特集

SuchmosのYONCEとKCEEが語るアナログレコードの魅力<前編>【特集第4回】

2018.11.16

Interview

Music

ダウンロードやストリーミングで手軽に音楽が楽しめるようになった今、そのコンビニエントなデジタル環境に逆行するように、スリーブから取り出し、プレイヤーにセットして、針を置いて再生するという手間をかけて楽しむアナログレコードカルチャーが、欧米での人気を受けて日本の10~20代のリスナーに飛び火してブームになっている。

その盛り上がりの秘密を掘り下げるべく、SuchmosのYONCE(Vo.)とKCEE(Dj.)に集まってもらい、この日のために特別に用意したSuchmosの7インチシングルレコード「808 / FRUITS」を忍ばせたジュークボックスでのアナログレコード試聴会を行なった。

プレイリストが自動で好みの曲を際限なくプレイしてくれる現在のデジタル環境に対して、限られた曲のなかから自ら選ぶ手間を要するジュークボックス。そこから浮かび上がるアナログレコードの魅力とは。<前編><後編>と2回に渡って特集をお届けしていく。

今回、この試聴会のためにCocotameが用意したジュークボックスは、世界の有名ジュークボックスブランドのひとつであるアメリカ・Seeburg社の『USC2』、通称“FIRESTAR”と呼ばれている1971年製のヴィンテージマシンだ。YONCEとKCEEには、様々な音楽ジャンルより厳選した7インチシングルレコード80枚のなかから、気になった曲を好きなだけ、想うがままに試聴してもらった。

「へー、こうやって操作するんだ」「おっ、アームがレコードを探してる! カッコいいよね、この動き」「ヤバい! この曲も入ってんじゃん」「これ、楽屋にあったら最高じゃない」――。

新しい玩具を与えてもらった子どものように、目を輝かせながらジュークボックスに食い入るふたり。ロック、ポップス、ソウル……アナログレコードならでは、そしてジュークボックスならではの音をじっくりと堪能してもらったところで、まずはジュークボックスに初めて触れた感想から聞いてみる。

ジュークボックス初体験

──世間的にはデジタル・ネイティヴ世代と呼ばれるであろうおふたりは、これまでジュークボックスで音楽を聴いたり、触ったりしたことはありましたか?

KCEE:自分で曲を選んで聴いたのは初めてです。

YONCE:自分も初めてです。ジュークボックスってたまに海外映画に出てくるじゃないですか。俺にとってはそういう映像のなかだけの存在でしたね。

──では、そんなジュークボックスで音楽に触れてみていかがでした?

KCEE:欲しいです(笑)。

YONCE:お店にジュークボックスがあって、お客さんがそれぞれ聴きたい曲を選んで、みんなでその曲を聴く。そういう文化が今は無いというか、あったとしてもそれはパソコンやスマートフォンの画面越しのものであって、実際に音楽を再生する機器はなかったりしますからね。

KCEE:店に夜な夜な集まった若者たちのうちの誰かが曲をかけて、みんなで「その曲いいよね」って盛り上がれる一体感。ジュークボックス全盛の時代は今のように情報が溢れていなかったはずなので、かかった曲をその場にいるみんなで深く共有できたんじゃないかって思います。

──ジュークボックスというのは、DJカルチャーが誕生する前にDJのような役割を果たしていたのかもしれないですよね。

KCEE:ホントそう思いますね。

YONCE:現在のDJカルチャーよりも一般的なレベルで、人々がもっとちゃんと音楽を選んでいた時代、音楽を選ぶその時間を愛していた時代だったというか。今は聴く音楽を選ぶことに丁寧さがないというか……。

KCEE:そこにアイデンティティがなくなってる感じがしますね。

YONCE:今はストリーミングサービスであらかじめ用意され、与えられたプレイリストのなかから選ぶことが多いと思うんですけど、ジュークボックスが全盛の頃は、みんな日常的にもっと音楽を掘り下げて、良い付き合い方をしていたんじゃないかなって。

