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技術者たち ~エンタメ業界が求めるエンジニアの力~

セキュリティエンジニア:Webサイトの品質管理とセキュリティ対策を支える“守り”のかなめ

2026.02.25

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さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。

第26回は、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)でWebサイトの品質管理やサイバーセキュリティ対策を行なう、デジタルレジリエンスオフィスの寺田真梨子に話を聞いた。

  • 寺田真梨子

    Terada Mariko

    ソニー・ミュージックソリューションズ

デジタルレジリエンスオフィスの業務内容とは?

──寺田さんが在籍するSMSのデジタルレジリエンスオフィスは、どんな業務を行なう部署でしょうか。

“レジリエンス”は、困難やストレス、危機的状況に直面したときに、適応し、立ち直る精神的回復力や心の弾力性を指す言葉です。それをデジタルシステムに当てはめたのが“デジタルレジリエンス”で、サイバー攻撃やシステム障害といった脅威から組織を守り、変化や障害に強く信頼されるデジタル基盤を支えることを目的としています。具体的には、SMSがクライアントから受託しているWebサイトや、その運営プラットフォームのインフラ環境の管理運用、品質管理、セキュリティ対策を担っています。

黒と白のボーダーのセーターを着た寺田真梨子

ソニーミュージックグループのヘッドクオーターであるソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)にも、デジタルトラストの中核を担っている部門はあるのですが、そこではグループ全社のセキュリティ運用やリスクアセスメントを見ていて、その数は膨大です。

エンタテインメントビジネスのソリューションを提供するSMSには、さまざまなクライアントからWebサイト、Webサービスの制作、運営の依頼をたくさんいただいていて、デジタルサービスが進化し続けている近年では、その需要がますます増加しています。

この状況が、今後も続くと予想されるなかで、サイトの品質管理、特にインターネットのセキュリティ対策については、より迅速な対応が求められるようになってきました。そこで、SMS内に独自のデジタルトラストチームを設けることになり、この部署が新設されることになったんです。

──エンタメ業界においてもデジタルソリューションが不可欠になった今、それを提供するSMSとしては、守りのかなめとなる部署が必要になったということですね。

はい。例えば、クライアントからWebサイトの立ち上げを依頼された場合、2、3年前であれば、許されていた仕様ややり方が、現在では通用しないケースが少なくありません。特に近年はWebアクセシビリティへの対応が不可欠となっており、十分な対策を講じなければ、サイトや企業そのものの評価に直結します。私たちは、サイトオーナーや制作チームに対し、“公開後に指摘を受けて対応する”のではなく、“企画、設計段階から対策を組み込む”ことの重要性を発信し、実装のサポートを行なっています。

加えて、頻発するサイバー攻撃に対してできうる対策はすべて行なっておかなければならないというのは、もはや当たり前の世の中です。短期間での立ち上げやデザイン性、利便性といった価値と同等の水準で、堅牢なセキュリティが担保されていなければなりません。スピードや表現力だけでなく、“安全で止まらないこと”までを品質基準に引き上げる。その旗振り役を担うのが、私たちデジタルレジリエンスオフィスです。

──そのなかで寺田さんはどのような役割を担っているのでしょうか。

デジタルレジリエンスオフィスには3つのチームがあり、そのうちの品質管理とセキュリティ、ふたつのチームの現場リーダーを務めていて、主な役割は、個別案件ごとの対応にとどまらず、安定した品質を再現性高く実現するための“仕組み”を整備することです。

お伝えしてきた通り、企画、設計の前段階から必要な対策を講じるのはもちろん、万が一インシデントが発生した場合には、チームで徹底した振り返りを行ない、再発防止策までを組み込んだプロセスを本部全体に展開しています。

強いまなざしを向ける寺田真梨子

これまでは、SMEのデジタルトラストチームから各サイトの担当者へ個別に連絡が行なわれており、対応状況の全体像を把握しづらい状態にありました。そこで、セキィリティ対策の対応ルールを整備し、所属本部として情報を一元管理する体制へと見直しました。

さらに、わからないことは各自で抱えこまずに気軽に相談できるよう、窓口も設置するなど、仕組みづくりを通じて、本部全体の業務効率化を少しずつ進めているところです。

クライアントワークで学んだユーザーファーストの視点

──寺田さんがソニーミュージックグループを志望した理由を教えてください。

大学では情報処理を専攻していて、“知能情報”というAIの先駆けのような分野を学んでいました。就職活動ではメーカーやIT企業を中心に受けていたのですが、振り返ると自分の人生のそばにはいつも音楽があって。そうした原点に立ち返り、自身の専門性を音楽というフィールドでいかしたいと考えてエントリーしたのが、ソニーミュージックグループでした。

──デジタルレジリエンスオフィスが発足する前は、どんな仕事をしていましたか?

