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キャラクタービジネスの心得

『パンパンくんの日常』は、今後、日本でどんな展開に? 担当者たちに聞いてみた

2024.07.24

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韓国で生まれた『パンパンくんの日常』は、2022年7月にYouTube上でアニメーションが公開されると、またたく間に韓国のZ世代を中心に人気が沸騰。現在では、約230万のチャンネル登録者数を数え、一躍人気IPの仲間入りを果たした。そんなネットネイティブなIPをSCPの担当者たちは、どのように日本で広めていくのか? 4人の担当スタッフに話を聞いた。後編では、今後の日本での展開について具体策を語る。

  • 伊藤弘康プロフィール画像

    伊藤弘康

    Ito Hiroyasu

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 大仁田弘志プロフィール画像

    大仁田弘志

    Onita Hiroshi

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 友納貴瑛プロフィール画像

    友納貴瑛

    Tomono Kiyon

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 三原匠洋プロフィール画像

    三原匠洋

    Mihara Takumi

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

この記事の前編はこちら:韓国で大人気! 『パンパンくんの日常』日本上陸の裏側を探る

まずは原宿から! 『パンパンくんの日常』の具体的な展開とは?

――皆さんが『パンパンくんの日常』と出合ってから、韓国での人気を実感したことはありましたか。

三原:実は少し前に、プライベートで韓国に遊びに行ったんです。そのときに、現地のコンビニに行ったら、ちょうどレジをしてもらっている20代くらいの人が『パンパンくんの日常』のグッズを買っていて、本当に人気があるんだと実感しました。

日本でも韓国と同じように盛り上げていくことができたら良いなと思いましたね。例えば、高校生がカバンにぬいぐるみや推しのグッズなどをつけているのをよく見かけますが、あれが『パンパンくんの日常』になったら面白いだろうなとか。生活に溶け込むようなイメージで展開できたらと思っています。

白いTシャツを着て話す、眼鏡をかけた三原匠洋

友納:『パンパンくんの日常』は、イ・ジュヨンさんご自身がネット上のミームであったり、Z世代が反応していたりするものをSNSでキャッチして、上手にコンテンツに落とし込んでいると思います。そして、それが韓国で急速に人気が高まった要因のひとつだと思います。国内では、私たちがアンテナをしっかり立てて、日本のZ世代が求めるタッチポイントを作り、ファンを増やしていけるように頑張りたいです。

――そんな『パンパンくんの日常』の日本での展開が、これから本格的に始まります。具体的には、どんな施策を予定していますか。

伊藤:まず、国内初のPOP UP STOREが7月25日よりラフォーレ原宿にて期間限定でオープンします。同時に「ラフォーレ市場」というセールのキャンペーンビジュアルに起用された関係で、ラフォーレ原宿の外壁や館内内装も『パンパンくんの日常』一色になる予定です。

また、キデイランドの原宿店と梅田店でもウィンドウジャックを行ない、グッズを販売して展開エリアを広げます。さらに、公式LINEスタンプを発売したり、Z世代に人気のアパレルショップ「WEGO」とのコラボレーションによる商品展開も実施します。夏以降は、全国に複数の店舗を展開するグッズショップへの展開を進めつつ、秋口や年末年始にもまた新しいことを発表していきたいと考えています。

また、具体的な場所や時期は内緒ですが、『パンパンくんの日常』の展覧会を12月中旬スタートで開催できればと考えています。いわゆるポップアップショップとは違って、『パンパンくんの日常』のクリエイティブや原作者に焦点を当てた展示と、展覧会に紐づいたオリジナルグッズも販売できればと考えています。

――かなり多彩な展開を予定しているのですね。

伊藤:エバーグリーンなIPは、前からのファンの方々を大事にしつつ、施策や商品展開もファンを裏切らない形で、割と定番化されていきます。しかし、『パンパンくんの日常』のような新規IPは、作品を知ってもらいつつ、ファンを新規で獲得し、しかも商品をどのように手にしてもらうかの流れを考えなくてはいけません。

そして、そここそが我々の腕の見せ所であり、挑戦のしがいがあるところでもあるので、3年単位で戦略的に計画を組みながら、定番キャラの座を目指していきたいと考えています。

膝に手をつきながら話す伊藤弘康

原作者イ・ジョヨンさんの不思議な魅力

――『パンパンくんの日常』は、日本でこれから知名度を上げていくという状況ですが、この点については、どのようなアプローチを考えていますか。

伊藤:ソニーミュージックグループには“ゼロからイチを生み、イチを∞(無限大)にする”という考えがあって、、私たちSCPはIPでそれを目指していく会社です。そして、それを実現するためには、どんどんアイデアを出して挑戦していくことが必須となりますが、そこには原作者、クリエイターの方たちのご協力が欠かせません。

