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連載Cocotame Series

SMCカンパニープレゼンテーション「w/」TALK CROSSINGレポート

ピーナッツファンに愛される『スヌーピーミュージアム』グッズの開発秘話

2018.09.20

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エンタテインメントにまつわる様々な分野において幅広いソリューションを提供するソニー・ミュージックコミュニケーションズ(以下、SMC)。本特集では、SMCのカンパニープレゼンテーション「w/」にて行なわれた、様々な事例をテーマに現場の担当者がトークセッションを行なう「Talk Crossing」をレポート。

特集第4回のテーマは、『スヌーピーミュージアムのための商品開発』。

スヌーピーファンの聖地と言われるシュルツ美術館の世界初のサテライトミュージアムとして、2016年に期間限定でオープンし、2018年9月24日をもって閉館となる東京・六本木の『スヌーピーミュージアム』。
原作者のチャールズ M.シュルツ氏が生み出し、今なお世界中で愛される『ピーナッツ』の仲間たちの物語を様々なテーマで切り取ったこのミュージアムの魅力のひとつに、ここでしか買えないオリジナルグッズの数々がある。それらはどのようにして生み出され、なぜ『ピーナッツ』ファンに愛されたのか。グッズ開発の裏側を聞いてみよう。

『ピーナッツ』の世界観をリアルに再現

左から ソニー・クリエイティブプロダクツ 執行役員 渡邉恵介 SMC MD&プランニングカンパニー MDマーケティング部 高渕弘美 SMC クリエイティブプロデュース本部 クリエイティブオフィス 傳馬智巳 SMC 生産管理本部 購買2部 下川明美

左から
ソニー・クリエイティブプロダクツ 執行役員 渡邉恵介
SMC MD&プランニングカンパニー MDマーケティング部 高渕弘美
SMC クリエイティブプロデュース本部 クリエイティブオフィス 傳馬智巳
SMC 生産管理本部 購買2部 下川明美

2009年、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)は、スヌーピーでおなじみ『ピーナッツ』の日本国内における独占エージェント権を獲得した。ブランドの価値向上と市場拡大を目指し、翌年から版権管理事業をスタートしている。

『ピーナッツ』は、アメリカの新聞で50年に渡り連載されたコミックで、アメリカ文化の象徴とも言える。ただ残念ながら日本ではかわいいキャラクターグッズとしてのスヌーピーは有名でも、コミックに触れたことのある人は意外と少ない。そのためSCPでは、『ピーナッツ』の世界観、作者の思いを広く伝える場として『スヌーピーミュージアム』の開設に乗り出した。

渡邊は、ミュージアムの特色を3つ挙げる。1つ目が"本物"であること。展示する約80点の原画やシュルツ氏に縁のある品々は、すべてアメリカのシュルツ美術館から借りたものだ。2つ目が"期間限定"であること。会期は2016年4月23日から2018年9月24日までの2年半に限定することとした。3つ目が半年ごとに展示テーマを切り替えること。一般的なミュージアムにある常設展示を置かず、常に新しいテーマを提供している。
そして上記の特長から、グッズに求められるコンセプトも
①ここだけでしか手に入らない
②今だけしか手に入らない
③展示テーマに沿ったグッズ
の3点とした。

スピード感をもって、高品質なオリジナルグッズを制作するとなれば高い開発力が求められる。渡邊は「SMCには、長年キャラクタービジネスに携わってきた信頼感があります。このプロジェクトには、SMCの開発力、企画力が必要でした」と話す。

では、実際のグッズ開発はどのように進行したのだろうか。高渕は、まず『ピーナッツ』の故郷であるアメリカ西海岸の空気を吸うところから始めたと言う。

カリフォルニア州・サンタローザには本家本元のシュルツ美術館が存在する。高渕らスタッフは本国のミュージアムを訪れ、多数の原画やシュルツ氏が実際に使用していた机、椅子、ペンなどを一つひとつ確認。『ピーナッツ』の世界観、その魅力を直に体感した。

また、事前に用意したグッズプランを持ち込み、現地のミュージアムスタッフとの意見交換も行なった。下の写真にあるファーストスヌーピーのぬいぐるみは現地スタッフからも絶賛され、のちに大ヒット商品となっている。

