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Action ~いま、私たちにできること~

「Aniplex Online Fest」――オンラインのアニメイベントをファンとの距離を縮める場にする挑戦

2020.06.26

いま、私たちにできること――。

連載企画「Action ~いま、私たちにできること~」では、社会が急速に変わりゆくなか、ソニーミュージックグループをはじめ、エンタテインメント業界の新たな試みに注目。“必要至急”とは言えないかもしれないが、どんなときでも人々に寄り添い、心を潤すエンタテインメントの未来を追いかけていく。

連載第5回はアニプレックス(以下、ANX)の新しいオンライン配信イベント「Aniplex Online Fest」に注目。海外ライセンス部の本間久美子に、このイベントを企画した経緯と、海外展開の新しいアプローチについて聞いた。

  • 本間久美子

    Honma Kumiko

    アニプレックス
    ライツ事業 第2グループ海外ライセンス部

    宣伝やアジア地域の営業担当などを歴任し、現在は全エリアの事業調整を行なう課長職を務める。

リアルイベントからオンラインイベントへ

――ANXを含めたソニーミュージックグループは、新型コロナウイルスの影響が拡大してから現在に至るまで、リモートワークを続けていますが、ANXの海外ライセンス部のお仕事には、どんな影響が出ていますか。

3月下旬には会社からリモートワークが推奨されるようになり、4月以降は完全に在宅勤務になりました。しばらくオフィスに出社していないので、仕事のやり方はかなり変わったという感覚があります。スタッフ同士で顔を合わせて会議をすることも、来客の方をお出迎えすることもないので、特にコミュニケーションの方法が変わりましたね。

でも、海外ライセンス部では、これまでも海外の取引先や現地法人と、電話会議システムを使って会議を頻繁に行なってきたので、オンラインでのコミュニケーションには慣れていました。だから、作品を現地のライセンシーに販売したり、展開したりすることに関しては、大きな問題もなく進められていると思います。

──海外ライセンス部ではアニメ作品のライセンス販売だけでなく、海外におけるゲームやグッズの展開も担当されているそうですね。

スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order(以下、FGO)』の海外版も、現時点では各地域でそれほど大きな支障もなく運営できています。私は特に韓国版『FGO』の開発運営会社とは頻繁にやり取りをするのですが、リモートワークでも問題なく運営できる体制が整えられていて、ゲーム内イベントもほぼ遅延することなく実施できています。

ただ、実体を伴うことには、やはり影響が出ています。中国では8月末に大規模なリアルイベントを予定していましたが、こちらはオンラインでの開催に切り替えています。

またグッズ関係では、一時、中国の工場が稼働できない状態だったので、製造スケジュールに影響が出ていると聞いています。さらに、グッズは制作の過程で、サンプル品を原作元やスタジオに監修してもらうのですが、作ったサンプル品の輸送が遅延してしまうこともあったようで、そういった工程もオンライン上でのやりとりに変えていこうという動きがあるようです。

――さまざまな部分でオンラインを活用する流れになっているんですね。そのなかで、ANXは7月4日(土)、5日(日)に海外向けのオンラインイベント『Aniplex Online Fest』を実施されます。これはどういう経緯で立ち上がった企画だったのでしょうか。

アメリカのロサンゼルスで毎年開催されている「Anime Expo」をはじめ、海外で行なわれる予定だった大きなアニメイベントが軒並み中止になってしまったことがきっかけです。ANXは海外の各イベントにブースを出展したり、ステージイベントを開催したりする予定だったのですが、全てキャンセルになってしまいました。

そこで、イベントを心待ちにしてくださっていた海外のアニメファンに向けて、オンラインで何かを発信できないかという話になったんです。スタッフでいろいろと案を出していくなかで、今年の3月に「AnimeJapan」が中止になったときに、3月21~22日の2日間に渡り、AbemaTVで国内のアニメファンに向けて配信した「アニプレックス48時間テレビ!」が、すごく好評だったという話が出てきまして。海外に向けても、同様の企画ができないかという話になりました。

2019年「Anime Expo」でのANXブースの様子。

2020年3月に行なわれた「アニプレックス48時間テレビ!」の様子。

海外のアニメファンに届くイベントを目指して

――今回『Aniplex Online Fest』のプログラムは、どのような方向性で決めていったのでしょうか。

海外のイベントでは、クリエイターさんや声優さんのトークショウを楽しみにされているファンの方が非常に多いんですね。そういった期待に応えるものにしたいという考えがありました。

それと「アニプレックス48時間テレビ」ではANXの社員やアニソンの作曲家の方たちの出演コーナーも人気を集めたので、その辺りもプログラムに入れて、作品の情報だけでなく制作現場の裏側も積極的にアピールしていけたらと思ってます。

あとは、ソニーミュージックグループの各社にも協力を仰いで、アニメに関係の深いアーティストの皆さんにも参加をお願いしました。このご時世なのでライブを行なうのは難しいのですが、コメントをいただくようなかたちでアーティストの皆さんにも参加していただいています。

当初は、生配信も検討しましたが、通訳や回線、時差の問題があったので、今回は事前収録の番組が多くなる予定です。

アニソンの作曲家をゲストに迎えて制作現場の裏側を語る「Anisong Tea Party」も配信予定。

――収録番組は英語と中国語、それぞれの字幕が付くそうですね。

言語についてはプロジェクトメンバーの間でもさまざまな意見が出たのですが、米国法人のAniplex of America、中国法人のAniplex Shanghaiとも連動できる、英語と中国語の2言語に対応することになりました。本当はもっと多くの言語に対応していきたいのですが、それは今後の課題としています。

