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連載Cocotame Series

デビュー35周年!TM NETWORK×映像

TM NETWORKのマニピュレーター・久保こーじによる“TMN終了ライブ”全曲解説<後編>

2019.04.17

  • ソニー・ミュージックダイレクト
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TM NETWORK(以下、TM)デビュー35周年。4月21日にライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』が全国14都市34カ所の映画館で1日限定プレミアム上映されるなど盛り上がりをみせるなか、CocotameではTM NETWORK×映像を大特集!

特集第5回では、TMN(TM NETWORKは1990年にTMNと改名)の終了ライブ「TMN 4001 DAYS GROOVE」(※)にマニピュレーターとして自身もステージに立っていた久保こーじ氏による全曲解説の後編をお届けする。
※のちに『TMN final live LAST GROOVE』としてライブ映像作品化、記事内ではこのライブを「TMN final live LAST GROOVE」で統一する

  • 久保こーじ

    Koji Kubo

    音楽プロデューサー、作曲家、アレンジャー。これまでに安室奈美恵、鈴木あみ、AAA ほか、多数のアーティストに楽曲を提供。1995年にはレコード大賞編曲賞を受賞。高校在学中に小室哲哉と出会い、小室がTMをはじめて以降、TMのシーケンサーのプログラマーに。その後、電子楽器や打ち込みサウンドをバンド演奏に取り入れコンピューター制御するマニピュレーター、サポートキーボーディストとしてTMおよび小室哲哉サウンドを支えてきた。1994年5月18、19日の東京ドーム公演では、開催までわずかな準備期間しかないなかで、ほぼ1日1曲のペースという、全曲分のライブ用打ち込みデータを新規で作成する必要があったという。

1994年5月19日「TMN final live LAST GROOVE」2日目

──1994年5月19日、「TMN final live LAST GROOVE」2日目・最終日は「1974 (16光年の訪問者)」から始まりました。

久保:前日のライブは、センターステージで「SEVEN DAYS WAR」で終わったのですが、その夜TMの3人とバンドメンバーでご飯を食べに行ったんです。僕が冗談半分で「今日はセンターステージで終わったので、明日はセンターステージから始めたらいいんじゃないですか?」と言ったら、先生(小室哲哉)が「おう、それ良いね!」となってしまって(笑)。

──小室さんも乗ってしまったんですね(笑)。 *詳しくは特集第3回「TMN終了ライブの制作担当者が語る"TM NETWORK秘話"」(新しいタブで開く)

久保:あとは、秘話で言うと「一途な恋」もシングル曲だからやるつもりで譜面も用意していました。

──リハで宇都宮(隆)さんが歌ってみたら、Aメロの息継ぎがなくて歌えないと外されたそうですね。「一途な恋」は終了直近の最新シングルでしたから、普通はやりますよね。

久保:それに代わって(2曲目)「STILL LOVE HER(失われた風景)」が入ったのかな。当時のTMの隠れた人気曲というところでは、「永遠のパスポート」的なポジションの曲です。「TMの好きな曲は?」というアンケートをとると、意外にも必ず上位にきていた曲ですね。

──そして、3曲目は「WILD HEAVEN」。アップテンポな曲のスタイルをとっていて、TMN期における「Self Control(方舟に曳かれて)」のような立ち位置でしょうか。

久保:まさに、そういう立ち位置でしたね。「WILD HEAVEN」のギターは葛G(葛城哲哉)で、木根さんの声よりはるかに葛Gのコーラスのほうが大きいので「4人目のメンバーになっちゃった」という感じでした(笑)。

ライブ表現とリンクして、新たなサウンドが生まれた

──4曲目「RHYTHM RED BEAT BLACK」、5曲目「Kiss You」。

久保:アバンギャルドというか、ぶっ飛んでいる曲ですね。

──ラップ要素もありますね。おもしろいのは「Get Wild」がヒットした後、「Get Wild」路線の曲をやっていくのではなく、「Kiss You」のような攻めた曲を出してくるのがTMらしさでもありますよね。6曲目の「COME ON EVERYBODY」も洋楽的なダンスミュージックの新しい要素を取り入れていて、この曲でNHK紅白歌合戦に出演するというのはかっこ良いですよね。

