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アニメづくりへの情熱

アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』のプロデューサーに聞く――好きの想いを注ぎこんだ作品への情熱【後編】

2024.07.05

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大人気アクションRPG『NieR:Automata』(読み:ニーア オートマタ)を原作としたアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』。作品にかける想いと見どころを、アニプレックス(以下、ANX)のプロデューサー・松本美穂に聞いた。後編では、ゲームを原作とする作品のアニメ化の難しさや、7月5日(金)より放送が開始される第2クールの魅力について語る。

  • 松本美穂プロフィール画像

    松本美穂

    Matsumoto Miho

    アニプレックス

記事の前編はこちら:アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』プロデューサーに聞く――好きの想いを注ぎこんだ作品への情熱【前編】

第2クールこそが『NieR:Automata』の面白さの核

――アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』の第1クールの放送から約1年が過ぎ、待望の第2クールのオンエアが始まります。第2クールは、第1クールからのつづきが描かれると考えて良いでしょうか。

そうですね。基本的には第1クールの“つづき”のお話になっていますが、原作のディレクター・ヨコオ(タロウ)さんは「第1クールを見ていない人でも楽しめる作品になっている」とおっしゃってくださっています。

ストーリーの展開としても、第1クールで一度締めくくられていますし、ここから仕切り直しで新たに物語が始まるので、第2クールから見始めてもらっても大丈夫ですし、ぜひ見ていただきたいです。

アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』Promotion File 011

――松本さんは『NieR:Automata』のストーリーに惚れ込んでアニメ化に挑んだとのことですが、第2クールのストーリーはいかがでしょうか。

第2クールの展開が、『NieR:Automata』の面白いところなんですよね。原作ゲームをプレイしたときは、世界観がひっくり返っていく展開がすごいなと感じて。こういうことだったのか! と夢中でプレイしていました。

第1クールから描いてきたものが、第2クールで“ここに行きつくのか”という感動を見ている皆さんに味わってもらいたいなと思いますし、第2クールを見てから、第1クールを見直すと“そういうことだったのか”とわかる部分も出てくるので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

2B(ヨルハ二号B型)、9S(ヨルハ九号S型)アニメ場面写真

――第1クール放送中では、コロナ禍による放送延期もありました。当時はどんな状況だったのでしょうか?

あのときは、もうどうしようもなかったというのが正直なところで。もしスタッフの誰かが新型コロナウイルスに感染してしまったら、2週間出社停止でスタジオもクラスター感染対策で活動を止めざるを得なくなる。何より人の命に関わることでした。

だからこそ、無理にでも制作を進めるということはできなかったんです。そのうえで制作が遅れる分をカバーしようにも、物理的にカバーのしようがなかった。過去に例のない事態ですべてが手探りになっていました。

――現場はリモートで制作を進められていたんですよね。

そうですね。現場はできる範囲でずっと動いていました。ただ、アニメはスタッフ間の連携も大切ななか、今までとは違ったコミュニケーションの取り方になる。各自がバラバラの場所で作業を進めることも増え、現場を取りまとめている益山監督やアニメーションプロデューサーの藤井さんは、想像を絶する苦労があっただろうなと感じています。

私が現場に入っても作業を手伝うこともできないですし、どうしようもない。それで、放送を一度休止にさせてもらって、最後の4話は全部を作り終えてから一気に放送することになりました。作品を楽しんでいただいていた皆さんには本当に申し訳なく、自分に対するふがいなさ、悔しさは大きかったですね。

――第1クール放送後の手応えはいかがでしたか。

最初の目標としていた“ゲームをやっていない人にも『NieR:Automata』を知ってもらう”、“こんなに面白い作品があると知ってもらう”というのは、徐々に果たせてきているのでは……と。番組ポッドキャストにもお便りをいただいて、「アニメをきっかけに作品を知りました」「作品のファンになりました」という感想がすごく励みになりました。

アニメから入って、原作ゲームをプレイしたり、ノベライズを読んでいただくことにつながったり、ともかく『NieR:Automata』の魅力をひとりでも多くの人に知ってもらいたい。そしてその原作をもとにしたアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』もまた違った見方をしてもらい、アニメという映像表現の楽しさ、素晴らしさを知ってもらえたら。それが私にとって引きつづきの目標ですね。

笑顔で作品について語る松本美穂

ゲームを原作とするアニメ化の難しさ

――今回のアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』は、ゲームを原作としたアニメ企画です。松本さんはこれまでゲームのアニメ化を手がけたことはあるのでしょうか。