生配信パートでの英語版の司会は、22/7に所属するロサンゼルス出身の天城サリーが担当する。

――海外の支社やグループ会社が協力しているプログラムや企画もあるのでしょうか。

そうですね。現地法人の協力を仰いで、海外各地のファンからアンケートを採ったり、質問を募集したりしているプログラムもあります。もちろん広報面でも各地のスタッフに協力してもらっていますし、中国では配信プラットフォームとしてビリビリ生放送にご協力をお願いすることになりました。

各プログラムの制作にあたっては、制作や宣伝などANX社内の各部署だけでなく、A-1 PicturesやCloverWorks、Music Ray'nといったグループ会社とも連携を取っています。また、番組の撮影や編集にはソニー・ミュージックソリューションズに入ってもらっていますし、音楽関係のプログラム制作や権利処理ではSACRA MUSICをはじめソニーミュージックグループの協力を得ています。とにかく皆さんのお力無くしては実現できないイベントですので、本当にありがたく思っています。

新しい海外ライセンスの在り方とは?

――新型コロナウイルスの影響によって、新しい生活様式が叫ばれていますが、海外ライセンスビジネスにおいては、これが今後どのような変化を与えると考えていますか?

ANXは、常にファンの方たちの存在を意識して、近い距離でコミュニケーションを取るために、かなり精力的に海外のアニメイベントにも出展してきました。そのイベントを通じてプロモーションやグッズ販売も展開してきたのですが、そういったことはこれからしばらく制約を受けるのではないかと感じています。

国内外問わず、こうしたアニメ作品の人気を肌で体感できる機会が減っていくのは非常に残念ですが、しばらくは『Aniplex Online Fest』のように、オンラインでできることを積極的に仕掛けていきたいと考えています。

もちろん、オンラインにすることで、これまでのイベントステージでは2,000人しか見ることができなかったトークやライブが、何万人という方々に見てもらえる可能性もあるわけで、この状況を悲観ばかりせず、ポジティブに捉えて取り組んでいきたいと考えています。

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ SAO-A Project

『Aniplex Online Fest』では「鬼滅の刃」や「ソードアート・オンライン」といった人気作品に関する番組も配信予定。

――『Aniplex Online Fest』の試みが、より新しい可能性を広げることになるのかもしれませんね。

次回以降の課題として、インタラクティブ性はもっと取り入れたいと考えています。双方向のコミュニケーションができるようになれば、トークイベントやライブでも、もっと生感が出せると思うので。

やはりアニメイベントの良いところは、お客さんの顔を見ながら、「ファンの人たちはこういう盛り上がり方をするんだ」「こんなところで笑うんだ」とゲストやスタッフとしても発見や感動が得られることだと思うんです。

『Aniplex Online Fest』をファンにとっても作品の作り手側にとっても、大事な瞬間になるイベントに進化させていけたらと考えています。

同時開催するオンライン配信イベントとの連携

――海外のファンに『Aniplex Online Fest』をどのように楽しんでほしいですか?

海外他社のアニメイベントもどんどんオンライン化していて。例えば「Anime Expo」も、「Anime Expo Lite」(7月3日~4日)として、『Aniplex Online Fest』とほぼ同時期に配信イベントを展開します。

また、ファニメーション(北米のアニメ配信会社)も、英語圏に向けたオンラインイベント「FunimationCon 2020」(7月3日~4日)を開催する予定です。同じ時期に並行して行なわれる事になりますが、「Anime Expo」のようなリアルイベントでも、巨大な会場のあちこちでステージイベントやブースが展開されて、お客さんが興味のあるところを渡り歩いていくので、同じような感じになれば良いなと思っています。

『Aniplex Online Fest』を見ながら、関心のあるプログラムや作品に合わせて色んなオンライン配信イベントを行き来してもらえたら、まさにフェスのようでファンの皆さんにもアニメ漬けの週末を楽しんでもらえるのではないでしょうか。特にファニメーションは同じソニーグループのソニー・ピクチャーズの傘下にあるので、相互にリンクを張りながら、お客さんを誘導していこうという話になっています。

「FunimationCon 2020」と相互リンクを張って双方のイベントを盛り上げていくという。

――日本のファンには、どのように楽しんでほしいですか?

「海外向けのイベントは、こんなふうに作品を見せるんだ」という視点で楽しんでもらえたらと思います。ひとつ申し訳ないのは、YouTubeでの配信はアメリカに合わせた開催時間を設定しているため、日本では深夜の配信になってしまうことですね。ただ、番組の多くは配信後に1週間はアーカイブされる予定なので、リアルタイムでご覧になれない方はそちらを楽しんでいただければうれしいです。

文・取材:志田英邦

※インタビュー取材は、リモート会議アプリケーションを使用して行なった。

Aniplex Online Fest

開催日:2020年7月4日(土)~5日(日)
ストリーミングプラットフォーム:YouTube(英語)、bilibili(中国語)

 

関連サイト

Aniplex Online Fest(英語)
https://aniplex-online-fest.com/
 
Aniplex Online Fest(中国語)
https://www.bilibili.com/blackboard/activity-aniplex-online-fest.html

©Aniplex Inc.

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