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連載Cocotame Series

Action

「リスアニ!」が『リスアニ!LIVE L.A.』開催で歩み始めた「新たな道」

2020.07.27

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いま、私たちにできること――。

連載「Action」では、社会が急速に変わりゆくなか、ソニーミュージックグループをはじめ、エンタテインメント業界の新たな試みに注目。どんなときでも人々に寄り添い、心を潤すエンタテインメントの未来を追いかけていく。

連載第8回は、今年、創刊10周年のアニバーサリーイヤーを迎えているアニメ音楽雑誌『リスアニ!』の編集長・馬嶋 亮に話を聞いた。新型コロナウイルスの影響により、メディアとしての活動を自粛せざるを得ないなか、それでも「リスアニ!」として、どうしたら読者やアニソンファンに喜んでもらえるものを作り、提供できるのか? 模索の日々のなかから生まれた最新の活動とそこに至るまでの経緯を語ってもらった。

  • 馬嶋 亮

    Majima Ryo

    ソニー・ミュージックソリューションズ
    メディアプラスカンパニー
    エムオン・エンタテインメント
    リスアニ!編集長

    2015年に『リスアニ!』4代目編集長に就任。現在は、編集長職とともに「リスアニ!」事業部のプロデューサーとしてイベントや放送のほか、「リスアニ!」プロジェクトの全体を取り仕切る。

アニメ音楽業界に提供できた「現場」

――Cocotameでは、昨年の6月にも話を伺っていて、そのときは、2020年4月に迎える創刊10周年に向けてのさまざまな取り組みや思いを記事にさせてもらいました。ただ、新型コロナウイルスの影響で当時はまだ未確定案件でありながら、進んでいたイベントやライブ、もちろん原点のメディアである雑誌『リスアニ!』の発刊も含めて、さまざまなことに影響が出ているかと思われますが、まずは「リスアニ!」プロジェクトの近況から教えてください。

時系列でお話しすると、2月ごろから今後しばらくライブを開催するのは難しいんじゃないかという話が広がってきました。それを受けて「リスアニ!」では、3月7日に北海道で開催を予定していた『リスアニ!LIVE SPECIAL EDITION ハルヤスミ at 北海道』を新型コロナウイルス感染拡大防止の目的で中止することになったのが最初の影響です。

その後、雑誌の『リスアニ!』も4月に発売を予定していた『リスアニ! Vol.40.3 アニソンクリエイターズⅥ』はなんとか刊行できたものの、5月下旬に発刊を予定していた『リスアニ!Vol.41』は、編集作業自体は在宅勤務でできたのですが、肝心の取材ができない、撮影ができないという状況だったので、仕方なく7月発売に延期することになりました。

『リスアニ! Vol.40.3 アニソンクリエイターズⅥ』

そして、6月27日に新木場のSTUDIO COASTで開催を予定していた『リスアニ!PARK Vol.03』も中止になり、厳しい状況が続いていましたね。

――馬嶋さんは、その状況をどのように受け止められましたか?

アニメ業界では、緊急事態宣言が発令されていた4月から5月にかけては、次々とTVアニメが放送延期になり、劇場版も公開延期になる流れになって、予定されていたライブもすべて中止という状況に陥りました。

10年という月日をアニメ、アニメ音楽業界の皆さん、そしてファンの皆さんに支えられながらやってきたのに、この状況に対して何もできない自分たちの無力さを痛感して打ちひしがれましたね。自分は普段、あまり心を乱すタイプではないのですが、今回はそんな苦境とも心情がリンクしてしまって……、正直なところ思考が停止してしまうというか、どことなく憂鬱になった時期もありましたね。

ただ、今はもうそんなことを言っている場合ではないので、『リスアニ!』というメディアの力を使って、アニメ、アニメ音楽業界の活性化につながること、そして何より読者、ファンの皆さんに喜んでもらえるものを作っていきたいと考えています。

――その心境の変化はなぜ起こったのでしょうか?

緊急事態宣言が解除されてから、オンラインも含めて徐々に取材活動や収録ができるようになりました。そういった場での、アーティストの方からの「歌える場、話せる機会を作ってくれてありがたい」という言葉や、一緒に現場を作ってくださるスタッフの方たちが「久々の現場だ!」と張り切る言葉をたくさん耳にしました。これを聞いて、改めて我々のメディアも、インフラのひとつであるということを実感しましたし、改めて何かをもっともっと動かしていきたい、という衝動に駆られました。

つまり“止めてはいけない”ということなのかと。もちろん、感染症対策は万全を期さねばならないですし、何かを元に戻すにしても一つひとつのことを慎重に検討し、課題がある場合はしっかり対応した上で進めていかなければいけないのですが、ネットを軸としたテクノロジーの力も最大限活用して、我々がこの10年やってきたことを、変わらず皆さんに提供し続けていきたいと、今は思っています。

『リスアニ!LIVE L.A.』がたどり着いた手法

――そんななか「リスアニ!」は、アメリカ現地時間7月4日(日本時間7月5日)に『リスアニ!LIVE L.A.』として、アニソンアーティストのライブをオンラインで開催されました。改めてこの企画の成り立ちを教えてください。

毎年7月に、アメリカのロサンゼルスで「Anime Expo」という北米最大のアニメコンベンションが行なわれていますが、今年は伝統あるステイプルズ・センター(Staples Center)でアニソンの音楽ライブを実施したいという案が挙がりました。その話が、いろいろなご縁から「リスアニ!」に持ち込まれたというのが、そもそものきっかけです。