スクウェア・エニックスから『FINAL FANTASY XV』がリリースされたときに、作品の前日譚となるフル3DCG映画『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』と本編の主人公たちを異なった視点で描くショートアニメ『BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV』を制作するというプロジェクトが並行してあったんです。そのCG映画とショートアニメーションでは、ANX側のアシスタントプロデューサーとして関わらせていただきました。

――ゲームのアニメ化には、どんな難しさがあるのでしょうか。

ゲームは自分がプレイヤーになって、キャラクターたちと何十時間、何百時間も独自の世界を体験するメディアです。その時間を12話や24話というTVアニメの話数に収めることは、すごく難しいと思います。しかも、プレイヤーごとに違う体験、違う思い出を抱いている。それをアニメ側で取捨選択して、ひとつにまとめるというのがさらに難しい。

ゲームのプレイヤーがアニメの視聴者になったときに、これはちょっとゲームで触れた世界、受け取った体験と違うなとマイナスな意味で感じたら、その視聴者はすぐに離れていってしまいます。そういったことも含めて、ゲームを原作とする作品のアニメ化も、生半可な気持ちで挑めないジャンルだと思っています。

――アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』はアクションシーンの多い作品でもあります。アクションRPGである原作『NieR:Automata』からアニメにするときに、そういったシーンはどのように作っていったのでしょうか。

1話のなかでずっと戦っていて、ストーリーが全然進まないという構成にはしたくないとヨコオさんや益山監督とお話をしていました。ゲームのアクションを、アニメのストーリーに組み込んでしっかりと意味のあるアクションシーンにしたいというのは、みんなの意見が一致しているところでした。

今回、すごくありがたいことに原作ゲーム『NieR:Automata』で使われている3Dモデルデータをお借りできて、その3Dモデルデータを参考にして、キャラクターを描くことができたのは大きかったと思います。

おかげで原作のアクションを再現性の高い映像でお見せすることができました。アニメならではのカメラワークも取り入れ、ゲームのプレイヤーが見ても楽しんでいただけるアクションシーンになったのではないかなと思います。

――ほかにも、原作ゲームがアニメ化に影響を与えた部分はありましたか?

ゲームのイベントシーンは既にムービーとして出来上がっているので、同じシーンをアニメで作るときに、演出スタッフも作画スタッフも完成形の共通認識を持ちやすかったというのがあると思います。例えば小説原作の文章から発想するものだとか、漫画原作で白黒の絵から発想するものとは違うアプローチになるところだと思いますね。

また、今回はゲームの音楽スタッフがそのままアニメ版の音楽も担当してくださっているんです。アニメ化においてもゲームと同じ劇伴が使用できることになり、大変ありがたかったです。

おかげで、劇伴がアニメの制作よりも先にある状態で進めることができて。通常のアニメ制作では映像に劇伴がつくのは制作の後半の工程なのですが、この作品ではシナリオ・絵コンテの段階からシーンごとに流れる音楽を決めることができました。そこも原作ゲームらしさを追求できるポイントだったと思います。

身振り手振りで話す松本美穂

自分のライフワークのような作品になったアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』

――ゲームの発売が2017年ですから、今回の第2クール放送まで7年。長く携わる作品になりましたね。

そうですね。作品の虜になってから、意地でもアニメ化を果たしたいと思っていましたし、自分にはそれが仕事をするうえでのモチベーションにもなっていました。ライフワークみたいなものになっていたのかもしれません。

それこそ制作中止という選択肢が浮かぶタイミングはいくつかあったとは思います。だけど、ここで諦めたら一生後悔するんじゃないかという思いがずっとあって、最後までやり切る覚悟を持って取り組んできました。

――アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』第2クールがいよいよ放送開始となりますが、どんなところに注目してほしいですか?

第1クールもいろいろなものを詰め込んだんですけど、第2クールもたくさんのものを詰め込みました。おそらく、原作ゲームの面白さに加えて、アニメとして新たな体験が味わえるものになっているので、純粋に楽しんでいただきたいなと思っています。

スタッフ一丸となって制作に取り組んでいますし、もちろん人形劇も引きつづきありますので。人形劇はところどころでバージョンアップしていまして(笑)、そこまでやるんだと思えるようなものも仕込んでいますので、ぜひご覧いただけるとうれしいです。

微笑む松本美穂

記事の前編はこちら:アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』プロデューサーに聞く――好きの想いを注ぎこんだ作品への情熱【前編】

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

©SQUARE ENIX/人類会議

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