柔軟性と協調性と好きだという思い――ライブイベント「@JAM」スタッフが語る裏方に必要なもの②
2024.08.28
“日本を代表するポップカルチャーイベント”と銘打ち、アイドルやアーティストが共演する音楽ライブイベントを行なっている「@JAM」シリーズ。その最大のフェスであり、今年で開催10周年を迎える『@JAM EXPO』を含め、シリーズを主催するライブエグザムの企画担当者と制作担当者に話を聞く。ライブ制作の苦労と喜び、そしてライブスタッフにとって大事な要素とは。
武藤秀之
Muto Hideyuki
ライブエグザム
太田 麗
Ota Urara
ライブエグザム
柴田純平
Shibata Junpei
ライブエグザム
記事の後編はこちら:柔軟性と協調性と好きだという思い――ライブイベント「@JAM」スタッフが語る裏方に必要なもの➁
――今回は「@JAM」のライブスタッフの皆さんに話を聞いていきます。まずはそれぞれの担当と経歴を教えてください。
太田:ライブ企画を担当しています。この仕事に就いて4年目です。
柴田:ライブ制作をやっています。この業界の仕事は20年くらいやっていて、「@JAM」には2016年ごろから関わっています。
武藤:太田さんと同じく企画を担当していて、丸4年になります。
――「@JAM」は、アイドルやアーティストが出演する音楽ライブイベントのブランドでもあります。ひとつのライブができあがっていく過程を教えてください。
武藤:「@JAM」はシリーズになっていて、何月にどういうイベントをやるか、年間のプランニングがほぼ決まっています。そこに対してどういったアーティストに出演していただくか、どういう制作スタイルにするかなどを詰めていくというのが最初の段階になりますね。
太田:すべてのライブが複数のアイドルやアーティストが出演する対バン形式のライブになっていて、キャスティングが固まり始めるのは公演の4カ月~半年前くらい。オファーをして出演者が決定したら告知を行ない、チケットの販売、本番、精算、無事終了でありがとうございました! っていうのが、1年間ずっとつづく感じです。
――ひとつのライブを開催するなかで、企画担当の人が関わるのはどれくらいの範囲になりますか?
太田:キャスティングと告知と配券(チケットの販売)が我々のメインの仕事です。演者のライブの出演順が決まったら、制作の柴田さんに引き継ぎます。
――ライブの制作というのはどういった仕事なんでしょうか。
柴田:公演が最初から最後まで滞りなく終わるようにする管理人みたいな仕事かなと思ってます。具体的には、主催側の要望を技術担当や出演者側に伝えたり、お客さんを迎える体制を整えたりですかね。実は、仕事内容はあんまりきっちりと決まっていなくて、その場に応じて動く感じです。
――ひとつのライブができあがる過程で、どういう仕事がボリュームとしては大きいですか?
柴田:準備の段階だと思います。本番が始まったらあとは技術の方たちがしっかりやってくださるので。準備というのは、「@JAM」に関しては出演者側とのやり取りが多いです。
ライブで歌う曲の資料を集める、パフォーマンスの内容について打ち合わせる、当日は何時に現場に入るかの調整をする、それを技術のスタッフに共有する、といったところですね。主催者と技術と出演者の橋渡し役というとイメージしやすいと思います。
――皆さんがこの仕事に就いたきっかけは何だったんでしょうか。
太田:高校生のころからライブに携わる職に就きたいと思っていたので、音楽系の専門学校を卒業後、新卒でライブエグザムに入社しました。昔からよく音楽を聴いていたし、好きなアーティストのライブにもいっぱい行っていて、そういった仕事をしたいと思っていたんです。
私が通っていた専門学校には、楽器を学ぶコースとか作詞作曲を学ぶコースのほかに、マネージャーとかライブスタッフとか裏方の仕事が学べるコースもあって、私はそこに在籍していました。
――最初からライブの企画をやりたいと思っていたんですか?
太田:企画と制作はセットなイメージがあったので、そういうものになれたら良いなと思っていました。ただ、学生のときはどういうルートで仕事を探せるのかわからなかったんですけど、専門学校のオープンキャンパスで「音楽系の就職情報サイトから探せるし、要領としては普通の就職と変わらないよ」と教えてもらって、だったら私でも入れるかなって。調べてみたら結構求人もあって、背中を押されたような気持ちになりました。
――武藤さんは、太田さんと同じく企画担当ですが、どういうきっかけでこの仕事を?
