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連載Cocotame Series

スヌーピーミュージアム

『ピーナッツ』愛が詰まった聖地、新『スヌーピーミュージアム』を本国の人たちはどう感じた?【後編】

2020.02.07

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昨年12月、南町田グランベリーパークに新『スヌーピーミュージアム』がオープンした。六本木からの移転に伴い、展示内容や施設が拡充され、ワークショップなど人気のプログラムも充実。にぎやかなショッピングモールに隣接しながら、緑豊かな公園に抱かれた新たな聖地は、ゆっくりと『ピーナッツ』の世界に浸ることができ注目を集めている。

Cocotameでは、新『スヌーピーミュージアム』のオープンを記念して、さまざまな角度から新しいミュージアムの魅力を掘り下げていく。対談シリーズ第3回では、チャールズ・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるペイジ・ブラドック氏と、『スヌーピーミュージアム』のクリエイティブ・ディレクター 草刈大介氏に話を伺う。『ピーナッツ』愛に溢れた新たな聖地、新『スヌーピーミュージアム』をそれぞれどのように感じたのか、クリエイター目線で語ってもらった。

  • ペイジ・ブラドック氏

    Paige Braddock

    チャールズ・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツのチーフ・クリエイティブ・オフィサー。過去数冊の『ピーナッツ』絵本のイラストレーションを手掛け、スヌーピーの記念切手のデザインも担当。自身もマンガ家として『Jane's World』などの作品を発表している。

  • 草刈大介氏

    Kusakari Daisuke

    『スヌーピーミュージアム』のクリエイティブ・ディレクター。朝日新聞社で展覧会事業を担当。絵画、絵本、漫画、アニメーション、デザインなどの展覧会に関わる。2013年に森アーツセンターギャラリーで開催された「スヌーピー展」も担当。

ストイックに描き続けたシュルツ氏の50年がここにある

──新しくなった『スヌーピーミュージアム』で、ペイジさんが特に注目した展示について教えてください。

ペイジ:私は3つの展示に注目しました。今までにない斬新な表現だと思ったのは、「スヌーピー・ルーム」の巨大スヌーピー。スヌーピーはビーグル犬ですから、本来は抱っこできるくらいの大きさですよね。それが私たちよりはるかに大きいサイズになったなんて、すごくクールじゃない?

草刈:全長8mですからね。スヌーピーのオブジェとしては、史上最大クラスです。僕らとしては、大きさにせよポーズにせよ、今まで見たことのないスヌーピーを作りたかったんです。お客様にびっくりしていただきたかったし、スヌーピーへの興味も広がると思って。

ペイジ:続いての注目ポイントは、常設展のカラー展示。『ピーナッツ』は新聞に連載されていたコミックですけど、アメリカの新聞は紙がすごく薄いんです。しかも、インクの水分で印刷がにじんでしまいます。当時の技術だと、ロイ・リキテンスタインのアート作品のように点を打つことでしか印刷できなかったんですね。今回の展示では、その風合いをデザイナーが見事に再現しているし、それにとどまらず「新聞ってこういう手触りだった」「こういうにじみ方だった」とすべて伝わるように再構成されてます。それが素晴らしくて。

草刈:今見ると、当時の新聞印刷って版がズレたりにじんだりしているのがかわいく感じられませんか? 2013年に森アーツセンターギャラリーで「スヌーピー展」を開催したときも、版ズレを起こした古い新聞を拡大して壁に貼ったらすごくかわいかった。今回はさらにバージョンアップして、古い新聞を拡大するのではなく、わざわざ色のドットをデータで作成することで、際立たせて展示しています。それによって、当時の新聞が印刷されたばかりの状態を作り出したんですね。よりシャープに見えますし、ただかわいいというだけではない違った体験ができるようになっています。

ペイジ:3つ目は「ビーグル・スカウトがやってきた!」の企画展。あのエリアに入ると、山の頂みたいなものが見えてきて、あれが意図的に仕掛けられているのも素晴らしいと思いました。




草刈:「ビーグル・スカウト」はキャンプや山登りがテーマなので、それが発想の元です。あとは、犬小屋も山のような形をしてますよね。最初は壁に岩や木を付けて演出をしてはどうかと思ったのですが、デザイナーに「トゥーマッチになる」と言われて。そのあとに、このアイデアが出てきたんです。「なるほど!」という仕掛けをいろいろと仕込んでます。

ペイジ:壁に角度がついていて、山をイメージさせるアイデア。これを見た瞬間は、「天才!」と思わず叫んでいました(笑)。

草刈:彼女はいつも僕らのクリエイティブをチェックしてくれるので、びっくりさせるものを作りたいなと思って。もちろんペイジを満足させるためだけではありません。表現のレベルを高くすれば、たとえそれが表現と知覚されなくても、何か感じ取ってもらえると思うんです。どれだけ表現の幅を広げ、頂点を高くするかが大事だと思っています。

