013年6月には、全曲の作詞・作曲・編曲はもちろん、ストリングスのアレンジまでも手がけ、音楽プロデューサーとしての側面を開花させた6thアルバム『WORK』をリリースした。

「当時、23、4歳だと思うんですけど、シンガーソングライターで、セルフプロデュースで、ストリングスやホーンのアレンジまでを含めて全部自分でやるっていうか、できるっていう人がいなかったんですよね。

今となればね、それこそボーカロイド以降、セルフプロデュースでDTMでやる方が増えましたけど、当時のメジャーシーンでは稀有で、そこに対して挑戦したかったというところがあります。どこか音楽家としての矜持を見せたい時期だったんです。

変な話、僕としては本当に真面目にポップアートとして、クリエーションとして作ったんだけど、切り取られ方によっては、奇をてらってるように見えるという懸念も少しあった。だから、すごく打算的にというか、ちゃんと計算してこれを作ったんだよ、こういう作品も作れるんだよっていうのを見せたかった。

最初の5年間は、6枚のアルバムを通じてひとつのパッケージじゃないですけど、清 竜人というアーティストの可能性を自己紹介したみたいなところもあるかもしれないですね」

デビューからの5年間で、自身のアーティスト性を存分に世に知らしめた清 竜人。だが、デビュー5周年を記念した初のベストアルバムでひと区切りつけると、彼は突如として、口髭を蓄えたアフロの伊達男に扮し、アイドルフェスのステージに立ったのだ。

清 竜人の次なる一手は、一夫多妻制のハーレム状態をコンセプトにしたアイドルグループの結成だった。清 竜人が5人の女性とともに歌い踊る清 竜人25は、2014年6月に結成、11月に1stシングル「Will♡You♡Marry♡Me?」でデビューを果たす。清 竜人とその夫人たちによるグループという設定は、突飛に聞こえるかもしれないが、“誰もやっていないことをやる”という点では一貫している。

清 竜人25「Will♡You♡Marry♡Me?」Music Video

「女性アイドルカルチャーで、男が同じグループにいる、同じステージ上にいるっていうことが稀有だったので、そこをちゃんとクリエーションすることによって、新しいムーブメントを起こせるんじゃないかっていうところが、清 竜人25を企画した一番のポイントでしたね。

そういった面では、まだほかにやってる人がいない、第一人者的なキャラクターだったからこそ、受け入れていただいた部分もあるのかなと思ってます。ただ、パフォーマンスの部分を含めて、クリエーションに関してはかなり繊細に考えましたし、大変な部分もありましたね。

活動をする際、僕にはペルソナがいくつかあって。そのなかのひとつである、エンタテイナー・清 竜人としては、当時最大限のものを見せることができたと思ってるんですね。一番リアクションがあったのもこのプロジェクトでしたし。

そういう意味では、自分の持っている才能や感性みたいなものは、自分が意識してない部分も含めて、もっと自覚して取り組んでいかないといけないんだなと、活動が終わったあとも感じてましたね」

後編では、清 竜人25の再結成についてや、表現することへの思いを語る。

後編につづく

文・取材:永堀アツオ

リリース情報

清 竜人25「Will you marry me ?」ジャケット写真

清 竜人25「Will you marry me ?」
配信中

試聴・購入はこちら

ライブ情報

『Kiyoshi Ryujin 15th Anniversary Band Tour 2024』フライヤー画像
 
『Kiyoshi Ryujin 15th Anniversary Band Tour 2024』
【東京公演】
日程:2024年6月26日(水)
会場:東京・LIQUIDROOM
 
【大阪公演】
日程:2024年6月30日(日)
会場:大阪・BIGCAT
 
チケット発売中
【eプラス】
https://eplus.jp/kiyoshiryujin/(新しいタブを開く)
【ローソン】
https://l-tike.com/kiyoshiryujin/(新しいタブを開く)
 
『KIYOSHI RYUJIN25~REUNION PARTY~』
日程:2024年7月11日(木)
会場:KT Zepp Yokohama
 
『清 竜人 弾き語りコンサート 2024 夏』
日程:2024年8月31日(土)
会場:自由学園明日館講堂
 
チケット発売中
https://eplus.jp/kiyoshiryujin/(新しいタブを開く)

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