『ピーナッツ』愛が詰まった聖地、新『スヌーピーミュージアム』を本国の人たちはどう感じた?【前編】
2020.02.05
ソニー・クリエイティブプロダクツ
12月14日(土)、南町田に新『スヌーピーミュージアム』がオープンする。新ミュージアムの建設地は、町田市、東急株式会社、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の三者が官民連携で開発を進める「南町田グランベリーパーク」。六本木からの移転に伴い、ミュージアムの広さは約2倍に。ミュージアムに隣接するアネックス(パークライフ棟)には、『PEANUTS Cafe(ピーナッツ カフェ)』が11月13日(水)に先行オープンする予定だ。
新ミュージアムの開館に向け、準備を進めるSCP ミュージアム&MD本部 本部長 渡辺恵介に、同ミュージアムには何があって、どんなお楽しみが待っているのか? そして事業に携わるスタッフの『ピーナッツ』愛についても語ってもらった。
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目次
渡辺恵介
Watanabe Keisuke
ソニー・クリエイティブプロダクツ
──12月14日、『スヌーピーミュージアム』が六本木から南町田グランベリーパークに移転し、施設も大きく、広くなって生まれ変わります。改めて新しい『スヌーピーミュージアム』のコンセプトをお聞かせください。
渡辺:六本木の『スヌーピーミュージアム』は、スペースが限られていたこともあって、半年ごとにすべての展示を入れ替えていました。一方、南町田の新『スヌーピーミュージアム』は、展示スペースもストアも面積が拡張されたことによって、展示内容をゆっくり鑑賞していただきながら、ストアでのお買い物もゆったり楽しんでいただけます。これまでできなかった常設展示を増やしていますし、立体感のあるインスタレーション(オブジェなどを置いて作品の世界観を伝える表現方法)をたくさん用意することで、より楽しいフォトスポットも提供していきます。
全長8mの巨大なスリーピング・スヌーピーがお出迎えをしてくれる部屋もあるという。
また、『スヌーピーミュージアム』は、アメリカ・サンタローザにある『チャールズ M.シュルツ美術館』の世界唯一の公式サテライト(分館)でもあります。これまでは『ピーナッツ』という作品にフォーカスしていましたが、新ミュージアムでは原作者であるチャールズ M.シュルツ氏自身のクリエイティビティにもスポットを当てていきたいと考えています。
──南町田では、六本木でも好評だったワークショップも充実させると聞きました。
渡辺:六本木の頃は1カ月に1回程度の開催でしたが、南町田ではワークショップをほぼ毎日開催する予定です。六本木では、オリジナルのぬいぐるみを作るワークショップが一番人気でしたが、抽選の倍率が高すぎて、なかなか参加できないという声もありました。そのため、南町田でもこのワークショップは継続する予定です。刺繍教室や練り切りのような和菓子づくりも企画していますし、クリスマスのキャンドルづくりなど季節のワークショップも検討中です。
また、本国では塗り絵のような企画も実施しているそうなので、こちらでもお絵描きなどお子さん向けの企画を採り入れたいと考えています。
──グッズについてはいかがでしょう。
渡辺:新ミュージアムの開館に向けて、すべての商品をリストアップしなおしています。まだ選定中ですが、おそらく300点は超えるのではないかと思います。また、立地場所を意識して公園でのピクニックをイメージしたアウトドア系のグッズも順次展開していく予定です。「大人の『ピーナッツ』ファンにも親しんでいただけるものを」というコンセプトは、今回も変わりません。
オープン記念ぬいぐるみ/オリジナルぬいぐるみ(スヌーピー/ウッドストック)
ふわふわの手触りにこだわったオリジナルのぬいぐるみ。スヌーピーとウッドストックがお揃いの赤いパーカーを着たオープン記念限定バージョンも登場する。
(左から)オープン記念スヌーピーM 5,000円、オープン記念ウッドストックM 4,000円、
スヌーピーL 6,500円、スヌーピーS 2,500円、ウッドストックS 2,000円
張り子(ドッグディッシュ/オープン記念ファーロン)
職人の手で一つひとつ作られた張り子の置物。温かみを感じる優しい和紙の風合いが楽しめる。
(左から)ドッグディッシュ(セット) 3,500円、オープン記念ファーロン 2,000円
──カフェは、11月13日(水)に先行オープンします。こちらのメニューはどのようなものを考えていますか?
