『サッポロ一番 みそラーメン』をもっと美味しくいただくためのアレンジレシピ
2019.02.07
ソニーミュージックグループが設立してから50年という節目に、同じく50周年を迎える企業、ブランド、商品の歴史を紐解くことで、「時代」を浮き彫りにする連載企画。
今回、お伺いしたのは、「サッポロ一番」でその名を知られるサンヨー食品。そして、50年の歩みを紐解くのは、多くの人が一度は食したことがあるであろう、袋麺市場の超スタンダード商品『サッポロ一番 みそラーメン』だ。
シリーズの2回目となる今回は、長らく『サッポロ一番 みそラーメン』の開発を率いてきたサンヨー食品開発本部 本部長・堀口容正氏に、50年間、ひとつの商品をアップデートし続ける生みの苦しみと喜びについて語ってもらった。
堀口容正氏
Horiguchi Hiromasa
サンヨー食品株式会社
取締役
開発本部 本部長
――今回は商品開発部隊を率いる、サンヨー食品株式会社 取締役 開発本部 本部長の堀口さんにお話を伺います。本日はわざわざ群馬の開発本部からお越しくださりありがとうございます。
堀口:さすがに私も『サッポロ一番 みそラーメン』が発売した50年前はまだ入社前でしたが、約40年前にサンヨー食品に入社して以来、ほとんどの期間を開発の人間として過ごし、「サッポロ一番」の歩みを見てきました。今日はよろしくお願いします。
――サンヨー食品さんでは、どのように商品を開発されているんですか?
堀口:今は、マーケティング部がコンセプトやストーリーを立案し、それに基づいて開発部が商品に落とし込んでいく流れになっていますが、『サッポロ一番 みそラーメン』が生まれた当時は、開発部のスタッフが、それぞれ自分が美味しいと思うものを試作し、それをずらりと並べて経営陣にプレゼンするという形でした。そして、最終的に社長が決裁したものが商品化されていましたね。
――時代を感じさせる開発ストーリーですね。
堀口:ええ。ただ、実は、サンヨー食品が今のようにマーケティング主導の商品開発をするようになったのは約15年前、平成も半ばを過ぎたあたりからなんです。現社長(3代目社長・井田純一郎氏)になるまでは、わりとトップダウンで商品開発が進んでいました。
――そのように開発環境が変わっていったということは、この50年で『サッポロ一番 みそラーメン』の味付けもだいぶ変わっているのでしょうか。
堀口:それが、『サッポロ一番 みそラーメン』は初期の頃からほとんど味を変えていないんです。5年前、45周年の時に少しだけ味わい深くしたのですが、それもかなり意識して食べないと分からないくらいの違いでしかありません。
――人気のラーメン店は、常連のお客さんが味に飽きないように、ちょっとずつ味を変えていると聞きますが、『サッポロ一番 みそラーメン』はその振れ幅が少ないんですね。
堀口:常に、もっと良くしよう、美味しくしようと、毎年色々なアイデアを試しています。ただ、最終的にモニターテストを行なうと、「確かに、改良された方が美味しいけど、これだと『サッポロ一番 みそラーメン』じゃなくなるから変えないでほしい」って言われてしまうんです。私が開発に携わるようになってからこの40年、ほぼ100%、そう言われ続けてきました。なので、味に関わる部分で進化させられたのはごくごく一部です。
――その、「ごくごく一部」について、具体的に教えてください。
堀口:『サッポロ一番 みそラーメン』の生誕45周年のときにやったのは、付属スープに使われている味噌を7種のブレンドから、8種のブレンドに増やすことでした。この改良によって味に奥行きが感じられるようにしています。また、麵にもその味噌を練り込んで、一体感を高めました。
あと、大きなところでは付属の七味スパイスのグレードアップですね。『サッポロ一番 みそラーメン」の七味スパイスでは、香りを強く立たせることで、高級感を演出しています。反面、辛みはやや抑え目にして、味をとがらせすぎないようにしています。また、色味についても振りかけたときに映えるよう、赤色とオレンジ色のバランスを考えて配合を調整しました。
――すごいこだわりですね。でも、このレベルのこだわりが毎年のように不採用になっている事実は、開発者として辛いんじゃないですか?
堀口:そうですね。ただ、お客さまに愛される『サッポロ一番 みそラーメン』のDNAを守ることが何より大事ですから、そういったご意見は無視できません。また、それだけに、実際の製品に採用されることになったときはすごくうれしいものです。
――『サッポロ一番 みそラーメン』の味わいについてもう少し聞かせてください。売り上げは1位とは言え、袋麺の味噌ラーメン市場には他の選択肢もたくさんあります。そうした商品と比べて『サッポロ一番 みそラーメン』が優れているのはどういったところだとお考えですか?
