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連載Cocotame Series

芸人の笑像

アキラ100%:お盆ひとつでピン芸人界を渡り歩く裸芸職人の進化【後編】

2020.05.01

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ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットをあて、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第4回は、説明不要の国民的裸芸人・アキラ100%。裸芸を始めた2015年からお盆を封印して俳優業にも乗り出した現在、そしてこの先の展望まで、胸の内を明かす。

海外からも注目される裸芸人アキラ100%。映画やドラマで演技をする大橋彰。今やふたつの顔を持ち、活動の場も芸風も、目下拡大中だ。

前編はこちら

  • アキラ100%

    Akira100%

    1974年8月15日生まれ。埼玉県出身。血液型A型。2017年『R-1ぐらんぷり』優勝。ドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』に出演するなど、本名の大橋彰で俳優としても活躍中。

たくさん作ることが“当てる”ことに

苦労しながら、より斬新な新ネタを作ろうとするチャレンジ精神と試行錯誤は、彼が2年前に開設した公式YouTubeチャンネル「akira100p ch」でも確認することができる。

なかでも、科学玩具の5つの鉄球が順番にカチカチとリズミカルにぶつかり合うタイミングに合わせて隠す“AKIRA100% Pendulum ver.1 / アキラ100%『ニュートンの振り子』”の動画は、現在、138万回再生を記録。海外ユーザーからも高い評価を受けた。

「でも海外でバズったのはほんとに偶然。ネット民の皆さんは反応が速いから、拡散力があるじゃないですか。海外に広がったネタは、それもすごく影響していると思います。本当は、自分でバズらせる戦略や仕掛けも考えたいんですけど、今はタイトルや概要欄に英語表記を入れるくらいで、そこまでできてない。あと、例えば動くぬいぐるみとか走る電車のおもちゃを使った、ものすごく撮影が大変だったネタもあるんですが、苦労したものほど再生数は伸びない(苦笑)。“振り子”くらいシンプルなほうが、わかりやすくていいんでしょうかね。自分のネタもそうですけど、何が当たるかわからないというのは、ふだんのネタも動画も一緒かもしれないです」

お盆芸も、何が当たるかわからないが、とにかくやって、ネタの数を増やすところからスタートしたもの。

「結局、考え方はごくごくシンプルで、数をたくさん作ることが“当てる”ことに繋がるのかもと思うんですよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで。あのピコ太郎さんも、『PPAP』が当たるまでずっと音ネタを続けていたと聞きますし……。お笑いというのは、本当に奥が深い。今は動画もたまにしかアップできてないんですが、YouTubeでの発信は続けていきたいです」

デジタルだからこそできるネタ

テレビやライブで披露してウケるネタと、カメラ位置を工夫することでより意外性のある隠し方が可能なYouTube動画のネタとでは、演じるほうも違いがあるという。

「動画は1カメなので、ふだんのネタとはそもそも考え方を変えなきゃいけないんですよね。それは実際にやってみてわかったことです。今、動画では1カメの利点を活かして、遠近法を使った工夫をしていますけど、デジタルだからこそできるネタというのも今後は考えていきたいんです。せっかくソニーミュージックグループに所属しているんだから……例えばソニーのaiboとコラボしてみるとか、おもしろそうじゃないですか。aiboから裸を嫌がられなければですけど(笑)。ドローンに隠すものをぶら下げて飛ばすネタも、自動プログラミング飛行をさせられたらもっとおもしろくなる。グリーンバックの合成で、例の部分だけを抜いて動かしたり、コラージュしたり。そのためには自分で編集ができるようにならなきゃなぁとは思ってます」

ただし、デジタル技術と裸芸をマリアージュして動画で展開させるには、避けられない悩みもあるそうだ。

「カメラの性能ですね。動画も、今は手軽にスマホで撮れるようになったから、僕もYouTubeを始められたんですけど。今のテレビのフレーム(コマ)数は30(fps)。でも、最近の高性能なスマホは90(fps)というのもある。僕のネタは、お盆を手でひっくり返すのが基本ですが、フレーム数が多くなるとひっくり返す瞬間まで捉えられて、見えてはいけないモノがきれいに見えてしまう。スローモーション再生なんかされたら、たまったもんじゃないですよ(笑)。それがちょっと怖いですね。しかも、普及し始めた5Gのライブ映像だと、360度見えちゃうっていうじゃないですか! テクノロジーが進むのはありがたいんですけど、考えなきゃいけないことも増えますよね(苦笑)」

過激な方向で失敗したら、終わってしまう

このインタビューの最中も端々で、「こんな隠し方ができたら新しい」「こんなモノも使えるんじゃないか?」と、ついつい話はネタの中身へと向いていく。頭のなかは、常に新しいネタを求めているアキラ100%の、実直で生真面目な性格が、そんなことからもよくわかる。だが、ひとつ心配なこともある。人々は、見えるか見えないかのギリギリを追求するアキラ100%の芸を知れば知るほど、もっとスリリングで過激なものを求めるだろうし、それに応えようとすればどんどん“見えてしまう失敗リスク”が高まるだろう。

「はい。たしかにそこのせめぎ合いはありますね。この芸を選んだときからそうなんですが、過激な方向に行きすぎて失敗したら、そこで終わってしまうかもしれない。でも、ギリギリさ加減というのは、とどのつまり、行き着くところがあるじゃないですか。これ以上は無理だという。だったら、そこを追求するよりは、ジャグリングとかプラスアルファのテクニックで観てもらえるネタに進んだほうが良い。より“芸”を極めていく感じで」

その極める“芸”の方向性にも、アキラ100%には野望がある。

「動画で公開しているネタに、刀を振る敵とお盆を2枚使って戦う“丸腰侍”というのがあるんです。ザ・日本という感じの。西洋の大道芸とともに、そんな日本人ならではのネタ……寄席芸の南京玉すだれや水芸、海老一染之助・染太郎さんの太神楽曲芸など、失われてほしくない日本の伝統芸能との融合は、ぜひやりたいことのひとつです。実は、もう和傘も買ってあるんですよ。それを隠すネタにどう工夫できるかは、考えどころですね。ジャグリング類も太神楽曲芸も、めちゃめちゃ難しいからこそ、練習練習です」

いっぽうではデジタルの駆使、もういっぽうでは日本の伝統芸能との融合。ふたつを両立しながら、最終的に目指すものはというと?