武藤:私は、もともとはマネージャーをしていたんです。ある芸能事務所で10年間タレントのマネージャーとして働いて、その後別の事務所に転職したときにマネジメントとイベント制作を担当するようになりました。そこから少し経ったころに、「『@JAM』を手伝ってくれない?」と話をいただいてやり始めたのが、ちょうど4年前になります。
――では、ずっとエンタテインメント業界で仕事をしてきたんですね。いつごろからこの業界に興味を持ったんですか?
武藤:小さいころからテレビが好きで、エンタテインメントの業界で働きたいなとはぼんやり思ってました。ニュースとかバラエティとかドラマとかいろんな番組を、テレビにかじりついてずっと見てるような子でしたね。特に好きだったのは『ASAYAN』で、今思えばあの番組の影響がかなり大きかったんじゃないかと。エンタテインメント企業には4大卒が条件の会社もあるので、それに備えて大学に進学しました。
――柴田さんはどんなルートでライブ制作の仕事に?
柴田:写真関係の学校に行ったのをきっかけに映像をやり始めて、ライブ撮影に関わるようになってライブハウスで働いて……みたいなルートです。地方の出身で、業界のこともよくわからず、とりあえず音楽に携われる仕事がライブハウスしか思いつかなかったんです。
そこで音響をやったり映像を撮ったり、いろんなことをやっているうちに、気づけば制作もやっていたという経歴です。今も制作1本って感じではなく、必要であれば音響とか映像とかほかのセクションの仕事もします。
――音楽関連の仕事がしたいと思ったのはいつごろからですか?
柴田:自分も10代のころから音楽をよく聴いてたし、ライブも観に行ってました。この仕事がしたいと思ったのは、たぶんそれぐらいのときだったんじゃないかと思います。あまりはっきりとは覚えてないんですよ。自分にとっては普通のことだったので。ほかの仕事をやろうとは思ったことがなくて、気づいたら当たり前のように音楽の仕事を目指してました。
――皆さんルートは違いますが、音楽やエンタテインメントが好きというマインドは同じなのかなと感じました。では、今の仕事を“やってて良かった”と思う瞬間はどんなときですか?
太田:楽しそうにライブを観てくれてるお客さんをうしろから見てると、やって良かったなといつも思います。さらに出演者にも「楽しかったです」って言ってもらえると、ちゃんとイベントを安全に運営できたんだなと思ってやりがいを感じるし、すごくホッとしますね。
「@JAM」のライブでは、人がたくさん集まって歌って踊るからアクシデントがつきものだし、お客さん同士のトラブルも少なからずあります。そんななかで事故とか怪我がなく、平和な状態でみんなが「楽しかったね」って言って帰っていくのを見たときは、やっぱりめちゃくちゃ安心しますね。
武藤:すごくわかります。ライブって1回限りでやり直しができないので、イベント本番を迎えるまではどうしても不安なんです。“悪天候で電車が止まったらどうしよう”とか“出演者の体調は大丈夫かな”みたいな不安要素って、限りなくいっぱいあるんです。しかもライブっていろんな役割の人が集まって、それぞれの関係性が連携して成立するものだから、誰が欠けてもダメみたいなところもある。
そんななかで本番を迎えて無事公演が終わり、みんなが満足できている、幸せになれてるってときは、やって良かったなっていう思いがぐっと湧いてきますね。ファンの皆さんや出演者の皆さんはもちろん、関係者、テクニカルスタッフ、制作、みんながちゃんと笑顔で終われると、良いイベントができたなって思います。
柴田:やってて良かったというか、仕事がちゃんと無事に終わってギャラをもらえたときはうれしいですよね(笑)。昔は、音楽に携わるのは楽しいけど、仕事としては成立しにくいというのがあったけど、今ではそんなこともなくなって。これが自分たちの仕事であるということを実感したり、手応えを感じる瞬間が、自分の場合は入金確認時ってことなのかなぁ(笑)。
後編では、この仕事をするうえで大事なことや、職に就くためのアドバイスなどを聞く。
文・取材:諏訪圭伊子
撮影:荻原大志
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