堀口:まず、麵についてですが、麵を作る小麦粉にはかなりこだわっています。専用の小麦粉を使うというのは当然ですが、それも『みそラーメン』『しょうゆ味』『塩らーめん』で全て配合を変えています。また、麵の断面も単純な丸や四角ではなく、歯ごたえがあり、スープの絡みやすい楕円形(俵型)にしています。また、じゃが芋のデンプンを配合することで、滑らかさを増すようにしました。
――さらに麵には味噌を練り込んでいるんですよね。
堀口:はい。ちなみに『しょうゆ味』には醤油を、『塩らーめん』には山芋粉を練り込んでいます。また、実は『みそラーメン』の麵には味噌に加えて、少量ですが隠し味として醤油も練り込んでいるんです。噛みしめるとじわっと染み出してくる旨味が特徴です。
――前回、広報の水谷さんがおっしゃっていた、味わいの深さがまるで違うというスープについてはいかがですか?
堀口:5年前までは7種の、現在は8種の味噌を混ぜた粉末スープを配合しているのですが、それぞれの味噌で乾燥方法を変えています。“コクを出す”“風味を高める”などの目的に合わせ、乾燥方法を変えて粉末化し、それをブレンドしています。また、そこにガーリックとジンジャーを香辛料として追加し、さらにごく少量ですがカツオ節を効かせて渾然一体とした味わいを追求しました。
――それもすごいこだわりですね。でも、最近なら味噌を粉末化せずに付けることもできるんじゃないですか? カップの味噌汁が良い例だと思いますが。
堀口:そう思うでしょう? でも、実はそんなに簡単ではないんです。我々も過去にそうした試作をしたことがありますが、液体のままだと味が変わってしまって『サッポロ一番 みそラーメン』の味にならないんです。
――奥が深いんですね~。
堀口:ちなみに、これは社内で半ば伝説になっている言い伝えのようなものなんですが、『サッポロ一番 みそラーメン』の最終決定の試食の際、井田毅前社長は、あえて試作品のなかから一番美味しいと感じたものを外したと聞いています。
――どういうことなんですか?
堀口:井田毅前社長曰く、「美味しすぎるものは飽きる」そうなんです。確かにこれは事実で、これまでボツになったアイデアも、一発勝負で比較すれば、どれも今までより確実に美味しくなっているんです。ただ、10年、20年食べ続けていただくことを考えると、今ぐらいの味わいがベストということなんでしょう。『サッポロ一番 みそラーメン』は“美味しいの一歩手前”だったから50年も愛され続けることができたとも考えられます。
――続いて、『サッポロ一番 みそラーメン』をベースとした商品についても教えてください。これまでいろいろな製品を出していると思うのですが、特に印象深いものはありますか? ここは広報の水谷さんにも加わっていただきたいと思います。
堀口:やってみて面白かったのは、『サッポロ一番 みそラーメン』の味わいを鍋料理として楽しめるようにした『サッポロ一番 みそラーメンが鍋になりました 鍋スープ&〆のラーメンセット』ですね。これにはさっきお話しした、粉末化しなかった、ちょっと高級感がある液体味噌をスープに使っているんですよ。ラーメンよりもしっかり煮込む鍋仕様なので、液体味噌が良い感じに熟れるんです。
水谷:2015年に発売し、その後、何度か冬シーズンに登場していますが、2018年はお休みしていますね。私もこれ、大好きです。ちなみに、このシリーズでは、夏シーズン向けに『サッポロ一番 みそラーメンが焼肉になりました』というのもやっています。添付の味噌タレで焼肉を楽しんでいただいた後、残った具材で焼きラーメンを作っていただくというものです。
――なるほど。その商品への反応はどうだったんですか?
水谷:発売当時は大好評だったのですが、寒さとか野菜の価格など、年によって売り上げの変動が激しいことが分かって、今は様子見の状態です。鍋コーナーに「サッポロ一番」が置いてあるのに違和感のあるお客さんもいらっしゃったかもしれませんね。
堀口:でも、味には自信があるので、またやりたいですよ。あと、2006年に、「サッポロ一番」40周年記念キャンペーンプレゼントとして、液体味噌を使った『金色(こんじき)のサッポロ一番みそラーメン』というものも作りました。こちらは麵もノンフライタイプにするなど、徹底的にこだわり、『サッポロ一番 みそラーメン』とはだいぶ異なる味わいではあるのですが、オリジナルを凌ぐべく、とびっきり上等なものを作りました。これもまたいつか再チャレンジしてみたいです。
――いいですね、究極の『みそラーメン』。ぜひ、やってみてほしいです! ……そう言えばいつの頃からか、カップタイプの『サッポロ一番 みそラーメンどんぶり』も始められていますよね。
堀口:調理方法が異なる袋麺とカップ麵では、全く同じ味を再現することができないとされてきました。カップタイプの『サッポロ一番 みそラーメンどんぶり』は、20年前に商品化したのですが、当時は「再現できない=やってはいけないこと」とされていたので、開発するのが怖かったですね。
――やっぱり同じ味は再現できなかったんですか?