──再生すれば次々に曲が流れるプレイリストは無駄がなく便利な反面、どこか味気ないのに対して、ジュークボックスは都度お金を入れて、1曲ずつ選ぶ必要がありますし、選んでから再生されるまで時間がかかるわけで。そうした不便さがある反面、その“間”が音楽の楽しさに繋がっていますよね。

KCEE:そう。ジュークボックスは体験と結びついているんですよね。そこにいて、実際にスイッチを押すからその場で音楽が流れるわけで、お店の雰囲気や風景とリンクすることで音楽が高い純度で耳に入ってくる。対して、スマホやパソコンで聴く音楽は、パッと再生されるところは良いんですけど、やっぱり淡泊に感じて、長く聴けないというか。

アナログだからこそ見える景色

──ジュークボックスはプレイヤーとスピーカーが一体になっていますが、その“鳴り”というか、音質はいかがでした?

KCEE:パワーがあるのにローファイな“鳴り”が、音楽としては一番良い形だと思いました。

YONCE:音楽はそういう“鳴り”で聴くのが一番気持ち良いよなって。今はもっと良いスピーカーだったり、再生機器はいくらでもあるし、Bluetoothスピーカーだったらどこにでも持っていけて、クリアな音質で聴けると思うんですけど、音楽って、クリアな音質で聴くためだけのものではないと思うんですよ。音楽にはちょうど良い案配の音質があって、アナログレコードが愛されているのはその部分なんじゃないかって気がします。

KCEE:歌ってる、演奏している人が見えるような“鳴り”っていうことですよね。こういうふうに聴いてほしくて、こうやって演奏していたんだろうなっていう景色が見えてくる。それに対して、今のハイファイなスピーカーだったり再生機器というのは、それ自体が聴こえ方を決めていて、バランス良くマイルドに聴こえるんですけど、その“鳴り”からはイメージが浮かんでこないんですよね。

──今の高解像度なスピーカーや再生機器は、レコーディングには必要ですけど、細部も全て耳に入ってくるからこそ疲れちゃうときもありますよね。

YONCE:そういう意味でアナログレコードはほど良い“鳴り”が耳に優しいですよね。

KCEE:あと、ジュークボックスは低音がよく出てましたよね。

──レコーディングの最終行程で音を整えるマスタリングという作業がありますけど、一説にはバーのように人が沢山いる環境でもジュークボックスの音楽がよく鳴るようにするために、マスタリングという行程が発展したという話があるようです。

YONCE:なるほどねー。

──だから、ジュークボックス全盛の時代の音楽を楽しむためにわざわざジュークボックスを買って、当時の音楽を聴く音楽マニアもいるんですよ。

KCEE:ジュークボックスで聴くのがスタンダードだった時代の音楽だから、敢えてジュークボックスで聴くってことなんですね。

YONCE:分かるなー。自分も欲を言えば、音源と同じ時代の機器で聴きたいですね。

ヴィンテージのジュークボックスで聴くSuchmos

──今回のジュークボックスに入っている80枚の7インチシングルレコードのうち1枚は、Suchmosの最新作『THE ASHTRAY』から「808」と「FRUITS」をピックアップして、この取材のために特別に用意したものですが、ご自分たちの曲をジュークボックスで聴いてみていかがでしたか?

KCEE:シンプルに言うと、ジュークボックスに入ってる70年代のヴィンテージな音楽の風合いと、2010年代のSuchmosが生み出した音楽のすっきりした佇まいに聴こえ方の差を感じましたね。どっちが良い悪いって話ではないんですけど。きっとこの先10年後も音楽の風合いは変化していって、その時代の色が出るんだろうなって思いました。

YONCE:ジュークボックスで鳴らすことを考えたら、より良い音の在り方はあるんだろうなとは思いましたけど、今の音楽をアナログで聴くのも良い体験だとは思いますし、実際、今の時代はアナログで音楽を聴く人も増えているじゃないですか。こうやって自分たちの音楽をアナログで聴くというのはSuchmosの夢のひとつでもあるので、単純に嬉しかったし、楽しかったですね。

KCEE:あと、ジュークボックスで俺らの音楽を鳴らしてみて、今こそジュークボックスが必要だなって思いましたね。今は音楽が細分化されているし、音楽だけではなく人の趣味趣向も細分化されているので、SNSで繋がっているはずなのに、人間関係が分断されている感覚が今の若い世代にはあると思うんです。でも、ジュークボックスがあれば、友達と出かけたバーでさらに友達が増えそうだなって。