ソニー・ミュージックコミュニケーションズ カンパニープレゼンテーション「w/」 現地のミュージアムスタッフとの意見交換

また、サンフランシスコの街並を歩き、セレクトショップの内装やディスプレイもリサーチ。『スヌーピーミュージアム』に合うエッセンスを探っていったという。「サンタローザには、スヌーピーのオブジェがいたるところにあり、街全体から『ピーナッツ』を感じることができました。こうしたリサーチは、『スヌーピーミュージアム』の空間づくりにも活かされています」と高渕は話す。

ただ、その時点では会場となる六本木の一角は、まだ更地の状態。高渕は「ここにどんなグッズをどれくらい用意し、どう配置すればいいだろう」「お客様の身長を考えたらどう見えるだろう」と考え、図面に手描きでイメージを書き込んでいったそうだ。最終的には企画営業チーム、クリエイティブチーム、購買チームの約30名のプロジェクトメンバーで、第1回展に向けて500品番ものグッズ制作を進めていった。

ミュージアムのコンセプトを体現するグッズとは?

『スヌーピーミュージアム』は半年ごとに展示テーマが入れ替わり、グッズもその都度新たに開発・追加される。すべての会期のグッズのデザインを手掛けたのはアートディレクターの傳馬だ。

「実は私もスヌーピーと言えばキャラクターグッズのイメージしかありませんでした。今回デザインを手掛けることになった際には、50年分の原作を3カ月ですべて読み、コミックへの理解を深めるところから始めました」と話す。そして、シュルツ氏の原画の素晴らしさをより多くの人に知ってもらうこと、世の中に溢れている"かわいらしいスヌーピー"グッズと差別化し、手に取ってもらえるような特別感のあるものにすること、スヌーピー以外のキャラクターの魅力を伝えることという3つの思いを込めてグッズを企画・開発していった。

それでは、ここからは第1回展から第4回展までの各会期のグッズについて、傳馬の解説とともに振り返ろう。

第1回展『愛しのピーナッツ。』

「基本コンセプトは"コミックそのまま"。お客さまに原画をより身近に感じていただき、そのまま持ち帰っていただけるような、原画を意識したデザインにしました。また、ミュージアムのロゴマークや会期日程などがプリントされている、いわゆる"おみやげ"的な要素もとても大事にしています。スヌーピー以外のキャラクター商品は売れ行きが伸び悩むことが多いのですが、ほかのキャラクターも知っていただきたいという思いからあえてメインに押し出した商品も企画しました」

「こちらは、先述したファーストスヌーピーのぬいぐるみです。市場に流通していない新たなスヌーピーグッズを作りたいということで、『ピーナッツ』連載第1回の初登場時のスヌーピーを再現したものです。4本足で歩くスヌーピーなんて見たことなかった! という驚きの声もあり、非常に好評でした」

第2回展『もういちど、はじめましてスヌーピー。』

「"スヌーピーのことをもっと深く知っていただく"という展示テーマに合わせ、いろいろな姿に変装したスヌーピーを紹介しました。スヌーピーの変身した姿がこんなにたくさんあり、そのすべてに名前があることに私も驚きました」

「また、第1回展からテーマを変えたため、リピーターの方々にも手に取っていただけるように、新たに約200アイテムを開発しました。第2回展からは、グッズだけでなくお菓子も販売しています」

第3回展『ピーナッツ・ギャング・オールスターズ──ともだちを紹介してよ、スヌーピー。』

「第3回展のテーマは、"スヌーピーを取り巻くともだちのことを知ってもらう"こと。『ピーナッツ』に登場するキャラクターは70以上いて、『ピーナッツ・ギャング』として親しまれています。その中でもチャーリー・ブラウンやウッドストック、ルーシーなどなじみの深いキャラクターをピックアップし、『ピーナッツ・ギャング・オールスターズ』として紹介しています。各キャラクターの個性が光るように、その魅力を紹介する取説のようなカードも作りました。説明文は本国のスタジオにもご協力いただき、『スヌーピーミュージアム』として新しいアートを開発することができました」

スヌーピーミュージアム 第3回展『ピーナッツ・ギャング・オールスターズ──ともだちを紹介してよ、スヌーピー。』グッズ

「当時はレアキャラだった猫のファーロンのぬいぐるみを作ったり、キャラクター缶バッジも台紙に相関図を書き込むことで付加価値をつけるなど工夫を凝らしたりと、ミュージアム発信で『ピーナッツ』の世界観や作品性をより多くの方に知ってもらうことができました」