2010年に入社し、最初は会計などの社内業務に関わるアプリケーション開発に携わっていました。そして、コロナ禍の2020年にSMSへ異動。ちょうどライブ配信が盛り上がっていた時期で、SMSが運営する動画配信サービス「Stagecrowd」に携わることになりました。その後、eコマースのシステム運営を経て、昨年からデジタルレジリエンスオフィスの発足に携わっています。

──エンジニアとひと言で言っても、幅広い業務を担当してきたんですね。部署ごとに異なるスキルが求められたのではないでしょうか。

そうですね。最初に配属された部署では、主にグループ内のスタッフとともに業務システムの開発運用を行なってきました。ほかにも、経営企画でスタートアップとの新規ビジネス開発に関わったり、SMEのニューヨークオフィスとの配信データ連携の渉外窓口を担当したりと、さまざまな経験を積むことができました。

SMSに異動してからは、クライアントや社外の人たちと一緒に仕事を進める機会が増え、その違いをより強く感じましたね。

──どんなところに違いを感じましたか。

社内向けシステムを担当していたころは、自ら無理のないスケジュールを設計しながら業務を進めていたため、自身の裁量で調整ができて働きやすかったですね。

ですが、SMSの場合は、クライアントの希望に合わせてプロジェクトが進むので、同じような生活リズムを保つのは難しくて。ただ、その分、刺激は大きかったです。そのときどきの旬なコンテンツやサービスに関われる環境がありますし、自分が携わった仕事が世の中にどんな影響を与えているのか、よりダイレクトに実感できるようになりました。

笑顔をみせる寺田真梨子

さらに、事業会社であるSMSに異動したことで、ユーザー目線をいかして、“こんな機能があればもっと便利になるのに”といった気づきをサービスに反映できる立場になりました。これまでの業務システム開発では、“いかにコストを抑え、業務を効率化するか”という観点で設計してきましたが、SMSではユーザー体験そのものを起点に考える視点へと大きくシフトしています。

システム移管の大型プロジェクトで培った知見

──これまでのキャリアにおいて、もっとも達成感を感じたプロジェクトを教えてください。

あるECサイトのシステム移管は、苦労が多かった分、達成感もとても大きかったですね。そのサイトは、もともとSMSが運営している自社システムで運用していたのですが、人気や売り上げが拡大するにつれて、既存基盤では対応が難しくなり、大手プラットフォーマーが提供するeコマース基盤へ移管することになったんです。

これまではSMSが保有するシステムだったので、比較的自由に開発ができましたが、外部プラットフォームへ移行すると、仕様や制約に応じた設計が求められます。そのなかで、クライアントの要望をどのように実現するか、既存機能で代替できないかといった最適解を模索しながら、丁寧に合意形成を重ねて移行を推進しました。

──寺田さんはどのような作業を担当していたのでしょうか。

このプロジェクトでは、ベンダー企業と連携しつつ、私たちの役割は自社システムを最も深く理解する立場として、データ構造を分析し、新しいシステム設計を支援することでした。また、事業部門の運用フローを把握し、新システムでどのように運用していくかを整理する作業も担当しました。

さらに、搭載する機能が非常に多かったため、テスト工程も重要でしたね。私の主な役割はプロジェクト全体を見て、円滑に進行させること。開発チームやデータ移管チーム、運用設計チームなど複数のチームを横断してリーダーを務めていたので、仕様書の確認、データ移管スケジュールの設計や業務運用設計書の作成にも深く携わりました。

──振り返ってみて、良い経験だったと思うことはありますか。

当時は本当に大変でしたが、あれだけの規模のプロジェクトはめったに経験できるものではありません。その一員として携わることができたのは大きな財産であり、技術面だけでなく、プロジェクト管理や関係者調整といった幅広いスキルも身につけることができました。また、チームで一丸となって課題を乗り越えた経験は、今の業務でも自信を持って取り組む糧になっています。

誰かの“好き”をテクノロジーで支える

──今、どの業界でもITエンジニアは引っ張りだこです。そんななか、エンタメ業界のエンジニアとして働くことに、どのようなやりがいを感じていますか?

誰かの“好き”や“ワクワク”に直結していることですね。楽曲や映像、ライブ、ファン体験といったアウトプットの裏側には、必ずテクノロジーがあります。エンタメ業界のITエンジニアの仕事は、作品やアーティスト、IPの価値を広げる重要な役割を担っていると感じています。

私が入社したころと比べて、ライブ配信や電子チケット、ファンクラブなど、デジタルを使わなければ成立しない領域が圧倒的に増えました。テクノロジーがなければ、エンタメも広がらない。そこに携わっている実感が、仕事のやりがいにつながっています。また、ソニーミュージックグループの環境では、エンタテインメント×テクノロジーの新しい取り組みに挑戦できるチャンスも多く、グローバル規模のサービスやデータを扱えるのも魅力のひとつです。

