平井一夫が「プロジェクト希望」で取り組む子どもたちの体験格差の縮小と未来への種まき①
2024.09.30
2017.10.31
10月7日(土)、8日(日)に南青山のFuture SEVENにて開催された、音楽シーンのトップを走るクリエイターとアーティストが講師を務める“エンタテインメントの学びの祭典”、『SONIC ACADEMY FES EX 2017(ソニックアカデミー フェス エクストリーム 2017)』。
初日のレポートに引き続き、2日目に開催された4講座から、2004年に衝撃的なデビューを果たして以来、20~30代の女性を中心に圧倒的な支持を得るシンガーソングライター加藤ミリヤの講座と、実力派ロックバンドUVERworldのドラマー・真太郎の講座の模様をレポートする。
講師:加藤ミリヤ
昨年の同イベントにも登壇した加藤ミリヤ。受講者には彼女のファンと思われる人たちも多く、加藤ミリヤと同世代の20代女性を中心に、会場は多くの受講者で埋め尽くされた。また、この講座ではひとり1枚ずつ、講座の資料にもなる「加藤ミリヤ年表」が配布され、来場者たちを喜ばせていた。
講座の司会進行は加藤ミリヤの音楽インタビューも多く手掛ける佐藤公郎が務め、スペシャルゲストとして、デビューから現在まで彼女のプロデュースを手がけているShingo.Sが登壇。
Shingo.Sは、加藤ミリヤのほかにも青山テルマ、清水翔太などR&Bやヒップホップで活躍する多くのアーティストのプロデュース、楽曲制作を手がける音楽プロデューサーである。
受講者らの大きな拍手で迎えられた加藤ミリヤは、「去年はひとりで講座をしたので緊張したけど、今年はふたりだから全然(笑)。来て良かったと思ってもらえることをたくさん話したいです」とにこやかに席についた。
この日の講座内容は、加藤ミリヤの代表曲を例に挙げ、楽曲制作時のエピソードを加藤ミリヤとShingo.Sが振り返っていくというもの。
それぞれの楽曲についてはこれまで彼女自身がメディアで語る機会はあったが、プロデューサーであるShingo.Sの第三者視点から語られることはなかったため、非常に興味深いエピソードも多数飛び出した。ここからは、いくつかの楽曲解説トークをピックアップしていこう。
■「夜空」(2004年)
記念すべきデビュー曲「夜空」は彼女が16歳の時にリリースしたが、実際に曲を作ったのは14歳の頃だったという。「当時から、ヒップホップ、R&Bが大好きで、サンプリングに日本の曲を使ったジャパニーズヒップホップをどうしてもデビュー曲でやりたかった」とのこと。
海外の有名曲をサンプリングする手法はよくあるが、日本の楽曲でやるのは、ほぼ前例がなかったため、「夜空」の制作はまず、サンプリング元となったBUDDHA BRANDの「人間発電所」の使用許可を得ることからスタート。ミリヤ自身がBUDDHA BRANDのメンバーと新宿のルノアールで会い、直談判したことがすべての始まりだった。
Shingo.Sは、加藤ミリヤのデビュー曲をプロデュースするにあたり、当時をこう振り返る。
「『人間発電所』は僕の学生時代の“神曲”。この曲をサンプリングするなら、良いものにしないとディスられてしまう。14歳の女の子だったミリヤの気合いにも刺激を受けて、絶対にカッコ良い曲に仕上げないといけないな、と気合いが入りました」
また、Shingo.Sは「夜空」のサンプリングについて「『人間発電所』を4~8小節程度に大きく扱うほうが面白くなると感じて、そこにミリヤが歌を乗せることが新しかった」と語り、加藤ミリヤも「何パターンも作りすぎて、正解が分からなくなるくらいだったけど、メロディには制限がない。いろいろなパターンを試せることをこの曲で学びました。それと、歌詞の世界観は決まっていて、メアリー・J. ブライジの名曲〈リアル・ラヴ〉をイメージしていた」と解説した。
そもそもサンプリングによる楽曲制作は、原曲への愛情とリスペクトが重要とされる。加藤ミリヤは「夜空」以降も、様々なサンプリングによる楽曲制作を続けてきたが、「常に原曲を超えることはできないと思ってやってきました。メチャメチャその曲が好きだからしっかり“採り入れたい”と思っていて、採り入れることで何が生まれるのか?を楽しむのがサンプリングに取り組む時の姿勢です。アーティスト本人から許可がもらえたことを、自信と勇気にして作ってきました」と、熱い想いを語った。
■「FUTURECHECKA feat. SIMON, COMA-CHI & TARO SOUL」(2007年)
