平井一夫が「プロジェクト希望」で取り組む子どもたちの体験格差の縮小と未来への種まき①
2024.09.30
お笑い芸人・ハリウッドザコシショウ(以下、ザコシショウ)が、ひとり芸No.1コンテスト「R-1ぐらんぷり2016」にて、見事過去最多エントリー3,786人の頂点に輝きました。
“ルール無用のお笑い超人”とキャッチコピーが付けられたザコシショウは、“誇張しすぎたものまね”や“やりつくされたものまねをあえてやる”というシリーズで、スタジオの空気を一変。ファイナルステージで、他の2人に圧倒的な大差をつけて優勝しました。
苦節24年目にして勝ち取った感動の優勝劇から約1カ月。現在はテレビ出演などで多忙を極めるザコシショウ本人と、ザコシショウが所属するソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)のお笑い芸人プロジェクト「NEET project」を統括する平井精一さんのインタビューをお届けします。
ザコシショウ:優勝が決まった瞬間は本当に嬉しかったです。でもその後はとにかく仕事尽くしで、まったく休みがなく。これが続けばいいなと思ってはいるのですが、今は少し休みがほしいとも思ったりしています。これまでにこんなことはなかったので。嬉しい悲鳴ですが(笑)
――平井さんは優勝が決まった瞬間はいかがでしたか?
平井:当日は楽屋にいました。プレッシャーになってはいけないと思い、ザコシショウには「ファイナルステージに残ってくれればいいから」と伝え、あえて「優勝しろ」とは言いませんでした。実は途中から、これは優勝するぞと確信していたのですが、それを本人に言ってしまうとかえってプレッシャーを感じて変なところで噛んだりするかもしれないと思ったので、ファイナルに進んだ時点で、「ここまで来ればもう安泰だ、安心しろ」「これで仕事が舞い込んでくるから全力でいけ、失敗してもいいから、ガッツリやってこい」とだけ言って送り出したんです。
ザコシショウ:そうだったんですね(笑)。実際「優勝しなくていいから」と言われて、だいぶ気持ちが楽になったのは事実です。
平井:もしも自分が芸人で、ここで何を言ってほしいかと考えたら、とにかく安心したいだろうと思ったんです。これで営業の仕事が入り、バイト漬けの生活から抜けられてお笑いだけで食べていけると。プレッシャーをかけるのでなく安心してもらうことのほうが、緊張しないで最高のパフォーマンスを出せるのではないかと思いました。
一方で、彼は24年もやってきていましたし、SMAのお笑いプロジェクトの初期メンバーでもあったので、とにかくどうにかして花開いてほしいという強い思いもありました。
平井:今と変わらないです。すごく人に気を遣いますし、お笑いも変わってないですね。彼のライブを初めて見たときに、間とか発声とか空気の作り方とかすべてがパーフェクトだなって思ったんです。ただ正直、ネタだけはよくわかりませんでした(笑)。
だけど、芸人をマネジメントしていくのには専門店じゃなくて、百貨店であるべきだと思っているんです。いろいろなタイプの芸人がいなければ、その時代の流れに合わせていけないのではないかと。ザコシショウみたいなタイプも百貨店には必要だと思いましたし、いつか彼が求められる時代が来るかもしれないと思っていました。
――24年も続けられたのは何故でしょう?
ザコシショウ:同じことをやっていて、10年鳴かず飛ばずだと、やっぱりどこかで気持ちがブレてしまうことも多いかと思いますが、自分の信念をもっていて、こういう笑いを届けたいんだっていうものが、僕にははっきりとあったので。
あと、吉本(吉本興業株式会社)時代の同期の存在も大きいですね。ケンコバ(ケンドーコバヤシ)や中川家、タムケン(たむらけんじ)、陣内(智則)などですが、彼らと僕とでは技術的にそんなに大差ないと思っていたんです。あいつらが売れているんだったら、絶対に僕も売れるはずという気持ちでいました。今回の優勝も、皆ものすごく喜んでくれました。
―― SMAに所属された経緯を教えてください。
ザコシショウ:一度だけお笑いをやめて漫画家を目指したのですがすぐに挫折して、やっぱりお笑いだと思っていたときに、芸人仲間から「ソニーがお笑い部門を立ち上げたらしい」と聞いて、訪ねてみたのがきっかけです。
―― 実際に入ってみて、いかがでしたか? 他の事務所と違うところはどんなところですか?