微笑みながら語る寺田真梨子

──ユーザーの体験価値を高めるために、ITエンジニアとしてどんな視点が大切だと思いますか。

細かな点ではありますが、例えばグッズ購入時の数量選択がプルダウン形式かラジオボタン形式かといったUIの違いだけでも、ユーザー体験は大きく変わります。こうした操作性の差異に気づき、その良し悪しを判断できる感覚は非常に重要です。

私自身、これまで多くのサイトを閲覧、運営してきた経験のなかで、その視点が磨かれてきました。日常的にWebサービスを利用する際にも、“なぜ使いやすいのか?”“どこにストレスを感じるのか?”を意識してみることが、エンジニアとしての視野を広げる一助になると思います。

出産を控え、ワークライフバランスを意識

──寺田さんは、まもなく産休に入るということですが、現在のワークライフバランス、同じ部署の皆さんの産育休取得状況を教えてください。

所属本部には、1月から産休に入ったメンバーがいます。その方がデジタルレジリエンスオフィスに移ってからは、基本的に自分たちで組んだスケジュールに沿って働くことができています。上長も理解があり、ワークライフバランスの取れた働き方をしやすいのではないかと感じています。

──会社からのサポートについて、評価できる点や要望はありますか?

正直なところ、SMSではITエンジニアとして活躍している女性がまだ多いとは言えず、身近に具体的なロールモデルが少ないのが現状です。私自身、復帰後もこれまで通りキャリアを継続していきたいと考えていますが、出産後の働き方については未知の部分もあります。仕事と家庭をどのように両立していくのかは、これから自分自身で形にしていくのがテーマだと感じています。

だからこそ、ソニーミュージックグループのなかで、子育てと仕事を両立しながらITエンジニアとしてキャリアを築く仲間が増えていくことを期待していますし、自分もその一例になれたらと思っています。

──産休明けはフルタイムでの勤務を目指しているのでしょうか。

可能であれば、フルタイムでの勤務を目指したいと考えています。セキュリティ領域の業務は、自身の専門性を高め続けられる分野であり、大きなやりがいを感じています。会社にとっても重要度の高いポジションだと認識しているからこそ、長期的な視点で責任を持って担い続けていきたいと考えています。

やりがいは大きいと楽しそうに語る寺田真梨子

大切なのは、変化を前向きにとらえるマインド

──サイバーセキュリティ対策は、寺田さんにとっても新しい業務です。資格取得など、ITエンジニアとして、どのようにスキルアップしていきたいですか?

この部署に来て、“仕事で活躍するためにも、会社に還元するためにも、この資格は取っておいた方がいいな”と自然に思えるようになりました。現在も資格取得に向けて、勉強しているところです。

必須というわけではありませんが、資格取得のプロセスを通じて体系的な知識が身につき、結果として業務の解像度も上がります。仕事を進めるうえでの共通言語ができますし、サイバーセキュリティなどに関するニュース、エビデンスとなる資料に触れるときにも、理解度が深まります。そうした意味でも、挑戦する価値は大きいと感じています。

──これから入社する人にとって、“この資格があれば有利”というアドバイスはありますか。

正直なところ、入社時には資格も経験も必要ないと思っています。私自身、大学で学んだことがそのまま仕事にいかせるわけではないと感じていますし、事前に知識があるかどうかよりも、自ら学ぼうというマインドや“いいものを作ろう”と常に考え続ける姿勢のほうが大事だと思います。

──どんな人と一緒に働きたい、あるいはどんな人が向いていると思いますか?

SMSのITエンジニアは、ビジネスの観点で会話をする機会がとても多いポジションです。テクノロジーへの関心に加え、“なぜこのサービスを作るのか”“どうすればユーザーにより良い体験を提供できるのか”を自分なりに考え、相手の立場に立って傾聴し、わかりやすく伝えられる人が向いていると思います。

ITエンジニアは、技術に関する勉強や情報収集が常に必要な仕事。エンタメ業界も、新しい流行が次々に生まれる変化の激しい世界です。こうした変化を前向きに楽しみ、自身の成長機会として捉えられる人が適しているのではないでしょうか。

──今後、寺田さんがソニーミュージックグループで実現したいことはありますか?

現在取り組んでいる品質管理とセキュリティのチームを、より強固で持続的な組織へと育てていきたいです。まだ部署として立ち上がったばかりでメンバーも少ないですが、会社にとっては重要な役割を担う部署だと思っています。ソニーミュージックグループが世に出すサービスやプロダクトを、安心して送り出せるよう、責任をもって支える組織にしていきたいです。

ソニーミュージックグループには、音楽制作やアニメのプロデュースなど、幅広い仕事がありますが、私は今後もデジタルテクノロジーの領域で価値を発揮し続けたいと考えています。現在はセキュリティ分野に大きなやりがいを感じていますが、将来的には新たな分野に挑戦する可能性もあるでしょう。常に学び続けながら、自身の専門性と可能性を広げていきたいと思います。

文・取材:野本由起
撮影:西谷玖美

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