もう「知らない」じゃすまされない! 日本eスポーツ連合 浜村弘一氏に聞くeスポーツ最前線

2018.8.1

Interview

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対戦ゲームをスポーツのように競技化し、その腕を競うエレクトロニック・スポーツ、略して「eスポーツ」が今、大きな注目を集めている。しかし、人気が過熱する海外に比べ、日本ではまだまだ認知度が低いのも事実。「海外には高額賞金を稼ぐプロがいるらしい」「オリンピック競技になるって本当?」──そんなふわっとした噂しか知らない人も少なくないだろう。

そこで、日本eスポーツ連合(Japan esports Union、以下JeSU)副会長である浜村弘一さんにインタビューを実施。そこから飛び出したのは、驚きの海外事情、選手のストイックなトレーニングなど意外な情報ばかり! 日本国内におけるeスポーツの可能性やアジア競技大会での注目選手の紹介、気になる内情などをたっぷりうかがった。

浜村 弘一さんプロフィール

浜村 弘一さんプロフィール株式会社Gzブレイン 取締役会長

一般社団法人日本eスポーツ連合(Japan esports Union) 副会長

ゲーム情報誌『週刊ファミ通』元編集長。現在もGzブレイン会長・ファミ通グループ代表として、様々な角度からゲーム業界の動向を分析。JeSU 副会長として、eスポーツ振興にも力を入れている。

 

賞金総額27億円!? 過熱する海外のeスポーツ

──アメリカ、中国、韓国を中心に、海外ではeスポーツが盛り上がりを見せているそうですね。まずは海外での現状について、お聞かせください。

浜村:海外では、過熱気味なぐらいeスポーツが盛り上がっています。わかりやすい例は賞金額です。たとえばPCゲーム『Dota 2』の場合、昨年の公式世界大会では賞金総額が27億円に達しました。また、中国でも賞金総額34億円というeスポーツ大会が開かれています。

──それほど高額な賞金が、どこから出ているのでしょう。

浜村:いろいろなケースがあります。『Dota 2』の場合は、ソフトの売上の一部が賞金としてプールされます。他には、航空会社や飲料メーカーなどが協賛し、そこから賞金が出ることもあります。

──それだけ観客や視聴者が多いということですね。

浜村:そのとおりです。入場料はあまり収益に結び付いていないのですが、それでもEVO(アメリカ最大級の格闘ゲーム大会)では2万8,000人を収容する会場が満員になるほど。中国や韓国にはeスポーツ専用シアターもあります。ネット配信で大会を見る人も多く、eスポーツ専門チャンネルもあるほど。『Dota』の公式世界大会は、4,000万人が視聴したというデータもあります。日本の現状からはなかなか想像がつきにくいのですが、海外では非常に盛り上がっています。

──海外において、eスポーツがここまで人気を得た背景を教えてください。

浜村:いち早く盛り上がりを見せたのは、eスポーツ先進国である韓国です。韓国は国土が狭く、当時、経済面で伸び悩んでいたため、政府がIT振興政策を打ち出しました。そして1990年代後半からインターネットのインフラを整備したんです。韓国は儒教の国ですから、教育熱心です。みんながパソコンを持つようになり、結果的に最高のオンラインゲーム環境が生まれました。かつては著作権に対する意識が低く、ゲームソフトも違法コピーされていましたが、オンラインゲームならサーバで課金できます。余談ですが、今ではスマホゲームで当たり前になっているアイテム課金も、韓国で生まれた文化なんです。

こうして1990年代後半にはオンラインゲームの先進国となり、eスポーツ専用のCS放送局もできました。eスポーツ協会KOREA e-SPORTS ASSOCIATION(KeSPA)も、早々に設立されています。海外観光客をたくさん集められるので、インバウンドという名目で国から補助金も出ているそうです。

中国も同じような状況です。アメリカでは、ショービジネスの一環としてeスポーツが楽しまれるようになりました。Twitch(ゲームに特化したライブストリーミング配信サービス)で火がつき、盛り上がっていきましたね。

浜村 弘一さん

人気はアイドル級、トレーニングはアスリート並み

──日本ではeスポーツは一部のファンが楽しむものというイメージですが、海外では幅広いファンがついているんですね。どのようなファン層に支えられているのでしょうか。

浜村:男性ファンが多いと思うかもしれませんが、韓国の場合、専用シアターに来る観客の7割は女性なんです。選手席には囲いがあり、作戦を立てる時の声が周囲に聞こえないようになっています。そこにカメラが設置され、対戦中の選手の顔が抜かれます。アイドルのようなルックスの人気選手もいるので、女の子はみんなキャーキャー言ってます。