クリエイターとして大事にしていることは、作品と真摯に向き合う姿勢

──おふたりが『ピーナッツ』という作品と向き合うときに、大切にしていることを教えてください。

ペイジ:キャラクタービジネスのマーケットで、世界的に存在感のある『ピーナッツ』ですが、作品に向き合う際にはとにかく誠意、真摯さを心がけています。お金儲けやコマーシャリズムだけじゃない。チャールズ M.シュルツという作者が作品を通して伝えたかったこと、人が日常のなかで当然のように感じる感情や思考、その本質を追求しているのが『ピーナッツ』なんだと、常に念頭に置いています。

草刈:僕に限らず、日本で『ピーナッツ』に関わっている人はみんな、この作品に触れることができる幸せを味わっていると思うんです。例えば、どのエピソードを選んで紹介するか、本にどの画像を収録するか、その一つひとつがすごく特別なこと。夜中にパソコンに向かって作業しているとき、時々「すごく幸せだな」と思いますね。

ペイジ:私も間違いなくそうね。

草刈:ただ、我々はチャンスを与えられていると同時に、非常に大きな責任も担っています。だからこそ、真摯に取り組まねばと思いますね。

──おふたりは、チャールズ M.シュルツ氏のどんなところに惹かれ、またリスペクトされているのでしょう。

草刈:彼が毎日マンガを描いていたことですね。シュルツさんは50年間で1万8,000ものコミックを描いてきたんです。そのとてつもない精神力、エネルギーは、どこから湧いてきたんだろうと思います。きっと楽しんでいなければ成し得なかったことですよね。尊敬すべき点は多々ありますが、そのことだけでもすごいなと感じます。

ペイジ:私が尊敬するのは、マンガ家としての卓越した腕。とにかくずっと描き続け、素晴らしい完成度の作品を生み出してきた。しかも、さらに素晴らしいものにするための努力も惜しまなかった点ですね。

草刈:職人ですよね。自分の技能とストイックに向き合い、修練を重ねるわけだから。

ペイジ:マンガを好きな人間というのは、描かずにはいられないのだと思います。自分以外のものに衝き動かされるような感覚で、もう描くしかない。日々の思いを日記に書き留めるのと同じで、始めたらやめられないんですね。私にも、そういった側面があります。




──最後に、クリエイターにとって大事だと思うことを教えてください。

ペイジ:クリエイターは、言うべきことがなければ、できない職業ですよね。ある見解がある、それに対して言いたいことがある。だからこそ、みんなに伝えたいという気持ちも募ってきます。フィクションであれ、ストーリーマンガであれ、大事なのは自分が語りたいと思う物語を見つけることだと思います。

草刈:僕の場合は、自分でモノを作るわけではなく、クリエイターの力を借りて何かを作る役割です。この立場で大切なのは、彼女が話しているように作品やクリエイター、そしてそのファンに対して真摯であること。この『スヌーピーミュージアム』のプロジェクトにも、たくさんのクリエイターが携わっていて、それぞれがいろいろな方向に進もうとしますが、それをゆるやかに束ね、より遠くのゴールを目指して向かっていく。その姿勢が大事だと思います。そして、新しい『スヌーピーミュージアム』は、こうした態度が表れたクリエイティブだと感じています。

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

南町田グランベリーパーク 新『スヌーピーミュージアム』

所在地:東京都町田市鶴間3-1-1
アクセス:東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅より徒歩4分
東名高速道路・横浜町田ICより約1km

休館日:2月18日(火)/8月18日(火)
開館時間:10:00~20:00(入館は19:30まで)
3月より下記の通り開館時間が変更になります。
月曜日から木曜日/10:00~18:00(入館は17:30まで)
金曜日から日曜日、および祝日/10:00~20:00(入館は19:30まで)

【入館料】
一般・大学生:¥1,800(前売券)/¥2,000(当日券)
中学・高校生:¥800(前売券)/¥1,000(当日券)
4歳~小学生:¥400(前売券)/¥600(当日券)

スヌーピーミュージアムでは、六本木と同じく日時指定の前売券を販売しています。
滞在時間の制限はありませんので、入館後はゆっくりとご鑑賞できます。
当日券は、前売券の販売状況に余裕のある場合にミュージアムの窓口にて販売します。

チケットは、イープラス(新しいタブで開く)にて販売中(先着順)。
ワークショップのチケットは、パスマーケット(新しいタブで開く)にて販売中。

PEANUTS Cafe スヌーピーミュージアム
(ピーナッツ カフェ スヌーピーミュージアム)

営業時間:10:00~22:00(ラストオーダーは21:30)
席数:90席

『スヌーピーミュージアム』公式サイトはこちら(新しいタブで開く)

©Peanuts Worldwide LLC

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