奥田民生「カンタンカンタビレ(アナログ盤)」の生産現場に潜入! レコードの生産工程とは
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アナログレコード好きを自他ともに認めるミュージシャン、奥田民生、山内総一郎(フジファブリック)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)がアナログレコードの魅力を語る特集第2回。
後編では、3人のお勧めのアナログレコードを聴きながら、それぞれのタイトルについてのエピソードを語ってもらうとともに、自宅での音響環境など、より深くアナログレコード愛を語ってもらった。
目次
──では、ここからは実際にレコードを聴きながらお話ができればと思います。まずは、ソニーミュージックのアナログレコード復活第1弾作品でもあるビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」を聴いてみたいと思います。曲は「Big Shot」です。
奥田:音がギュッと詰まっていて、エネルギー感がありますね。ドラムが気持ち良く鳴っているのも特長。CDの方がはっきり聴こえる場合もあるけれど、個人的にはこの音がしっくりくるかな。
山内:レコードの方が聴きやすいですよね。耳ざわりが良い音というか。高域が伸びすぎていない分、音量を上げても耳に刺さる感じがしなくて、疲れないで聴けるし、歌の表情もはっきりとわかる。
ハマ:本来鳴っている倍音が感じ取れるから耳が疲れないんでしょうね。シャーンというシンバルの音もつぶれた感じではなくて、リアリティのある音に聴こえます。それぞれの楽器の表情もより精細になりますね。アナログレコードとCDどちらの音質が良いということではなく、好みの問題だとは思いますけど。
──続いて、今日はみなさんにお勧めのレコードをお持ち頂いたので、聴いていきたいと思います。まず、奥田さんのお気に入りの1枚からお願いします。
奥田:フェイセズの「Long Player」を持ってきました。聴いてもらった1曲目の「Bad 'n' Ruin」をはじめ、録音も演奏もすばらしいの一言に尽きますね。これはドラムの音がたまらない。思わずドラマーになりたくなる音なんですよ。
ハマ:これはかっこいい。気分が上がりますね。
山内:民生さんのドラムの音に似てますよね。
奥田:参考にさせてもらってます(笑)。
山内:以前、いっしょに演奏させてもらった時にドラムを叩いていただきましたが、その音を思い出しました。
奥田:うん、やっぱり好みの音なんだろうね。
──続いて、山内さんはカウント・ベイシーの「Li'l Ol' Groovemaker... Basie!」を選ばれました。
ハマ:これも渋いですね~。
奥田:レコードの時代の音だから当然なんだけど、これがCDになるとおそらくラッパの音は少しうるさく感じてしまうと思う。ラッパのダイナミクスさがここまで広げられたらいいよね。
ハマ:民生さんが言われるように、この作品はCDで聴き続けると耳が疲れてきそうですね。レコードは楽器そのままの自然な音が出ているように感じます。
山内:この作品を聴きたいと思う時は、音が踊っている感じを味わいたいんですけど、レコードの方がよりそれをビビッドに感じられるんですよね。
──ハマさんが持ってきてくださったのはロッテのCM曲?を集めたレコードです(笑)。
ハマ:A面はやさしい童謡タッチで、まさしくCM曲なのですが、B面はハンパじゃなくかっこいいので、ぜひ聴いてください!
山内:B面なんだ(笑)。
奥田:このメロディは知ってる。でもアレンジはディスコ調でファンキーという。
山内:しかも、全編英語詞かと思いきや、最後の最後であの「チョコレ~~~トはロッテ」というのが飛び出してくる(笑)。
ハマ:いわゆる和モノ。70、80年代に埋もれてしまった日本のかっこいいサウンドであり、レコードでしか聴けない逸品です。
もう1枚、僕が惚れ込んで買ったレコードを聴いてください。ザ・ゴールデン・カップスの「銀色のグラス」です。レイジのお父さんが、集まってくる子供たちにそれぞれが好きそうなレコードを選んで聴かせてくれたのですが、僕にはこのレコードでした。
当時組んでいたバンドは今よりもブリティッシュビートっぽかったので、きっと気に入るだろうと思って聴かせてくれたんだと思います。ルイズルイス加部さんのベースが最高にヤバいからと。まさしく衝撃を受けました。お店で探してもなかなか出会えず、少ししてからようやく買うことができた思い出の1枚です。
山内:ぼくももう1枚。思い出のレコードです。アイリッシュ・フォークの名盤で、デュオの名前がアルバム名になった「Andy Irvine / Paul Brady」からB面の3曲目「Mary And The Soldier」を聴いてください。
奥田:アコースティックギターの鳴りもいいね。レコードらしい響きというか。
山内:高校生の時に知って、その時はCDで聴いていたんですけど、これはやっぱりレコードで欲しいと思って、後々になって買いました。ここでブズーキ(アイルランド音楽で使用される弦楽器)を演奏しているのがドーナル・ラニーさんという方なんですけど、地元の隣町に住んでいたことがわかって。
奥田・ハマ:ええっ!
山内:当時練習していたスタジオでこの曲がかかってて、スタジオの人に近くに住んでるよって教えてもらったんです。マンドリンもブズーキの音にも触れるのが初めてで、この楽器の音はなんだろうって興味から入っていった、高校時代がよみがえる1枚ですね。
──ちなみにみなさんは普段、どういう環境でレコードを聴いてますか?