──モテそうですね。

浜村:年収3億円を超える選手もいますし、中には映画女優と結婚した人も。彼らにあこがれる若い人たちもたくさんいるんですよ。

──収入源は、大会の賞金なのでしょうか。

浜村:それだけでなく、チームの給料、タレントとしてのメディア出演料、スポンサーからの収入などもあります。

──プロスポーツ選手そのものですね。

浜村:そうなんです。日本ではまだ認知度が低く、ゲーム=オタクが遊ぶもの、体に悪いものと考える人が多いですよね。でも、eスポーツとゲームをダラダラ遊ぶ行為とは全く違います。その点をご理解いただきたいです。

そもそもeスポーツの大会では、約1時間にも及ぶシビアな闘いに真剣に挑みます。メンタルも問われますし、体にも疲労が溜まります。ですから、一流のeスポーツチームでは普段からジムに通って走り込んだり、チームに栄養士がついたりすることもあります。そうでなければ、集中力がもちません。本当にレベルが高いですから。

──具体的にはどういったトレーニングをしているのでしょう。

浜村:どの筋肉を鍛えているのかはわかりませんが、持久力をつけているようです。大会を観戦するとわかるのですが、3本勝負の試合で相手に2本先取されても彼らは全然平気な顔で闘っているんです。普通だったら気持ちが折れてしまいそうですが、劣勢から一気にひっくり返すのも良くあるパターンです。途中まで負けていたとしても、最後まで絶対に諦めない。あのメンタルの強さは、プロのアスリートそのものだと思います。

──選手の年齢層は?

浜村:韓国などで人気があるのは、18歳から20代半ばの選手たちです。日本では、格闘ゲームで第一線級の選手は30代前半から半ばですね。日本は市場が小さいので、すでに有名な選手にしかスポンサーがつかないという事情もあります。今後、より多くのスポンサーがつけば、若手にもチャンスが生まれると思います。

浜村 弘一さん

国際大会出場で日本のスター選手輩出を目指す

国内eスポーツ振興に向け、JeSUがプロライセンスを発行

──では、日本国内のeスポーツについて現状をお聞かせください。

浜村:日本では、まだまだ始まったばかりです。そもそもeスポーツはPCゲームを対象とした大会が多いのですが、日本では家庭用ゲームの人気が根強いですよね。そのため、PCゲームがなかなか広まりませんでした。また、法規制があるため、高額賞金を出せないという問題もあります。

そこで「これは何とかしなければいけない」と、今年2月に我々がJeSUを設立。プロライセンスを発行し、賞金付き大会も増えてきました。現在は選手も100人以上になり、大会も継続的に行なわれています。そうなると露出も増え、そんなeスポーツの盛り上がりを受けてスポンサー企業も増えていきます。まさに今、こうした好循環が生まれつつあるんです。

──ここからさらに市場を拡大するため、どのような施策を考えていますか?

浜村:ゲームメーカーが大会を開催したり、東京ゲームショウで大会を開いたり、吉本興業が参入するなど、国内での大会は確実に増えています。ただ、それだけでは十分ではないと考えています。ゲームが好きな方は大会を観戦するかもしれませんが、そうでない方の興味を喚起するのはまだ難しいのではないでしょうか。

そこで我々が考えているのが、アジア競技大会のようなスポーツの国際大会への出場です。大規模な大会にeスポーツ選手が参加し、スターになって帰ってくれば、これまで関心のなかった人も興味を惹かれるようになると思います。サッカーも「サッカーには詳しくないけれど代表戦は観る」というファンが多いですよね。今後はリアルなスポーツ大会に出場する機会を増やし、より多くの方々に興味を持っていただきたい。そして、eスポーツと一般的なスポーツを同列に見てもらいたいと思っています。

──JeSUでは『ウイニングイレブン 2018』や『ぷよぷよ』、『モンスターストライク』などさまざまなゲームのプロライセンスを発行しています。今後は、対象となるタイトルもどんどん増やしていくのでしょうか。

浜村:増やしたいと考えています。現在は、メーカーから手を上げていただいたタイトルがプロライセンス認定の対象です。競技性があるもの、コミュニティの規模が大きいもの、大会を継続的に開催していくものであれば、ライセンス認定タイトルにしています。

──実は、ソニーミュージックグループでも「EQリーグ」という女性芸能人によるeスポーツ大会を実施しています。この取り組みについて、ご存知ですか?