スヌーピーミュージアム 第3回展『ピーナッツ・ギャング・オールスターズ──ともだちを紹介してよ、スヌーピー。』ファーロン ぬいぐるみスヌーピーミュージアム 第3回展『ピーナッツ・ギャング・オールスターズ──ともだちを紹介してよ、スヌーピー。』キャラクター缶バッジ


第4回展『恋って、素晴らしい。』

「第4回展は『ピーナッツ』の中で描かれる様々な恋模様やちょっとしたときめき、胸がキュンとするようなエピソードを集めた企画展でした。ハートマークをあしらったスヌーピーグッズはたくさんありますが、『スヌーピーミュージアム』ではあえて大胆にハートマークを押し出しつつ、色数を減らすことで大人の女性にも親しんでもらえるようなデザインに落とし込んでいます」

スヌーピーミュージアム 第4回展『恋って、素晴らしい。』ハートマークをあしらったスヌーピーグッズ

新たな挑戦が生み出すノウハウ、そしてその先へ

グッズの売上ランキングを見ると、お土産として配りやすいクッキーやキャンディーなどのお菓子類や、有名ブランドとのコラボグッズの人気が高いようだ。

スヌーピーミュージアム グッズ
スヌーピーミュージアム グッズ

SMCではこれまで食料品の取り扱いがあまり多くなかったため、下川は試行錯誤を重ねたという。

「品質管理の担当者とともに、多くの工場を視察しました。現場の方のご苦労を聞きながら品質管理、発注方法も学び、商品を送り出すことができました」と話す。

また、メーカーやブランドとのコラボグッズも企画・開発した。シュローダー(ピーナッツ・ギャングのひとり)が弾くピアノをモチーフにしたミニピアノを商品化したKAWAI、ル・クルーゼなどどのメーカーも『ピーナッツ』の名前を出して協力を仰ぐと積極的に応じてくれたそうだ。
「ミュージアムのグッズ開発をきっかけに、これまでとは異なる分野に挑戦できたことは非常に良い経験になったと思います」と下川は話す。

スヌーピーミュージアム グッズ KAWAI ミニピアノ

こうしてできあがったグッズは、最終的にこのように陳列された。

スヌーピーミュージアム グッズ

スヌーピーミュージアム グッズ 約500品番ものグッズをディスプレイ

約500品番ものグッズをディスプレイ

展示が入れ替わる半年ごとに、100点を超える新たなグッズを開発したSMCのプロジェクトメンバーたち。

「私たちは普段社内で業務にあたっているため、作り上げた商品をお客様がどのように購入し、使ってくださっているのかがなかなか伝わってきませんでした。今回『スヌーピーミュージアム』に何度も足を運び、買い物かごにたくさんの商品を入れているお客様を目の前で見ることができたのは大きな喜びであり、貴重な経験でした」(傳馬)
「今回のグッズ制作が、大きな自信につながりました。クライアント、ライセンシーからも“グッズのクオリティが素晴らしい”という言葉をいただき、自分でも良い仕事ができたと達成感を覚えています」(下川)
と、口々にその感想を語った。

最後に、渡邉は次のように述べた。
「3月末の時点で『スヌーピーミュージアム』の来場者数は100万人を突破し、大成功を収めたと言えるでしょう。ミュージアムで販売する商品は、すべてオリジナル。かわいいだけでなく、コンテンツの世界観、作者の思いを込めたアイテムです。そういう商品を求めて、非常に多くのお客様がミュージアムを訪れてくださいました。
また、2010年にSCPが『ピーナッツ』の国内エージェントとして活動を開始した際、同作の市場規模は365億円と言われていました。それが2017年には725億円に成長。約8年間で2倍に伸びたことになります。その市場の中で、ミュージアム限定商品をどのように作ればよいか。SMCの企画力、開発力があったからこそ、『スヌーピーミュージアム』のグッズ展開を成功に導くことができました。展覧会ビジネスで商品を制作することがあれば、ぜひSMCに連絡してください」

『ピーナッツ』への愛を2年半に渡って六本木から発信し続けた『スヌーピーミュージアム』は、9月24日まで開催中の最終回『ともだちは、みんな、ここにいる。』をもって、ひとまずその役割を終える。だがそれは終わりではない。

来春4月には大阪、6月には名古屋で、六本木の企画展を凝縮した展覧会を開催予定。さらに来秋には、東京・町田市の南町田グランベリーパークに『スヌーピーミュージアム』が移転されることも決まっている。

そう、ピーナッツ・ギャングたちは、いつでも、ここにいる。

© Peanuts Worldwide LLC

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