その点、『パンパンくんの日常』の原作者であるイ・ジュヨンさんとはコミュニケーションを取りながら進めることができていますし、28歳と若いこともあり、アイデアも豊富で、新しいキャラクターを生み出すことが得意な方でもあります。知名度を上げていくという施策についても、イ・ジュヨンさんとしっかりコミュニケーションを図りながら、国内向けに日本独自展開の新しいコンテンツを作っていきたいと考えています。

――原作者と並走できる強みですね。それでは、イ・ジュヨンさんの人柄についても教えてください。

友納:イ・ジュヨンさんとお話をしていると、『パンパンくんの日常』をたくさんの方に知ってもらいたい、日本でも『パンパンくんの日常』を愛してもらいたいという思いがすごく伝わってきます。

そういう思いがあるからこそ、商品の監修などでやり取りをしているなかでも、自分のイメージしていることをしっかりと共有してくださるので、クリエイティブの面でもご一緒できるのがすごく楽しいです。

笑顔で話す友納貴瑛

大仁田:私もこれまでにイ・ジョユンさんと何度も打ち合わせをしていますが、自分のなかの熱い思いを表に出すタイプではなく、自分の思いを作品に込めるタイプだと感じています。

友納:一言でいうとシャイな方ですよね。

大仁田:そうなんです。シャイで真面目な方だと思います。

三原:みんなで食事をしているときに、瞬間的にふたりきりになったことがあって。仕事に関しては別ですが、日常的にはたくさん喋るタイプではないイ・ジュヨンさんが、そのときに携帯の翻訳アプリを介して「最近仕事は忙しいですか」と声をかけてくださって、気遣いもできるすごく優しい方だなと思いました。

『パンパン君の日常』はビジュアルも内容も、すごく尖っているコンテンツなんですけど、作っている本人はそれを感じさせないというのが、面白いですよね。

『パンパンくんの日常』の可能性と未来

――これから『パンパンくんの日常』の世界観に触れる人に向けて、『パンパンくんの日常』の楽しみ方を教えてください。

三原:既に友人にいろいろ薦めているんですけど、やっぱりインスタグラムのショート動画を見てもらうのが、『パンパンくんの日常』の魅力を知るのに最適だと思います。そのあとYouTubeで本編の動画を見ると、ブラックコメディな感じや、ちょっと斜に構えた感じも見えてくるので、どんどん気になってくると思うんですよね。

タクシーの運転手さん

友納:私はまずビジュアルから入るのが良いと思います。ビジュアルを見ていると、不思議とだんだんかわいく見えてくるので、そこからまず入ってもらえればと。ちなみに、私はケータイのケースに『パンパンくんの日常』のシールを入れて、通勤中などにいろんな人の目に留まるようにしているのですが、これを見た友人たちはほとんど全員興味を持ってくれます(笑)。

『パンパンくんの日常』のビジュアルをまずは多くの人に知ってもらいつつ、もうひとつの入り口である動画を見てほしいですね。ショート動画を見れば、YouTubeにある本編の動画も気になり、グッズも欲しくなってしまうと思います。

大仁田:『パンパンくんの日常』を担当すると決まったあと、勉強の意味も兼ねて家でYouTubeの動画を見ていたんですが、9歳の息子が「何だこれ?」ってすごく興味を示すんです。

お笑いとかでもそうですが、子どもたちって、ちょっと過激だったり、くだらなくてもそれが好きだったりするじゃないですか。親が見せたくない作品ほど、子どもたちの間でブームになったり、子どもたちが応援したりして。息子のリアクションを見て、『パンパンくんの日常』がそういうポジションでも受け入れられる可能性があるのかなと思いましたし、これから幅広い層の方々に、ファンになってもらいたいなと思っています。

笑顔で語る大仁田弘志

伊藤:『パンパンくんの日常』のキャラクターって韓国語のスラングであったり、韓国の若い人たちの生の言葉を使っているコンテンツなんです。生きた言葉を使っているから、ライブ感あふれるコンテンツになっていると思います。ちょっとギリギリのものも多いですが(笑)。

私自身は韓国語のスラングに詳しくないので、どれくらい過激なのかはうまく表現できないですが、そういった過激さはともかく『パンパンくんの日常』から韓国文化に触れるっていうのも面白いんじゃないかと思うんですよね。

例えば、キャラクターをピックアップして、韓国語を教える動画を作ったり、韓国文化を紹介するコンテンツを作ったりするのも面白いかもしれません。さまざまな展開が想定されるので、『パンパンくんの日常』が気になった方には、期待して待っていてほしいですね。

――まだまだ『パンパンくんの日常』の可能性は広がりそうですね。

伊藤:まずは7月25日にラフォーレ原宿でオープンするPOP UP STOREからですね。日本で最初に『パンパンくんの日常』のグッズが買える場所なので、ぜひ楽しんでください!

この記事の前編はこちら:韓国で大人気! 『パンパンくんの日常』日本上陸の裏側を探る

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

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