『全国作曲コンクール』の審査を担当したA&Rが語る、今、音楽業界で求められる才能とは?
2018.08.20
2018.08.01
歌唱力や専門知識ではなく、純粋な作曲・ソングライティングの才能にフォーカスした『Sony Music Presents 全国作曲コンクール』。公募された約8,000曲のなかから5曲が選ばれ、そのリリース第1弾の楽曲として、人気上昇中の3人組ガールズボーカル&ダンスグループ「J☆Dee’Z」の歌う「代わりにこの唄を」が決定! 7月25日に発売したJ☆Dee’Zの8thシングル「未来飛行/流星のパノラマ」に収録された。
本特集では、今回の『全国作曲コンクール』に携わったスタッフ、アーティスト、クリエイター、それぞれに話を聞きながら、今の音楽シーンで求められている才能やプロのクリエイターとして活動していくための心得を浮き彫りにしていく。
特集2回目は、「代わりにこの唄を」の作詞・作曲を手がけたクリエイターのisotonicさんとJ☆Dee’Zメンバーたちによる対談の後編をお届けする。
――isotonicさんは「代わりにこの唄を」に、高校時代、お母様に伝えられなかった想いを込めたそうですが、この曲で一番言いたかったことは何ですか?
isotonic:曲の最初の「ごめんね 許してよ ありがとう 愛してる」ですね。曲を作るとき、私は先にメロディーが浮かんで、それに合わせて歌詞を考えるんですけど、この言葉を歌いたくて曲を作りたいと思ったんです。うちは母子家庭だったんですが、高校時代は、本当に母親に対して素直になれなくて。私から「ごめんなさい」や「ありがとう」が言えれば、言い合いにならなかったんじゃないかなと思うことがたくさんあったんです。高校を卒業してからも、大学にまで行かせてもらって就職もしたのに、こうして地元を離れてやりたかった音楽の道に方向転換してしまって。母からは、それで何かを言われたことはないんですけど、申し訳ないことをしてしまったなという想いはずっと心に残っていたんです。
――isotonicさんは、J☆Dee’Zの皆さんに「代わりにこの唄を」に込めた気持ちを伝えていたんですか?
isotonic:はい。J☆Dee’Zさんがボーカルのレコーディングをされる際、スタジオにお邪魔して。でも、言葉ではうまく伝えられる自信がなかったので、手紙に想いを書いてお渡ししました……。
ami:そうなんです!
isotonic:私、あまりお喋りが上手ではなくて。大事なことをちゃんと伝えたいときは手紙を書くようにしているんです。
ami:私たちの映像をたくさん観てくださったお話だったり、さっきisotonicさんがおっしゃっていたお母さんとのお話を、すごく丁寧に書いてくださっていて。そこで分かったこともたくさんありました。じつは私たち、最初にこの楽曲を受け取ったときは、恋愛ソングだと思っていたんですね。「ごめんね」や「愛してる」という言葉がとても印象的だったから、失恋とか、ちょっと大人の切ない恋のお話なのかな? と。でも、お手紙を読んで、家族への愛がテーマのメッセージソングだと気づかされました。
MOMOKA:今までも、たくさんの方に曲を提供していただいていますが、曲を作った当時の気持ちをお聞きする機会は、そうあることではなくて。しかも、すごく丁寧に、お手紙でストレートに歌詞への想いを伝えていただけたので、すごく嬉しかったんです。
Nono:isotonicさんが、この曲をとても大事にされていることがお手紙から伝わってきて、私たちもしっかりとこの歌をたくさんの人に届けなくちゃいけないなと思いました。
MOMOKA:そうなんですよ。私たちの等身大の気持ちをのせて歌うだけじゃなく、作ってくださったisotonicさんの気持ちも一緒に届けることができたんじゃないかと思います。
Nono:あと、お手紙と一緒に、isotonicさんの手作りの絵本もいただいたんです。お手紙と絵本をしっかり読み込んだうえで歌うことができて、とても気持ちを込められたと思います。
――手作りというのはすごいですね。どんな絵本だったんですか?
isotonic:タイトルは「透明な絵本」といって……小さな街に住んでた女の子と魔法使いの……、「代わりにこの唄を」に繋がるようなお話です。
Nono:モノクロなんですけど、絵も文章もすごく温かくて、かわいくて。
isotonic:絵の色は、あえて付けていないんです。受け取ってくれた方が、自由に色を付けてくれたらいいなと。
透明な絵本
作・画/isotonic
ami:お手紙はもちろん、絵本からも曲に隠された気持ちを知ることができて、良かったです。逆にこれがなかったら、恋愛ソングだと思ったまま歌っていたかもしれないし、言葉に込められた気持ちに気づかないところもあったと思うので、すごく感謝しています。
isotonic:こちらこそ、完成した曲を聴いた瞬間、皆さんが私のメッセージをちゃんと歌にしてくれて……本当に感動しました。
――isotonicさんの手紙や絵本から、「代わりにこの唄を」に込められた深い想いを受け取ったJ☆Dee’Zさんは、この曲をどのように歌われたんでしょうか?