奥田:McIntoshのアンプにJBLのスピーカーという組み合わせがジャズ喫茶の定番ですが、きっとそれがいいんだろうということでそのシステムで聴いています。ただ、どうやら、その組み合わせを良しとしているのは日本だけらしいですが(笑)。
山内:今は違うのかもしれませんが、民生さんはツアーに“楽屋の友”というオーディオセットを持ち込んでいましたよね。観音開きの大きいケースを開くと、スピーカーとプレイヤーがセットになっているという。
奥田:楽屋の友はね……今はPCになったんだよね、開くとPCが鎮座してる(笑)。あれを始めた頃もさすがにレコードプレイヤーは大き過ぎるし、レコード自体も場所を取るから、カセットデッキとテープだったのよ、最初は。
ハマ:時代によって変わっていったんですね。ぼくらOKAMOTO’Sもポータブルのレコードプレイヤーを楽屋に持ち込んでます。ツアーに行くとその街にあるレコード屋さんに行って、買ってきたものをみんなで見せ合いながら聴いたり。
奥田:いいねえ。ちなみに自宅ではレコードをプレスする前に音質をチェックするラッカー盤も聴きますよ。チェックする前に気に入っている作品をまずかけて、そうそうこの音だよねって。ありゃ? ということもありますが(笑)。
山内:ありゃ? はありますよね(笑)。でも、それがあって思い描く音に近づいていくというか。
ハマ:僕もオーディオに明るいわけではないので特に凝っているわけでもなく、DenonのアンプにBowers&Wilkinsのスピーカー、Technicsのターンテーブルという組み合わせです。特色はないかもしれませんが、良い音だなと思って聴いてます。
奥田:あ、俺もTechnics。吉井和哉に聞いたら、それでいいって言ってた(笑)。
山内:僕もTechnicsですよ(笑)、そこからオーディオインターフェイスを通して、パワードスピーカーで鳴らしてます。スマホやPCで聴くよりもひと手間もふた手間も多いから、よし音楽を聴こうって、聴きたいという気持ちになった時にレコードをかけますね。自分にとっては特別な時間です。
──みなさんのレコードに対する愛着がとてもよくわかるお話になりましたが、やはり制作時もレコードにすることは意識されているんでしょうか?
奥田:レコードだけを想定して作っているわけではないので特別なことはしませんが、レコード用にマスタリングはしています。もともとレンジが広くなくて、録った音もこもっているんでそんなに気にすることはないんですけど(笑)、やはり買ってもらった方に自分がイメージする音で聴いてもらいたいので。
レコードにすると最初に録った音がここまで変わるのかという、当たり前なんですが、その変化も楽しいところではあります。
山内:曲によりますね。レコーディングからミックスまでアナログでやることもあって、それはやはりレコードにしたいなという気持ちからなんですけど、音の雰囲気もいちばん好きなんですよね。
思い返せば、10年前はどんなにお願いしてもレコードを作らせてもらえなかった。制作費もかかるし、まずどこで売るんだという壁もあって。今はうれしいことにレコード化のお話をいただくことがあるので、録音段階からレコードを想定することもあります。
ハマ:OKAMOTO’Sは2010年にデビューして、その頃からレコードを出したいと言っていたのですが、総さんが言ったように、その頃はやっぱり無理で。
でも、ウチのメンバーは全員レコードが好きだと色々なところで言っていたら、今回のようなレコードに関する取材が増えてきて、3年前くらいにレコードを出してないバンドのメンバーがレコードを語るのは説得力がないので、何とかリリースさせてほしいと、少し怒りながら直談判しまして。レコード好きの若年寄に見られるのも違うなと。
そうしたら幸いなことに出してもらえることになって、今はアルバムのたびにレコードもリリースできています。レコーディングでは、レコード化を前提にして何かをするということは僕らも今のところはまだありませんが、A面B面的な解釈はずっと持ち続けています。収録曲が決まったら、ここまでがA面だよねというように。
レコードもリリースの選択肢のひとつとしてある世代ですし、レコードを聴いてきたからこそのディスカッションができるのが楽しいです。ここのベース、ドラムの音はもう少し何とかなるよねという、レコードを聴いている者同士だからこそ通じるあえるような。
──今後、こういうレコードを作ってみたいというような考えはありますか?
奥田:それこそソニーミュージックの一貫生産には興味ありますね。どんな感じに仕上がるのか。あと、レコードをリリースするのは今の人に昔の大変さを知ってもらおうという側面でもやってますから(笑)、これからも出していきたいです。
ハマ:個人的に7インチ好きということもありますが、まだOKAMOTO'Sでは7インチを実現できていないので、いつかは出してみたいです。アイテムとしてのおもしろさも今の時代は必要だと思うので、回転するとホログラムが出るような、今の時代にしかできないハイテクなアナログレコードも作ってみたいです。
山内:当たり前ですが、聴いてくれる方がいないとレコードは作れないので、そこは基本としてこれからもしっかりやっていきたいです。ハードももっと身近で手軽になるものが出てくるといいですね。
奥田:じゃあ、ソニーに12インチレコードがかけられるウォークマンを作ってもらおう!
山内・ハマ:(爆笑)
奥田:いや、マジメにカッコいいと思うんだけどね。あ、でも音飛びしちゃうか(笑)
2回に渡ってお届けしたアナログレコード好きミュージシャンの徹底鼎談。音を一緒にお届けできないのが残念だが、アナログレコードを聴いたことがない方も、その魅力を少しでも感じていただけただろうか。3人が抱いているアナログレコードの魅力をぜひ一度体感してみてほしい。
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