渡辺:六本木ではミュージアムのなかにカフェがありましたが、今回は隣接した建物にオープンします。南町田グランベリーパークには公園もあるので、アウトドアでドリンクやフードを楽しんでいただけるようテイクアウトのピクニックボックスも用意します。
──周辺環境を考慮された上でのラインナップですね。新ミュージアムが建設される「南町田グランベリーパーク」は町田市、東急株式会社との共同開発ですが、こちらの連携体制についてお聞かせください。
渡辺:町田市は「えいごのまちだ」を標榜し、町田ならではの英語教育を推進しています。『ピーナッツ』は英語教材にも活用できるため、今後は教育的な取り組みとも連動していく予定です。ほかにも、東急株式会社が運営するショッピングセンターとシーズンイベントを連動させるなど、さまざまな取り組みも考えています。土日は、家族で買い物に来たり、公園に遊びに来たりするご家族連れも来館してくれるのではないかと期待しています。
──2020年に『ピーナッツ』は連載70周年を迎えます。新『スヌーピーミュージアム』がオープンする頃には、もうアニバーサリーイヤーも始まっていますが、その点を意識した取り組みも考えているのでしょうか。
渡辺:実は、アメリカでは四半世紀区切りが重要視されるため、『シュルツ美術館』では75周年に重きが置かれています。また、2022年にはシュルツ氏生誕100周年を迎えるため、連載開始70周年も含めてアニバーサリーイヤーが続くんですね。まだ、『スヌーピーミュージアム』で具体的にどんな企画を行なうかはお伝えできませんが、本国の動きとも連動しながら、我々も節目のタイミングを盛り上げていきたいと考えています。
──これまで六本木の『スヌーピーミュージアム』、大阪や名古屋での「スヌーピーミュージアム展」を通じて、たくさんの『ピーナッツ』ファンをご覧になってきたと思います。ファンの『ピーナッツ』愛をどのように受け止めていますか?
渡辺:子どもの頃から『ピーナッツ』に親しんできたという年齢層の高いファンも多く、あらためて長く愛されてきたコンテンツだと実感しました。そして、長年の『ピーナッツ』ファンをがっかりさせるようなことは絶対にできないなと思いましたね。
4月13日~6月16日まで開催された「スヌーピーミュージアム展」大阪会場のポスター。
6月22日~9月1日まで開催された「スヌーピーミュージアム展」名古屋会場のポスター。
──ミュージアムや巡回展では、アンケートも取られたそうです。そのアンケートをご覧になって、あらためて気づいたことは?
渡辺:六本木だけでのべ136万人が来館されたのですが、そのうちの7割が「初めて来た」という方でした。僕らはリピーターが多いだろうと予想していたのですが、「初めて率」が非常に高かったんです。
2013年に森アーツセンターギャラリーで『スヌーピー展』を開催したときは、30万人弱の方に来館していただきました。六本木のミュージアムの開館当初は「その方々が『スヌーピーミュージアム』に5回来てくれたらいいな」と思っていましたが、新しい方のほうが多く、とても意外でした。年齢層も予想より低く、学生から2、30代の女性が一番多かったです。
──ファンの新規開拓が進んだということでしょうか。
渡辺:そうですね。メディアへの露出も多かったので、トレンドに敏感な方々が来てくださったのかもしれません。また、来館者の約70%にグッズを購入していただいているというデータも印象的でした。グッズを買ってくださるということは、スヌーピーを気に入っているということ。そういう意味では、『スヌーピーミュージアム』のオープンによって、新たなファンを獲得できたのでしょうね。
──自由に写真が撮れるので、SNSで共有されて人気も広がったように感じます。
渡辺:六本木の『スヌーピーミュージアム』で展示内容の撮影を解禁したのはオープンから1年後でしたが、確かにSNSでの拡散はありました。投稿数が飛躍的に増えましたし、そこから若い方の認知も高まったと思います。
六本木の『スヌーピーミュージアム』でも多くのフォトスポットが来場者を楽しませた。
──先ほど「ファンを裏切るようなことはできない」というお話がありましたが、『スヌーピーミュージアム』は展示も販売グッズも、原作へのリスペクト、キャラクターへの深い愛情を感じます。『ピーナッツ』を扱う上で、渡辺さんが大切にしていることは?