YONCE:かつては音楽と風俗の在り方が隣り合わせで、音楽がその時代を物語っていたと思うんですよ。でも、今は色んなミュージシャンが世の中のほんの一部を切り取って音楽にしているから、その一部にピンと来る人しか聴かないものになってしまっている。だから、ジュークボックスをみんなで聴くように、音楽をみんなで共有することで、聴く人がもっと増えたらいいのにって思いますね。

──ジュークボックスに入ってる曲には限りがあるし、アーティスト名、曲名が表示されているから、みんなで曲を選ぶ時にそこでコミュニケーションが成立しますもんね。

YONCE:そう。「この曲いいよね」っていうコミュニケーションがダイレクトにやり取りされていたんじゃないかなって。今はみんなが知らない曲の方が格好良いって感じで、「俺はこれ聴いてるぜ」っていうマニアック対決みたいなことになったりしてますけど、音楽はそういうんじゃないって思うんですよね。俺らはメンバーやローカルの友達同士で、良いと思った音楽をレコードで貸し借りしているんですけど、今の時代、SNSで動画のリンクを送り合うみたいなことが多いじゃないですか(笑)。それって、味気ないなと思うんですよ。

KCEE:そんな投げ方されても聴かないもんね(笑)。

YONCE:「この曲ヤバい」ってリンクが送られてきても、どこがヤバかったのか言ってることが伝わりづらいというか。アートワークだったり、創り手の意図が伝わりにくくて、その音楽を判断する材料が少なすぎる。そういういい加減なキャッチボールはやらない方がいいんじゃないかなって思いますね。

KCEE:そう。今は音楽が音楽だけで孤立しちゃってる感じがあって。昔はその音楽を聴いている人のスタイルだったり、生活やマインドが表に表われていたので、「あいつに声掛けようかな」って思うことが多々あったし、同じ何かを共有しているやつらが集まるっていうことが頻繁にあったと思うんですよ。でも今は同じ何か、共有できる何かを探すのも大変だし、そういう接点が見えてこないんですよね。

──例えば、昔の雑誌のファッションフォトだったり、お部屋拝見みたいな企画ページだったら、インテリアの一部としてレコードが飾ってあって、「お!」って思うことがあったんですけど、データで音楽を聴いていたら、そういう機会もないでしょうね。

YONCE:なさそうですよね。

KCEE:どうしようもないというか、やっぱり味気ないですよね。

YONCE:音楽配信やストリーミングはもちろん便利ではあるんですけどね。でも、音楽の楽しみ方はそれが全てではない。レコードにはレコードの楽しみ方があることを知ってほしいなって思います。

後編では、ジュークボックスからチョイスした彼らのお気に入りの曲の紹介とふたりのアナログレコードに対するこだわりから垣間見えるSuchmosの音楽哲学について深掘りする。

取材/文:小野田雄
撮影:VIOLA KAM

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11月24日(土)、25日(日)に、横浜アリーナにて2daysにわたって行うワンマンライブ『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA』のチケットは両日ともにソールドアウト。

2019年3月より全国アリーナツアー『Suchmos ARENA TOUR 2019』が開催決定。
オフィシャルサイトでは11月27日(火)23:59までチケットの先行予約を受付中。
https://www.suchmos.com

『Suchmos ARENA TOUR 2019』
2019年3月16日(土)静岡県 エコパアリーナ
2019年3月30日(土)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
2019年4月6日(土)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
2019年4月20日(土)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2019年4月29日(月・祝)福岡県 福岡国際センター
2019年5月11日(土)広島県 広島サンプラザ ホール
2019年5月25日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
2019年5月26日(日)兵庫県 ワールド記念ホール

■オフィシャルHPチケット先行予約受付
【受付期間】2018年11月5日(月)10:00 ~ 27日(火)23:59まで

■オフィシャルHP2次先行予約受付
【受付期間】2018年12月26日(月)10:00 ~ 2019年1月10日(木)23:00まで

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