進行役の佐藤が「加藤ミリヤの サンプリングといえばこの曲、とにかく衝撃的だった」と言うV.I.P CREWの「Dancehall Checker(V.I.P MIX)(feat.PUSHIM,BOY-KEN,ZEEBRA,YOU THE ROCK★,TWIGY)」を原曲にした「FUTURECHECKA feat. SIMON, COMA-CHI & TARO SOUL」は、「ヒップホップやR&Bではなく、ジャパニーズ・レゲエの名曲をサンプリングしたナンバーで、当時のアングラレゲエシーンでこれから来るであろう人達をフィーチャリングしたことも斬新だった」と解説。
「トラックをサンプリングで作ったわけではなく、原曲のサビをメロディで歌ったことが新しかった」とShingo.Sさんは言い、当時を思い出して加藤ミリヤは、「私の元々の担当者がレゲエ好きで、レゲエを教えてくれたんです。私を和製ローリン・ヒルにしたかったみたいです(笑)」と裏話を披露した。
■「このままずっと朝まで」(2007年)
Tanto Metro & Devonteの「Everyone Falls In Love」をサンプリングしたこの曲は、洋楽の名曲にチャレンジし出した頃のナンバーで、後の「恋シテル」(Shaniceの「I Love Your Smile」をサンプリング)の奇跡にもつながる曲だという。
加藤ミリヤはこの曲を「踊れる曲にしたかったし、懐かしい名曲だけでなく、新しめの曲をサンプリングすることにもトライしたかった」と語る。
“サンプリング”を軸にした楽曲エピソードに続き、今の曲作りについてのトークも展開された。現在も新曲を制作中だという加藤ミリヤは、「今は自分の中にあるR&B、ヒップホップをかみ砕きたい時期。最新アルバム『Utopia』では普遍をテーマにしたけど、次はまた違うことをやりたい。サンプリングは私の代名詞だと思うから、今度は今までとは違う挑戦をしているところ」と、次なるビジョンを語っていた。
終始リラックスしたムードの中で、自身の楽曲制作について本音を語った加藤ミリヤは最後に、「またサンプリングはやりたい」と語り、実は今日の講座で話したことの中に、次の新曲のヒントもたくさん隠されていたという。「今が幸せ、早く新しい曲を皆さんに聴いてもらいたい!」とワクワクした顔で話を終えた。彼女のまだ見ぬ新曲が、とても楽しみになる講座だった。
加藤ミリヤオフィシャルサイトはこちら
講師:UVERworld 真太郎
『SONIC ACADEMY FES EX 2017』の大トリを飾ったのはUVERworldのドラマー・真太郎。真太郎も加藤ミリヤと同じく、本イベントで講師を務めるのは2回目となる。
前回に引き続き、ステージにはドラムセットが置かれ、UVERworldの楽曲に合わせた本人の演奏を交えながら、UVERworldのA&R担当・ソニー・ミュージックレーベルズの田野口真介の司会進行で、真太郎流ドラムプレイが出来上がるまでが紹介された。
真太郎はステージに上がると、会場の受講者の顔をひとり一人確かめるように見回しながら、「今日はドラムへのアプローチやドラマーのためになることをお伝えする会です。精一杯やりますんで、楽しんで帰ってください」とフレンドリーに語りかけた。
最初のテーマは“音楽との出会い”。真太郎がドラムを始めたきっかけは中学2年生の文化祭でのバンド演奏で、自宅に父親が趣味のジャズをやるために購入したドラムセットがあったために、バンドでドラムを担当することになったのだとか。そのドラムセットはYAMAHAの「ROCK TOUR」シリーズで、今も手元に残しているという。
また、その文化祭のバンドでは、THE YELLOW MONKEYの「花吹雪」をコピーしたのだが、練習で初めてドラムを叩いたにも関わらず、たった2秒で8ビートをマスターし同級生を驚かせたという。天性の才能を感じさせるエピソードに、会場からも驚きの声が上がっていた。
……と、ここで真太郎が「この中でドラムやってる人は?」と受講者に質問。十数人の手が挙がったところで、まずは最初の実演タイムに入る。
真太郎は「手元、足元を見てもらった方がドラマーの人には参考になるので、去年はドラムセットを後ろ向きに組んで、みんなが見やすいようにしたんだけど、そうすると壁を見つめながら叩くことになって、俺のテンションが全然上がらないので(笑)、今日は普通に置いてもらいました。なので、足元とかを、よく見たい人は後ろに回っていいですよ。ただ、近いとかなりうるさいから気を付けてね」との提案が。
受講者の1/3ほどが真太郎をズラッと取り囲み、ドラム以外のオケを流しながら「DECIDED」が披露された。