渡辺:今の時代、トレンドに合わせてさまざまな展開を見せるキャラクターも多いですし、僕らもいろいろな展開を考えてきましたが、ファンをがっかりさせるようなプロモーションだけはやらないようにしています。
例えば、スヌーピーがいろいろなキャラクターとコラボしたり、デフォルメして新しいアニメを作ったりという今の流行りに合わせた展開は、ファンのみなさんはあまり望んでいないと思うんです。新しいファンを増やそうとするあまり、何十年もファンだった方を一瞬にして失望させることになりかねません。
コンサバティブな考え方かもしれませんが、時代の流れに乗っていろいろ変化していくよりも、みなさんのなかにあるスヌーピー像を崩さないことが大事。シュルツ氏が1950年から連載してきたコミックのあの絵、あのストーリーを大切にして、作者が描いた世界観を逸脱しないような取り組みを行なっていきたいと思います。
──キャラクタービジネスを展開するSCPでは、『きかんしゃトーマス』や『うちのタマ知りませんか?』などのコンテンツも扱っています。ほかのコンテンツと『ピーナッツ』とでは、展開方法も違うのでしょうか。
渡辺:もちろん、コンテンツの性質やターゲットによって展開も異なります。『きかんしゃトーマス』や『うちのタマ知りませんか?』では、それぞれの担当者が熱意をもってプロモーションに励んでいます。
僕に関して言えば、ここまで情熱を持てたのは『ピーナッツ』というコンテンツだからこそ。小さい頃から親しんできたキャラクターですし、そもそもスヌーピーを嫌いな人ってあまりいないと思うんですね。仕事をする上でもキャラクターへの愛情がベースにあるので、ビジネス展開からそういう思いが伝わるのではないかと思います。
──渡辺さんが考える『ピーナッツ』の魅力は? また、SCPでは『ピーナッツ』の魅力を広めるために、どのような施策を考えてきたのでしょう。
渡辺:まず、スヌーピーが圧倒的にかわいいですよね。それに、コミックのスヌーピーはかわいいだけでなく、ちょっと意地悪だったり、さまざまなキャラクター性を持っています。いろいろな人にいろいろな形で刺さるような、多面的な魅力をシュルツ氏が授けてるんですね。
だから『ピーナッツ』が多くの方から愛されているのは、我々の力ではありません。もともと『ピーナッツ』が、魅力的で完成されたコンテンツだったからこそ、ここまで幅広く愛されているのだと思います。
その上で、SCPは運良く、たまたま『ピーナッツ』に出会えたというだけ。ただ、どうすればより多くのみなさんに『ピーナッツ』の魅力を伝えることができるのか、そのプロモーションやマーケティングについては我々も一生懸命考えました。
そのなかのひとつが、デモグラフィック(性別、年齢、住んでいる地域、職業などのデータ)に応じたマーケティングです。女性ファンのほうが多いとわかれば、男性にどうアプローチするか。年齢が高い方に人気があるのであれば、どうやって若年層にアプローチするか。より多くの人に魅力を届ける方法を、徹底的に考えたのです。キャラクタービジネスは優れたコンテンツがあり、そこに共感できるスタッフがいたら、あとは企業としてどのようにマーケティングしていくかが勝負です。SCPが日本におけるエージェントになってから『ピーナッツ』の人気が伸びたのは、スヌーピーがSCPのマーケティング方法にマッチしたキャラクターだったからでしょうね。
昨年の8月に神戸にオープンした『PEANUTS HOTEL』。『ピーナッツ』の世界観を取り入れ、多くのファンが訪れている。
──キャラクタービジネスにおいてはマーケティングだけでなく、ブランディングも重要です。『ピーナッツ』では、毎年テーマを決めてグッズ展開を行なっていますが、ブランディングにおいて渡辺さんはどんなことを意識しているのでしょうか。
渡辺:『スヌーピーミュージアム』で販売するグッズについては、同じソニーミュージックグループであるソニー・ミュージックソリューションズの協力を得て、すべて僕らが作っていますが、それ以外の世の中に出ているグッズは約200社のライセンシーが製作してます。ライセンシー各社にグッズを作っていただく上で、大切なのはクオリティです。品質や性能はもちろん、デザインの優れたアイテムを作らないとファンにがっかりされてしまいますから。
それに、キャラクターグッズは店頭で大体ひとつの場所にまとめて置かれるので、グッズの統一感も重要です。デザインコンセプトが違う商品が売り場に並ぶと、ガチャガチャして統一的なブランディングが保てなくなるので注意すべきポイントです。
2019年のテーマ「Let's Cheer!」のメインビジュアル。
そのため、僕らはエージェントになった当初から、毎年ブランディングテーマを決めて、テーマに沿ったイラストを選定、制作し、それを使って商品化を進めています。これによって、我々のプロモーション、お店のプロモーション、お客様が手にする商品がひとつのブランディングでつながるのです。
今年のテーマは「Let's Cheer!」。テーマに基づくグッズを各社に作っていただくのはもちろん、ティーン誌で応援をテーマにしたスヌーピーの連載ページを設けたり、スヌーピーが実際に運動会へ応援に行ったりと、「Let's Cheer!」をテーマにしたプロモーションを行なっています。
──これまで展開してきたテーマで、特に渡辺さんの印象に残っているものは?