「やっぱり……海外なんですよね。前にアフリカで芸をやったとき、アフリカの子供やおばちゃんがめちゃくちゃ笑ってくれたんです。言葉は通じなくても、裸は世界共通。去年の春は、アメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』にも挑戦させてもらったんですが残念ながら放送にも乗らず、TwitterにもYouTubeにも紹介してもらえなかったダメなチャレンジャーだったんですけど……。欧米でも、アジア圏でも、世界中でパフォーマンスするという夢は、絶対に叶えたい。だから日本人らしいネタも身につけたいですし、英語の勉強も必要で。まさか40歳を過ぎて、こんなに勉強しなきゃいけないことが増えるとは、思ってもみなかったですね(笑)」

絵に描いたような中肉中背

国内でもアキラ100%の活動の幅は、お笑い以外にもますます広がっている。それが、本名の“大橋彰”として出演している俳優業だ。お笑いの道に入る前は役者を目指していた彼にとっては、大きな夢が叶えられたことになる。

「僕がピン芸人になったとき、事務所のネタ見せを担当する作家さんが、『演劇の脚本も書いてるから、ちょっと出てくれない?』と誘ってくださったのがキッカケなんです。そこで何回か舞台に出たのを映像作家の横尾初喜さんが観てくれていて、初監督作品になった『ゆらり』という映画で役をくださったんです。横尾監督は舞台の僕しか知らなかったので、普通の役者だと思って声をかけてくれたらしいんです。その後テレビで、役者だと思ってた男が裸でお笑い番組に出ているのを見て、びっくりしたっておっしゃってました(笑)」

その後も、2019年に公開された横尾監督の2作目『こはく』では、メインキャストとして井浦新の兄役を好演し、高い演技力が評価された。

2018年からはドラマ出演のオファーも多数舞い込み、昨年は『スキャンダル専門弁護士QUEEN』や『孤独のグルメ Season8』、『G線上のあなたと私』などにゲスト出演。今年1月~3月までは、『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』で初めて連続ドラマのレギュラー出演を果たした。

「まさかあの俳優が、アキラ100%とは気づかなかった!」「芝居が上手で驚いた」という声が、SNSでも飛び交った。

「芸人としてやっていることと役との振り幅が、僕の場合はほかの人以上に大きく見えるから話題にしてもらえているというのが、すごくあると思うんですね。裸芸をやっていないときの僕の見た目は、本当に平均的な中年男で、ほとんど顔の印象が皆さんに残っていないと思うんです。裸のほうも絵に描いたような中肉中背だし(笑)、肉体的な特徴がない。だから、芸のときに皆さんの視線が、お盆に集中するんです。もし僕の体型が、ガリガリだとか、太っているとか、妙にマッチョだったりすると、そっちが目に入ってしまいますからね。だからちゃんと服を着て、普通の顔で演技をすると、意外性を感じていただける。無名の役者だと思ってたらアイツじゃないか! と興味を持ってもらえるのはラッキーなことです」

俳優業はデビューしたての新人気分

芸人をやっていることで、映像の現場で得することも多いそうだ。

「共演する役者さんたちがネタを知ってくれていて、気さくに話しかけてくれるのはとてもありがたいです。なにせこっちは場違いな場所で緊張しまくりなので(苦笑)。『トップナイフ』でも、天海祐希さんはお笑い好きな方ですし、三浦友和さんも『この間の見たよ』とおっしゃってくれて、すごくうれしかった。あの三浦友和さんが、かなり偏った笑いを提供する『水曜日のダウンタウン』をご覧になってるとは! と、僕のほうが驚きました(笑)」

「もともとやりたかった役者の仕事が増えてきたのは、純粋にうれしい」と言うアキラ100%は、俳優業に関しては、「20代から役者を始めて45歳になられた方に比べたら、全然、実力は及ばないし、今はまだデビューしたての新人気分。今まで憧れていた方々と共演させていただくと、少年の頃の気持ちが蘇って、若返っちゃいますよね」と、とても楽しそうに語る。

だが、俳優としての評判と活躍ぶりを見るにつけ、もしかしたらこのまま役者になっていってしまうのでは? と、思わなくもない。

「いや~、裸芸をやめて役者にシフトするような感じはないですね。役者業のほうが目立って見えるとすれば、単純にネタ番組に僕が出られていない、ということが大きいと思うんですね。僕自身は営業もやっているし、ライブにも出ているんですが、単純に第7世代の新しい人たちがテレビに出てきていて、僕がそのメンバーに選ばれていない。自分の不甲斐なさをすごく感じていますね」

だからこそ、裸芸をよりパワーアップし、お笑いでは世界を目標に、国内でも活躍できる場を広げて、活動を充実させていきたいと彼は言う。

「まずは、ネタを作ったり、動画を撮ったり、英語の勉強を始めたり……今やれることに、どんどん挑戦していきたいですね。俳優の仕事もまたいただけたら、もちろんうれしい。海外でお笑いができて、国内では役者と芸人を両立させて、自分らしい芸を磨き続けられたら、ほんと最高ですね」

文・取材:阿部美香

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