MOMOKA:今回は、いつもの曲よりソロパートが長かったのが印象的でした。いつもは歌詞の1~2行分で歌い分けていくことが多いんですけど、今回は4行くらいのブロックでソロが変わる感じなので、気持ちの繋がりがイメージしやすかった。私たちも歌いやすかったですし、この曲にも合ってたかなって思います。
Nono:歌詞の流れを感じられて、とてもスムーズに歌えた気がします。こだわったのは、1フレーズ、1フレーズで、聴いている方の中に言葉が入り込みやすいようにすること。それぞれの歌詞の意味に合ったテンションで気持ちを伝えようと思いながら歌いました。
ami:とくに今回のテーマは“家族への愛”なので、その温かさみたいなものを伝えたかったんです。切ないとか優しいとか、曲の最初の印象だけじゃなく、ちゃんと歌詞の意味を考えながら、聴いた人が最後にほっこりして、大切な人に何かを伝えたくなる曲になればいいなって。だから、「ごめんね 許してよ」のところも、切なくなりすぎないで……でも、そのニュアンスはしっかり残したい。勇気が出ないんだけど、でも伝えたい、という想いを、どうやって語尾で表わせるかな? とか……一言一言、込める感情を変えながら、でも気持ちがバラバラにならないように考えながら歌っていました。
Nono:私もそうでした。歌い方も、音を伸ばすところはただ強く伸ばすんじゃなく、ちょっと苦しそうな感じになるところで切ってみたり。声そのもので、気持ちが伝わればいいなというのは、意識しました。
MOMOKA:私は、最後の「代わりにこの唄贈るよ」というところが、そうでしたね。
ami:あと、「代わりにこの唄を」は、私たちの曲にしてはコーラスが少ないんです。ひとりずつの声だけで、シンプルに歌詞のメッセージを伝えたいと、みんなすごく意識してたと思います。isotonicさんにいただいたこの曲から、初めて気づかされたこと、教えられたこと、学んだことがいっぱいありますね。
――そのなかでも、皆さんの心に響いたフレーズは?
MOMOKA:私は、「近すぎて遠くなってた 見えない心のパズル」というところです。家族って、生まれたときから一番長くそばにいるし、一番支えてくれる人なんですけど、それを当たり前に感じて、ありがたさが分からなくなることもあるから……。
ami:私も同じです。私は中学生のときに兵庫県から出てきたので、この歌詞を読んで、東京に来たときのことを思い出したし、レコーディングのときも、そのときの気持ちを蘇らせながら歌っていました。
Nono:私が一番心にスーッと入ってきたのは、「独りになるのが怖くて 無くしかけたピース」というフレーズでした。私も自分ひとりになっちゃうのが怖くて……周りに合わせたり、自分を無くしちゃうことがあるので、このフレーズに共感しました。
isotonic:自分の殻に閉じこもって、周りに迷惑をかけてぶつかったときに、自分の気持ちとは違う行動をとっちゃうんですよね。子どもの頃は素直に言えていた「ありがとう」も、大人になると素直に言えない。そういう大事な部分が、欠けそうになるピースだなと。じつはまだ、無くしかけたピースはハマっていないと思うんです、自分の中で。言葉では素直にハマらないし、恥ずかしくて言えないから……歌にしたら素直に伝えられるかな? と思って作ったのがこの曲。今、お話を聞いていて、J☆Dee’Zの皆さんが本当に大切にこの歌を歌ってくださったことに、改めて感謝しかないですね。
J☆Dee’Z
『代わりにこの唄を』
作詞・作曲:isotonic 編曲:TomoLow
――J☆Dee’Zの皆さんは8月に東名阪ツアーも控えています。「代わりにこの唄を」がライブでどうパフォーマンスされるのかも楽しみですね。
MOMOKA:はい。「代わりにこの唄を」はメッセージをストレートに伝えたい曲なので、あえて踊りは控えめにして、シンプルに歌だけを聴いてもらうのもアリかな? とか、今、自分たちでも考えているところです。私たちの新しい一面を楽しみにしてほしいですね。
――いつか、isotonicさんの生のピアノ伴奏で3人が歌うライブもやってほしいですね?
isotonic:え? そんな……おこがましいですよ!
Nono:そんなことないです、ぜひ!
MOMOKA:一緒にステージに立ちたいですよね!
isotonic:もしそうなったら……がんばって練習します(笑)。
ami:「代わりにこの唄を」は、私たちにとってもすごく大切な曲になったので、いつか実現したら本当に嬉しいですよね。今回のシングル「未来飛行/流星のパノラマ」は、どの曲も違う色だけど、爽やかさと夏っぽさがある1枚になりました。「未来飛行」は応援ソングなんですけど、今まで歌ってこなかったネガティブな気持ちもあえて歌詞にしているリアルな1曲だし、「流星のパノラマ」は同世代の女の子に共感してもらえる恋の歌、「swing swing swing」は絶対、夏のライブで盛り上がる曲。「代わりにこの唄を」はシングルを締めくくる、一番ほっこり、温かな気持ちになれる曲です。聴く方の世代や目線によって、感じ方も変わる1枚だと思うので、ぜひたくさんの方に聴いてもらいたいです!
MOMOKA:そして、8月の東名阪ツアーにもぜひ、遊びに来てほしいです。J☆Dee’Zにとっては3年ぶりのツアーですし、3年の間にメンバーも曲調も変化しているので、私たちもまっさらな気持ちで、気合いを入れて臨みたいと思います。
Nono:isotonicさんも、ぜひ観に来てください!
isotonic:はい、絶対に伺いますね。私もJ☆Dee’Zさんに自分の曲を歌っていただけたことで、今後、作家として音楽活動を続けていきたい想いが、ますます大きくなりました。またJ☆Dee’Zさんに歌っていただけるよう、これからも曲を作り続けたいと思います。
次回は、J☆Dee’ZのA&Rで『全国作曲コンクール』では、楽曲の選考にも携わったソニーミュージックレコーズの灰野一平に、なぜ「代わりにこの唄を」をJ☆Dee’Zに歌わせたいと思ったのか。そして、これから音楽業界を目指す人たちに向けて、A&Rの心得を聞いた。
J☆Dee‘Zオフィシャルサイト
J☆Dee‘Z Twitter
ami Twitter
Nono Twitter
MOMOKA Twitter
2024.09.30
2024.09.25
2024.09.15
2024.09.12
2024.09.09
2024.08.28
ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!