渡辺:SCPが『ピーナッツ』のエージェントになった2010年~11年、シュルツ氏の絵本『Happiness is a warm puppy ~しあわせはあったかい子犬~』をもとに「Happiness」をテーマにしたプロモーションを展開しようと企画しました。しかし、2011年に東日本大震災が発生し、「Happiness」とは言っていられない状況になってしまったんです。
SCPでは、「被災地に向けてキャラクターができることはあるのか」とみんなで考え、チャリティーTシャツを作って募金をつのろうという話になりました。そこで引用したのが、シュルツ氏のコミックにあった「SOMETIMES IT’S ONLY A LITTLE THING THAT GIVES US HOPE...」(ときにはほんのちょっとしたことが僕らに希望をあたえる.../谷川俊太郎訳)というフレーズです。何気なしに原作をパラパラとめくっているときに見つけたんですが、当時の時世に『ピーナッツ』としてメッセージを送るなら、これが適しているのではないかと。このメッセージにあわせて、アメリカのスタジオにピーナッツギャングが大地に新芽を植えている様子を描いてもらいました。
そのチャリティーTシャツは約2万枚売れて、これによって2,000万円近くの寄付をすることができました。おそらく、それまではキャラクターがチャリティーに参加することはほぼなかったのではないかと思います。SCPが『ピーナッツ』のエージェントになったばかりのことなので、とても印象に残っていますね。『ピーナッツ』は基本的にハッピーなコンテンツですが、世の中で不幸な出来事が起きたときにどう向き合えばいいのか、スヌーピーが寄り添うことはできるのか、常に考えるきっかけになりました。
東日本大震災で被災した方々への寄付をつのるために販売されたチャリティTシャツ。
──SCPでは『スヌーピーミュージアム』のほかにもミュージアムビジネスを展開されていますが、今後のミュージアムビジネスの可能性についてお聞かせください。
渡辺:『スヌーピーミュージアム』でシュルツ氏自身にスポットを当てるように、IP(知的財産)の原点、根源を紹介することがまずひとつ。さらに、ミュージアムからさまざまな情報を発信し、IPをPRしていくという側面もあります。
また、現在六本木の「ソニーミュージック六本木ミュージアム」ではさまざまなアーティストの展示を行なっています。ミュージシャンは音楽を届けることが第一ですが、それとは違う魅力をミュージアムから発信できていると思います。つまり、ミュージアムがIPの拡大、新たな可能性の発信につながっているのです。
IPの魅力をさらに高め、ブランド価値を上げるという点で、ミュージアムビジネスは非常に有効です。このビジネスを通じて、今後もIPの新たな価値の創出、発信に努めていきたいですね。
スヌーピーへの愛、『ピーナッツ』へのリスペクトにあふれた新『スヌーピーミュージアム』の開館まで、あとわずか。渡辺をはじめ、『ピーナッツ』に関わるスタッフが思いをひとつにして作り上げたスヌーピーファンの新たな聖地を、ぜひ訪れてほしい。
文・取材:野本由起
撮影:冨田望
南町田グランベリーパーク 新『スヌーピーミュージアム』
開館日:2019年12月14日(土)
※10月1日(火)よりチケット販売受付開始
休館日:会期中無休(12月31日は短縮営業、1月1日は休館)
開館時間:10:00~20:00(入館は19:30まで)
所在地: 東京都町田市鶴間3-1-1
アクセス:東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅より徒歩4分
東名高速道路・横浜町田ICより約1km
[入館料]
一般・大学生:¥1,800(前売券)/¥2,000(当日券)
中学・高校生:¥800(前売券)/¥1,000(当日券)
4歳~小学生:¥400(前売券)/¥600(当日券)
スヌーピーミュージアムでは、六本木と同じく日時指定の前売券を販売します。
入館時間は、10:00、12:00、14:00、16:00、18:00の計5回です。
滞在時間の制限はありませんので、入館後はゆっくりとご鑑賞できます。
当日券は、前売券の販売状況に余裕のある場合にミュージアムの窓口にて販売します。
・12月14日(土)15日(日)のチケット
オープニングの2日間(12月14日と15日)のチケットは抽選販売方式となります。
10月1日(火)より、イープラスにて受付を開始します。
・12月16日(月)以降のチケット
12月16日(月)以降の前売券は、10月16日(水)より、イープラスにて先着順で販売します。
・ワークショップのチケット
10月1日(火)より、パスマーケットにて抽選受付を開始します。
『スヌーピーミュージアム』の公式サイトはこちら
PEANUTS Cafe(ピーナッツ カフェ)
開業日:2019年11月13日(水)
営業時間:10:00~22:00(ラストオーダー21:30)
席数: 約80席
©Peanuts Worldwide LLC
2023.06.07
ソニー・クリエイティブプロダクツ
2023.05.29
ソニー・ミュージックエンタテインメント
2023.05.10
ソニー・ミュージックレーベルズ 他
2023.05.02
ソニー・ミュージックソリューションズ 他
2023.04.25
ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド
2023.04.21
ソニー・ミュージックエンタテインメント