ザコシショウ:他の事務所ではお笑いのライブに出るのにもまずネタ見せをして、その中の選ばれた10組ぐらいしかステージに上がれないんです。だけど、SMAはとにかく全員出られるんですよ。それがきっと良かったんだと思います。ライブはやらないより、やった方が自分の経験値にもなるし、度胸もつきますしね。ここが敷居の高い事務所だったら、お笑いをやめていたかもしれません!(笑)
ザコシショウ:Beach Vという稽古場兼ライブハウスがあることですね。例えばYouTubeで動画をあげたいというときにも、稽古場を使って夜中に撮影することができますし、大きな声を出しての自主稽古もできます。実は家賃が払えなくなり、そこに2年ぐらい住まわせてもらったこともありました。
あと僕は中学生の頃から電気グルーヴさんの大ファンで。今同じ事務所に所属していて、ピエール瀧さんと一緒に仕事することがあるなんて、学生の頃から考えるととんでもないことのような気がしています。
――ザコシショウさんから見た平井さんはどんな方ですか?
ザコシショウ:とても厳しい人ですね(笑)。怠けていると怒られますから。でもやっぱりあれこれ言ってもらわないと芸人はわからないことが多いので、これからもビシビシ厳しく言ってくれた方がいいと思います。
平井:当たり前ですが、すべての芸人が成功するわけではなく、成功するのはほんの一握りです。でも社会人として、きちんと挨拶ができるとか常識のある人間でいれば、もし芸人として成功しなくても、きっと他のことで成功できると思うんです。
昔の芸人は、博打だ、酒だ、女だって感じでしたけど、今はもうそんな時代じゃない。自分の襟を正していかないといけないような世の中になってきていると思うんです。今やテレビに出る人の半分以上がお笑いタレントだったりして、ひとつの職業として成り立っているわけですので、それを観る子ども達の目標になるような生き方をしなければいけないとも思います。
あと、何事に対してもレスポンスを早くするようにと彼らによく言っています。たとえばメールの返信が早いというだけでも、SMAに相談をすれば回答が早いと喜ばれたりします。イヤな仕事でもちゃんと引き受けることによって、必ず覚えてもらえますし、また次の仕事にも繋がるんだとも言い聞かせています。うちにはまだ大御所の芸人がいないので、新人を一緒に売り込んだりするようなことはなかなかできないのですが、SMAにお願いすれば対応が早いとか、時間を守るとか、断らずやってくれるとか、そういった一つひとつの小さなことの積み重ねが、芸人たちやSMAの5年後10年後の未来に繋がっていくのだと思っています。
―― その結果もあって、今年の「R-1」ではザコシショウさんのほかにも、マツモトクラブさんが決勝戦に出場するなど、SMA所属の芸人さん達がたくさん勝ち上がりました。
平井:10年前にお笑いのプロジェクトを立ち上げた当初には想像もしていなかったので、本当に嬉しく思いました。
――今後の抱負を聞かせてください。
ザコシショウ:死ぬまで芸能界でやっていけるように頑張っていきたいと思います!
平井:みんなが楽しく人に優しく生きていければいいかなと思います。まず自分が幸せじゃなければ、人を笑わせることって難しいですよね。お笑いは人に幸せを配っていく仕事だと思うので、まずは自分が幸せでいられるように。
そしてその上で、より多くのお笑いを届けていける芸人を一人でも多く育てていければ嬉しいです。あとお笑いの3大タイトルのうち、「キングオブコント」でバイきんぐが、「R-1」でザコシショウが優勝したのに続いて、残る「M-1グランプリ」でもトップを取って、三冠を目指したいと思います!
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