浜村:ええ、お話は聞いています。eスポーツがどんなものなのかを知っていただくには、こういう切り口もアリだと思います。JeSUのプロライセンス保持者による大会だけが、eスポーツではありません。人がゲームで対戦すれば、それはeスポーツなんです。ぜひ今後も続けていただき、いずれJeSUのプロライセンスに挑戦してくれたらうれしいですね。JeSUのプロライセンスには、「1/100ルール」があります。つまり100人がゲームで闘い、優勝したひとりがプロライセンスを取れるというルールです。「EQリーグ」でもそういった企画にチャレンジしてもらえるとありがたいですね。

浜村 弘一さん

対戦から生まれる熱いドラマに注目

──興味はあっても、まだeスポーツを観戦したことのない人も多いと思います。観客の楽しみ方について教えてください。

浜村:やはりいちばんの楽しみは、対戦から生まれるドラマやストーリーだと思います。私が注目しているのは、8月18日から始まるアジア競技大会に日本代表として出場し、『ウイニングイレブン 2018』で闘う相原翼選手です。彼はまだ17歳の高校生。大会に出始めた頃はまだ子どもっぽさが残る少年でしたが、そんな彼が国内予選でプロを軒並み倒し、ぐんぐん勝ち上がっていく姿は圧巻でした。予選通過時のコメントもしっかりしていて、背筋をピンと伸ばし、「日の丸を背負っていくからには、恥ずかしくない闘いをしたいです」なんて言うんです。人間的にもめざましい成長を遂げていると感じました。

アジア競技大会は、国内予選を経た後、韓国、中国、台湾など世界最高峰の強豪国がひしめいている東アジア地域予選を突破しなくてはなりません。中でも、香港、マカオ、韓国は強敵です。そんな中、日本代表に選ばれたふたりの選手は、一度も負けることなくパーフェクトに勝ち進みました。彼らが本戦でメダルを取って帰ってきたら、eスポーツ業界だけでなく社会全体で大きな話題になると思います。

──将棋の藤井聡太七段のように、社会現象を巻き起こす可能性もありますね。

浜村:そうなんです。相原選手のお母さんも「内気だった子が世界大会に出るなんて」と動揺しています。すでにプロの誘いもありますし、彼を取り巻く状況を含めてドラマだなと思って見ています。今後、日本を代表するスターになってくれるのではないかと期待しています。

──アジア競技大会の模様は、テレビでも放送されるのでしょうか。

浜村:TBSとNHKが放送しますが、eスポーツはデモンストレーション競技なのでどこまで放送されるか未定です。2020年の東京五輪ではeスポーツは正式競技に採用されませんでしたが、ここで注目度が高まればエキシビションができるかもしれません。私としては期待しています。

──日本人選手が得意とするのは、どのようなゲームジャンルでしょうか。

浜村:格闘ゲームですね。特に『ストリートファイター』の世界大会は、ベスト8進出選手のうち半数を日本人が占めています。以前ドミニカの選手が優勝したことがあるのですが、日本人は負けると闘い方を改善するんです。敵を見て、戦略を練って、闘い方を変える。プロ格闘ゲーマーとして有名なときど選手が優勝した時も、一度は負けたものの敗者復活戦を勝ち上がり、闘い方を変えて勝利を手にしました。こういった改善努力をできるのが、日本人選手の強さの一因ですね。

逆に「MOBA」(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)と言われる戦略シミュレーションゲームは、韓国が得意なジャンルです。韓国人選手をいかに自分たちのチームにスカウトできるかで勝敗が決まってくるとも言われています。日本の選手も腕は良いのですが、指導面に課題があり、韓国のコーチを呼んで日本人選手を指導してもらい、闘いに臨むケースもあります。

──今後、日本人選手が参加するeスポーツの国際大会について教えてください。

浜村:まずは、8月のアジア競技大会です。11月には、韓国主体の国際eスポーツ連盟「IeSF」(International e-Sports Federation)の大会も開催されます。日本のゲームでは、『鉄拳7』の対戦が行なわれる予定です。

──日本のゲームですから、絶対に優勝したいですね。

浜村:そうですね。でもサウジアラビアも強いんですよ。彼らは格闘技とサッカーが大好き。日中暑いこともあってゲーム文化が根付いているんです。

──最後に、今後の展望、日本が目指すべきeスポーツの在り方についてご意見をお聞かせください。

浜村:まずは、リアルなスポーツと変わらないということを皆さんにわかっていただきたいです。偏見が多いジャンルなので、それを取り除く環境を作っていきたいと思います。そのためには、スターを生み出すことが重要です。そして、スターを輩出するにはチャンスを増やさねばなりません。国際大会など選手の活躍の場を増やすため、これからますます頑張っていきたいですね。

取材/文:野本由起

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