堀口:袋麺の麵は植物油にラードを配合した油で揚げているため、コクのある味わいなんですが、鍋で煮込まないカップ麵は植物油で揚げており、また、小麦粉の配合も変えているので、そこに大きな差がありました。アンケートでも「これはこれで美味しいけど、『サッポロ一番 みそラーメン』ではない」というご意見があって……。
――それでは、当然味も違ってきますね。
堀口:でも、2018年の製品から、煮込んだときと同じ味になるような成分を新開発して、徹底的に改良を行ない、袋麺と同等に近い味わいを実現しています。お手軽なカップタイプで『サッポロ一番 みそラーメン』をサッと食べたいという方のニーズをやっと満たすことができました。
水谷:何年か前にカップタイプを食べてみて、もし、ちょっと違うなと感じた経験のある方には、ぜひ今のカップタイプの『サッポロ一番 みそラーメン』をお試しいただきたいですね。
堀口:カップタイプと言えば、『サッポロ一番 みそラーメン』は定期的にビッグサイズの縦型容器の限定版も発売されています。こちらは、レギュラーのものと異なり、限定販売なので、珍しい材料を使ったり、新しいことにチャレンジしています。開発部としてはどれも非常に感慨深い製品が多いです。
――なかでもおすすめのものはありますか?
堀口:50周年記念で2018年12月に発売した『サッポロ一番 みそラーメン 50周年記念豪華版 三重県産伊勢海老使用 タテビッグ』ですね。ポイントは「伊勢海老」という名称。実は、「伊勢海老」という名称は、三重県で水揚げされた本物の伊勢海老を使った原料が入っている商品にしか使えないんです(ほかで獲れた商品は「イセエビ」表記)。
――おお、これは食べてみたい!
水谷:ただ、堀口が言うように、この商品は期間限定販売なので、この記事が掲載される頃には、もう売り切れてしまっているかもしれません。すみません……。このシリーズは今後もいろいろな味を提案していきますので、ぜひ、見かけたときは手に取っていただければと思います。
――そう言われるとますます食べたくなりますね! ほかに、今でも買えるものはありますか?
水谷:『サッポロ一番 みそラーメン 旨辛』がおすすめです。『サッポロ一番みそラーメン』の味わいに「ビーフの旨味」と「コチュジャンの辛さ」が加わった、「サッポロ一番」ブランドの新しい旨辛味の「みそラーメン」です。
堀口:辛さだけでなく、肉の旨味や、味噌のコクが効いて、奥深い旨辛な味わいになっています。最近は、こういう辛いラーメンが人気なので、お好きな人はぜひ!
――本当にいろいろ発売されているんですね。では、最後に今後、『サッポロ一番 みそラーメン』がどのように進化していくのか、展望も含めてお聞かせください。
水谷:これからは、日本以外の世界各国にも『サッポロ一番 みそラーメン』を広めていきたいですね。実は50年近く前からアメリカでは「サッポロ一番」を販売しているのですが、それ以外の国ではまだ公式には展開できていません。2020年の東京オリンピックなどで、来日された方々が、お土産として「サッポロ一番」を選んでくれるように、より一層ブランドの認知を高めていきたいです。
堀口:『サッポロ一番 みそラーメン』が50年と言わず、100年、1000年、今までと変わらぬ味で続けていけるよう、そのDNAをきちんと受け継いでいくのが我々の仕事です。その上で、さまざまなバリエーション商品にチャレンジしていきたい。バリエーション展開を始めたのはここ5年くらいなので、やれていないこと、やりたいことがまだまだたくさんあるんです。
ただ、開発するときに気を付けなければいけないのが、「ラーメン」の派生商品ではなく、『サッポロ一番 みそラーメン』のバリエーション商品であるということ。今後は、さらに幅を拡げて、さまざまな形でより多くの人に『サッポロ一番 みそラーメン』の味を楽しんでいただけるようにしていきたいです。
――ちなみにおふたりは「サッポロ一番」で一番好きな味はどれなんですか?
水谷:私は、学生時代は『塩らーめん』だったんですが、今は『みそラーメン』です!
――ですよね!
堀口:あ、私は『塩らーめん』です。
――えええーーーッ!?
『サッポロ一番みそラーメン』シリーズの最終回は、Cocotame編集部による『サッポロ一番 みそラーメン』アレンジレシピ実食会をレポート。ひと手間加えることで『サッポロ一番 みそラーメン』が、もっと美味しくなりました!!
取材/文:山下達也
撮影:増田慶
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