久保:そうですね。アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』に入っている曲ですからね。このアルバムは、組曲であり、ストーリーがあったコンセプトアルバムですが、そのなかでシングルのようなヒット曲がほしいということで作った曲が「COME ON EVERYBODY」でした。

──そして、7曲目から浅倉大介さんが参加しての「CAROL組曲」<a day in the girl’s life / CAROL(Carol& Theme I) / in the forest / CAROL(Carol& Theme II) / just one victory(たったひとつの勝利)>へ続きます。

久保:アルバム『CAROL』は、ミュージカルのようなコンサートをはじめ、アルバムから派生した小説やアニメが生まれたり、あの当時メディアミックスをやるというのはすごかったですね。ライブも、ジャイガンティカ(ストーリに出てくる魔王)の大きい人形を作ったりして。

──それこそピンク・フロイド的な世界観というか、すごいショウでした。

久保:音的にも一番完成していたと思います。機材環境の進化のおかげで、今はパソコンのなかにあるソフト音源をライブで鳴らすことが普通になっていますが、『CAROL』ツアーのころは、まだハードディスクレコーダーがなかったので、ステージ上にサンプリングマシンをたくさん置きました。でも、シンセサイザーからも本物のシンセサイザーの音を鳴らすので、シンセサイザーがステージ上から何十台も鳴っていたんです。

生の楽器が鳴る迫力と、録音されたものが鳴る迫力は、明らかに音のダイナミクスが違います。ふたつの音が大きなスピーカーからホールに響くと、みんな「おーーー!」ってなりますよね。今は、そんなことをやっている人はほぼいないですが。

──過渡期だったのですね。東京ドームの映像でも分かると思いますが、あれだけシンセサイザーを並べていたのはTMだけでした。

久保:当時からそうでしたね(笑)。あの当時は、そうやるしかなかったからやっていましたけど、今振り返えると、TMのライブでは画期的ですごいことをたくさんやっているんです。PAの小野さんも、ライブのたびに「こーじ、音の渦がすごくて俺もう酔っちゃうんだよね」って。音圧もすごかった。

でも、そういうTMのライブの姿勢は、今こそ必要なことだと思います。おじさんが死ぬ前に若者に継承して残せることはなんだろうと考えていると、やはり実機でのライブをなくしてはいけないなって思っています。

──そして、ライブは「Just One Victory(たったひとつの勝利)」を終えて、8曲目「Human System」へと続きます。

久保:「Human System」は、モーツァルトの「トルコ行進曲」をイントロでマッシュアップしていますが、クラシックの引用は早すぎるアイデアですよね。木根さんは、12弦ギターを弾いていました。

「GET WILD’89」は新たなシーンが追加された完全版!

──ここから9曲目小室さんのキーボードソロを挟んで、10曲目「TIME TO COUNT DOWN」、11曲目「69/99」とハードロックなナンバーが続きます。ここではギターの葛城さんの活躍や、自由なTMならではの空気感もあって、TMが持つ多様性、おもしろさが現われたシーンのひとつです。

久保:当時はそんなに変わったことをしている気はなかったんですが、いま振り返ってみると、そのころの変化はすごいですよね。YOSHIKIさんとも出会っていたり。

──12曲目では小室さんの「GET WILD '89」のイントロからスタート。13曲目「You can Dance」もそうですが、以前、「TMN final live LAST GROOVE」がDVDで発売された時にはなかったシーンも追加されていますね。

久保:「You can Dance」は遊び曲で、木根さんがホウキを持たされたり、亘ちゃんは何かを食べさせられたりしていましたね(笑)。

──いろんなことをやっていましたよね。東京ドームのステージでは、FANKS(TMのファンの呼称)にはお馴染みのユンカース(犬)の着ぐるみも登場しています。

久保:やりましたね。その昔は、僕がバカ殿の恰好をして客席を練り歩いたりもしました(笑)。伝説になっても良いんじゃないかというぐらい、メンバーより目立っていたという(笑)。