真太郎のしなやかなフォームから繰り出される、キレのあるドラミングは迫力満点。前方スクリーンには、彼を真上から捉えた映像が映し出され、真太郎流ドラムの特徴でもある、ハイハットを挟んで置かれた2種類のスネアの叩き分けなども、克明に見ることができる。
ちなみに真太郎は、必ず靴を脱いでバスドラを踏むスタイルをとる。その理由は若い頃、地元で練習していた時のクセで「田舎のスタジオは土足厳禁だったから、その習慣が染みついてしまって今も靴を履いて叩けない。俺たちが東京の練習スタジオに初めて行った時も、靴を脱いで入ろうとしたからね(笑)」と、当時を懐かしんでいた。
UVERworldは今でも全国ツアーの最中に、地方都市で貸スタジオに入って練習することが多く、「もし見かけても、そっとしておいてください」とも語っていた。
続いて語られたのは「憧れ・目標のドラマー」について。真太郎は好きなドラマーに、恒岡章(Hi-STANDARD)と中村達也(元BLANKEY JET CITY)を挙げ、「恒さんはずっとコピーしてたから、自分でも気づかないうちに影響を受けていると思う。でも自分のドラムの完成形でイメージに一番近いのは、デイヴ・グロール(フー・ファイターズ/元ニルヴァーナ)。ドラムはスポーツだと思っているから、スポーティなドラムが好きですね」。
なお、彼がツインペダルを使用しているのは、アマチュア時代に前座を務めていたSUCK DOWNというバンドが、ツインペダルをヘヴィメタル風ではなく、オカズを入れるように使いこなしていたから。当時ローンを組んで初めて買ったツインペダル『DW 9000』をメンテナンスしながら未だに使っているという。
ここで司会の田野口より、「真太郎さんのムチのようなドラミングは、学生時代にやっていた野球が関係あるのではないか?」という疑問が出され、真太郎は「関係あると思う。スティックは投球のスナップのイメージで叩いている」と答えた。
さらに「ドラマーによって叩きやすいセッティングが違うのは、身体特性が違うから。俺は前傾姿勢で上半身を使って叩いているから、意識がスネアにいく。ドラマーの人は、“4スタンス理論”を参考にすると、自分に合うセッティングを見つけやすいと思う」とアドバイス。さらに「俺はダブルストローク(一振りで2打叩くこと)を覚えたのが遅かったし、パラディドル(連続した2つの音符を左右交互に同じ手で連続して叩くこと)を知ったのも最近。でも、それでとてもラクに叩けるようになった。つまらないと感じる基礎練習も続けると、何かが見つかる」と話した。
そしてここで再び実演タイムに入りアルバム「TYCOON」より「Q.E.D.」を披露。彼がドラミングで意識していることは「ドラムと同じリズム隊であるベースだけでなく、ギターや歌にも寄り添うこと。ギターのフレーズと一緒にドラムを聴いてもらうと、ユニゾン(2つ以上の音が重なること)になっているのがわかると思う」。UVERworldの曲を聴く時には、ぜひ注目してほしい。
講座の後半にはスクリーンを使って、UVERworldデビュー後から10月4日にファイナルを迎えた全国ツアー「IDEAL REALITY TOUR」日本武道館公演までの「ドラム機材遍歴」を紹介。
ライブでは使用されていないが、デビューシングル「D-tecnoLife」のミュージックビデオで使われたパールのセットから始まり、2007年に初めて自分の所有セットとなったDWや現在使用しているSAKAEセットの遍歴などが、写真と当時のエピソードを交えて詳しく紹介された。
そして最後に、「締めの1曲」としてアルバム「TYCOON」より「IDEAL REALITY」を生演奏。盛大な拍手が贈られ、真太郎は「またライブでお待ちしております!」と笑顔で講座を締めくくった。UVERworldファンにもドラマーにも興味深い話が次々に登場したこちらの講座。
彼の華麗なドラミングとこだわりのサウンドは、11月2日よりスタートする「UVERworld TYCOON TOUR」でも、ぜひチェックしてほしい。
UVERwordオフィシャルサイトはこちら
こうして2日間にわたって開催された『SONIC ACADEMY FES EX 2017』は幕を閉じた。
講師を務めた現役のアーティストやクリエイター達から数々のリアルな声、そしてここでしか聞けないさまざまなエピソードが飛び出し、まさにエクストリームな体験を提供する“エンタテインメントの学びの祭典”だった。
来年はどのような講師陣が登場するのか、今から楽しみである。
『SONIC ACADEMY』のオフィシャルホームページはこちら
*『SONIC ACADEMY』とは?
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