「リスアニ!」もここ数年、積極的に海外でのライブ企画を展開してきたので、「Anime Expo」という大きなコンベンションに合わせてロサンゼルスで開催できるのは非常にありがたいことでした。年明けぐらいから、さまざまなアーティストにお声掛けして、ライブを開催するために準備を進めていました。
 

 
7月2日~5日で開催を予定していた北米最大のアニメコンベンション「Anime Expo」が、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止になったことを受けて、オンラインイベントとして『Anime Expo Lite』(現地時間7月3日~4日)を開催。これと連動する形でアニソンオンラインイベント『Anime Expo Lite×リスアニ!LIVE L.A.』
(以下、『リスアニ!LIVE L.A.』)が7月4日(日本時間7月5日)に開催された。

 
 

『リスアニ!LIVE SEOUL』

 

『リスアニ!LIVE SHANGHAI』

 
「リスアニ!LIVE」の海外公演は、台湾で2016年に開催された『リスアニ!LIVE TAIWAN』を皮切りに、2018年に『リスアニ!LIVE TAIWAN 2018』、2019年に『リスアニ!LIVE TAIWAN 2019』と過去3回にわたって公演を実施。さらに2019年には中国・北京『リスアニ!LIVE BEIJING』、韓国・ソウル『リスアニ!LIVE SEOUL』、中国・上海『リスアニ!LIVE SHANGHAI』でも公演を行なっている。

――しかし、結局「Anime Expo」も中止となってしまいます。そうしたなかで、今回は『リスアニ!LIVE L.A.』として、「リスアニ!LIVE」初のオンライン化が実施されたわけですね。

我々リスアニ!にとって、音楽ライブはメディア表現のひとつです。時流からもオンライン化を考えなくてはいけないと常々思っていました。そういう構想があったところに、今回のコロナ禍があって、オンライン化を強力に推進することになりました。

6月に開催予定だった「リスアニ!PARK」をオンライン化する計画が難航している4月中旬に、リアルイベントが中止になった「Anime EXPO」の事務局から「Anime Expo Lite」というかたちで配信イベントを行なうということを知らされ、そして「リスアニ!」に改めてオンラインで『リスアニ!LIVE L.A.』を実施してほしいというオファーをいただいたんです。

――『リスアニ!LIVE L.A.』はどのように制作していったのでしょうか。

まずは、新型コロナウイルスの感染リスクを最大限減らすため、アーティストサイドとはオンラインでミーティングを行ない、社内調整も同時進行で進めました。

その上で、日々変わる感染状況や対策方法をアップデートしながら慎重に企画を進めていきましたが、結局、ライブを生配信するとなった場合、どうしても大勢のアーティストとスタッフを「密」な環境に集めることになってしまうので、「Anime Expo」側には生配信はやはり難しいということを伝えました。

すると先方が、収録でも構わないのでライブ映像を出したいと言ってくれて。それであれば可能と判断し、今まで培ったライブ映像制作のノウハウを活用してスタジオ収録を行なうことにしました。

『リスアニ!LIVE L.A.』には、内田真礼、ELISA、GRANRODEO、KOTOKO、高橋洋子、南條愛乃という、日本のアニメ音楽シーンを代表する計6組のアーティストに出演していただきましたが、皆さん本当に気合の入ったパワフルなパフォーマンスをしてくださって。良い映像に仕上がったと思いますし、実際、「Anime Expo Lite」で実施されたたくさんのプログラムの中でも1、2位を争う人気だったと、現地からも高評価をいただきました。

内田真礼

ELISA

GRANRODEO

KOTOKO

高橋洋子

南條愛乃

今後はこの経験を糧にして、オンライン配信でもっとうまくやれる方法がないか、もっと皆さんに楽しんでもらえる方法はないのかを探っていきたいと思っています。もちろん、「リスアニ!LIVE」が日本武道館の場でこだわりとして掲げている、“全曲生演奏でのステージング”についても模索していきたいと考えています。

これからの「リスアニ!」プロジェクト

――最後になりますが、いわゆる「with コロナ」と呼ばれる状況がこの先も続くなか、「リスアニ!」を今後はどのように展開していこうとお考えですか。

この状況のなかでは、新型コロナウイルスの影響を受けていない人なんていなくて、世界中、すべての人が何かしらの制約のなかで日々の生活を過ごしていると思います。そういった現状でも、エンタメとして、メディアとして今何ができるのか、をもっともっと深く考えていかなければならないな、と。もちろん、個人個人で感じるストレスはあると思いますし、僕自身もそれがないわけではないんですが、それも周りの方々と一緒に乗り越えていけたらと考えています。

そのためには、繰り返しになりますが、“止めちゃダメだな”ということ。今まで以上に試行錯誤を繰り返しながら、出版であればしっかりと『リスアニ!』を出し続けていく。ライブや映像であればカタチにして残すということです。

まだ、僕らはこの状況になってから雑誌2冊と映像配信がひとつしかできていませんが、アーティストもファンの皆さんも、そして我々スタッフも全員の安全をしっかり確保した上で、メディアとして表現の場を作り、それを見ていただけるコンテンツをこれからも作っていきたいと考えています。今後も「リスアニ!」プロジェクトに期待していただければと思います。

7月16日に発売された『リスアニ!Vol.41』

文・取材:志田英邦

関連サイト

リスアニ!WEB
https://www.lisani.jp/(新しいタブで開く)

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