──そして、14曲目「DIVE INTO YOUR BODY」、15曲目「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」ですね。ここはまた畳みかけてくる感じで。

久保:「DIVE INTO YOUR BODY」は上がりきる曲ですからね。

──上がりきったあとに、16曲目「Nights of The Knife」がかかるとファンの方が泣いているという。膝から崩れ落ちている方もいて、イントロだけで一気に切ないモードになりました。

久保:2日目でこの曲がかかると、「ライブは終わり」ということがファンにも伝わりますからね。ウツに曲中で話をしてもらいたかったので、そのパートを作ったり。東京ドームは、ドラムはべーあん(阿部薫)と亘ちゃんのふたりでしたが、最後はどうしてもツインドラムで終わってほしかったので、アレンジさせてもらったり、この曲が一番、TMの3人にも、バンドのメンバーにも、それぞれにリクエストしました。この公演の中では、一番アレンジさせてもらった曲ですね。

──コンサートを締めくくるうえでとても重要な曲ですね。最後17曲目はアンコールで「TIMEMACHINE」。

久保:初期のライブでやっていた曲ですね。たぶん、歌詞と曲調が、あの当時の洋楽的なTMの3人にとっては合わなかったのかな。それでCDには入れなかった。でも、今聴いても良い曲で、いつまで経っても鮮度が落ちない曲だと思います。

“TMN終了ライブ”は、果たしてクールに終われたのか!?

──全曲解説は以上ですが、「TMN final live LAST GROOVE」を終えて、小室さんから労いのひと言はありましたか?

久保:あったかなぁ……意外とクールに終わるはずだったと思うんですよ。小室さんは、trfとかもう次のプロジェクトをやっていましたからね。でも、表情といい……恐らく泣いていたと思います。結局、心を揺さぶられちゃったんだなって。ウツや木根さんのほうが冷静というか、ライブを楽しんでいるように見えましたしね。

最初から「こーじ、俺ダメなんだよ。『Nights of The Knife』はリハでも泣いちゃうんだよ。最後のコーラスとか歌えなくなっちゃうからよ、サンプリングで入れといてくれるか!」なんて言っていた葛Gは、本番でもやっぱり泣いていましたけどね(笑)。

──最後ゆえの緊張感みたいなものありましたか?

久保:我々にですか? うーん……ないわけではなかったと思いますが、メンバー全員そこは大人だった気がします。

──映像を観ていると、とても落ち着いている感じがしました。

久保:実際、東京ドームのステージに立つと、お客さんは遠いんです。照明が当たると最前列のお客さんですらよく見えない。ましてや客席側のグラウンドの外なんて、何にも見えないんですよ。だから異次元にいたような感覚でした。イヤモニをしていなかったので、歓声を聴きながら「すごい人だなぁ」って思っていました。それでも冷静ではあったかもしれない。でも、僕も泣いちゃいましたけどね、「Nights of The Knife」のときに(笑)。

テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

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■「TM NETWORKデビュー35周年記念祭!ライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』(5.1ch HDリマスター版)一日限定プレミアム上映 #110107eiga」
日時:4月21日(日)開映15:30
※開場時間は、映画館によって異なります
http://www.110107.com/tmn_lastgroove(新しいタブで開く)

■TM NETWORK完全生産限定Blu-rayボックス
『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』
2019年5月22日発売/(Blu-ray BOX)32,400円/ソニー・ミュージックダイレクト
※1994年5月18、19日に行われた東京ドーム公演の映像作品『TMN final live LAST GROOVE』のほか、1985年に行われた「Dragon The Festival Tour featuring TM NETWORK」の東京・日本青年館公演や1980年代のライブ映像などを収録
http://www.110107.com/tm_network_the_videos(新しいタブで開く)

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